ホーム

 > 

掲載企業一覧

 > 

株式会社綿善

株式会社綿善 若おかみ 小野雅世

祇園祭の山鉾が巡行する京の中心地。1830年(天保元年)に創業したのが綿善旅館だ。200年に迫る歴史の中、老舗旅館としての伝統や作法を大切にしながらも、自由な発想を取り入れている同旅館。今回お話を伺ったのは、何度でも訪れたくなる同旅館の若おかみとして活躍する小野雅世氏である。同氏が同旅館の若おかみに就任したのは2015年。その年の観光庁「旅館ホテル生産性向上モデル」に選出され、2017年には業務効率化の成功事例として安倍元総理大臣前で発表されるなどの経歴を持つ。普段から「皆のお母さんみたいな存在でいたい」と話すなど、あたたかさとパワーをも兼ね備える同氏から「社風」や「独自性」、そして「展望」についてお話を伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

いろんな色があって良い

「社風。そうですね、ドロップ瓶のようなイメージですね」そう話した小野氏。「ドロップ瓶ってすごくワクワクしますよね、どれも美味しいし、いろんな色があって」と続けた。
元々「人はこうあるべき」というイメージを押し付けることに抵抗があり、社員一人ひとりの個性を大事にしてきたという小野氏。自身も「おかみ」と呼ばれるより、「雅世さん」と呼ばれる方がしっくりくると話しており、いつでも自然体でありたいという様子がうかがえる。
もちろん旅館として、作法などは大切にすべきで、揃えなくてはならないラインがある。だが、そういったもの以外は皆の良さが伝わるような環境にしたかったという。ファッション系の色の子もいれば、落ち着いた安心感のある色の子もいたり、透明な色の子がいても良い。伝統を受け継ぎ、礼儀作法を守りながらも、これからもそれぞれの色を大切にしていきたいと語った。

現場レベルからどんどん変革を

社員一人ひとりが自由にやりたいことをやりたいと言える風土。これが同社の独自性だ。「私がいろいろ好きで勝手にやるから、皆も『あ、ええんや』ってなっているのかなと思います。私がガチガチになってたら、雰囲気も悪くなりますしね」そう話した小野氏。お客様へのサプライズなど、綿善旅館ならではのおもてなしの根幹には、発想の可能性を妨げない雰囲気づくりと、小野氏の人柄に表れている。
また、古くからの慣習や仕来りでがんじがらめにはしたくないとの想いから、現場レベルでも変えられることはどんどん変えてもらえる環境を整えつつ、さらに社員には「むしろ変わらないことに対して危機感を持つぐらいの気持ちでいてほしい」と語った。同社は、社員のやりたいことを形にして、その成功体験をしてもらうことにより、自由でやりたいことがやりやすい環境づくりを日々行っている。

ほんまもんとともに創業200年へ

創業200年に向けて、上質で、本物に触れられる旅館にしていきたいという小野氏。見る人が見たらわかる「ほんまもん」を取り入れながら、本物に触れられる場を徐々につくっていきたいと話した。また、その外観は、千と千尋の神隠しに出てくるような湯屋のような雰囲気にしたいそうで、「お客様に楽しさや幸せを提供するなら、自分自身が楽しく、幸せじゃないとね」そう笑顔で話していた。その想いは、綿善でやりたいこととしてしっかり落とし込みながら、その先を見据え、これから知恵をしぼっていきたいと意気込んだ。決して敷居は高くないけれど、わかる人にはわかる上質さを提供できる旅館として、さらに、もう1回来たいと思ってもらえる空間をつくる。9年後、創業200年のタイミングでは、是非この理想を叶えたいと熱く語っていた。
地元の人に
笑ってもらえるように
綿善旅館の板前弁当を宅配する
パンダさん
そして、
パンダさんのオフショット(笑)
あだちメシ最終日!
烏丸御池にある
足立病院の皆さんへ
ランチをお届けしました!

綿善旅館が大切にしていること

これからチカラを入れて取り組んでいきたいことを教えてください

創業200年を迎えるタイミングで、理想を実現させたいんですよね。なので、これから徐々にそのステップを踏んでいきたいなと思っています。だからと言って、若おかみとして気合いを入れてとかだとしんどくなるので、小野雅世としてフラットな状態でやっていきたいですね。
これからやっていきたいことは、もっと「ほんまもん」を追及することかな。理想は、綿善を京都のショールームにしたいんです。綿善でふれるものすべてが京都の「ほんまもん」で、例えば「これは京都の○○です」とか、「これは近所のお店で扱っている○○です」とか、地域とも連携しながらやっていきたいですよね。そうすれば、お客様も地域の方々も、みんなハッピーになれるので、そんな地盤づくりをしていきたいと思っています。本当にこれからですね。

どんな人に旅館で働いてもらいたいですか?

それはもう「優秀」な人に働いてもらいたいですよね。「優秀」とは言っても「優しさに秀でる人」という意味で、「優秀」な人。これ、現役の京都市長に言っていただいた言葉なんですよ。実はですね、京都市長とお話しする機会があったときに、私が「優秀な人を採用したいんです」と言ったんですね。そしたら、「例えばどんな人?」と聞かれたので、「人としてのベースがあるのが前提で、学びに素直な人。素地のある人が、知りたいという気持ちを持って学べる人ですかね」と答えました。そうすると市長から、「小野さんの言う「優秀」な人は、優しさに秀でている人のことだと思うから、そっちの方が皆に伝わるよ」と言ってくれました。ありがたかったですね。優秀なメンバーと共に、旅館にいらっしゃる方にとって、居心地の良い、そして、今このひと時を自由に自然体でいられるような空間を提供していきたいですね。

人生観をお聞かせください

自由に生きていきたいですね(笑)。日本全国好きな場所にいたいです。65歳になったら、キッチンカーで日本中を回ってね。そうそう、キッチンカーで沖縄に行って、たこ焼き屋さんをやりたいなと思ってるんです。沖縄好きなんですよね。だけど、沖縄は台風が来ると大変だから、そのときは車で北上して逃げたりしてね。そのためにも、綿善を安定させて、次の世代にバトンタッチしないといけなくて。そうでないと、安心して任せられないですからね。なので、今はそれに力を入れています。バトンタッチしたあとの次を楽しむためにも健康でいなきゃね。健康にはめっちゃ気をつかってますよ。そして、何より旅館にいらっしゃる方についても、たった1回の人生、良いご縁と巡り合えるような、そんな旅館でいたいと思いますね。

京都老舗旅館の未来を担う 笑顔が魅力的な若きホープ

株式会社綿善 岸本紗織  

約200年の歴史を持つ、京の宿綿善旅館では、お客様に寄り添った様々な取り組みが行われている。その取り組みの中で、連日にわたり夏に開催されるイベントがある。「天麩羅ナイト」、このイベントは綿善旅館の夏の風物詩でもあり、1年を通して、最も賑わいを見せるとも言われるこの名物イベントだ。そのイベントにおいて、仲居を始めてたったの1年で、中枢の役割を若おかみから任命された人物が岸本氏、今回の取材の対象者である。このイベントはかなりの忙しさから、毎年中枢の役割を担う担当者が苦戦するにもかかわらず、岸本氏は周りを巻き込む笑顔でこの行事の成功をおさめたのだという。入社後たった1年で周りを巻き込むほどの実力の持ち主である、岸本氏から未来の綿善旅館について様々お話をお伺いした。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

伝統のある旅館で働くということ

日本のことをさらに知ることができる伝統のある旅館で仕事がしたいと考え、綿善旅館の門を叩いたのは、2020年8月のこと。外国語を学び、海外に触れてきた岸本氏は、「日本人なのに、日本のことが全然わからない」と予てから思っていた。別の仕事に携わりながらも、このままで良いのかと自問自答を繰り返す中、元々京都が好きで、いつか京都に住んでみたいという思いもあり、WEBサイト「京都移住計画」を閲覧していたところ、一つの企業を見つける。お客様を喜ばせようという気持ちに溢れた綿善旅館だった。そこには、若おかみがお客様の誕生日をお祝いしている様子の写真が掲載されており、日本の伝統を引き継ぐ歴史を感じつつ、若おかみのとても明るく、元気いっぱいなポジティブな印象が重なり、「旅館で働けること」と「京都に住むこと」の両方が叶えられると思った岸本氏は、綿善旅館への入社を決めたのだという。

お客様の言葉が原動力

お客様の対応をして、直接お褒めの言葉をいただいたり、お客様アンケートで「対応が良かった」と書いてもらえることがとても嬉しいと話す岸本氏。礼儀作法と相手に寄り添った対応と笑顔から「あなたの笑顔はとても素敵だね」、「今日の旅の疲れは、あなたの笑顔で吹っ飛んだよ」というお客様の温かい言葉の一つひとつが岸本様の励みになっている。 現在目標としているのは2人の先輩で、そのどちらにも共通している点が、お客様一人ひとりに合った、柔軟で丁寧な対応をしていること。お客様から毎年お誕生日を祝ってもらえるほどの関係性を築いている方と、実際にあった話で、ペアのお客様がいらして、食後のデザートをお持ちしたとき、そのお客様から「もうお腹がいっぱいなので、冷蔵庫に入れていてほしい」と頼まれたところ、どちらの方のものかがわかるようにと、似顔絵を描いておけるなど、機転の利く方。「2人の先輩のように、お客様に好いてもらえる人になりたい」と語った。

日本一の旅館へ

「綿善旅館を日本一の旅館にする」これが岸本氏の夢であり、若おかみが良く語ることでもある。これを実現するために、岸本氏は丁寧で、お客様に寄り添った的確な対応をできるよう努力したいと話した。「綿善旅館が家だと思えるような、リラックスしてもらえる環境をつくりながら、人柄を好いてもらえるように、お客様一人ひとりに合ったできる限りの対応をすることで、日本一の旅館を目指したい」そのように話した岸本様。 若おかみの言葉を借りるなら、綿善旅館のみんながハッピーじゃないと、お客様にもハッピーが伝わらない。皆で楽しい雰囲気を出しながらも、伝統は残しつつ、きっちりするところはきっちりと、メリハリをつけて。また、新しいことにも挑戦しながら、2人の先輩に近づけるよう、これからも楽しく、仲居としてのスキルを磨きながら、一歩ずつ前に進んでいきたいとの志を言葉にした。
日頃より伝統を重んじつつも
お客様を楽しませるため、
お客様のニーズに合わせ
時にはお客様を被り物で
お出迎え!
「最後まで楽しんでもらいたい」
心からのおもてなしもご提案
修学旅行生をホームまでお見送り
コロナ禍は年賀状でも
ソーシャルディスタンス!

綿善旅館の未来を担う岸本様の想いとは

岸本様が思う、綿善旅館ならでは魅力とは?

綿善旅館で働く皆さんは、「おもてなしをしたい」という気持ちで溢れていて、良いなと思っています。例えば、お客様のお誕生日や結婚記念日などの大切なイベントのとき、被り物をして、サプライズで目の前に登場し、お祝いをしたりします。お客様に楽しんでいただくことはもちろんのこと、私たちもみんなでワイワイしながらやっていますね。また、修学旅行生がいらしたときには、同じように被り物をして、お出迎えをしたりもしましたし、彼らが帰るときの新幹線ホームにまで出向き、被り物でお見送りをしたこともありました。そのような、綿善旅館にしかできないおもてなしの心が、いつも良いなって思います。

岸本様にとって、綿善旅館はどのような職場ですか?

和気あいあいとした職場で、働く皆さんも私にとっては家族のような存在です。若おかみは「みんなのお母さんみたいな存在でいたい」といつも言っていますし、先輩や上司も「困ったことがあったら、すぐに言いや」と言ってくれます。そういえば、仕事のことで上手くいかなくて、先輩に相談したことがあったのですが、「あなただったらこういうやり方で進めたほうが効率よくできると思うよ」と、私に合ったアイデアやアドバイスをくれました。とてもありがたいですよね。そのようなとき、特に、温かい皆さんに囲まれて働けていることを実感しますね。

これまでチャレンジしたことについてお聞かせください。

綿善旅館には、従業員が自由に意見を投函できるご意見箱が設置されているんです。ご意見箱は、新しく入った方にとっても、自分の意見を取り入れてもらいやすい仕組みだと思います。また、若おかみは、例えば私が「こういうことをやってみたい」と申し出たとき、「まず一回試してみたら?」とその意見を受け入れてくれます。そして、それがお客様のためになるならと、試す機会を与えながら、前向きに検討していただけます。私が提案した動画の企画にも「まずやってごらん」と後押ししてくださいましたし、絵を描くことが趣味の子に、綿善旅館オリジナルのLINEスタンプを制作してもらったこともありました。一人ひとりの個性を理解しつつ、自分の得意なことややりたいことを取り入れ、前向きにやらせてもらえる環境にあると思います。

監修企業からのコメント

本日は取材にご協力いただきまして、誠にありがとうございました。伝統や作法を重んじながらも、社員一人ひとりの個性を大切に、既成概念にとらわれない新たな発想を取り入れる社風に、力強さを感じました。また、お客様のみに留まらず、旅館を取り巻くすべての方たちをハッピーに、その明るくパワフルな若おかみの姿に大変心を動かされました。創業200年に向けての綿善様、これからも目が離せません!

掲載企業からのコメント

私が綿善旅館に戻ってきてからの出来事やその時々の想いを改めて振り返ることのできる、とても良い機会になりました。綿善旅館の未来を描くビジョンはもちろんのこと、私自身がどうありたい、どうしていきたいかを話すことで、私自身の考えも整理することができました。記事を読んだ皆の反応も楽しみです。本日はありがとうございました。

株式会社綿善
1830年 綿屋善兵衛により創業
1956年 有限会社綿善旅館設立
1984年 全面改装
1984年 株式会社綿善設立
2015年 一部改装
創業年(設立年) 1830年
事業内容 ■宿泊業
■飲食業
所在地 京都府京都市中京区柳馬場通六角下ル井筒屋町413
電話:075-223-0111 FAX:075-223-0112
資本金 1,000万円
従業員数 20名
会社URL

株式会社綿善