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理研軽金属工業株式会社

理研軽金属工業株式会社 代表取締役社長 入山豊

静岡県駿河区にアルミ加工の老舗にしてパイオニアとして輝く企業がある。それが理研軽金属工業だ。1937年に理化学研究所の試験工場として創業し、17年後の2037年に創業100年を迎える。今は、内外装建材が主力商品だが、創業時のアルマイト漆器の製作に始まり、数多くの商品の製作や販売を行ってきた、常にチャレンジし続けている会社だ。
今回は、上部組織である日本軽金属株式会社で人事や経営企画領域で活躍したのち、同社の社長に就任した入山社長にお話を伺った。チャレンジ精神を持って異動を希望し、永続的な発展に向けた温故知新の改革は、多くの成果を上げている。今回の取材を通し、同社の考え方や社風、入山社長の経営スタイルなどを伝えていく。

伝統の承継と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

チャレンジスピリッツ

「しっかりとした経営基盤がある中で、新しいことにチャレンジする気持ちを非常に強く感じる」社風について入山社長は語った。
同社が世に出した商品は多く、それは博物館のような本社の展示室で実際に見ることができる。今は、内外装建材やアルミ押出形材がメインの商品だが、以前は、鍋や窯などの日用品や住宅用のアルミサッシなどの製品を生産していた。同社には時代や市場の変化に合わせ、常に自社の技術が生きる領域へチャレンジし続け、その中で今の社風が育まれたという歴史がある。さらに「この歴史や社風は、先輩諸氏から現在の社員に受け継がれている。そして、世の中に新しいものを提供して貢献するという考えは、社員の中に根付いている」と付け加えた。こういった社風の中で、2018年1月にも新しい領域の事業としてアルミサイクルスタンドを開発した。これは経営革新の認定とともに、国内外から関心を寄せられている。

高品質な表面処理技術と一貫生産体制による迅速な対応

「高い品質と納期が最大の武器だと思っています」そう力強く入山社長は語る。
同社商品の内外装建材は、ビルなどの外装や内装といった人の目に触れるところに使われるため、強度や形状だけでなく表面品質がとても重要になる。お客様の求める水準の製品を作り出す体制を確立し、さらに、常にお客様目線で現場の改善を図ることで、高い品質の商品提供を徹底している。
また、同社は製造の一貫体制を構築しているため納期の短縮化が可能だ。内外装建材は、押出形材を材料とし、その治具類も自社でつくるため、調達における時間ロスを最少化して製造ができる。その他、後工程においても可能な加工は自社で行うなど、お客様の困りごとにも素早く対応できる体制をつくり上げた。
これらの強みが現場で機能し、お客様の深い信頼につながっている。
同社は今、この独自性を生かした営業展開を図り、新しい市場へ打ち出すフェーズにきている。

100年、150年と永続する企業を目指して

「未来に向けて100年、150年企業を目指す」それが同社の思いだ。それを実現するため、新たな事業の柱の創出を掲げている。
現在、主力となっている建材事業において、シェアトップの商品も持っているが、少子高齢化の日本経済の中では市場縮小は避けられない。それに対しては、人材投入やマーケティング力強化により上流工程からの営業を進め、建物の設計段階から自社の固有技術と商材をPRする戦略をとっている。しかし、建材による「1本足打法ではいけない」と考え、新たに成長性のある事業を複数確立させるべく、商品開発スピードの短縮化を図っている。具体的にはビジネスユニットを機能させて市場性の高い商品を生み出すことだ。いずれも「人」がカギとなるため、採用と育成についても入山社長の経験を生かし、進化させている。
もともと品質と納期という強みと、チャレンジできる社風があり、展望の実現は、時間の問題かもしれない。100年、150年企業の実現はすぐそこにある。
アルミの金属感を感じさせない木目調仕上
創業時の工場と現在も使用する歴史ある社屋
社員の声で生まれた「RICCAL」

挑戦するための体制づくり

組織体制づくりで取り組まれたことを教えてください

組織体制として、ビジネスユニット制(以下BU制)を導入しています。BUとは、商材や顧客ごとの小さい1つのビジネス単位で、開発と製造と営業を持つ小さなグループです。通常の組織だとそれぞれで壁ができます。製造は生産性向上やコストダウンを中心に仕事をします。開発は、生産性やコストよりも良いものをつくることに強い関心を持ちます。そして、営業は売上を増やすことに集中しがちです。しかし、それらは相反するものでありビジネスにとって最も重要な利益が忘れられてしまいます。それを打破するものが開発、営業、製造をコンパクトにまとめたBU制です。現在4つのBUがありますが、なにより意思決定が早くなり、さらにビジネスに対する責任感を持って、全体を見られる人間を育成できるようになりました。BU制で組織がより機能的になったと思います。

社員育成や教育に関して取り組んでいることを教えてください

パフォーマンス&アピールという活動をしています。パフォーマンスは、自分がやってきたことや成果はこうだということ。アピールは、自分はもっとこういうことができますとアピールすることです。
若手社員の改善活動と発表会という形で、技術スタッフや管理系スタッフの発表の場にしています。このような場を設けたのは、日常の与えられた仕事だけをやるのではなくて、自分で考え、自分で様々な改善をしていってほしい、という思いからです。上司や先輩がやっていたことを真似するだけではなく、自分なりに課題点を見つけて業務を改善する。それが会社全体のコストダウンやバイタリティになります。『与えられたまま仕事をするのではなく、自分の仕事を改善してください』と言い、『改善のネタはいっぱいあるでしょう』ということで取り組んでいます。

サイクルスタンドの開発秘話を教えてください

自転車好きな社員たちが"自分たちはこういう商品が欲しい"というものをつくりました。
社内にスポーツサイクルの同好会があり、以前実施した新商品ミーティングで、同好会のメンバーが「自転車関係の商品を何かつくれないか」と提案してできたのが、アルミサイクルスタンドです。建材以外の分野にも挑戦しよう!という良いスタートになりましたね。もっと大きく売れていれば大々的に宣伝できるんですけれども(笑)。ただ、自転車業界がこういう業界なのだと知ることができましたし、当然、次のビジネスのヒントもあります。これをきっかけにスポーツやアウトドア系にもお客様を求めようとしています。このように派生していくので、新しいことに挑戦することは大事だと考えています。

素材、成形のプロフェッショナル

理研軽金属工業株式会社 製造部素材課押出係 係長 田中寛之

お話を伺ったのは、製造部門で活躍されている田中係長。材料や成形についての知識が豊富で、現場のこともよく知るプロフェッショナルだ。大学院を卒業し、理研軽金属工業に入社後14年になる。仕事の主なミッションは、歩留まり率や不良率の改善。余計なスクラップになる部分を抑えたり、不良の発生源に対して考えられる対策を実施している。また、監督者として現場で働く作業スタッフの労務管理や部門目標の進捗管理なども行っている。大学院での専攻は機械システム工学で、研究室では材料力学、例えばアルミの成形や強度などの研究を行っていた。
田中係長の取材を通じ、同社の社風や製造現場の雰囲気を伝えていく。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

専門性を生かせる場がある

田中係長が理研軽金属工業に入社した理由。それは、これまでの研究や知識を生かせると感じたからだ。富山にある大学院では、機械システム工学を専攻。研究室では、材料力学、例えばアルミの成形や強度などの研究を行っていた。働くのであれば、勉強したことを生かしたいと思い、それに関連する企業を探していた田中係長。地元に近い静岡県沼津市で就職説明会があり、そこに参加していた同社に入ることを決めた。 アルミの成形は、現場の微妙な気温、生産量、形状によって設定を変えることが求められる、非常に繊細な加工だ。入社後は、大学院で身に付けた専門性を生かして、現場経験も積んできた。失敗しながらも様々なチャレンジをしてきたからこそ、今の田中係長があるのだろう。 現在では、任される工程や仕事の範囲が増え、管理者となった田中係長。教える立場としても自身の知識と経験が役立っている。まさに、専門性を生かせる場がここにあったのだ。

人に喜んでもらうために

「不良を減らして後工程の方に喜んでもらえることにやりがいを感じます」 内外装建材などの商品は、田中係長が担当している押出係の業務からスタートし、後工程で様々な加工がされ、最終工程や製品検査を経て出荷される。当然、最初で不良が発生してしまうと、後工程にまで影響が及ぶ。 特に、押出加工の作業は非常に繊細で、押出加工中に寸法が変化するし、押出加工毎にも変化がおきる。そのため、管理者として、常に現場の状態やスタッフとのコミュニケーションに気を配り、不具合があれば徹底的に検証して改善している。 「不良を減らしていくと、いろいろな方から『できるようになったね!』という言葉を頂ける。係の皆も少し楽になってきているのかな、喜んでもらえているのかな、と感じると、仕事を頑張ってきて良かったと感じます」 後工程の人に喜んでもらうべく、より高い品質に向けて、田中係長の現場改善は続いていく。

さらなる効率化を目指して

「経験に頼らなければならないところを自動化するなど、人に負担を掛けないような生産ラインを考えていきたい」田中係長は目標についてそう語る。100年、150年企業になるために、現場の質をもっと高め、良品率を上げることが大きなテーマとなっている。 現状、現場の“人”の能力と経験に頼っている部分が多く、また、経験に頼らなければならないような作業もある。しかし、可能な限りそれが自動化できれば、作業効率と良品率を向上できるため、今の人員でも対応規模が増やせるようになる。 昨今、AIや自動化システムという分野の進化が著しい。このような分野を利用できないかと情報を集め、一部新しい設備も導入している。 「ものづくりですから、人の熟練は絶対必要です。一方で、機械やコンピュータも日々進化してますので、積極的に良いところは取り込んでいって、もっと生産性の高いラインづくりをしていきたいなと思います」と明るく語った。
工場の空撮および設備
アルミ素材の押出加工は50メートル以上におよぶ
高品質の表面処理加工まで一貫体制を誇る現場

現場責任者としての責務

素材課押出係の仕事の特徴を教えてください

不良が出ないようにバラツキを抑えるのが非常に難しいですね。押出しという加工は、ところてんのように金型に身を通すことで行うのですが、加工の条件を決めても、毎回同じようにはいきません。同じ材料でも、ロットが変わる度に違う動きをしてしまうため、条件の見直しや金型のメンテナンスなど、ダイス係という部門との連携により修正してもらうのですが、それでも安定させるのは難しいです。温度・圧力・速度など、目に見えない条件から傾向を出してみると、少しの変化で製品の形や不良率に影響が出てくることがわかります。実際にオペレーターをするには熟練が必要ですよ。その分、うまく良品ができた時の喜びも大きいです。しっかり教えますので、ぜひ若い人には失敗を恐れずチャレンジしてほしいですね。

熟練した、または1人前になったと実感できたのはいつごろですか

押出形材とは何かと説明する場で、質問に滞りなく説明できるようになった時に実感しました。4年目くらいの時です。私の場合、2年目の時に素材課押出係にスタッフとして配属されました。最初は現場を知ることから始めます。まず、現場の誰が何をやっているか把握しないと何もできないですからね。今の押出係については、全体を把握するのに2年くらい掛かりました。
押出形材の技術は勉強することが膨大で、勉強したことを上手くつなげながら何とか対応していくイメージです。4年目以降、新入社員や派遣社員が入社した際、教育の場で押出形材の説明をしました。そこでの質問に対応するため、ものすごく勉強し直して、滞りなく説明できた時「自分も1人前になったな(笑)」と成長を実感しました。

入山社長が来てから変化したことはありますか

会社に来られてから実際いろいろなことが変化しました。とても実行力がある人だと思います。まず、各現場の生産性を把握して、必要な人員を揃え、業務の負担を解消しました。その後、縦割りだった部門編成に対してビジネスユニット制を入れて、連携をとれる体制にしました。他にもたくさんあるのですが、私が関わっているのは「100年委員会」という、100周年までにどういう会社にしていきたいのかというのを考えるプロジェクトです。メンバーは10名ほどで、社長含め各部門の管理者から選ばれています。会社の理想に対して現状の課題をリストアップし、それを、どういう優先順位で改善・実行していくかを決め、長期計画に盛り込むなど、自主的に進める体制になってきていると思います。

監修企業からのコメント

入山社長、田中係長、この度はお忙しい中にも関わらず、取材を快くお受けいただきましてありがとうございました。
入山社長の卓越した経営手腕には感銘を受け、また非常に勉強になりました。自転車エンドユーザー向けの新商品が出るのを楽しみにしております。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

掲載企業からのコメント

取材いただきありがとうございました。
当社の歴史や考え方が、記事を通じて皆さまに伝わればうれしいです。
今後も時代に合わせて、会社を成長させていきます。
よろしくお願いいたします。

理研軽金属工業株式会社
1937年 財団法人理化学研究所の静岡工場として設立し、アルマイト加工及びアルマイト漆器の量産を開始。
1940年 改組して、理研電化工業株式会社を設立。アルマイト加工・アルマイト漆器・アルマイト家庭器物及びアルマイトを応用した銘板・録音盤を製造販売。
1951年 圧延工場を新設、アルミニウム板の製造開始。
1968年 アルミニウムの表面処理法浸漬塗装法を開発。
1969年 太陽アルミニウム株式会社と合併し、理研軽金属工業株式会社に商号変更。住宅用外付サッシ「陽春」販売開始。
1970年 押出形材の工場新設、押出形材の生産開始。
1978年 日本軽金属グループに参加。住宅サッシ販売部門を分離。(現 新日軽(株)に統合)
1980年 日本軽金属(株)全額出資による同社名新会社となる。
1988年 皮膜着色法、浅田法をユニコール法に切り換え。
1996年 日用品事業を(株)日軽プロダクツに譲渡。
1997年 シルクカラー(特殊アルマイト処理)製品の発売開始。
2014年 理研アルミ建材(株)を吸収合併
2018年 スポーツサイクル用「アルミサイクルスタンド」販売開始(RICCAL)
2019年 ビジネスユニット制導入東京支店移転アルミ樹脂複合板内装仕上材「ビルワイド」販売開始
       スポーツサイクル用「アルミサイクルスタンド」レンタルサービス開始(RICCAL)
2020年 スポーツサイクル室内展示保管用「アルミサイクルシェルフ」販売開始(RICCAL)
創業年(設立年) 1937年(昭和12年)
事業内容 内装外装建材の製作、産業製品の製作
所在地 〒422-8530 静岡市駿河区曲金3丁目2番1号
資本金 17億1,500万円
従業員数 302名
会社URL

理研軽金属工業株式会社