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平和運輸株式会社・日本航運株式会社

平和運輸株式会社・日本航運株式会社 代表取締役 澁澤善文

円錐型の事業分布と言われる物流業界の中で「機動力」「対応力」「ホスピタリティ」という信条を掲げることで、大手に次ぐポジショニングをとり、異彩を放つ企業がある。それが平和運輸㈱・日本航運㈱だ。両社を運営する代表澁澤氏は異業種からこの業界に飛び込んだ。運送業における労務環境の向上と事業の収益向上という一見矛盾する問題に異業種ならではの視点から改革に挑戦し、働きやすい職場環境づくりと高い収益性を両立させた。そして2024年のトラックドライバーへの働き方改革関連法案に向け、さらなる進化に挑戦しているという。本取材では、澁澤社長に10年間増収増益を実現した同社の挑戦の軌跡と展望について伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

業界のあたりまえを刷新する文化づくり

運送業界において過去は「決めたルールが守られない」「変化を嫌う」といった慣習があり、一見あたりまえに見える現場改善ができない事業者が多かったと澁澤社長はいう。これは10年前に同社のトップとして着任したときの率直な印象だったそうだ。労働集約型の運送業界では、収益性を上げるために労働環境を厳しくせざるを得ないという構造上の課題があり、それは大手企業でも当てはまる。澁澤社長はその課題に対して疑問を持ち、真っ向から挑戦した。まず事業の収支を改善すべく車両・ドライバーの確保と拠点一極集中など戦略的に進め生産性を上げ、並行して社員が長く働けるための什器・設備の投資など働く環境や待遇を改善し、組織としての強化を図った。こうして事業・組織の基盤を作った上で、最も力を入れたことが人材育成だ。接客・電話応対から、整理整頓など基礎的なところから見直し、会社のあたりまえレベルを圧倒的に高めた。こうして10年経つ今「機動力」「対応力」「ホスピタリティ」という信条が、新たな企業文化になりつつある。

小売業・サービス業の視点を持つ

ヒト不足、モノ不足が予測される運送業界において同社は早い段階で時代対応している。通常、事業者は車両や人手のムダを出さないために、仕事を確保してからトラックを揃え、足りなければ傭車(ようしゃ:別の業者に配送業務を依頼すること)するというプロセスを取るが、同社は先に車両や人員を確保し、必要な仕事を確保するという戦略を取った。そのため接客・電話応対の研修などの教育や営業人材の育成を進めた。また、同社は拠点の一極集中を図り1拠点の車両台数を増やした。これは運営の間接コストの削減とともに、企業イメージも良くなり、近隣からの採用や営業強化につながっている。さらに特殊車両、大型車両を揃えることで、各ドライバーの時間当たり輸送量を最大化し付加価値を高めている。こうした展開の軸となっているものが、「小売業・サービス業」の視点だ。依頼されたものを運ぶ運送会社の概念を超えて、徹底したお客様目線でのサービス提供が可能となったことで、医薬品メーカーからの輸送依頼など、新たな仕事の獲得につながっている。

会社のことを考え、自ら動く社員へ

澁澤社長主導のもと、事業・組織の両面で運送業の概念を超えた同社。今は2024年の働き方改革に向けて、いくつかのプロジェクトを立てて準備をしているという。これは管理者たちが少しずつ成長し、自分たちで会社の未来を考え動き出している表れともいえる。澁澤社長はこの先5年間くらいで、自身が引退しても、継続して事業が成長できる基盤が構築できるだろうという。各拠点の責任者たちが横連携を持ちながら全社視点で課題解決ができるような組織ができればトップが変わったとしても会社は成長し続ける。「大きな戦略のもと、戦術を組むところは任せていく段階には来ています。事業が勝負事だとするとやはり勝たねばいけません。全勝とは言わなくても、やはり負けは抑えなければいけない。そのためにも意識すべきことは“サービス業の発想と見解を持つこと”ですね!」と澁澤社長は語った。いよいよ同社も次世代組織を見据えたバトンの受け渡しが始まっていく。

薬品の輸送等で活躍する
-25℃まで対応できる車両
“動く冷凍庫”

シンガポールを拠点とする
国際貨物輸送

役職者(リーダー・主任以上)に占める女性労働者の割合
25%以上を目指す

良い仕事は良い環境で生まれる

代表就任当初から変化したことは何ですか

人です。普通のこと、当たり前のことがだんだんできるようになってきてますね。以前は拠点間のコミュニケーションもなかったんです。そこで各拠点の女子会を企画して「どうしたら働きやすくなるか、どうしたら改善されていくか」などを話し合ってもらいました。こうして少しずつ自分たちで会社を良くしていく意識が出てきました。もちろん所長たちの連携も会議という形で活動の報告や情報共有を図っています。残念ながら新しい体制についていけず去った人もいます。致し方ない部分もありますが、人が辞めるということは、経験者のノウハウ流出になるので、サービス品質、輸送品質や安全運航のレベルなどの低下にもつながります。今後は採用とともに教育、評価の仕組みづくりにも力を入れていきます。

生産性を上げるために具体的に取り組んだことは何ですか

私たちは海外(空輸)の仕事もしているのですが、例えば空港への搬入の仕事があったとします。トラックで運んだあと、空港の関係で倉庫への搬入時間に空きがある場合、待ち時間が発生します。これは完全にコストのロスなんですね。そこでシフトを見直し、トラックの運送と搬入で担当を分けムダ時間を削減しました。こういった改善点を探してつぶしていくわけですが、運送業が労働集約型産業なので、労務改善と収益性向上という矛盾とは常に向き合わなければなりません。そのため、各拠点ごとに配車の精度を高めることも重要ですし、付加価値を生む設備投資も重要になります。競合に優位性を持って、安定的に仕事を請けるためにも特殊車両や重機など独自性を打ち出すことも大事ですね。

会社の方向性をどのように社員に示していますか

「将来こんな会社になろう!」というようなビジョンを打ち出すのは、実はしていません。それが必要ないということではなく、今はこれまでの運送業の概念を変え、普通のことを普通にやれば勝てる!という土台を作っている段階なので、責任者と数字の話や計画の実行などは細かくやり取りすることに力を入れています。この10年の中で自分がやって見せたり、繰り返し指導して主導してきましたが、少しずつ自分たちで考えるようにもなってきています。あくまでイメージですがあと5年くらいしたらしっかりした軌道に乗って引退できるというような状態をつくっていきたいですね。その後、社員たちがどんな会社づくりをしていきたいか、というビジョンを掲げていくことはとても大事だと思いますし、楽しみですね(笑)。

平和運輸株式会社・日本航運株式会社 営業本部長 三井雄大

今回紹介する三井雄大氏は、平和運輸㈱の次世代マネジメントを期待され、現在狭山営業所の所長であるとともに、営業本部長として狭山エリア、群馬エリアの統括を任されている。同氏が入社した背景に、亡くなった父が生前働いていた会社であること、そして代表である澁澤社長から業界を変えていきたい、という強い思いに共感したことがある。そんな同氏が大切にしてきたことは一つ、「人を想うこと」。その想いを胸に、営業本部長として、そして狭山営業所長として拠点の運営とともに、同社の次世代組織づくり取り組んでいる。本取材では三井氏から同社がもつ魅力や目指す方向について伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

中小企業のコア人材となる

三井氏は、大学卒業後、大手乳製品メーカーの営業として就職する。徐々に実績も上げ、いよいよ活躍の場を広げる中で父親の急逝があった。「実は、この会社は亡くなった父が生前働いていた会社だったんです。」と語る。そして同氏のお父様が亡くなった際、平和運輸の社長を務めている澁澤社長と話す機会があり「三井君、良かったら一緒に働かないか。」そう声をかけられ、中小企業のコア人材となって事業を動かしていくことの面白さを聞いたという。亡き父が働いていた会社ということで、同氏としても縁を感じていたのかもしれない。そのあと押しもあり入社することとなった。免許を取りドライバーの現場も経験するが、早くから営業活動そして、配車、傭車などマネジメントの業務に取り組み澁澤社長とともに、“運送業”の通説に捉われない拠点運営を進めている。「社長から、業界に風穴を開けたい!なんて話も聞きます。最初はとても難しいことと思いましたが、着実に変化してきていますね!」と嬉しそうに語った。

一番大切にすべきは「人」
モットーは「楽しくやっていくこと」

三井氏が何より大切にしていることは「人」だという。営業所長になったときに、改めてそれを強く意識した。「ドライバーや社員がしっかり働ける、そして生活していける環境をつくること」これが同氏のやりがいだ。特に運送業は人が利益を生み出す事業であるからこそ、人のことを想うことは当然だったという。その環境を実現するために、労務管理の徹底や売上の目標の達成に向けて様々な取り組みを進めながら、同時に職場での雰囲気づくりにも注力した。まずはコミュニケーションを良く取ること。その土台をつくるために、自分は決して愚痴は言わないことを徹底しているという。そうして、コミュニケーションって楽しい、という雰囲気を作り、さらに同じやるなら仕事をもっと楽しくやっていこう!と自ら実践した。こうした結果、徐々に社員たちにも波及していっているという。今後は拠点間や他の営業所にそうした雰囲気・環境づくりを伝播させていくことが同氏の役割だ。

矛盾との戦いの中で

「ドライバーの方々が、大手企業と同じような環境で働けるようにしたいですね」三井氏は言う。運送業は、長時間労働かつ不規則な労働状況で働くことが多いことから、働き方改革が特に必要だと言われてきた。2019年以降働き方改革関連法が順次施行されてきたが、短期間での環境改善が厳しい業界であることから、運送業や建設業、医師などで2024年まで一部適用に猶予が与えられているという「2024年問題」。業界に先駆けてこの問題に挑戦している同社が目指すのは、大手企業に遜色のない働きやすさの提供だ。しっかりした営業計画と効率的な配車、そしてドライバーの教育など・・・。これらを総合的に進化させ拠点ごとに利益の最大化を目指す。こうして労働時間の削減と利益の向上という業界が持つ矛盾に対して、思考錯誤しながら現場レベルでの改善に挑戦し続けている。こうして2024年問題に対し先駆けて取り組んできたことで、既に十分な達成の見透しが立っているという。

わかりやすく漫画にまとめた
オリジナルのドライバー教本!

2022年3月に移転・新設した
群馬営業所

平和運輸は食品や冷凍製品の
運送を得意としている

会社を変え、業界を変える!

営業所間の連携はどのようなものですか

平和運輸には、狭山営業所の他に群馬営業所があります。最近では一緒に会議を行うようになり、コミュニケーションも活発になってきました。平和運輸、日本航運全体での会議もありますが、それとは別に月に2回狭山・群馬で会議を持つようにしていて、私個人としても1日1回は両営業所とコミュニケーションをとるように心がけています。最近は各拠点間での仕事のシェアなども進めており、一緒に仕事ができてきているな、という感じです。また、今後、新規営業所の開拓も考えているのですが、そのためには狭山営業所と群馬営業所のさらなる協力が不可欠です。狭山営業所はジェネラリストの集団、群馬営業所はスペシャリストの集団であるため、その両者の良さを活かして今後、共に未来を叶えていきたいと思っています。

澁澤社長から学んだことは何ですか

澁澤社長からは、「ドライバーを大切にする」という想いを学びました。社長はドライバーや社員をとても大切にしています。もちろん、その想いが強いからこそ、数字にはとても厳しいです。「仕事が楽だ」とか「給料が良い」といった条件だけだとドライバーは結果としていろんな会社を渡り歩くことになります。実際に業界的には多い事象です。自分が所長としてドライバーに向き合い続ける中で、よりそれを実感するようになりました。しかしそれでは、会社もそうですし、業界の進化・成長はありません。食品輸送の専門業者であるこの会社にとって特にドライバーが成長していくことは重要です。今後もより皆が働きやすい環境づくりに励み、この会社で働けて良かったと思ってもらえるような会社づくりに貢献していきたいです。

三井様が評価や育成の中で意識していることは何ですか

部下を評価する際には「これウチの会社の“あたりまえ”だよ!」ということを明確に示すように心がけています。他の会社を経験している人も多いので、この会社で社員として働くうえでの評価や考えの基準をきちんと示すことはとても大切です。そうすることで社員にとって、上司や所属ごとのズレのない指導や育成が生まれていきます。やはり運送業界にはまだまだ独特の風習が残っているので、平和運輸・日本航運としてそこに風穴を開けていく!というくらいの覚悟もいりますね(笑)。これは澁澤社長も常に言っていることですが、自分たちが、サービス業の考え方をしっかり持った社員の育成を進めていければいけないと思っています。時間はかかりますが、少しずつ変わってきたのかな、という感じですね。

監修企業からのコメント

この度は、取材をさせていただき誠にありがとうございました。業界の常識にとらわれない挑戦姿勢で会社を大きくしていくこと、そして働く人をなにより大切にすること。そこに強い信念を持って改革を進める澁澤社長や三井所長に大変感銘を受けました。貴重な機会をいただきありがとうございました。

掲載企業からのコメント

今回の取材で、自分が10年やってきたことを改めて振り返ることができました。社員が皆もっと自分の業界に縛られず、良い会社にしていこう!と思えばもっともっと進化できると思います。日本航運、平和運輸ともに強みを活かして変化に対応できる会社として成長していきます。ありがとうございました。

平和運輸株式会社/日本航運株式会社
1972年06月 【日本航運㈱】会社設立
1973年01月 【平和運輸㈱】会社設立
1973年12月 【平和運輸㈱】一般区域貨物自動車運送事業免許取得。
              東京都世田谷区で運送事業開始
1974年06月 【日本航運㈱】一般区域貨物自動車運送事業免許取得。
               千葉県市川市で運送事業開始
1979年10月 【平和運輸㈱】東京都大田区羽田旭町に営業所開設
1984年03月 【平和運輸㈱】運送事業免許に係る事業区域を埼玉県に拡大
1985年02月 【平和運輸㈱】狭山営業所開設
1995年11月 【日本航運㈱】京浜島倉庫(大田営業所)竣工
2003年11月 【日本航運㈱】成田ロジセンター開設
2010年10月 【日本航運㈱】羽田空港営業所開設
2011年01月 【平和運輸㈱】加佐志業務管理センター開設
2013年01月 【平和運輸㈱】群馬営業所開設
2015年11月 【日本航運㈱】東京都大田区へ本社移転。
              旧本社を市川営業所へ機能転換
2017年01月 【日本航運㈱】成田営業所(富里営業所)開設
2018年01月 【日本航運㈱】成田営業所新築移転
2022年01月 【平和運輸㈱】群馬営業所新築移転
創業年(設立年) 1973年1月【平和運輸㈱】
1972年6月【日本航運㈱】
事業内容  【平和運輸㈱】
 ●物流マネジメント事業
 ●拠点間物流マネジメント
 ●ロジスティクス関連業務支援
 ●冷蔵・冷凍輸送業務

 【日本航運㈱】
 ●一般貨物自動車運送業
 ●貨物利用運送業
 ●保税倉庫事業
 ●輸出入航空貨物運送
 ●輸出入海上貨物運送
 ●ロジスティック事業
 ●イベント設営
 ●引越事業
所在地 東京都大田区蒲田本町2-4-2 アクシード蒲田本町6階
資本金 3,000万円【平和運輸㈱】
1,200万円【日本航運㈱】
従業員数 98名【平和運輸㈱】
160名【日本航運㈱】
会社URL

平和運輸株式会社