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カネス製麺株式会社

カネス製麺株式会社 代表取締役社長 大谷聖

夏の代名詞「そうめん」。その中でもっとも有名な銘柄の一つである『揖保乃糸』を製造している企業を知っているだろうか。今回ご紹介するカネス製麺は、『揖保乃糸』を製造している会社の1社。有名なブランド商品を扱える理由は『いい会社をつくりましょう』を体現しているから。当時としては最新の機械製乾麺工場を稼働させ、次に『白き糸の創造と伝承』を目的とした揖保乃糸の製造工場を稼働させてきた。ISO9001やFSSC22000を認証取得し、食品の安全・安心体制を確立。製品開発では軽薄単の時代に大容量商品を大ヒットさせ、ハローキティ、ワンピースとのコラボ商品、トクホのそば、など時代を先取りした商品を開発し続けている。40年以上カネス製麺の成長を支えてきた大谷社長にカネス製麺の歴史や文化について伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

いい会社をつくりましょう たくましく、そしてやさしく

「一生懸命かつ人を大切にできる社員が多く、雰囲気が良いところがカネス製麺らしさですね」と大谷社長は話す。このような雰囲気が作り上げられた理由の1つとして『いい会社をつくりましょう』という社是を掲げていることが考えられる。実はこの社是、農林水産大臣賞など数々の受賞をしている『伊那食品工業株式会社』の社是である。大谷社長が社長就任時に社員旅行として60名で伊那食品工業㈱見学に行き、その社風に感銘を受けたため、許可を得た上で自社の社是として活用しているものだという。大谷社長は「いい会社とは、自分たちがいい会社と思うだけではなく、周りの人からもいい会社と思ってもらえる存在」と言う。いい会社であるためには、一生懸命働いて会社をよりよくすることが必要であり、お得意先様、納入業者様、育ててくれた地域の皆様に「いい会社ですね」と言っていただけるようになるには全ての人を大切にする必要がある。『いい会社をつくりましょう』という社是を大切にしているからこそ、今の社風が作り上げられている。

時代を先取りする

カネス製麺は常に時代を先取りしている会社である。現代の顧客のニーズの流れを捉え、常に時代の先頭を走る商品を創り続けることで盤石な経営が出来ている。時代を先取りできる理由は大きく3つ。「技術力と設備力」「アイデア」「社長の考えの浸透」である。そうめん、ひやむぎ、うどん、そば、中華めんなど、麺であればなんでも製造できるというレベルの技術力と設備力がある。また社長の考えとして、商品開発は「人のまねをしない、人のやらないことをやる」「商品の評価はお客様に聞くもんや」「失敗は失敗として次の栄養とすれば良い」とする。軽薄単の時代に逆転の発想での1㎏大容量商品をヒットさせたことを筆頭に、キャラクターとのコラボ商品、トクホ、栄養機能食品から現在の機能性表示食品開発とあらゆる挑戦を続けている。
「多品種、少量生産」を軸に2021年現在では麺類だけで150種類以上もの商品を手がけているのだ。

未来に向けて国内需要の創造と海外市場の開発を進める

「『そうめん等乾麺の販売について新しい商品の開発を進めること』と『海外市場の開拓』の2点に力を入れてゆく」と大谷社長は話す。そうめん、うどん、そばなどはパスタの台頭によって需要は減少している。そのため海外戦略を大きな柱として、アメリカ、タイ、中国、台湾の国際展示会に参加し北米、オセアニア、東南アジアの市場調査をしてきた。結果的に、売上の10%まで海外比率が上がったが、近年コロナ禍の影響で5%に半減した。海外はまだまだこれからの市場と見ている。マーケットを変えることによる対応だけでなく、新しい商品を開発し、新たな需要を生み出すことで国内の生き残りにも力を入れる。地場産業である「揖保乃糸」「機械製乾麺」の時代対応を続けてゆくという。「カネス製麺はこの先100年以上続く企業と思っていますし、そのための生き残り戦略は本当に大切ですね」と大谷社長は次世代以降の未来までも見据えている。
軽薄単の時代に
逆転の発想で開発!
大ヒットした1キロの大容量商品『いぼ川』
カネス製麺が
いい会社であり続けるために、
社是などが事務所に
掲示されている
『揖保乃糸』をはじめとする
そうめんは
この工場から
生まれている

カネス製麺が「いい会社」であるために

仕事をする上で大切だと思うことを教えてください

「持ち場持ち場でプロになることと会社全体の視点を持つこと」「なぜ?どうして?どうするか?を常に持ち、変化に敏感になることと変化に対応すること(昨年と同じことをしていたら置いて行かれる、思い付きでも良いのでチームで挑戦する)」
1986年に取締役になり、そこから常務、専務、社長と会社の経営に携わってきました。専務になって以後、毎朝一番に社員に「ちょっといっぷくメール」を流しています。一般紙、業界紙から得た情報を4~5つをメールで配信しています。情報を得ることはプロとして非常に大切です。
常々、会社経営は「運8割努力2割」と思っています。8割の運を掴むためには2割の必死の努力が必要です。経営に携わって30有余年色んな運を掴んできました。

人を育てるために大切にしていることを教えてください

今、アメリカでは「Ohtani can do it all」でMLBが沸いていますが私の入社時『中小企業のトップは、なんでもできなければならない』と言われ仕事に励んできました。営業から経理などすべての業務を自分でこなし、前ばかり見てきました。振り返ると人が育っていない、「トップが何でもする」は時代にそぐわなくなっていました。権限を委譲することが人を育てる上で大切なことです。権限を委譲して社員が自分の手でチャレンジをする機会を提供し、「自分たちで考える」ことを進めています。業界では珍しい非同族会社で事業継承はあまり考えなかったのですが、この度株式会社神明のグループ会社となり、事業継承も進めています。私の役割は経験でつかんだ知識を次世代の参考とできるように伝えることと考えています。権限の委譲と、自ら考えて行動することにより、働きやすい環境になってきたのではないかと思います。

会社の価値観を浸透させるために行っていることを教えてください

『いい会社をつくりましょう たくましく、そしてやさしく』の社是、『会社の永続 社員の幸福 社会に貢献』の経営理念は、事務所と大会議室に掲示し、会社の価値観の浸透、情報の開示、学びの提供をしています。会社は社員のためにあるものとの考えから、毎年決算賞与の支給をしています。その際に社是、経営理念の意味、また今年の反省と来年の目標を書いた手書きの手紙を封入し、会社の価値観を浸透させています。また、盆休み前と年末には全社員向けに社外講師による勉強会と、業績発表、クレーム情報、各部署及び委員会の反省、目標、取組などの発表を行うことで情報を開示しています。これらの活動によって少しづつでも前向きに意識を変えた、お客様へ『心のこもった商品づくり』を目指しています。

後継者として
社長と自分の良さを融合する 

カネス製麺株式会社
専務取締役 営業部長 内山修明

カネス製麺の親会社にあたる株式会社神明。取扱量国内トップレベルの米穀類から青果、水産物、小麦、砂糖、乾麺など、幅広い商材を取り扱っている企業。現在、カネス製麺の専務取締役である内山氏は、株式会社神明の食品部門で部門長を担い、その手腕をふるっていた。2020年6月より、カネス製麺次期代表候補として経営に参画し、2022年5月に社長就任を予定している。現在は、営業を統括していく立場である営業部長としてカネス製麺の成長を営業的な側面からも支えている。歴史ある企業のこれからを背負うこととなる内山氏に、カネス製麺で働くことで得られるやりがいや今後の目標についてお話を伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

自社で開発・製造したものを売る

「いつか職人のような仕事がしたい」その思いを胸に会社を選んだ同氏。そこで、卸事業を営む神明へ入社を決意。お米を中心とした営業活動から産地の仕入れなど幅広い仕事に携わってきた。卸という仕事柄、自分で仕事をつくりだしていくことにやりがいを感じていた内山専務は「もっと川上の開発や製造の部分から携われる仕事をしてみたい」とさらに難易度の高い仕事ができるチャンスをいつのころから無意識に探していたそうだ。カネス製麺への入社は、そんなチャンスを感じ取ったからなのかもしれない。現在は数名の社員を部下として預かり、前職でやっていた営業セクションとは全く異なる方法で、全国的に有名な『揖保乃糸』や自社の製品を普及するべく奮闘している。「今の仕事に誇りを持っているからこそ、長く乾麺の仕事に携わり、自分のスキルを高めていきたい」と未来を見据えている。

自社の製品をお客様の棚へ

「自社のオリジナル製品か、揖保乃糸のように製造の権利をいただいている製品かは関係なく、自社の製品をお客様の棚に並べる仕事であることに誇りを持っている」と語る内山専務。自身が営業としてお客様に製品を届けていくという役割を果たす中で、前職では仕入れた商品を卸すという営業をしていたが、カネス製麺では自社で製造したものを販売するという営業をしている。自社で製造した製品とは、社員が失敗を繰り返しながらも、汗水たらして商品開発や製造をしているもの。内山専務は社員の頑張りを正解にすることができる仕事であることに誇りを感じているそうだ。特にカネス製麺は、自社のオリジナル商品の開発を続けている会社である上、揖保乃糸という有名ブランド商品を製造する権利を持っており、あらゆる製品を自社で製造して販売しているため、社員の頑張りを正解にするという点はより強く感じられるという。社員の頑張りや想いを背負い、あらゆる場所にカネス製麺の商品を並べるとともにより多くのお客様の口へ届けていく。

社長と自分の良さを融合する

「現在の目標は大谷社長が築いてきた良き文化と私が積み重ねてきた経験を融合し、新しいカネス製麺をつくっていくこと」と話す内山専務。そのためにまずやらなければならないことは、大谷社長からしっかりとバトンを受け取り、カネス製麺の文化を残すことだと考えている。今は大谷社長とより多くのコミュニケーションを取り、大谷社長との意思疎通を行っていくことが必須であると同時に、社員とも関わっていきたいという。また、大谷社長は比較的管理系の業務が強く、内山専務は営業系に強みがあるため、管理と営業という両輪をこれから限られた時間の中でしっかりと回すとともに、大谷社長が抜けた後でも安心して両輪が機能する状況をつくっていきたいと考えているそうだ。仕事上の夢ではないが、10年ほど前から始めたゴルフの腕を磨くことも一つの夢。兵庫県は千葉に続いて2番目にゴルフ場が多いところ。内山専務は、ゴルフで高スコアを目指すという楽しさも大切にしながらカネス製麺の文化をつくっていく。
入社直後から社員と
関係性を築いた内山専務
入社から2年弱ながらも
絶大な信頼を得ている
まごころを込めた
丁寧な梱包作業の様子
そうめんは細いため、
丁寧さが本当に大切!
業界初!
キャラクターとのコラボ商品
ハローキティやワンピースと
コラボを実現

自分にしか出せない価値をつくる

ご自身の役割について教えてください

私の前職であり自社の親会社である神明に在籍していた際のつながりを生かし、カネス製麺の商品の幅をさらに広げていくことが私の役割だと思います。神明グループは食品関連の企業が多いため、グループ内の企業と提携した取り組みを進めることができます。自社にはない良さを他社から取り入れてこそ、お客様の喜びを追求できますし、自社の成長にもつながります。現在は、神明本体のみならず食材の宅配のショクブン様、雪国まいたけ様などと連携しています。商品開発をすると同時に、管理栄養士が監修したレシピを紹介するなど、麺をどのようにして食べたらおいしいのか、栄養を取れるのかまで追及し、乾麺の需要拡大を図っています。自分が源となり、他の乾麺メーカーにはないカネス製麺独自の強みをつくっていくことが私の役割ですね。

カネス製麺の文化について教えてください

1年ほど前までは他社で働いていたからこそ、日々新しいことにチャレンジし続けているところがカネス製麺の文化であり強みであると心の底から思っております。前職は、卸としての仕事であったため、良い商品を選んでお客様に提供するという仕事でした。それに対してカネス製麺はメーカーであるため、自分たちでよい商品を開発していく必要があります。そのため「お客様に喜んでもらうにはどんな商品をつくれたら良いのか」を追求し続けており、それがチャレンジを続けられる秘訣なのだと思います。開発は失敗の方が多い仕事であり、お客様に買ってもらうまで良い商品かどうかはわかりません。だからこそ、失敗を恐れずにまずは商品を開発して、売ってみるというチャレンジする文化が根付いていますね。

カネス製麺を受け継ぐ身として今の想いを教えてください

カネス製麺を受け継ぐ身として、揖保乃糸というブランドと、自社のオリジナル製品という2つの武器を更に強化していきたいですね。商品とは会社の顔。私は、カネス製麺にしかできない価値を構築していきたいと思っております。そのためにはあらゆる強みが必要です。揖保乃糸の製造と販売を認可されている数少ない企業であること、自社ブランドでは積極的に商品開発する文化があること、神明グループの各社との連携が図れることというあらゆる強みを生かして進めていきます。また、社是である「いい会社をつくりましょう」を先頭に立って実践することで、当社の社員が「カネス製麺の社員で本当に良かった」と思えるような会社にしていくことが私の最終目標です。

監修企業からのコメント

取材をお受けいただき、誠にありがとうございました。
100年以上続いてきたカネス製麺の伝統や、コラボなどの新しい取り組みを伺い、失敗を恐れずにチャレンジしてきたという大谷社長の姿勢に大変感銘を受けました。
自社製品の開発がさらに進み、発展していくカネス製麺に目が離せません。

掲載企業からのコメント

取材していただき、誠にありがとうございました。
自分たちにとって当たり前になっていることを取材を通じて言語化することができて、私自身、気が引き締まりました。会社としては今が転換期でありますし、ここで話したことを実現するべく、日々の努力を続けてまいります。

カネス製麺株式会社
1907年 菅野商店として創業
1935年 カネス製粉製麺株式会社として設立
1954年 カネス製麺株式会社に商号変更 製粉業を廃し、製麺一本化
1972年 兵庫県手延素麵協同組合の組合員となり手延素麺『揖保乃糸』の製造に参画
1986年 機械乾麺工場竣工、(小麦粉サイロ、自動製麺ライン熟成装置、自動乾燥装置)
1988年 そうめんの貯蔵・配送倉庫完成。貯蔵と配送の合理化をはかる。1kgの大容量商品『カネス揖保』を発売(後にいぼ川に改名)
1990年 増資 資本金5,000万円 機械乾麺工場の空調設備導入 揖保乃糸ギフトの自動ギフトライン導入
1991年 そうめん熟成倉庫完成
1996年 機械乾麺自動包装箱詰ライン完成
1997年 移動ラック倉庫及び作業場完成
1999年 株式会社サンリオと版権契約 業界初キャラクタ―商品としてハローキティそうめん販売開始
2001年 決算期を毎年3月31日に変更 乾麺自動包装ライン新設 東京連絡所を開設
2002年 ISO9001認証取得。(5月13日) 食品工場としての品質保証体制を確立する
2003年 揖保乃糸ギフト第2自動ライン及び乾麺自動包装ライン増設
2006年 乾麺工場パレッタイズシステム新設
2007年 乾麺自動包装ライン2ライン増設
2010年 立体自動倉庫新設
2012年 乾麺HACCP認証取得(3月22日) ISO22000:2005認証取得(4月2日) FSSC22000認証取得(11月14日)
2018年 株式会社神明のグループ企業となる(8月31日)
2020年 日本橋小網町に東京営業所を移転
創業年(設立年) 1935年
事業内容 ・麺類の製造並びに販売
・乾麺の委託加工
・その他食料品の加工販売
・前各号に付帯する一切の業務
所在地 〒679-4315 兵庫県たつの市新宮町井野原212-4
電話:0791-75-0006
FAX:0791-75-0342
資本金 5000万円
従業員数 52名
会社URL

カネス製麺株式会社