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オグラ金属株式会社

オグラ金属株式会社 代表取締役社長 小倉勝興

栃木県足利市。のどかな田園風景の中に大きな工場を構え、金属加工の未来に挑戦する会社がある。それがオグラ金属株式会社だ。そのルーツは当時最盛期であった繊維業。そこからまったくの異業種であるプレス業へ転身したことが、今の土台となり、創業100年を迎える。戦後はグループ会社を数社設立して金属加工の幅を広げていった。1993年に市内の4工場を、この足利東部工業団地に集約した。その結果、様々な金属加工を一貫して行うことができるようになり「金属加工で、できないものはない」を合言葉に事業を進めている。主要得意先の事業撤廃、リーマンショック、東日本大震災、台風19号という困難を経てきた背景にある、設備力と人づくりについて、小倉勝興社長にお話を伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

「家族のような関係」が会社を進化させる

「社員は、ファミリーなんですよ」と嬉しそうに話す小倉社長。同氏が社員に対してジョークを言う様子から、フラットな社風であることがよくわかる。しかし、昔は社員が生き生きと発言できる社風ではなかったそう。特に三代目の社長小倉光司は、超がつくほどのトップダウンで会社を大きくしてきた。小倉社長にバトンが引き渡されてからは、時代の変化に伴い、社員一人ひとりの声に耳を傾けようと取り組んできた。その一例が、経営品質活動と足利流5S活動だ。同社の5S活動では、社員の遊び心を大切にし、見える化だけでなく「魅せる化」も意識している。継続していくには、社員一人ひとりが楽しく、自発的に取り組むことが重要だと語る小倉社長。様々な取り組みにより、社員が胸を張って発言できるフラットな関係が確立され、小倉社長の言う”ファミリー”となったのだ。ただやらされる仕事ではなく、自ら考え相談し、改善を繰り返すことで確かな品質を確立し、お客様からも厚い信頼を得ているに違いない。

「金属加工で、できないものはない」ほどの対応力

「金属加工で、できないものはない」という合言葉のもと、同社では驚くほど幅広い製造技術と設備を持っている。鉄、アルミニウム、ステンレスなどのプレス及び板金を主軸とした加工。そして、溶接、塗装、組立、など一貫した生産体制を持ち、”金属加工のショッピングモール”と言われている同社。現在は、自動車、アミューズメント、環境関連商品、鉄道車両という、求められる特性が異なる4つの事業領域のお客様を持っている。「こんなに多種多様の設備を持っているのか、と、よく驚かれます」と小倉社長は誇らしげである。初期投資が膨大にかかる製造業の中で、一貫した生産体制が整う企業は稀である。それに加えて、同社には設計部門もあるからこそ、単なる下請けに終わらず、災害現場や農作業で活用される、探査ロボットを開発することに成功した。高い設備力による一貫生産体制と生産技術及び設計技術を持つことの2つの強みがあるからこそ、幅広いお客様に対応できるのだ。

設備力を通じた製品開発

三代目社長の「これからの時代は開発が大事だ」という言葉が、現小倉社長の事業拡大の芯となっている。同社では、テックラボという研究開発の専任チームがあり、開発技術専門の社員が複数所属している。現在は、どのような製品があればお客様の不安を解消できるのか考えながら、製品開発に試行錯誤している。設計についても、お客様から聞かれることもあるというから驚きだ。製品開発を進めていく上で同社が強みとするのは、現場経験の豊富な社員が研究開発をしていること。いくら図面で綺麗に仕上げても、製造工程での障壁が高いと、お客様の元へは永遠に届かない。「お客様の”欲しい”が叶うような特注品の製造を伸ばしていきたい」と目を輝かせる小倉社長。それを叶えるために、現在同社では、試作を積極的に請けている。試作をすることで、お客様の想いを叶えるだけでなく、設計・開発を担当する社員のスキルアップにもなる。高い設備力と新たな技術開発により、不可能を可能に変えていく未来が楽しみである。
グループ3社を集約した
大きな社屋
社員が創る
5Sのテーマパーク
「金属加工で、
できないものはない」
を叶える大型プレス機

人を育てることが、太い幹となり、会社を支える

経営者として大切にしている考え方を教えてください

「一歩下がって華持たせ、相手立てれば蔵が立つ」それぞれの社員が独自の強みを活かして、エキスパートとして活躍してくれることを願っています。弊社が取り組む足利流の5Sは楽しみながら、社員一人ひとりが主体的に取り組むことによって、継続的に改善するようになったんですよね。私が何事も引っ張っていくのではなく、社員一人ひとりが主体的に取り組むことによって、2019年の台風19号では、工業団地全てが水没したにも関わらず、生産技術部門が中心となって社員総出で復旧に当たり、なんと4日後には操業を再開できました。トップダウンも時には大切ですが、社員一人ひとりの主体性が会社をつくるんですよね。

育成について取り組んでいることを教えてください

93年に工場移転を行ってから、副社長小倉乃里子を中心とした人材育成に取り組んでいます。現在までの約30年間、外部の力も取り入れ、階層ごとに教育を受けながらあらゆる業務の改善を日々行っており、社内の階層ごとにカリキュラムを決めて教育課程をつくりました。「プロフェッショナル制度」という制度を設けていて、技術取得に応じて報奨金や手当を支給する仕組みもあります。この教育制度を始めたタイミングで入社し、教育を受けてきた社員たちが、現在、会社の中核を担っているんです。すごく力がついてきたなと思いますよ。今は新卒社員を5~6名ほど採用していますが、今後、小倉常務にバトンパスしていく中で、より質の高い教育になっていくのではと期待しています。

次の世代に期待していることを教えてください

会社の経営は山あり谷ありで大変ですが、今のまま順調に育ってほしいですね。弊社の社員は、本当に素直で良い人たちなんです。150年、200年と続く会社にする上で、一人ひとりの成長がこの会社を木の年輪のように育てていってくれることを願っています。将来、息子である常務へ社長の座を譲り渡しますが、今のオグラとは次元の異なる会社にしてほしいと思います。常務はとにかく会社を良くしたいという想いが強く、私も驚くくらいのスピード感で改革を進め始めています。約300人の会社を支えてくれている社員と共に、時代に合わせて進化していってほしいと思います。部品をつくっているだけでは、いずれ淘汰されてしまうでしょうから、別の新たなチャレンジを続けていってほしいですね。

事業に捉われないオグラ金属の未来への挑戦

オグラ金属株式会社 取締役常務執行役員 小倉賢大

オグラ金属株式会社は、製造業という枠に捉われず、新しい分野へ挑戦しようとしている。その先頭を走るのが、今回お話を伺った小倉常務だ。現在、6代目社長を見据えて同社の未来を描き、それに向けて準備を進めている。同社へ入社する前にはウェディングプランナーという畑違いの仕事を経験し、様々な思いを馳せてきた小倉常務。入社後は努力家な側面を活かし、様々な部署を経験しながら、自ら学んできたことで、今では会社の中枢の役割を担う。その取り組みをそばで見ている小倉社長も、同氏に絶大な信頼を寄せている。小倉社長からバトンを受け取った後のオグラ金属の未来はどう進化していくのか。そのビジョンについてお話を伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

自らの手でチャンスを掴むために

後継者という要因だけで入社を決めたわけではない小倉常務。元々は、京都でウェディングプランナーをしていた。就職活動中、”製造業”から離れたいという気持ちがあったのだ。後継者として父からの期待を感じつつも「自分の興味のある職に就きたい」と、人生の第1歩に畑違いの職を選んだ。仕事をしていく中で、会社員としての大変さを経験し、ある日、経営者への憧れが湧いてきた。「良い会社を自分の手で創り上げたい」 その想いから、関東職業能力開発大学校の生産技術科へ入学しなおし、モノづくりの基礎を学んでから同社へ入社した。入社後は2社の商社への出向を通じて、品質保証業務と営業業務に従事。出向復帰後は現場研修と生産管理などの部署を経験し、現在の立場に至る。自分の意志で後継者という立場を選び、自ら学んできた。現小倉社長から同氏へのバトンパスの準備は着実に進んでいる。既に様々な取り組みを始めている小倉常務は、これからのオグラ金属を新しいステージへと導く存在だと確信している。

部品だけでなく人も組織も”良いものを”

「社員同士が協働して『どうしたらより良くできるか』を話し合う姿を見ると、涙が出てしまうことがあるんです」と小倉常務は語る。入社当初、組織としての課題を感じていたという。トラブルが発生しても、当事者以外は他人事。部門間の対立や責任の押し付け合いがあった。そこで取り入れたのがTOC、制約条件の理論。パフォーマンスを妨げる制約条件に集中して改善することで、全社の業績改善を目指す理論のことだ。 この理論を元に、まずは勉強会を提案し、製造部の改革を進めた。さらに、会社の戦略を幹部全員で考えようと、合宿を開催。 TOCのマネジメントツールを用い、部長と幹部で会社の問題を根本的に解決する戦略を毎年構築していることで、横連携が取れるようになり、社員の考え方がポジティブに変わってきている。「会社が良くなることが、何よりも楽しいんです」と同氏は語る。”会社をより良くしたい”という強い信念があるからこそ、今では社員から認められる存在になっているだろう。その背景には、同氏だけでなく、オグラ金属全社員で改善に取り組んだ姿がある。

個々の能力を最大限に引き伸ばし、自立自走する企業へ

既に同社の未来を見据える小倉常務は、社員一人ひとりの能力を伸ばし、オグラ金属をさらに強くし、成長させることが目標だと語る。その中でも、入社後から継続している社内教育に奮闘中の同氏。個々の能力を最大限に発揮するためにはどうすれば良いか。試行錯誤しながら、勉強会を開催している。現副社長の母がつくった教育の下地を参考に、”社員一人ひとりに見合った人づくり”とは何か、日々社員のことを考えている。 小倉常務が掲げる同社のビジョンは、人を育てる、人を創る会社。「自分たちで十分上手くやれてますから!社長は見守っていてください。って言われたいんです」と同氏は笑う。同氏は現在、管理職の社員を中心に、勉強会を開催している。会社の根幹である上層部が高い視座を持ち、それぞれのキャリアを築くことで、その背中を見た若手も自然と育っていく文化になるであろう。社員一人ひとりが会社を創り上げ、自立自走する組織がもうすぐそこまで来ている。
探査型ロボットの研究開発チーム
勉強会の様子
AIを活用した研究開発

小倉常務が考えるオグラ金属の未来

今後、どんな会社にしていきたいですか?

市場に合わせ、部品加工だけではなく、新しいサービスや、開発を進めていきたいと考えています。とある水産加工業の会社は、昔ながらのやり方から脱却すべく自動化とカイゼンをされておりますが、魚の切り身の数を人が数えていたんです。自動化したくても、大手企業からは断られてしまったとのことで「それでは弊社が」と、去年から開発を始め、ようやく機械が形になってきたところです。弊社の強みとして、電気制御やITシステム開発ができる社員もいるので、0→1で生産できるんですよ。この事例のように、セミ自動化や省力化などの、”中小企業の役に立つ自動化技術の開発”を進めていきたいと思います。あとは、弊社の5Sや社内改善についてのノウハウの提供。製造業のサポーターのようなサービスを始めていきたいと考えています。

働く上で、大切にしている考え方を教えてください。

去年までは謙虚さを大切にしていました。入社してしばらくは色々な改善をしなければと勝手に進めてしまい、社員のことを考えていなかったんです。今振り返ると、社員たちには申し訳ないことをしたなと思います。様々な失敗を重ねてきて、やはりみんなで歩調を合わせることが大事だなと思いました。今はTOCで学んだ考え方を意識していて、物事をシンプルに考え、原因を収束させること。社内間・対お客様との対立は絶対に解決できるという信念。相手へのリスペクト(相手に理由を聞くこと)を大切にしています。これらの考えを意識することで、社内で問題が発生した時にも、指摘する前に「なぜ?」と理由を聞くようになり、不具合の解決も早くなりました。本当に社訓にしたいくらいなんですよ(笑)。

小倉社長はどんな方ですか?

”商人の兄貴”って感じですかね(笑)。私はもちろん、社員から見ても、とても頼れる兄貴なのではないか思います。営業畑でやってきたこともあって、お客様をはじめ、周りの人にとても気が利くんですよね。父からは「社員に対して気を使いなさい」「顔色を見なさい」と、ことあるごとに、よく言われています。今、社長の席が営業の向かい側なんですよ。ある日、若手が営業電話をしている時に、ジョークを飛ばしてフォローしていた姿を見かけました。社員をどうフォローしていくかという部分は真似しないといけないなと思います。時には会議の場でも、ジョークを言って場を和ませるなんてこともあって、そういうところが、社員から慕われる秘訣なのかなと思っています。

監修企業からのコメント

小倉社長、小倉常務。この度はお忙しい中、取材にご協力いただき、ありがとうございました。当日、工場見学もさせていただきましたが、オグラ金属様の強みでもある多種多様な設備を見て心が踊りました。また、5Sのテーマパーク、ありがとうカードの掲示は、社員様の遊び心や温かみを感じられる空間でした。今後も同社の活動が楽しみです!

掲載企業からのコメント

この度は取材をしていただき、ありがとうございました。我々がどのような想いを持ってモノづくりに取り組み、そしてどのように未来をつくっていくか、発信する良い機会になったと思います。 今後、弊社の社員たちがそれぞれの得意分野を伸ばし、さらに世の人のため役立てるよう尽力してまいります。今から50年後、100年後のオグラ金属にご期待ください(笑)。

オグラ金属株式会社
1922年 創業(創業者:小倉徳太郎)
1938年 小倉鉄工所創立(のちのオグラ工業㈱)
1969年 オグラ金属㈱を設立
1970年 サントク電化㈱を設立
1973年 ㈱サンコー製作所(現オーエムシー)を設立
1990年 オグラグループ3社を合併し、新生オグラ金属㈱となる
1993年 足利東部工業団地に新工場を設立し、旧市内に点在した4工場を集約化
1999年 「ISO9002」を認証取得
2000年 「ISO14001」を認証取得
2001年 「ISO9001-2000」を認証取得
2008年 「08年栃木県経営品質賞」優良賞受賞
2010年 小倉勝興社長就任
2013年 メガソーラーを稼働
2013年 タイに「Y-OAT」操業 
2017年 「探査ロボット研究所」開設(現:テックラボ)
2017年 「はばたく中小企業・小規模事業者300社」授賞
2017年 「平成29年度 栃木県フロンティア企業」認証
2020年 「令和2年度 栃木県フロンティア企業 らくらく操作・遠隔探査ロボ(災害救助支援)」認証
2020年 「ブドウの栽培方法及びブドウ栽培用照明装置」特許取得
2020年 JICA「SDGsパートナー制度」認定
創業年(設立年) 1922年
事業内容 ■自動車、アミューズ部品、環境商品部品、鉄道車両部品の金属加工
 ・鉄、アルミニウム、ステンレスの各種機械加工及び溶接
 ・熱カシメ
 ・塗装
 ・組立
 ・ステンレス酸洗  など
■自社開発環境商品の製造
■開発、設計
所在地 〒326-0013 栃木県足利市川崎町1310番地(足利東部工業団地内)
資本金 9,900万円
従業員数 330名
会社URL

オグラ金属株式会社