電子磁気工業株式会社 代表取締役 安積均

「安心と安全」を世界に提供し続ける、電子磁気工業株式会社。同社では金属製品、部品向けの非破壊検査装置や、家電品、自動車向けモーターに使用する磁石向けの着磁装置製造を手掛け、鉄鋼、航空、鉄道、家電など多岐にわたる分野で確かな技術力を誇っている。非破壊検査装置は、製品を傷つけることなく内部の欠陥や異常を検査する装置であり、着磁装置は、モーターや磁石に必要な磁力を正確に与える装置である。今回は、磁気応用分野において大きな影響を与えている同社において2022年に社長を引き継いだ安積社長にインタビューし、社員が誇りを持って働ける環境づくり、業界における挑戦、そして同社が目指している未来について伺った。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
品質と安全を支える確かな体制と文化
同社では「世界に提供する安心と安全」という理念の実現に向けて、全社員が日々の業務に全力で取り組んでいる。なぜなら、時には人命に関わる重要な装置の検査を行う装置をつくっているからだ。新製品の開発では、営業、製造、品質保証の三部門が集まり、製品の仕様や設計内容を徹底的に検討する。その後、審査を経て、顧客に提出する書類を再度三部門で確認し、細部までチェックを行う。昨今の大手メーカーの不正問題が注目される中で、このような緻密な連携が互いの抑止力となり、オーダーメイドの製品を多く提供することに繋がっているのである。こうして完成した製品は、品質保証部門による厳しい検査を経て、初めて出荷される。この工程を踏むことで、決して妥協しない高い品質基準が保たれている。複数の部門が一丸となって品質と安全を守り抜く姿勢は、同社の社風として根付いており、全員が「安心と安全」を世界に提供するという使命を胸に、次なる挑戦に進み続けている。顧客に寄り添う迅速なサービス体制
同社の強みは製品をただ提供するだけでなく、その後のアフターサポートまでを徹底して行う姿勢にある。他社ではアフターサポートを専任で行う拠点が少ないため、修理対応が遅れがちになる。一方で同社は東京、大阪、名古屋にそれぞれサービス拠点を構えており、アフターサポートを専任して行うスタッフが迅速に対応する体制を整えているためにお客様から高く評価されている。この仕組みが世界に「安心・安全」を提供するうえで大きな強みとなっているのだ。また、単にお客様の要望に応えるだけではなく、その一歩先を行く提案型のモノづくりにも力を入れており、自社一貫製造の体制を活かして顧客の隠れたニーズを先取りした製品開発を実現している。この広範なネットワークと迅速なサポート体制が、顧客からの高い評価に繋がっているのだ。製品の品質だけでなく、アフターサポートまでを徹底して行うことで、この会社の独自性を形成しているのだろう。働きやすさが生むモノづくりの喜び
安積社長は「社員が誇りを持って働き、公私ともに充実した生活を送れる環境を提供する」会社にしていきたいと語ってくれた。そのために「仕事中は全力で、会社を出れば心からリフレッシュする」という安積社長自身の理想の働き方を大切にしたいという。そこで同社では、社員が自分の貢献を実感できるよう、報酬面や心理面で個人の努力を適切に評価できるように体制を見直している。また、効率化を図るために協力会社とも密に連携し、会社全体の生産性向上にも貢献している。これにより、社員一人ひとりがモノづくりを通じて達成感を得ることができ、仕事に対する誇りを持てるような環境づくりに繋がっていくのではないだろうか。また、「仕事だけでなく私生活においても楽しみを見つけてほしい」とも語ってくれた。社員思いのこうした取り組みが、一人ひとりを輝かせ、同社のさらなる発展を導く姿が目に浮かぶ。


技術の可能性を広げ、未来に繋げる
経営をする上で譲れないことは何ですか?
先代が築いてきた基盤を守りつつ、最先端を目指して次世代へ繋げていくことです。新しいことに挑戦しながら未来に繋げていくことが私の役目だと思っています。そのためにも社内でリーダーとなる人材を育て、適切な人材が次のステージを担えるよう、社員一人ひとりがやりがいを感じられる環境を整えていきたいです。また、現在取引のある協力会社との関係も大切にしています。業界全体の高齢化が進む中で協力会社に安定した仕事量を発注し続けることで、安心して仕事に取り組んでもらえるようにしていかなければと思っています。私たちが常に最先端を目指すことで業界全体に新しい可能性を広げ、次の時代を担っていける企業でありたいです。社員の皆さんに期待するのはどんなことですか?
社員の皆には、好奇心を持って様々な知識を身に付けることで自身の技術力を常に高めていってほしいと思っています。会社の理念として掲げている「世界に提供する安心と安全」を実現するためには、技術力の向上が欠かせません。そのために、外部のセミナーを受講したり大学教授を顧問に迎えて勉強する機会を増やしています。ここで学ぶ技術やノウハウは学校の勉強とは違い、自分が手掛ける製品に直接反映されます。だからこそ、学ぶことが楽しいと思ってほしいですし、自分が成長していく実感を持ってもらいたいのです。全員がその意識を持って技術力を高めることが会社の成長にも繋がっていくと思うので、全員で一緒に成長していけたらと思っています。業界や社会においてどのような立ち位置になっていきたいですか?
これからも技術の最先端を走り続け、世の中に役立つモノづくりを続けていきたいと思っています。検査装置の世界では未だに傷がついているか否かを人の目に頼っていることが多いのですが、これから求められてくるのは「自動判定」の技術。その技術を搭載した自動装置を完成させるのは簡単ではないですが、AI技術の進歩に期待しています。人口減少や働き手不足を考えると早く実現したい課題の一つです。一方、着磁技術では小型化や高回転化が進むモーターに対応するため、さらに強力な磁石が必要です。そのため、磁場解析という計算ツールを使って強い磁力を持ち、かつ耐久性のある製品をつくれるよう設計を進めています。この精度をさらに上げ、世の中に貢献しながらお客様に信頼される製品を届けたいですね。
何でも可能にするの精神で、 絶対に負けない技術へ
電子磁気工業株式会社 製造部MG課 主任 大久保憲一
現在、29歳となり、新卒で入社してから入社7年目を迎える大久保さん。その大久保さんが現在行っているのはモーターへの着磁の分野。携帯やパソコン、冷蔵庫や洗濯機など身近な商品の材料に用いられる磁石に磁気を入れる着磁装置を扱う。実は磁気が入って初めてこのような製品が動くようになるのだ。そのモーターへの着磁の分野は同社の事業の中でも、現在成長期を迎え、今後の飛躍が期待される分野でもある。その大久保さんは入社以来「負けず嫌い」の心で、時には意見をぶつけ合いながらも、その積極的な行動力で成長し、現在では同社の未来を担うホープの1人として期待されているという。今回は、大久保さんに、同社での思い、醍醐味について伺った。伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
偶然の出会いが負けず嫌いの心に火をつけた
「営業職をやりたいなって思って入りました、でもたまたま受けただけですよ」と語る大久保さん。大久保さんと同社の出会いは、偶然のものであった。就職活動をしていた当時、既に研究室にものを納める仕事の内定を持っていたが、校内での営業の様子を見て、心変わり。大学の就職課からの紹介を受け、当時総務部長であった、現在の児島社長との面接を行い同社へ入社する。そして入社後は、大久保さんの”負けず嫌いさ”が成長を後押しした。「仕事がたくさんあって、追いつかないくらいで、それでも私も負けず嫌いなところがありましたね」「入ったからには、この人がいなくなったら困るなって思われるくらいになりたかった」と大久保さんが語るように、とにかく仕事量をこなしてやって頑張ってきたという。その努力の賜物もあり、現在では同社の成長分野であるモーターへの着磁の分野を任され若手のホープとして活躍を期待されている。同社の未来を担う大久保さんの今後が楽しみだ。とにかくまずやってみる、そして実現した時の達成感
「自分がこうだと思ったことをまずやってみること、そのための仮設を立てて、できた時の達成感が醍醐味だと思うんです」と楽しそうに語る大久保さん。大久保さんの扱うモーターは、作成工程の中でのパワーや感度の調節が何より大切になる。その調節のために、磁気にどれだけ磁束密度を持たせるか、どのような配列にするのか綿密な設計を行っていく。だからこそ、仮設とシミュレーターによる計測の繰り返しが大切であり、その積み重ねにより開発の達成に近づけていく。「あとは、仕事がうまくいって、製品を納めた時に感謝されることですね」苦労して自分の造りあげた製品が形になり、納品され、感謝される。その「ありがとうございます」をもらった際には何にも堪え難い感情が浮かぶに違いない。 また、スマートフォンのスピーカーや車のモーターにも使われるなど実は日常に溢れる同社の商品。自分の扱った製品を垣間見る瞬間もまた、ものづくりに携わる人間として何よりの醍醐味だそうだ。随一の、自分にしかない技術を持つ人材へ
夢は、誰にもできない技術を持った人になること。「会社で特に尊敬している人が上司にいるのですが、知識がすごいですね。だから自分もそうなりたいです」負けず嫌いの思いもきっとあるに違いない。入社当時から抱いている「いなくなったら困る人」になれるよう、積極的に上司と相談をし、関係会社の方と時には激しい意見をぶつけ合いながらも日々、自己研鑽をしている。 「他にも上司のすごいなって思うところが仕事を任す勇気の部分ですね」入社2年3年目の若手であっても積極的に仕事を任せるのが同社の社風。時には、重要な仕事も任されることもあり、逃げ出したい時もあったという。結果うまくいかなかったこともあったという。それでもなお、次も仕事を任せ、若手の成長を後押ししていく。その懐の大きさに感服しているそうだ。「上司に大分助けられましたし、ポイントポイントでサポートをしてくださりますし、すごいなって思います」尊敬するべき先輩のもと、なくてはならない人間になるべく、今日も大久保さんはひたむきに成長を続けていく。


意見や提案をどんどん言うことができる風土が若手を伸ばす
御社の良いと思うところはどのようなところでしょうか。
7年働いてみて感じる良いところは一般社員を含めて、社員から社長までの距離が短いところですね。ワンフロアに全員のデスクがあって、皆のしていることも分かりますし、意見の言いやすさもあります。たとえば、何か問題が起きた時でもすぐに話がいって即時解決していくことは良いことだと思いますし、意見や提案をどんどん言うことができる風土があるのは良いところですね。だから僕自身もすごくモチベーション高く仕事ができますし、勉強になります。他にも弊社は結構、飲みニケーションを大切にしています。社長も参加するんですよ。そういったこともあって、あまり人が辞めない居心地の良さがあるんでしょうね。新卒採用に力を入れているそうですね。
新卒採用は毎年ずっとやっていますね。私達の代も結構しぶとく残っていますよ。新卒採用の良いところとして、やっぱり若い子が入ると空気も変わりますよね。私も1人新卒を教えましたけど、みんな教科書のことは頭に入っていますけど、人に言う事によって理解が深まったり、やれていないことでも、やっていこうってなりますし、良い刺激になります。会社としても、新しい人を入れていかないと次の世代に繋がらないですよね。ベテランが抜けていく中でも技術を伝承していかないと続かないですので、きちんと世代を空けずに人の層をつくって入れて、人を教育して継承していかないといけないですね。これからの会社のために必要なことを教えてください。
会社としては絶対に負けない技術をつくりたいってところがあるんですよね。 そのためにも、「何でも可能にする」という精神でやって、お客様の難しい要求に対しても、こだわってやってきちんと応えていけるようにしたいですよね。それが会社を成長させていくと思います。それに、お客様から要望をいただいた時に、頭ごなしに「できない」と言ってしまえば、失うチャンスもあると思います。だから、お客様からの要望があればきちんとデータを集めて、できない時でもできない理由を伝えられるようにしていけるようにやっていますよね。 データを出すことでお客さんも納得してくれますし、信頼感も築け、次に繋がると思います。電子磁気工業株式会社
1957年 東京都港区にて創業
1958年 本社を東京都渋谷区に移転
1959年 大阪営業所開設
1961年 名古屋営業所開設
1993年 製造部を東京都北区に移転
1994年 本社を東京都北区に移転
1995年 海外営業部開設
2003年 上海に合併会社設立
2017年 上海合弁を解消
1958年 本社を東京都渋谷区に移転
1959年 大阪営業所開設
1961年 名古屋営業所開設
1993年 製造部を東京都北区に移転
1994年 本社を東京都北区に移転
1995年 海外営業部開設
2003年 上海に合併会社設立
2017年 上海合弁を解消
創業年(設立年) | 1957年3月 |
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事業内容 | 非破壊検査装置、着磁・脱磁機器、磁気計測機、その他磁気応用製品および関連消耗品の設計・製造・販売 |
所在地 | 東京都北区浮間5-6-20 |
資本金 | 3,600万円 |
従業員数 | 80名 |
会社URL |
監修企業からのコメント
この度は取材にご協力いただき、誠にありがとうございました。貴社の徹底した品質管理体制と安積社長の社員にやりがいを提供する姿勢に感銘を受けました。電子磁気工業様の活躍に今後も注目してまいります。
掲載企業からのコメント
この度は取材をしていただきありがとうございました。我々が大切にしているモノづくりへの想いについて知っていただく良い機会になりました。「世界に提供する安心と安全」という理念を胸に、磁気業界において最先端を目指し続けていきたいと思います。