株式会社Metaplant 代表取締役CEO 平井達矢
精密板金加工において、第二創業を決意し、サービス品質を圧倒的に高め、ブランディングを進める企業がある。それが株式会社Metaplantだ。2020年10月に社名を新たにし、ベンチャーマインドを持って“これまでの慣習”に捉われない、本質的なサービスを形にして業界で注目を浴びている。
“お客様目線で考えたとき、必要だと思った。そしてやってみたら、業界ではほとんどやっていなかった”と徹底した顧客満足の視点から改革を断行し、成長フェーズに入った同社。
今回は、上場を視野に入れ10年後のビジョンに向けて高い視座とスピード感を持って、組織改革を強烈に推進する平井CEOに話を伺った。
“お客様目線で考えたとき、必要だと思った。そしてやってみたら、業界ではほとんどやっていなかった”と徹底した顧客満足の視点から改革を断行し、成長フェーズに入った同社。
今回は、上場を視野に入れ10年後のビジョンに向けて高い視座とスピード感を持って、組織改革を強烈に推進する平井CEOに話を伺った。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
ゼロからマインドを形成する
同社には19歳から80歳までのスタッフが在籍し、年齢、性別、国籍、キャリアが多様だという。平井CEOは入社後5年間で各現場業務とマネジメントを経て改革の礎を築き、その後5年間で成長発展の基盤づくりに取り組んだ。そして2020年10月にM.H.MからMetaplantと社名を変更し、モノづくり企業として新たな考え方を発進した。理念として、“金属加工の力で世界を変える”、そしてビジョンに“業界で最も標準化した工場になる”と“業界で最高のサービスを追求する”と謳い、業界のトップ水準を目指すことを掲げている。
平井CEOが大事にするマインドは、唯一無二のサプライヤーとして“すべてはお客様のために”とした。これは会社の存在意義ともいえるので“できるできない”ではなくて“やるかやらないか”ということになる。過去、時には平井CEO自ら、ネガティブなスタッフに対してオペレーションを実践してみせて、これまでの慣習にとらわれない思考を啓蒙した。そういった指導を幹部から一般社員まで10年かけて行い、今、組織として新しいスタートを切った。
当たり前のレベルを上げる
1日の業務が8時間なら、24時間稼働すれば3倍の生産となる。という単純な発想も、現実には様々な障害があり、実行できる企業は少ない。しかし、平井CEOは顧客目線で考えたとき、“自社に託された板金加工のサンプル出しが遅れればその分先方の業務が止まっていることになる”と考え、「もし、今日頼んだものが1週間かかる会社と2日後にできる会社があれば結果ははっきりしてますよね」と体制の見直しを進めた。単に従業員に負荷をかけることではなく、勤務のシフト、設備の自動化、協力会社への要請など、合理的に“できること”を積み重ね、結果として圧倒的な短納期化を実現した。もともと同社は精密板金機器の領域で、航空・自動車・建機・食品・医療・半導体などあらゆる分野での経験があるが、それらの“なんでもできます”というのはこれからの時代の満足ではない、と考え、工期・品質およびサービスの領域において当たり前のレベルを圧倒的に高め、独自のポジションの獲得に成功した。町工場から上場企業へ!
上場を見据え、10年計画で100億円企業を目指す、という同社。これは夢物語でもなく、精密板金加工の企業として平井CEOは命題のように考えている。「板金加工といわれる業界の市場は13兆円。そのパイを5万社でシェアしているのが現状」と語り、中小零細が乱立している状態では、企業も業界構造も長く続かないという、危惧がある。今後ますますロボット化は進むので、資本力がある会社が伸びれば業界そのものが変化していき、それに対応できなければ生き残りも難しいという側面も持っているという。そのために、今は「自動化と安定化によるコストと品質の維持向上」を全社を上げて進めている。当然設備投資が必要で、融資も含め資金調達を円滑にするうえで上場が望ましい、というリアリティある展望だ。
10年計画を推進し、ビジョンを実現するために年度ごとの営業戦略とともに、供給力(生産拠点)の拡大に向けた具体的な取り組みも綿密に練られた中で、着実に実行し続けている。
決起大会で会社のビジョンを発進
2020年10月社名をM.H.MからMetaplantへ!
活発に意見が交わされるミーティング
“ものづくり”を牽引できる企業へ!
思い切った改革を推進していますね
何かを断行したというよりは、どうやったらお客様の役に立てるか?という観点から一つひとつ積み上げたイメージです。金属加工は装置産業で設備も日進月歩で進化します。そういった中、技術での差別化は難しく、当社はサービス領域で特化する…、つまりお客様が仕事を出しやすくすることにこだわりました。例えば、見積もりやサンプル製造のスピード対応や、注文いただいた製品の状況が常に見えるようにする、など発注する立場から様々な見直しをかけています。この点について正直に言えば、社内の反発もありましたし、協力業者の見直しもしました。会社ももちろんですが、業界を良くしていく上でもサービス面を強化する重要性ははっきりしていましたので、幹部層や一般の採用も含め、会社のマインドに共感できる人材確保、教育には大きな投資をしています。私自身がブレないことが最も大事ですが、ここ10年でようやくその層ができつつあります。
経営者としてのご自身の学びはどのようなものでしょうか
ビジネススクール(大学院)での学びが大きいですが、その他は本ですね。入社した当時はリーマンショック明けで、それどころではなく、がむしゃらに業績回復の動きをとり、やや落ち着いた段階で、自身の学びの場をつくりました。ビジネススクールではケースワーク等が多く、その点は今でも活きています。もともと父は一度も“会社を継げ”といったことはなく、私が前職で転職を考えているとき、たまたま両親が事業をたたむというので、引き継ぎました。そして同じやるならゼロベースで創業の視点も持ってチャレンジしたいな、と考え入社しました。溶接加工以外の業務は一通り経験しています。あとは、顧客目線で考えて、欲しい⇒できない⇒できる方法はないか、という当たり前の流れを考え続けていますね。
今後のMetaplantのチャレンジを教えてください
板金加工業において、売上規模が10億円を超える企業は1,000社あるかないかくらいです。100人以上の規模も少ないですね。まず、今後1~2年でその壁を突破します。新しい製造拠点も近隣で増やし、数年後は地方にも大型製造拠点を構想しています。営業による受注拡大と製造キャパの向上の計画は推進していますので、あとは組織と人材面の拡充ですね。具体的にはやはり階層、職種別の教育で、幹部・リーダークラスへの情報共有や会議など、意義のあるものはアナログなコミュニケーションでも敢えて時間を割いています。最近では外国人向けの教育体制も社内でできつつあります。日本語教師の資格を持った人材が社内で勉強会を実施するといった形ですね。まだ、社員全員私が把握できる状況ですが、近い将来この分野も任せていく状況をつくっていきますよ。第二創業への改革を支える 生産技術のエキスパート
株式会社Metaplant 生産本部CTO 大河内望
大河内CTOは大手メーカーにおいて、国内外の製造現場を経験し、研究開発・設計・量産まであらゆる分野を経験しているものづくりにおけるエキスパートだ。業歴40年として、自身ではそろそろ引退も考える中、平井CEOに会社の改革の一翼を担ってほしいと請われ、生産本部を統括し、新しい体制づくりをまい進している。
まだ、町工場のような板金加工業特有の現場を“精密板金の分野”に特化させるべく、辣腕をふるっている。
今回はそんな大河内CTOに同社の現状と可能性について語っていただいた。
伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い 思い
トップの思いに共感
大河内CTOは製造工程において、秒単位で工程を調整し、生産性を高めるコントロールが得意分野だ。同社の自動化に向けた製造部門全体の改革を推進する役割としてご縁があり入社したという。典型的な理系のタイプで語り口調はおとなしいが、ものづくりに関する思いはとても強い。平井CEOから「自分の会社が町工場に見られるのが悔しい」という言葉を聞き、変革に向けたアグレッシブな姿勢や常に新しいことを考え実行する姿勢に共感し、全力で臨むことを決意した。 大河内CTOは過去、製造業において“時間・コストよりいい製品をつくろう”という技術部門と、“合理化・生産性”を重視する現場の両方を経験しているので、それぞれの視点で改善点を指導できるという。まずは、経験や入社経緯が様々な現場スタッフとの日常的なコミュニケーションを強化し、同社の考え方や製造業における基本的な考え方を指導し、加えて現在はマネジメント層の育成に力を入れている。現場のショールーム化へ
精密板金の分野でシェアを拡大していくためには、食品や医療などのある程度の規模を持った顧客へのアプローチが必要になるが、大河内CTOは厳しい目を持って、現段階の環境やスタッフの意識では、お客様に十分満足していただくための課題が残っているという。それを大きく、かつ段階的に変えていくため、工程をブースで区切りクリーン化の取り組みを進めている。過去の工場巡検の経験から直接的な改善指導だけでなく、そのノウハウを現場リーダー主導で実践し、5Sを含む環境保持が定着することを目指しているものだ。 そういった積み重ねから、新工場も含めた現場全体をショールーム化し、同社のブランディングにつながるレベルまで引き上げる構想を持ち、その実現に向けたチャレンジが大河内CTOの日々やりがいとなっている。 「これまではOJTに依存した領域もありましたが、現場の自動化/標準化が進むことで教育のカタチも変化してきます。この点は経営管理本部と連携して進めていきたいですね」と、これからの方向性も語った。社長のビジョンを段階的に実現させる
2020年10月に決起大会を開き、同社は全社員に目指す方向を明確に示した。その時に生産本部としても工場や設備についてどのような状態をつくるか説明した。 しかし大河内CTOは長年の経験からこういったイベントはあくまできっかけで、社員全体としては、まだ半信半疑の部分があることを感じている。大河内CTOを含む幹部の役割は、各部門で年単位で着実に目標をクリアし、設備導入や環境改善を計画に沿って実行して着実に成果を上げていくことだ。このことで社員一人ひとりが変化を実感し、ビジョンが全体に浸透していくと考えている。 会社の方向性やトップの思いに対して、年単位で具体的な方針に落としこみ、目に見える成果を上げ続けることが、今の夢だという。 「とにかく2020年が勝負です!新しい体制の中で成果を上げることで自ずと会社の考えに賛同し、よいスパイラルが生まれますね」と語り、達成への強い意欲を見せた。
これからのMetaplantを支えていくメンバー
最新ファイバーレーザー加工機 TruLaser5030 Fiber
クリーンルーム化を進める工場
世界水準で会社を改革
製造ではどのようなキャリアだったのでしょうか?
理系の大学を卒業して、最初は家電(音響)メーカーの開発と生産部門に20年くらいいました。その後、中国の工場の躍進を肌で感じ、モーター製造の会社で中国の工場統括を経験したのち、スマホ等のレンズのメーカーで生産技術の管理をして、紹介をいただき今に至っています。国内外問わず、生産においては、どこでも技術部門と現場のいわゆる、できる、できないのせめぎ合いは起こるのですが、双方の立場が良くわかるので、その調整というか最も最適な生産工程や環境づくりを進めることが自分の使命と思っています。それを一時的なものではなく安定稼働させることが標準化ですね。中小企業の場合はこの点まだ経験者や個人に依存している部分が大きいのでその点でも貢献していきたいです。大河内CTOから見た平井CEOはどんな人ですか?
平井CEOは、まさにアグレッシブな方。10億円に満たない企業で、「10年で100億円企業にしたい!」と日本人には珍しいタイプで、常に先のことまで考えていますね。そして本当に詳細のことまでよく思考して、緻密に整理されている、この点は「忙しいのに、よくそこまで考えるなぁ」と思います(笑)。なにより、第二創業の中、自動化に向けた会社の改革を任せてもらい、ものづくり全体を見るために自分という人間を選んでいただいたことは感謝しかありません。全力で成果を上げていきます。いかに工場の自動化が進んでも、設備の条件設定や標準化に向けた判断ポイントは熟練を要する部分もあるので、装置産業とは言え、人間教育も等しく力を入れていきます。サービス品質の向上について具体的な取り組みを教えてください
スピード対応の部分をお話しすると、製造部門すべてがコンビニのように24時間稼働しているわけではありません。例えば、板金加工の急な依頼があるとして、工程としては図面を引いてレーザーで切りサンプルを作る流れになります。夕方にオーダーがあった場合、図面(CAD)は21時まで、レーザー加工は23時までといった必要な時間帯に適正なシフトで人員を置くことで、翌朝には仕上がっている、という状態にしています。当然そのための環境をつくる必要な投資がありますが、お客様から、評価をいただくことがなによりうれしいですよね。そして、いわゆる“3K”と言われない、新しいカタチの金属加工の働きかたを自社ならつくれると考えています。若いメンバーの多い会社なので、興味があればぜひ一度工場を見に来てください。株式会社 Metaplant
1987年4月 株式会社平井機械を設立(資本金100万円)
レーザー加工稼働開始
1991年7月 株式会社平井機械の資本金を1,000万円に増資
板金加工を開始
1997年5月 本社及び工場を港区白金に移転
2004年10月 社名を株式会社M.H.Mに改称
2007年4月 横浜事業所 開設
2009年4月 港区白金の工場施設閉鎖
横浜事業所に工場設備を統合
2019年6月 横浜営業所開設
横浜事業所を横浜工場に改称
2020年10月 社名を株式会社Metaplantに改称
レーザー加工稼働開始
1991年7月 株式会社平井機械の資本金を1,000万円に増資
板金加工を開始
1997年5月 本社及び工場を港区白金に移転
2004年10月 社名を株式会社M.H.Mに改称
2007年4月 横浜事業所 開設
2009年4月 港区白金の工場施設閉鎖
横浜事業所に工場設備を統合
2019年6月 横浜営業所開設
横浜事業所を横浜工場に改称
2020年10月 社名を株式会社Metaplantに改称
創業年(設立年) | 1987年4月 |
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事業内容 | 精密金属板金加工 |
所在地 | 〒226-0003 神奈川県横浜市緑区鴨居3-6-4 I.I.Mビル2F |
資本金 | 1,000万円 |
従業員数 | 89名(パート含む) |
会社URL |
監修企業からのコメント
今回は取材のご協力をいただきありがとうございました。第2創業という、組織の飛躍のフェーズで取材にご協力いただいたことを感謝いたします。
平井CEOはじめ、幹部、メンバーの皆さんの熱い思いを感じました。今後の御社の活躍に期待しています。
掲載企業からのコメント
皆さまに私たちの取り組み、考え方がお伝えできればうれしいです。新しく生まれ変わったMetaplantとして、業界の慣習にとらわれずサービス業のマインドを持って私たち全員が進化し、お客様の満足を追求します。よろしくお願いします。