株式会社誠和 代表取締役社長 大出浩睦
株式会社誠和は1971年(昭和45年)、プラスチック成形品の製造販売からスタートした。その後、施設園芸用品を皮切りに農業分野に進出し“農家のお役に立ちたい”という想いで研究・開発を続け、現在は施設園芸用の環境制御機器、養液栽培システム、省エネ・省力機器の製造販売とともに、大規模プラントの開発・製造・販売まで事業は多岐にわたる。最近では大手企業や行政から連携やタイアップの依頼が増えてきており、さらにGX(グリーントランスフォーメーション)の分野の研究など未来を見据えた活動が注目を集めている。本取材では、4代目である大出社長に、同社の歴史や事業内容、業界・社会の展望について語っていただいた。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
‟自由”にチャレンジする社風
大出社長は、社風について“当社では社員一人ひとりが仕事に対して「自由」に考え「真剣」に臨む文化が根付いており、農業に対する熱い情熱を持った人材が非常に多い“という。誠和は、東京でプラスチック成形品の製造販売の事業からスタートした。その後、創業者が親戚の農家の悩みを解決するために、施設園芸用品の商品開発にチャレンジする。商品が出来上がるや否や、創業者自らが商品を営業し、量産化もしていないのに受注してきたという。こうして人の役に立つために「自由」にチャレンジする姿勢が、社風となり、社員は農家の方々に対して「真剣」に熱い思いで寄り添っている。こうした社員の想いが、栽培に関する様々な研究等のデータとして蓄積されていて、お客様への最適な提案に繋がっている。「農家に喜んでもらうことが我々の幸せなんです。ただ、真剣過ぎて、そして自由過ぎて統率取れないときもありますけどね (笑)」と明るく語った。農家に対するトータルサポート
当社の強み、独自性は、農家に対してトータルサポートができることだ。自社の研究に基づく情報提供や栽培技術の提案、植物の成長を促すための製品開発から、サービス提供、建設、販売まで、農業に関わるあらゆる分野において豊富な知識と経験を形にできるので、農家の方のお困りに全方位で対応できるという。そして、それを支えているのは、自社独自の広大な研究設備環境だ。様々な栽培データや実験・研究の成果が同社のノウハウとなって蓄積されており、他社の追随を許さない。さらにこうした同社の独自性が新しい商品やサービスの開発に繋がってきた。ここ数年は、同社から働きかけて他社との連携・協業に取り組んできたが、最近はお相手からの問い合わせや依頼が増えているという。これまで貫いてきた、独自性が市場で注目され始め、同社は今、多様性を持って大きく飛躍していくフェーズにある。世界にイノベーションを起こすワクワクする会社へ
大出社長が見据える会社の未来とは・・・。“ワクワクする会社を築いていきたいですね!”と語る。それは世界にイノベーションを起こすくらいの発想で、自分たちのノウハウから新しい価値が生み出せれば、同社は世界に挑戦できると確信している。まだ水面下で協議・検討をしている内容も多いが、今後の重要なキーとなるものはGX(グリーントランスフォーメーション)だ。経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させ、社会システム全体の変革を目指すことである。農業、そして植物に関する知見を持つ同社は、 2024年3月にその活動と実績、将来性が期待され、経済産業省中小企業庁の「はばたく中小企業300社」にGX枠で選出され、その動向が注目されている。様々な新しいチャレンジが評価を受けているが、「農業を通じて社会を良くする」ことが同社の展望であり、同社が存在する大義だ。社員全員がワクワクしながら楽しく働けること、そして、そんな仲間たちと世界に向けたイノベーションを起こしていきたい、せかいを、イノベーションで、ワクワクさせる会社を目指したいと力強く語った。先代から受け継ぐ「誠実」と「調和」という精神
どのような想いで会社を受け継ぎましたか?
私は、大学の卒業後全く違う業種に就職しました。いつかは“家業を継ぐ”という意識はありましたが、いつかはといったぼんやりしたものだったと思います。幸い会長(先代)の大きな懐のおかげで私も言いたいことを言わせてもらえ、私の提案もほとんど聞き入れてもらっています。ベテラン社員との連携もとれていると思っています。それは自分が凄いのではなくて、誠和には、「誠実」と「調和」という理念が根底に浸透しているから社員が私の話を聞いてくれるのだと分かりました。一方で、私はとてもわがままですが、頑固な社員もおり、衝突することもあります(笑)しかしそれは誠実さの表れだと思っています。私たちの良い仕事が、お客様だけでなく仕入先、社員、家族、さらに広い意味で社会全体に役立つという広い視点で物事を捉えると、おのずと調和が生まれます。その中で私自身は仕事において自分が説明できることをする、説明できないことはしないと決めています。それが誠実であり、きちんと説明することが周りの関係者に納得をもたらし、調和を築いていくと考えています。組織全体の世代交代はどのように進んでいますか?
健全な世代交代というのは、あるタイミングで一気に行うのではなく、時代の変化に合わせて 絶えず組織を変革していくことだと考えています。新しい視点や考え方を尊重することや変革への柔軟性を大切することですね。私はそのために、ワクワクする環境を作り続けることが重要だと考えています。そんな中で、ベテランの社員とも意見を交わすこともあります。私自身、昔は否定していた社員の意見でも今は聞いているものもあります。変化は受け入れるべきものと認識し、自らも変わり続ける必要があると思っています。その点、新卒採用はとても大事にしています。若手の新しい価値観に触れることは大事ですよね。そうした次世代のメンバーがベテラン社員との接点や学ぶ機会は作っていきたいですね。そうやって、さらに次の世代に肩を並べるような人材に出てきて欲しいですし、その芽が少しずつ出てきていると感じています。今後の成長に期待をしています。誠和が求める人材について教えてください
やっぱり「楽しいやつ(笑)」です。そして思っていることをちゃんと言える人。やりたいことがあったら、チャレンジする。行動に移せる人。そういったワクワクと働けるような人間を採用したいと思っています。当社の最終選考は、先代のポリシーで、好きな服装で参加してもらい、個人のアピールをしていただいています。 過去には、会長や私を前にして「社長になりたいです!」と豪語した学生や、蝶ネクタイで民謡を歌った学生もいました。もちろん二人とも合格。今では社員として働いています。仕事では、いろんな壁にぶつかり、悩むことももちろんあります。しかし、そうやって楽しくワクワクしたい!って思ってうちを選んでくれた学生がまさにワクワクし続けていられるような会社を作り続けたいと思っています。農業を“働きたい仕事ランクトップ10”へ! 3Kからハイテク産業へのシフトを目指す挑戦者
株式会社誠和 社長室 室長 加座健士郎
誠和の社長室室長として、同社の未来を切り拓く若いリーダーを紹介する。加座室長は2012年の4月に新卒として誠和に入社。その後、営業、研究開発部を経て、農業教育への情熱とハイテク農業への変革への意欲から新規事業の立ち上げを行っている。加座室長は石川県の大学院在学中に東日本大震災をきっかけに農業に魅了され、全国の農家に貢献できる仕事を求めて、栃木県にある誠和に入社した。未来の農業者を育てるために教育機関と連携して出前授業を実施することもある。夢は、子どもたちに農業の魅力を伝え、農業を選ぶ新しい時代を切り開くこと。お客様とのコミュニケーションを通じて感じるやりがいや、IT技術のない中での研究開発への挑戦など、そのキャリアは多岐にわたる。そんな加座室長の独自の視点と夢に迫る。伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
全国の農家に貢献できる仕事
加座室長が企業を選ぶ上で注視したのは、農業、メーカー、施設運営の三つの観点だという。誠和がこれらの要素を含む総合的なアプローチを提供していることに注目し、その多岐にわたる活動に魅力を感じたと語る。石川県の大学院在学中、東日本大震災をきっかけに農業への関心が高まった。災害を経て、農業が社会に果たす役割やその重要性に気づき、農業への興味が芽生えたとのこと。農業が土づくりから始まり、栽培、収穫、販売までの一連のプロセスを通して成り立っていることに着目し、その網羅的な魅力に引かれたという。これらの過程を通じて「0から100まで全てを行う素晴らしい仕事」と感じたことが、農業に対する深い理解と愛情の始まりだった。全国の農家に貢献できる仕事を求めた結果、加座室長は誠和に出会い、その理念に共感し、入社を決意。農業を通じて社会に良い影響を与え、農家たちの生活をサポートすることに使命感を抱き、日々働いている。10年を超えた今尚、その使命感は強まる一方だ。お客様や組織への貢献を通じて新しい価値を創造
加座室長は、営業部、研究開発部、そして社長室勤務と、異なる部署での経験を通じて、それぞれのステージで異なるやりがいを感じてきたと語る。様々な立場から見る組織や業務の側面から学んだことが、加座室長のキャリアの豊かな多様性を築いている。営業部時代は、お客様が誠和の商品を購入し、その“成果を実感“した後にいただく「ありがとう」の言葉こそが、大きなやりがいだった。そしてよりお客さまの喜びの実現に向け、仕事への理解を深めていく。研究開発部時代には、全くIT技術を持たない加座室長にも責任ある役割が与えられた。クラウドサービスの研究開発に携わり、新しい技術やサービスを生み出すことに尽力した。自由にチャレンジできる環境が提供され、“新しい分野での挑戦“がやりがいに繋がっており、現在の社長室勤務でもその気持ちは変わらないという。こうして、様々な同社の業務経験を通じて培った知識と多様な視点を融合し、お客様や社内への貢献を通じて新しい価値を創造し続けている。小学生、中学生のなりたい職業トップ10に農業を入れる
農業を未来の職業選択肢として広く認識させ、新しい世代に農業の可能性を伝えたい、という加座室長自身の夢を伺った。『小学生や中学生がなりたい職業トップ10に農業を入れることを目指しています!子どもたちに農業に興味を持ってもらいたいと考えており、そのために教育機関と連携し、出前授業を行っている。その結果、子どもたちが農業を選択肢として考えるきっかけを作っていきたいですね!』と力強く語った。それには、知識の教育とともに、農業に対するイメージを変え、農業がもっと稼げる職業であることを伝えたいと考えている。「農業は、3Kではなく、ハイテクだよ」というメッセージを通じて、農業の現代的な側面や新しい可能性のアピールにも奔走している。こうして将来、子どもたちが職業を選ぶ際に、農業の多様性と魅力に気づくことで、子どもたちの興味を促し、農業そのものの可能性を広げることで、社会に新たな価値をもたらすことを夢見ている。農業の新しい価値を創造し、新しい世代に農業の可能性を伝えたい
今取り組んでいる新しい事業を教えてください
本当に最近のことですが、大手航空会社の日本航空㈱との連携により、流通事業部を大胆にリニューアルし、EC(電子商取引)事業に挑戦しています。航空輸送と農業サポート技術は異なりますが、その違いを乗り越え、共通の想いで結ばれてます。その共通の想いとは、「地域の活性化と一次産業の振興」です。オンラインプラットフォームを通じて、より多くの顧客に製品やサービスを提供し、新たな市場の創造に意欲を燃やしています。また、 私たちの取り組みによって、地域の一次産業はより効率的に生産できるようになり、商品が市場に迅速に供給されます。これにより地域経済が活性化し、地元の農家や事業者にとっても新たな可能性が広がると考えています。サービスのリリースを是非楽しみにしていてください!先代から現社長に交代してからの変化について教えてください。
先代が主要商品を軸に基盤づくりに挑戦していた中、現在の誠和の社長は更なるステップアップを志し、新しいサービスを提供する意欲を示しています。これまでの自動カーテンを主力商品としていた誠和は、新しいステージに向けて流通事業部の立ち上げと新商品の開発に注力しています。53年の歴史を有する誠和は、伝統を大切にしながらも、製造の知名度を高め、営業活動や商品化に力を入れてきました。しかし、現社長が就任してからは、挑戦の姿勢が一段と強まり、新しい領域に進出する割合が拡大しています。伝統を重んじつつも、これからの時代に即したサービスや商品を生み出すことで、誠和は新しい価値を創造すると考えています。だから今の社長は『なんでも相談できる人』だと思っています(笑)。
今後の若手に求めるものを教えてください
一般的かもしれませんが、誠和では特に、好奇心・学習意欲・コミュニケーション。この三つの要素が重要だと思います。入った環境で学んでいく意欲があり、それには様々な人とのコミュニケーションが必要だからです。私自身の経歴も、大学では微生物研究をしていましたが、畑違いの農業機器の営業、そしてクラウドサービスの開発、流通事業部の立ち上げへと展開しています。これらの経験から、異なる分野への飛び込みや新しいサービス創造において、好奇心と学習意欲の重要性を痛感しました。そして、学ぶためにも、学んだことを実現させるためにも、世代や価値観の異なる人たちとのコミュニケーションがより自らの領域を越えて新しいことに挑戦する環境を創ってくれます。ですから“誠実と調和“という誠和の理念が、会社の未来や若手の育成にも改めて重要なんだな、と感じていますね。株式会社誠和
1971年
誠和化学株式会社を東京都中央区新川に設立
1972年
本社を東京都中央区八丁堀へ移転
1981年
栽培に関する研究をスタート
1985年
社名を株式会社誠和に変更
2013年
本社を東京都台東区上野6丁目6番1号へ移転
2014年
最先端農業技術を学ぶ”新時代農業塾”を開講
2015年
本社を栃木県下野市へ移転
2017年
トマトパーク事業を分社し、株式会社トマトパークを設立
誠和化学株式会社を東京都中央区新川に設立
1972年
本社を東京都中央区八丁堀へ移転
1981年
栽培に関する研究をスタート
1985年
社名を株式会社誠和に変更
2013年
本社を東京都台東区上野6丁目6番1号へ移転
2014年
最先端農業技術を学ぶ”新時代農業塾”を開講
2015年
本社を栃木県下野市へ移転
2017年
トマトパーク事業を分社し、株式会社トマトパークを設立
創業年(設立年) | 1971年 |
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事業内容 | (1) 施設園芸用の環境制御機器、養液栽培システム、省エネ・省力機器の製造販売 (2) 大規模プラントの開発、製造、販売 (3) 流通事業構築 |
所在地 | 栃木県下野市柴262-10 |
資本金 | 9,980万円 |
従業員数 | 167名 |
会社URL |
監修企業からのコメント
この度は取材にご協力いただき、誠にありがとうございました。大出社長の「農業」への熱い想いと将来への展望に触れ、まさに"ワクワク"と心が躍りました。農業において伝統と挑戦の両面を取り入れ、社会との調和を大切にしながら、持続可能なビジネスモデルを築いていく同社に対し、ますます注目していきたいと思います。
掲載企業からのコメント
この度は取材していただきありがとうございました。取材を通して改めて今後誠和の事業拡大や、農業の発展に向けての取り組みを考え、とても"ワクワク"しました。今後も農業を通じて社会を良くするために、積極的にチャレンジしていきたいと思います。社員一同力を併せて、邁進していきますので、誠和に注目いただけますと幸いです。