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株式会社大治

お客様の要望を超え続ける 唯一無二の存在へ

株式会社大治 代表取締役社長 本多諭

株式会社大治 代表取締役社長 本多諭
平成元年に、日本一の規模を誇る市場が完成した。 それが、青果部門の旧神田市場(秋葉原)と旧荏原市場(五反田)、水産部門の旧大森市場(平和島)を統合して開設された市場、大田市場である。大田市場は東京都大田区の臨海区域に約40万平方メートルもの広大敷地を有し、青果部門・花き部門の取り扱い規模もまた日本一となっている。 その日本一の大田市場内の青果部門では、市場と消費者をつなぐ役割を果たす仲卸業を行う会社が約160社ほども存在する。その中でも、『良いモノだけをお客様に届ける』という信念を貫いて発展してきた会社がある。それが、今回の取材企業、株式会社大治である。大治は1949年に創業し現在に至るまで良い商品のみを扱う"上物師"として大田市場の中での地位を築いてきた。今回はその歴史ある大治の、今まで大切にしてきた価値観や今後のチャレンジについて、代表取締役社長である本多諭氏にお話を伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

ただひたすらに顧客の為に

「うちの社員は商売が上手くないんですよ」と本多社長は言う。だがそれは顧客のことを徹底的に考える大治らしさの特徴がゆえでもある。 仲卸の仕事は顧客が求める品物の量を確実に仕入れ、提供していくことが一番重要である。しかし、青果は生モノであり、気候や天気によって市場に入ってくる品物量も日々変化する。顧客に一定量の品物を求められていても、希望の量を集荷する事がなかなか出来ない時もある。例えば、ある品目の野菜を10ケース求められても、3ケースしか出す事が出来ないという事態も当然起こりうる。そのような時にでも大治の社員は他の市場はもちろん、時には産地にまで直接足を運び、仕入れをおこない、顧客の要望に対して真摯に応えてきた。その努力が実り、顧客との信頼関係を培ってきた結果、今の大治があると言っても過言ではない。小手先のうまい商売を目指すのではなく、目の前の顧客のために何とかできないかと全力を尽くす。それが”大治らしさ”だ。

未来を見据え動く、独自の販売ルート構築

大田市場には約160もの仲卸が存在しているが、実はほとんどの仲卸がスーパーマーケットや百貨店、または八百屋といった小売業との取引のみという実態がある。実は小売業と外食産業と、共に取引を行う仲卸は数少ない。その中で大治は、時代の先を見据え、外食産業とも直接取引を行っているところに特徴がある。一般的に仲卸から見て、外食産業との取引きは配達コストがかかり、あまり利益の出るモノではないと考えられているケースが多い。それでもなお、大治が外食産業との取引を行っている理由は、昔と比較して今はモノが溢れており、スーパーマーケットでも売れない商品はすぐに死に筋商品になってしまうという時代背景があるからである。そのような時代背景においても、外食産業との取引を行うことで、青果を活用したヒット商品を創り出し、その食材を後にスーパーマーケット等へ展開していくということを考えて取り組んでいるのだ。未来を見据えて、先手先手で動いていくところに大治の独自性と強さを垣間見た。

唯一無二の存在へ

現在までの努力もあり、今では様々な顧客と取引が出来るようになってきた大治。しかし、市場においては一瞬の油断も許されない。市場内では常に競合の仲卸業者との勝負がある。そこで大治は今後、新規の顧客を獲得するよりも、今まで築いてきた顧客との関係性をより一層に深めて、既存顧客の中での大治のシェアを高めていくことに注力していくという。その為には各担当者が今まで以上に、”圧倒的な顧客目線”を持ち続け、顧客の要望に応え続ける事がキーポイントになる。また、この基盤をしっかりと構築したうえで、今後は中間流通業者という立ち位置でありながらも、商品開発のマインドを持ち、160社もの同業他社が欲しがるような商品づくりを生産者と共に行っていくという。 今までの仲卸とは違う立ち位置をつくっていく。そして「顧客にとって160分の1社という存在でなく、”大治は大治”唯一無二の存在となる」と未来への意気込みを語る本多社長の言葉は力強かった。
日本一、活気ある大田市場の風景
日本一、活気ある大田市場の風景
大治の卸す新鮮な野菜達
大治の卸す新鮮な野菜達
新鮮な野菜はトラックで運配送
新鮮な野菜はトラックで運配送

新鮮な野菜はトラックで運配送

なぜ大治を継ごうと思ったのですか

本当は学校の先生になろうと考えていました。その中でも家業を継ごうと思ったのは、祖父の影響が大きいと思います。創業者である祖父は丁稚から始めて、数多くの困難を乗り越えて今の大治の土台を創りました。その祖父の背中を見て育ったからこそ、『この会社を継がない』という選択肢は結局のところありませんでした。現会長(本多 満氏)も、市場ではなく他にやりたい事もあったのじゃないかなと思うこともあります。ただ、私の場合は人間関係を紡ぎながら商売を行っていくこの市場という環境が好きなんですよね。先先代、先代の努力を無駄にしない為にも、大治を必ず今まで以上に発展させていこうと誓います。

今後の市場の変化についてどう考えていますか

正直、今後どうなっていくのだろうと思う事はあります。人口も減少し、高齢化の影響もあって一人あたりの食事量も年々確実に減っていく未来は見えています。現状維持ですら難しい時代になってきているなと感じていますしね。 今現在、将来に対して必ず約束されたものは何一つないです。ですが、市場全体としてニーズにあった商品提案と商品開発を行う事が出来れば、姿・カタチを多少変えていったとしても、市場そのものはしっかり残っていくものだと思います。その為にも消費者のニーズを汲み取りながら、生産者の農家さんとしっかりコミュニケーションを取って、良い品質の商品作りを共に行っていく必要があると思います。

今、あたためているアイデアがあれば教えてください

高齢化社会が進行していくにあたって、なかなか自由に旅行に行けるという人も全体的には減っていくと思います。また、その土地土地にしかない旬の名産品を食べる機会も減っていくのではないでしょうか。そこで、そういった自由に旅行が出来ない方々の為にも、人ではなく食材が旅をして入ってくるような事が出来ないかと考えていますね。例えば、旅行会社とタイアップしながら全国の旬の採れたて野菜が、当日中に皆様の家庭に届けられるような仕組み作りを考えています。飛行機や新幹線を活用し、仕入れや配送をおこなう事が出来れば実現することは可能だと思います。アマゾンにも、オイシックスにも出来ない仕組みを大治が作っていけたら面白いかなって思いますね。
株式会社大治 営業副部長 星野謙二

全ては 顧客の感動の為に

株式会社大治 営業副部長 星野謙二

大治の社員代表としてお話して頂いたのは、営業副部長の星野謙二さんだ。 星野さんはじゃがいも、たまねぎ、にんじん、京野菜等の品目の取り扱いを行っている営業担当である。基本的に多くの企業での営業担当の役割は自分の担当品目をスーパー、百貨店、八百屋等に販売する事がメインの仕事ではあるが、大治では仕入れ先の開拓や交渉等、実に多岐に渡り活躍している。そして、他の仲卸会社から一目置かれるプロフェッショナルな大治の営業担当の中でも星野さんは、特に顧客から絶大な信頼を獲得している。他の営業担当の顧客からも品目の垣根を超えて、星野さんに相談がくる程だ。野菜のプロフェッショナルである星野さんの仕事への想いや目指すべき姿について今回は伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

本多社長と出会ったこと、それが全て

星野さんは大学卒業後に新卒として大治に入社した。「正直、何をするか全く分からない状態で入社しました」と笑顔で語る。 本多社長と星野さんとの出会いは大学時代の柔道。別々の大学ではあったが共通の師範がおり、合同練習を重ねる度に少しずつ仲良くなっていったそうだ。星野さんが就職活動を行うタイミングで先に社会に出ていた本多社長が大治の跡継になる事が決まり、本多社長から柔道経験者の仲間として、星野さんに声がかかり大治に入社することが決定した。「その時は市場が何をしているのかもよく分からなかった」というが、本多社長を信じ働く事を決意した。 入社して1年半程の期間は下積みとして商品の袋詰めを中心に行い、まずは扱っている商品を覚えることに従事した。当時を振り返ると「正直、これをずっとやっていくのかな」と不安を持っていた部分もあったという。しかし、今ではその時の経験が商品知識の礎となり品目の営業担当として、社内外で噂になる程。本多社長との出会いから約20年、二人の信頼関係はこれからも続いていく。

商売人として、プロとして

星野さんが感じるこの仕事のおもしろみは大きく2つあるという。 まず1つめは「商売としてのおもろしろさ」だ。品目の担当者になると、ある程度の金額であれば、品物の仕入れ金額と販売金額を担当者の裁量で決める事が出来る。個人ではなかなか扱う事の出来ない金額の買い物(仕入れ)を毎日行い、商品を日々変化する金額で販売していく。そのリアルなやり取りを通じて湧いてくる、商売人としての醍醐味を感じているという。 2つ目は「いかに顧客の要望を超えていけるか」だ。ただ価格だけの商売をずっとやっていてもそれはそれでおもしろくはない。顧客に対して本当に良い商品を届けていく事もまた、この仕事のやりがいである。その為には大田市場内だけの仕入れではなく、より良い商品を求めて、他の市場や産地に直接足を運ぶ等、大田市場外からの仕入れにもかなり力を入れている。その努力の結果、顧客との信頼関係をより深いものにしているのだ。商売人として、またプロとして顧客の期待を超えていくことこそが一番のやりがいである。

農家さんと共に創る大治ブランド

星野さんの夢、それは良い商品作りをしている農家さんと共に、大治のプライベートブランドを作り、商品化していくことだ。農家さんが努力を惜しまず、一生懸命に作った優れた品質の商品を大治ブランドとして適正な価格で販売していくこと。それはつまり生産者の農家さんを守っていく事にも繋がる。現状の農家さんの悩みとして、いくら良い商品を作ったとしても、品質に関係なく一律の評価(価格)にされてしまう事も少なくないという。これでは農家さんも優れた品質の商品を生み出すという気概が薄れてしまうのはやむを得ない。良い商品を作っている農家さんに対してしっかり還元していく為にも、大治として健全に商売を行っていく事で、農家さんが農業を続けていく為の環境づくりをしていかなくてはならない。 生産者の農家さんの想いを乗せた商品が大治ブランドとして消費者の元へ届き、消費者の感動を生み出すことが星野さんの大治で成し遂げたい夢である。
共に野菜作りを支える農家の方々
共に野菜作りを支える農家の方々
将来的に強化をしていくネット販売
将来的に強化をしていくネット販売
大治本社は市場内にある
大治本社は市場内にある

仲卸の仕事の面白さを伝え、大治の未来を創っていく

日々働く中で、大切にしている考えを教えてください

若い頃、取り引きのある総菜屋さんへのじゃがいもの供給が上手く出来なくて、欠品してしまった分の売上を「保証をしろ」と言われた事がありました。結果的にはなんとかなったんですけど、僕らの仕事はやっぱり欠品とかは絶対に許されない商売なんですよね。生産者の方々と協力して商品力を上げていくっていうのももちろん大事な事なんですけど、まずは顧客の求めている品物をしっかり集荷して、安定的に供給し続ける力が一番に求められる仕事でありますからね。その為にも常に必要なものを先読みし、先手で仕入れをおこなう事は常に意識しています。「大治さんにいけば、いつでもなんでもあるよ」と顧客に思っていただける様に常にあり続けなければいけないですね。

星野さんが感じる大治らしさがあれば教えてください

大治はある程度信じて任せてくれる風土があると思います。例えばじゃがいもを仕入れる際に、利益を生む可能性を担当者が見い出せれば、リスクを背負ってでも担当者の判断で2000ケース以上を仕入れさせてくれることもあります。もちろんそのタイミングでは、2000ケースの売り先が決まっているわけではないので、全部売れれば利益は出ますし、たくさん残ってしまえば赤字になります。プレッシャーとの戦いでもありますが、その責任感の中、一日一日勝負が出来るのもこの仕事の醍醐味だと思います。また、会社に大きな影響を与えかねない判断を担当者を信頼し、任せていけるのが、大治ならではの特徴であると思います。

今後、大治をどのようにしていきたいですか

他の会社から羨ましがられるような会社にしていきたいと思います。 この市場や仲卸業界というのは、基本的にハードですし離職率も高いんですよね。その中でも多くの人が長く生き生きと仕事が出来る環境を創っていきたいと思っています。そんな環境創りをしていく為にも、今は幹部で週1回ミーティングをしています。以前は定期的なミーティングはあまりしていなかったのですが、会社の規模も大きくなって情報共有の重要性が高まってきたので実施をする様になりました。そこでは大治らしく『いかに顧客の要望を超えていくか』について等、議論をしていますね。大治の社員が会社に誇りを持って、他社から羨ましがられる環境を創っていければ、自分自身の幸せにも繋がっていくと思っています。

監修企業からのコメント

監修企業

本多様、星野様のお話をお伺いして、圧倒的なまでのプロ意識を感じました。 お客様の期待に応え、さらにその期待値を超えていく事を当たり前とする大治だからこそ、 160もある大田市場の仲卸の中で、お客様にとって特別な存在としてあり続けられるのだと思います。
ぜひ、この記事を通じて”大治らしさ”を皆様に知っていただきたいと思います!

掲載企業からのコメント

今回、長時間にわたる取材を受けることで、当社の強みや課題を再認識することが出来たと思います。 目先の業務に追われていると、なかなか過去を振り返り、将来に繋げていくという確認作業を行なうことに 時間を割くことが出来ませんが、取材を通じて株式会社大治の「過去」「現在」「未来」に向き合えたような気がします。今回の貴重な経験をきっかけに、「顧客満足で業界ナンバーワンになる」「従業員満足で業界ナンバーワンになる」「業界そして世の中で評価される会社になる」という目標に向けて積極的に取り組んでいきたいと思います。

掲載企業
株式会社大治
1949年 神田市場 大治商店設立
1967年 法人化により株式会社大治設立 本社 千代田区神田市場
1989年 大田市場開場により本社を現住所に移転
1993年 大治商事(株)と合併
1996年 (有)三幸商店を吸収合併
2000年 (有)丸生齋藤商店を吸収合併
2003年 関連会社として(有)Kコーポレーションを設立
      大治パッケージセンターを大田市場関連用地に新設
      大田市場内では初の有機JAS小分け業者に認定
2011年 大田市場北口立体荷捌場内に低温物流センター開設
      代表取締役会長就任 本多 満
      代表取締役社長就任 本多 諭
創業年(設立年) 1949年
事業内容 青果物・食料品全般における卸売業
所在地 東京都大田区東海3丁目2番6号 東京都中央卸売市場 大田市場内
資本金 3,000万円
従業員数 120名
会社URL

株式会社大治