株式会社ヤマトインテック 代表取締役社長 邵宗義
長野県塩尻市に創業当初から鋳造一筋で発展し続けてきた企業がある。それが、株式会社ヤマトインテックだ。同社が大切にしていることは「自由闊達」であること。時代の流れ、お客様からの要望にいち早く応えることができるよう、あらゆる物事に柔軟に対応できる組織を目指しており、その始まりは、一定の社員に依存していた組織から脱却だった。現場の社員に任せられるものは任せて、社員が自ら率先して物事を判断できるような組織づくりを行ってきた邵社長。具体的にどのようなことを行い、どんな想いで改革を続けてきたのか、同社の今後について詳しく伺った。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
「自由闊達」社員が自由に働ける会社
「自由闊達」この言葉こそ、同社の社風を表していると言えるだろう。同社の社員は、過度に会社に縛られることなく、自由に、そして主体的に動いているという。しかし、元々この状態だったわけではなかった。以前の同社は、決まった数名の社員に頼ることが多い状態で、その他の社員が率先して動くような状態ではなかった。その中で、昨年社長に就任した邵社長が目指したのが、現場が主導で動けるような組織。社員にもっと主体的に動いてもらうために、自身が任せた案件については、基準を下回らない限り介入しないようにした。任せたものの中には、新設備導入やライン増設の判断など、会社の未来を左右する内容もあるというから驚きだ。現場の上司が部下を指導しながらやりきったのだという。この取り組みがあったからこそ、現場の社員が主体的に動けるような組織になり、そして若い世代の人たちも率先して自分のやりたいことができる「自由闊達」な会社になったのだろう。邵社長が目指した「自由闊達」な組織が会社の社風として若い世代まで浸透しているのだ。鋳造一筋。脈々と受け継がれてきた技術力
鋳造に対する高い技術力。これこそが同社の強みである。創業当初から鋳造一筋で発展を続けてきたからこそ、数多くのノウハウを蓄積し、それが現在の技術力につながっている。中でも、同社を代表する製品が、車のターボエンジンに使用されているベアリングハウジングという部品だ。ターボエンジンをつくるための核となる部品で、世界で約7~8%のシェアを誇っている。そして現在、2kg以下の軽量化したベアリングハウジングをつくることができる会社は日本で数社ほどしかなく、同社の高い技術力を表す象徴と言えるだろう。その技術力を活かし、多様化するお客様の要望に応え続けているに違いない。鋳造一筋でこの分野においては日本で屈指の技術力を誇っている同社。400年以上もの長い歴史の中で脈々と受け継がれてきた技術力、まさに同社の独自性を表す言葉だ。「自社で完結するような鋳造メーカー」を目指す
「『自社で完結するような鋳造メーカー』を目指す」邵社長が思い描く今後の展望だ。時代の変化が激しい現在において、お客様の要望はさらに多様化することが予測される。その要望にいち早く応えていくためには、自社で完結することが重要となる。展望の実現のために、まず行っていることは、海外にある関連会社との連携だ。鋳造を行うためには中子と呼ばれるものが必要となる。多くの鋳造メーカーがこの中子までは製造しておらず、他企業に外注している。一方で同社では、フィリピンにある関連会社が中子の製造を行っており、グループとして連携を取ることで、すぐにお客様の要望に応えることができるのだ。
今後、さらに関連会社との連携を強化し、スムーズに部品を受け渡すこと、時間を削減することを目標に新たな取り組みを行う予定だ。時代の流れに対応し続けるためには、邵社長が語った「自社で完結するような鋳造メーカー」となることが今後の鍵になる。
ベアリングハウジング
対応力を高めている
一貫生産が可能
社員を大事にする姿勢
社員のみなさまの特徴を教えてください!
専門性のある社員が多いですね。非常に職人気質で一つのことに対して深掘りをしていくような人、追い求めていくような人がヤマトインテックの社員の共通点だと感じています。そのような社員が多いからこそ、お客様のあらゆるニーズに対応することができる高い技術力を生んでいるのだと思います。そして、今後さらに良い会社にするためにより一層周りの社員と協力して業務を行えるような組織になって欲しいです。その方がより生産性も高まると思いますし、一人ひとりの優れている専門性に相乗効果が生まれるはずです。そうすることでヤマトインテックの技術力はより磨きがかかると思います。社長就任後、1年で会社にどのような変化が起こっていますか?
社員の数字に対する意識が変わったと思います。社長に就任してから会社を黒字体質に変えることを意識して改革を行ってきたので、その成果が現れてきたと感じています。具体的に行ったこととしては、次月の生産量の把握を行い、各週にどのぐらいの生産があるのかを現場に落とし込みました。これにより、どのラインが忙しくなるのかを先読みし、効率的に業務を進めるための施策を前もって打てるような環境をつくってきました。そのような取り組みを行ってきたからこそ、社員が数字の意識を持って、「来月これが足りないからこの業務を伸ばしていこう」というように、先を見越した行動が取れるような組織になり始めていますね。社員のみなさまには、どんなことを伝えていますか?
「失敗しても大丈夫」と常に言っています。今まで以上に若い世代の社員が積極的に発言できるような組織を目指しているので、若手が失敗を恐れず行動できる後押しになればと思ってその言葉を使っています。若手の社員とコミュニケーションを取ることは日々の業務の中でも非常に意識しています。私は1日に5回ほど現場を回っています。他の製造業の社長に比べたら非常に多い数かもしれません。ただ、多く現場に顔を出し、社員の声を聞いているからこそ、社員が思っていることなど、様々な情報がいち早く入ります。また、新しく製造するものがあった時にも直接社員に伝えることもできます。私自身が積極的に若手社員と関わることで、若い世代が積極的に発言できるような組織を目指していきます。生産性向上で "日本一働かない"会社を目指す
株式会社ヤマトインテック 生産準備室室長 勝野寿文
「日本一働かない会社を目指す」そう語るのは、ヤマトインテックの生産準備室室長を務める勝野様。生産性の向上の実現ができれば、日本一働かない会社になれると考えている。生産性を向上させるためには日頃から社内のことを俯瞰的に見ることが必要だ。例えば、作業の重複を無くすために部署ごとにやるべきことを明確化し、今まで以上に効率良く、自由に動けるような組織を目指している。勝野室長が「日本一働かない会社」を目指すうえでどんな想いややりがいをもっているのか、そして、今後の目標に向かって取り組んでいることについて詳しく伺った。伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
"自由な社風に惹かれた"地元企業の魅力とは
「自由な社風に惹かれた」と語る勝野室長。そんな勝野室長の社会人スタートは都内の製造メーカー。自身の結婚を機に地元である長野県で働くことを決意、製造メーカーの経験を活かしヤマトインテックに入社したのだ。勝野室長が魅力に思った「自由な社風」は面接の時から感じていた。面接時、同社で出身高校のOBが働いていることを知り、話が盛り上がったと話す。社員同士の仲が良く、年齢関係なく和気あいあいと社員が話している姿を見て、同社に惹かれていったのだ。入社後は素形材部の一員として型の設計に携わり、型の設計から試作品の製造が主な業務だった。その後製造部に異動し、製造部の部長を経験した後に生産準備室室長に就任した。様々な業務を経験してきたからこそ、より自由な発想で会社を良くするために新たな取り組みを行えるのだろう。自由な社風に惹かれた勝野室長だからこそ、誰よりもそれを体現しているに違いない。さらに良いものを提案し、提案通りにものづくりを行う
お客様にご提案した製品が思い通りに製造できた時に、勝野室長はやりがいを感じるという。お客様に提案したものをつくる、それは、自分が考えた製品が世のためになる第一歩となるのだ。実際、同社の製品は、世界で有名な高級自動車メーカー「ベンツ」や「ポルシェ」、「BMW」などにも使われている。そして、お客様からいただいた図面通りにただつくるだけではなく、消費者のニーズに応えるために、必要に応じて設計の見直し提案も行っているという。世のためにさらに良いものをつくりだす。この考えがあるからこそ、従来の技術だけにとらわれることなく、さらに良い製品をつくり出すための技術革新を続けているのだ。そんな同社の技術の進化を引っ張る一員として、勝野室長は今後もお客様のためにさらに良い製品を提案し続けるのだろう。そんな勝野室長の原動力となっているのが、思い描いた製品ができた時のやりがいなのだ。「生産性の高い会社」に向けて
生産性の高い会社を目指し、「日本一働かない会社」にする。勝野室長が思い描く、今後のヤマトインテックの理想像である。その言葉が語る真の意味とは従業員が幸福となることだ。勝野室長は今後もっと自由に働ける日が来ると感じている。現に日本では働き方改革が行われ、働く時間や働く場所等、働く環境が自由になりつつある。そして今後、その波はさらに大きく打ち寄せてくると考えている。その時代の波に乗るためにより生産性高く、より自由に動ける組織を目指しているのだ。具体的に改善したいポイントは重複している作業や時間のロスを削減することだ。作業の重複に関しては今以上に仕組みを明確化させ、部署ごとにやるべき仕事を確立していく。時間の使い方に関しては、今行っていることが何に繋がるのかを社員が理解できるような組織づくりを行うことで改善から実行までのスピードを早めていく。生産性を高めた先に、「『日本一働かない会社』になれると良いですね」と勝野室長は笑みを浮かべた。製品が使われている
融合している
やりがいがある会社、ワクワクする会社をつくるためには
どのような会社にしていきたいですか?
若手の社員が自由に意見を出して、自分たちでやりがいをつくりだせるような環境をつくっていきたいですね。そのような環境をつくり出すことで、毎日ワクワクしながら働けると思います。若手が活発に意見を出せるような会社は活気があると思いますし、必然的に社内の雰囲気も良くなりますからね。なので、若手には主体的に「自分たちがやるんだ!」という気持ちを持って業務に取り組んで欲しいですし、最終的にはより良い方向に会社を変えていくような意識を持って仕事を行って欲しいです。そんな強い意志が今後のヤマトインテックを引っ張っていくことにも繋がりますし、やりがいで溢れる会社になって、常にワクワクできるような仕事が行えると思います。ヤマトインテックならではのポイントを教えてください!
お客様からいただいた図面通りに作業をするだけではなく、品質に不具合が出ないために新たな工程を考えたり、よりお客様のことを考えた提案を行えたりすることですね。その背景には、日頃の業務から常にお客様のためにどうやったら良い製品をつくれるかを考えながら作業を行っていることがあると思います。少量多品種生産を行っているからこそ、ヤマトインテックにしか対応できないものがありますし、ヤマトインテックだからこそ提案できるものもあります。そのため、多種多様なお客様の要望に応えることができるのです。これは常にお客様のために最善のものを提供することを心がけているヤマトインテックならではの強みだと思います。今後、新たに取り組んでいきたいことは何ですか?
社員が広い視野を持って仕事を行えるような環境をつくっていきたいですね。どうしても、視野が狭いと固定概念に囚われてしまうので、その固定概念を取り除くためにも広い視野を持って仕事を行うことを意識して欲しいです。そして、その意識が仕事の多様性にも繋がると思います。社員の視野を広げるために、積極的に職場異動を行えるような組織にしたいと考えています。様々な業務、数多くの経験を積んでヤマトインテックとしてどんな選択を取るべきなのか、ヤマトインテックが出せる価値は何かなど、作業員としての枠を越えて、今後のヤマトインテックをつくる一員として広い視野を持ち、会社をより良くするためには何ができるのかを一緒に考えていきたいですね。
株式会社ヤマトインテック
1584年 松本領主小笠原貞慶が松本城近くで創業 信濃国の武具や仏具などを製造
1962年 塩尻市広丘へ移転 小型トラック用の排気管からエキゾーストマニホールドの
製造開始
1971年 長野県工業試験場が「Vプロセス造型法」の開発に成功(後の世界特許)
1977年 Vプロセス開発において「大河内記念技術賞」を受賞
1991年 株式会社大和製作所から株式会社ヤマトインテックへ改称
1997年 多額の先行投資とリース返済などにより方針転換を迫られる状態となる
1999年 かつての主力製品だったエキゾーストマニホールドや新たな
挑戦部品としてのターボチャージャー部品への特化を決定
業績回復を果たす
2008年 環境対策が進むディーゼルエンジンのターボチャージャー部品で、一時は弊社が世界シェアの10%を占めるまで成長
2013年 フィリピンに工場レンタル、生産設備を移設してベアリングハウジング製造工程の一部委託操業をスタート
2017年 フィリピンに合弁会社YNPCを設立し、同時に生産設備を増設
2020年 中国市場との連携も視野に入れ、グローバルな複合的な鋳造メーカーとして新たなステージを目指す
1962年 塩尻市広丘へ移転 小型トラック用の排気管からエキゾーストマニホールドの
製造開始
1971年 長野県工業試験場が「Vプロセス造型法」の開発に成功(後の世界特許)
1977年 Vプロセス開発において「大河内記念技術賞」を受賞
1991年 株式会社大和製作所から株式会社ヤマトインテックへ改称
1997年 多額の先行投資とリース返済などにより方針転換を迫られる状態となる
1999年 かつての主力製品だったエキゾーストマニホールドや新たな
挑戦部品としてのターボチャージャー部品への特化を決定
業績回復を果たす
2008年 環境対策が進むディーゼルエンジンのターボチャージャー部品で、一時は弊社が世界シェアの10%を占めるまで成長
2013年 フィリピンに工場レンタル、生産設備を移設してベアリングハウジング製造工程の一部委託操業をスタート
2017年 フィリピンに合弁会社YNPCを設立し、同時に生産設備を増設
2020年 中国市場との連携も視野に入れ、グローバルな複合的な鋳造メーカーとして新たなステージを目指す
創業年(設立年) | 1584年 |
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事業内容 | 銑鉄鋳物鋳造 アルミエクステリア製品鋳造の製造 |
所在地 | 長野県塩尻市広丘野村 1048番地 |
資本金 | 9,025万円 |
従業員数 | 265人 |
会社URL |
監修企業からのコメント
この度は取材をお受けいただき、誠にありがとうございます。
ヤマトインテック様が大事にされている「自由闊達」な社風。
そのお話を聞き、非常に感銘を受けました。
今後更に、進化を続けていく同社から目が離せません!
掲載企業からのコメント
弊社を取り上げていただきありがとうございました。
社長に就任して1年、これまでの活動で変化が出ていることを実感すると共に、今後に向けてさらに気が引き締まりました。社員と共に、さらに成長していきたいと思います。鋳造の世界において、さらに長い歴史を刻んでいけるよう邁進してまいります。