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株式会社ツジトミ

株式会社ツジトミ 代表取締役 辻 高幸

国内最大の面積を誇る湖、琵琶湖。湖東エリアは室町時代から麻織物の産地として有名で、「近江の麻」は良質な麻として知られている。その中で、200年以上前に産声をあげたのが株式会社ツジトミだ。創業当時、織布の生産販売を行い、そこから紡績、不織布、さらには海外進出などあらゆる分野、新たな取り組みを続けてきた。長い歴史に甘んずることなく、挑戦を続けてきた背景には、辻社長の考え方があった。辻社長は仕事の心得を「遊び心と博打心を持って仕事をする」と話した。既定の枠組みにとらわれない遊び心、あらゆることに挑戦する博打心。この2つの考え方があるからこそ、他社にはない高い対応力を有しているのだ。創業200年を超える企業が大事にしていること、そして今後の展望について辻社長に詳しく伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

あらゆるニーズに柔軟に対応する。
ツジトミが大事にしている想い

「お客様のニーズに合わせ柔軟に対応すること」株式会社ツジトミが大事にしている考え方である。同社の扱う不織布は、幅広い用途で活用されている。そのため、お客様によって求められることはまったく異なる。同社では、何か一つの業界に特化するのではなく、お客様のニーズに合わせて製品を開発してきているのだ。
そのような社風が根付く背景には、辻社長の意思決定の早さがあるのだろう。億単位の設備投資であっても、ニーズに応えるためにその必要性を即座に判断し購入を決める。この判断の早さにより、業界をリードしてきているのだ。そして、この考え方が現場の社員、そして海外子会社にも浸透している同社だからこそ、海外の工場からも億単位の設備投資をしたいという声があがるのだろう。
トップの判断速度と現場の柔軟性によってあらゆるニーズに応えてきた同社では、今後もさらにその幅を広げていくことに違いない。

不織布の雑貨屋と言われるまで

「不織布の雑貨屋」株式会社ツジトミの強みを聞いたところ辻社長から一番初めに出た言葉だ。その言葉の裏には、幅広い製法と幅広い商品がある。同社は様々な設備を有しており、あらゆる要望に対応できる力があるのだ。辻社長も「専業のメーカーだと規格化されたものしか製造しないため、変わった機能を求められたときに対応できない。しかし、我々は様々な設備があるため、どんな要求が来ても何らかの提案ができる」と話すほど、同社のあらゆるニーズへの対応力は強みとなっているのだ。現在、事業も大きく自動車、建築関係、インテリア、産業資材、土木資材の5つに分かれており、様々な業界の様々なニーズに答えることができる。「不織布の雑貨屋」になるまでの道のりは簡単なものではなかった。創業当時は機織りからスタートし、戦後の原材料不足から紡績業に参入。そして、不織布として事業を展開させた。時代、お客様のニーズに合わせ、あらゆるものに対応してきた。この対応力が長い歴史を築き上げることができた理由である。

新規顧客・業界を開拓し続ける

今後さらに発展していくために、「新規開拓は義務である」と辻社長は語った。同社の扱う不織布は、用途が非常に広い。そのため、客層も変わりやすいのだという。現在主軸となっている業界が衰退していくこともあれば、新たな業界に参入することもできる。だからこそ、新規開拓をし続けることが重要なのだ。
実際、以前は主軸であった自動車やインテリア関係は、コロナの影響を受けて売上が減少している。反面、土木資材やスポーツ資材など、新しい分野の台頭が見られるという。中には、単一の製品で一年間の5%ほどの売上を稼ぎ出す製品もあるというから驚きだ。
「我々は急成長することはできない。しかし、10年に1度はヒットを生み出していきたい」そう語る辻社長の下、同社は着実に歩を進めていくのだろう。創業200年を超える安定した基盤を持ちながら、常に新しいものを追い続ける同社の今後が楽しみでならない。
「近江の麻」の湖東エリアに
本社を構える
200年以上の歴史を誇る
不織布の用途は多岐に渡る

今までどんなことを大事にしてきたのか、
そして今後の取り組みは

経営者として大事にしていることを教えてください!

他社が真似できないような個性的な事をしていきたいですね。自分の性格上、この考えは常に持っています。他社が真似できない製品をつくることが自社の優位性にも繋がると思います。そのような状態をつくり出すためには、既存の仕事をしているだけではダメだと思いますし、言われた事だけをやるという考え方ではダメだと思います。なので、日々の業務から遊び心と博打心、この2つの気持ちを持つことが大事です。既定の枠組みにとらわれることなく、様々なことをやってみる遊び心、そして今までやってきたことのないものに挑戦する博打心。この2つがあれば、他社に真似できない製品を生み出せると思っています。

今後、どんなことに取り組んでいきますか?

新規開拓が1つの目標なので、それを見越して新たなネットワーク、情報源づくり、迅速な対応力の強化を目指していきます。新たなネットワークですが、どうしても自社だけだと業界すべのことを理解できないので、同業者と協力し、情報を交換することが新規の受注にも繋がると思うので、ネットワークを広げ、様々なところから情報を収集できるような仕組みをつくっていきたいですね。そして、集めた情報や新規の受注に今まで以上に対応できるよう、より対応力に磨きをかけ、迅速にお客様の要望に応えられるようになるべきだと思います。ネットワーク、情報、対応力、この3つに力を入れて、今まで以上にお客様のニーズに答えられるような製品をつくっていきたいですね。

今後、不織布業界でどのようなことを行いたいですか?

同業者と協力し、日本として不織布の生産レベルを上げていく必要があると思います。日本としての発信力を強めていかないとグローバル競争に生き残れないからです。そのために必要となってくるものが同業者とのネットワークを通じた情報交換。また、1つの会社がすべての仕事を受けられるわけではないので、この分野ならこの会社がやるといった仕事の分担。こういった取り組みを通して、不織布の業界の団結力を高めていくことが必要だと思います。業界としての力を高めていきつつ、その中でもツジトミが業界を引っ張る存在というか、日本国内で目立っていけるような存在になっていくことが、今後の成長にも繋がると思いますので、協力しながら不織布業界を盛り上げていきたいですね。

多角的な視点で組織の多能工化を目指す

株式会社ツジトミ 品質管理部部長 片山 徹

2010年に営業部として中途入社をした片山さん。営業、生産管理など、幅広い業務に携わってきて、現在は品質管理部の部長として不良率削減の仕組みづくりを行っている。今まで行ってきた取り組みとしては、標準書の整備。これまで社内になかった製品の基準をつくりあげてきたと言っても過言ではない。その取り組みを通じて、社内の不良率を3割程度削減することに成功している。そして、これから取り組みたいことは社員の多能工化。社員同士が互いに協力し合って仕事ができる組織をつくりあげることにより、より効率的、より連動して作業を行える会社を目指しているのだ。そんな片山さんに、入社理由や現在のやりがい、今後の夢について詳しく伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

ものづくりを通じて新たなステージへ

「ものづくりが好き」11年前に中途入社した片山さんが当時、感じていたことである。前職でもものづくりに携わっており、また、生地に関わる職を選んできた片山さん。その中で新たな業種に挑戦すべく、同社への入社を決意した。入社後は営業活動をしながら、開発の仕事も行っていた。その後、先輩の後を継ぎラインの工程管理から原料の仕入れまで行うようになった。そして7年前、品質管理部の立ち上げと同時に部長に就任したのだ。現在、品質管理部の部長として不良削減に向けて、営業部隊へのフィードバック、新たな施策の立案を行っている。また昨今、環境に対する負荷物質が入っていないかなどの含有量調査依頼の仕事も増えてきている。営業、工程管理、仕入れ、品質管理、様々な部門を経験しているからこそ、より多角的な視点で株式会社ツジトミのものづくりに関わっている。その根幹は自身のものづくりに対する愛情があるからだ。

自分の努力が成果に現れること

「社内での不良が減ることは嬉しいですよね」と語る片山部長。自分が考えた新たな施策、取り組みによって不良率削減などの成果が目に見えて出た時にやりがいを感じるのだ。具体的に取り組んだことの一例として、標準書の整備があげられる。品質管理部部長就任当時、作業の細かい部分までは決まっていなかったり、標準書がある製品とない製品があったりした。片山さんは2年から3年の歳月をかけて、このような状態を打破するために標準書を通じて社内の基準をつくった。そして、この取り組みが一因にもなり、社内での不良率が3割ほど減ったという。この改善活動あったからこそ、社内で新しいラインが立ち上がる際にも、不良を抑えながら新製品の開発ができていることだろう。品質管理部の部長として、社内の品質に関する意識や行動の改革を行ってきたからこそ、目に見える形として会社の数字が向上したのだ。

組織の多能工化を目指す

品質管理部という組織を今まで以上に連携させることが片山部長の目標である。社員の多能工化を実現させることで、作業の効率化、会社の売上向上にも繋がると考えているからだ。今後、行っていきたい取り組みとしては品質管理部に2つあるグループ、検査グループと品質管理グループの交流を高頻度で行っていくこと。この取り組みを行うことで柔軟に動ける組織を目指し、より効果的に組織を回せる仕組みをつくっている最中だ。現在、検査グループの社員が品質管理グループの仕事を行ったり、お互いが互いの仕事ができるような取り組みを行っている。最終的な目標は品質管理部のみならず、会社全体として多能工化を目指すことである。その第一歩として品質管理部を変えていく。変化した後の株式会社ツジトミは今まで以上に自由に、更にお客様のニーズに対応できる組織になっているだろう。
連携しながら業務にあたる
様々な設備が活躍している
海外にも子会社を構えている

これからの未来をつくるツジトミの魅力とは

ツジトミの魅力を教えてください!

自由なところですかね。自分がやりたいと感じたことを仕事に反映できる会社だと思います。それこそ、自分が行ったことをあげれば標準書が一番大きいですかね。株式会社ツジトミをより良くするためにこんなことがしたいなどの意見があれば、すぐにその意見を仕事に活かすことができる環境があります。社員一人一人が自分のやりたいことを仕事に反映させる。そのような仕事ができるからこそ、自身の仕事にやりがいを感じると思いますし、組織全体が主体性を持って行動できていると思います。だからこそ、他社に負けない対応力、あらゆるニーズに応えられる力がツジトミにはあると思います。

これから、どんな会社にしていきたいですか?

品質管理と営業の観点から改善を続け、より利益を生み出す会社にしていきたいです。品質管理の観点だと規律の部分をもう少し明確化しないといけません。今まで様々な取り組みをしてきましたが、まだまだ改善できるところはあると思うので、そこは部長として率先して改善していきます。営業の観点だと新規開拓を通じた設備の稼働率向上ですね。稼働スピードを上げたり、切り替えの時間を短縮したり、より効率的に仕事を行えると思っています。そのためには、新規の獲得が重要だと思うので、新たなお客様を獲得しつつ、設備の稼働率を上げる取り組みを行っていく。品質管理と営業の両面から改革を続けていきます。

辻社長はどんな人ですか?

非常に判断が早い人だと思います。投資とかの決断に時間を有するものも瞬時に行いますからね。普通の会社では、ありえないことだと思います。ただ、その素早い判断があるからこそ、他社が手を付ける前に動くことができますし、様々な分野が成熟する前に動けるので新たなマーケットの獲得にも繋がっています。社長が今まで、素早く物事の判断をし、あらゆる分野に事業を展開してきたからこそ、他社が有していない技術力や、製造設備や製品の多様性が生まれているのだと思います。新規の獲得から自社の新たな成長を生み出していると思いますし、その原点は社長の瞬間的な判断です。行動力のすごさには脱帽ですよね(笑)。

監修企業からのコメント

この度は取材にご協力いただき、誠にありがとうございます。
織布の生産販売から始めり、紡績や不織布、さらに海外進出。
数多くのことに挑戦されてきた歴史に感銘を受けました。
今後はどんなことに挑戦されるのでしょう。目が離せません!

掲載企業からのコメント

本日は弊社を取り上げていただきありがとうございました。
弊社の歴史や大切にしてきたものを改めて振り返れる機会となりました。これからも地域や社員のために新たな製品を生み出していきたいと思います。今後のツジトミにぜひ注目していて下さい。

株式会社ツジトミ
1817年  創業
1930年  株式会社辻富商店設立
1960年  辻富麻紡積株式会社に社名変更
1963年  ケミカル製造設備導入
1969年  ニードルパンチ機導入
1975年  辻富麻紡積株式会社に社名変更
1960年  五個荘工場完成
     ケミカル不織布製造部門として独立
1990年  株式会社ツジトミに社名変更
2002年  嘉興華麗非織布制品有限公司設立
2003年  スパンボンド製造設備新設
2007年  本社、五個荘、スパンボンド工場 ISO9001:2000取得
2009年  本社事務所竣工
2012年  ソーラーパネル設置
2016年  五個荘工場にニードルパンチライン新設
2017年  創業200周年
2019年  TSUJITOMI VIETNAM CO., LTD.設立
     ツジトミ設立90周年
2021年  中国子会社が新投資協定
     大幅投資で新工場を建設
     ニードルパンチ新設備導入
創業年(設立年) 1817年
事業内容 不繊布、カーペット、フェルトの製造・販売
所在地 本社工場:滋賀県東近江市猪子町85番地
五個荘工場:滋賀県東近江市五個荘河曲町309番地
スパンボンド工場:滋賀県東近江市山路町721番地
資本金 4,500万円
従業員数 88名
会社URL

株式会社ツジトミ