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多摩エレクトロニクスホールディングス株式会社

人の可能性とシステムの利便性を追求

多摩エレクトロニクスホールディングス株式会社 代表取締役 坪根衡

多摩エレクトロニクス株式会社 代表取締役 坪根衡
シリコン等の素材をサイの目状に切断する「ダイシング加工」の技術を基にした半導体電子部品の製造を中核の事業として現在まで展開してきた多摩エレクトロニクスホールディングス。元々同社は、1979年に沖電気工業の半導体部門の製造協力会社として設立された。2008年のOKIセミコンダクタの売却を機に、現坪根衡社長のもと、MBO(経営陣買収)にて資本独立をし、現在に至っている。今回の取材ではそんな変遷を辿り、紆余曲折を繰り返しながら成長してきた同社のこれまでの歴史についてや、今まで培った技術を生かしながら同社にしか出来ない新たなモノづくりを目指すという同社の展望について、坪根社長と若手の成長株である金田主任にお伺いした。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

スピード・チャレンジ・フレキシブル

『お恥ずかしい話ですが、会社を引き継いだ当初は沖電気の子会社という体質も残っていて「スピードが無くて、チャレンジが無くて、フレキシブルな対応が出来ない」会社でした。そこからこの会社の風土を払拭して変えようと思って、社長就任時に社是として「スピード・チャレンジ・フレキシブル」と掲げました。それが今目指している当社の社風です。少しずつですが確実に社内に浸透してきていると思います』と坪根社長。スピードという面では、モノづくり企業としていかに効率的に製品を生み出すかという改善改革を繰り返し成長のスピードを促進。チャレンジという面では、坪根社長と社員の努力もあり、今までにない初めての自社商品を生み出すことにも成功している。また、フレキシブルという面では、臨機応変な対応が出来ているからこそ、着実に新規の顧客の獲得に繋がっている。元々は同社の弱みだと捉えれていた部分が、確実に自社の強みへと変化した。今後の同社のさらなる進化から目が離せない。

人財とシステムを追求する

同社における最大の強みは、「人財とシステムの活用」だと坪根社長は言い切る。 まずは人財の活用という面は、同社ではスタッフを4班に分け2交代でシフトを組み、365日24時間稼働出来る体制を構築。その中でも「4日勤務4日休日制」を採用しており、その休日を活用して自分のスキルアップの為に資格取得等の勉強を行う。また、社内でもスキルマップという同社のモノづくりに必要な共通スキルを明文化して、従業員のスキルアップをバックアップしている。なお、システムにおいては坪根社長発案の下、100本以上のシステムを自社開発。データベースの一元管理をすることで、生産工程等の業務がリアルタイムに把握出来る仕組み作りを行った。全工場のライン稼働が終わると、坪根社長と幹部にその日に売上高だけでなく製品の不良率やラインの稼働率の報告もあがる。その日のうちに課題点・問題点を幹部が認識しすぐに改善の為の指示を飛ばす。人財の活用とシステムの融合により、生産性を究極まで追求するのが同社ならではである。

他の中小企業と協業しながら新たな価値を提供

今後同社がより発展していく為に欠かせないのが他企業との協業である。 同社はダイシング加工という、ガラスやシリコン、セラミック等の素材をサイの目状に綺麗に切断する技術を持っている。このダイシングの技術との相性を見ながら、他の素晴らしい技術を持っている企業と協業して新たな価値を生み出していくのが今後の目標だと坪根社長は語る。その一つの取り組みとして、同社ではスマートフォンのカメラに使われるレンズの部品である光学ガラスフィルターを、なんと世界最薄の0.10ミリにするというチャレンジに成功した。まだこの光学ガラスフィルターは現在のスマートフォンには活用されてはいないが、この技術によって将来的にさらに薄いスマートフォンを生み出すことを可能とした。今後はこの協業をさらに多分野へと展開していき、「同社の技術×他社の技術」によって今までにない新しい製品や、新しい価値を生み出していく。
集中して作業に取り組む
集中して作業に取り組む
人材育成大賞を受賞
人材育成大賞を受賞
盛り上がる夏の社内イベント
盛り上がる夏の社内イベント

坪根社長のこれまでを通じて引き継いでいきたい会社への想い

-坪根社長のこれまでのキャリアを教えてください

私は最初に沖電気という会社に入社しました。半導体の開発を担当し、年間200億円もの売上を上げるヒット商品を作りだすことも出来ました。この技術は半導体技術の教科書にも載り、当時は学会の発表で世界中を飛び回り、賞賛されましたね。ところが数年もすると、会社の方針転換でメモリ開発に事業を集中することになり、そこからは生産企画、工場での生産管理、光通信事業の立ち上げ、戦略企画室と畑違いの部門へと次々と配属されました。そして、この多摩エレクトロニクスホールディングスに来てからは総務と経理を経験し、今の社長業に至ります。普通の人が経験出来ないキャリアを形成してきたからこそ、バランスを取りながら細かい舵取りが出来ている部分はあるのかなと思います。

―MBO(経営陣買収)をしようと思った背景を教えてください

正直「成り行き」だと思っています。 もともとは沖電気時代に私が自ら統廃合を具申したこの会社に転籍したのは、当時の社長から強い誘いがあり応じた結果です。ですが転籍後、2008年に沖電気の半導体事業は、多摩エレクトロニクスホールディングスを含む子会社ごと売却されました。そして2009年には、多摩エレクトロニクスホールディングスは統廃合されることが決定されました。そこで私は「会社をたたむくらいなら売ってくれませんか」とMBOを申し出ました。大企業の視点からすれば必要のない会社だが、子会社の経営者の視点から見れば、既存の取引先には必要とされるべき会社だと思いました。また、社長というのは一度くらいまでは経験してみたいとも思ってましたし、お客さんに相談したら、「是非やりなさい」って言ってくれたんですよね。

―今後の組織創りに向けて取り組んでいることがあれば教えてください

実は3年前に肝臓がんの手術をしたんです。今は落ち着いてはいますが、今後いつ私がどうなるかっていうのは分かりません。社員にももちろん伝えていることですが、数年以内にこの会社を引き継いでいきたいと考えています。そこで私は、今後この会社をしっかりと次世代に向けて引き継いでいく為にも、後継者育成の為の布石を打ってきました。具体的には会社の10年後を考える若手リーダー育成の為の「10年塾」や幹部になりたてや候補の人を育成する「幹部塾」、私の後継者育成の為の「経営塾」というものを実施しています。まだまだモノ足りない部分はありますが、従業員は着実に育ってきていると思います。私がいなくても、しっかり雇用を守り、従業員が未来を描けるそんな会社になっていって欲しいと思います。
多摩エレクトロニクス株式会社 高尾営業所 主任 金田真幸

未来の会社を担う存在へ

多摩エレクトロニクスホールディングス株式会社 高尾営業所 主任 金田真幸

多摩エレクトロニクスホールディングスでは、クライアントの生産ラインを請け負うアウトソーシング事業も展開している。その中で金田さんは光モジュールという電子部品の生産工程の請負を担っており、昼夜合わせて20名ほどの社員やパートさんが働いている。そのマネジメントを一任されている金田さんは、日々壁にぶつかりながらも成長する為に試行錯誤を繰り返す。若くして責任のあるポジションを任されている金田さんは業務に関連することはもちろん、その周辺領域にまで勉強することを怠らない。会社からの期待を背負い、今後の幹部候補でもある金田さんが同社に入ることになったきっかけからこれからの展望までお話を伺った。

伝統の承継と挑戦の未来を担う社員の思い

社長を目指して

「モノが新しく生まれることが、楽しくてたまらなかったんです」とモノづくりの魅力を語る金田さん。そもそもモノづくりに興味を惹かれたきっかけは、高校生時代のハンバーガー屋でのアルバイトだという。「流れ作業の中で工程を経て製品が仕上がっていくのが楽しくて、将来的にもこんな仕事がしたいと思いました」と金田さん。そこで働くフィールドとして、モノづくりが出来る工場での仕事を探した。いくつかの工場で働く中で出会ったのが多摩エレクトロニクスホールディングスだ。日々、一生懸命モノづくりに没頭する中で、その仕事ぶりが評価され、数年後に坪根社長から「正社員としてうちで是非働かないか」と声がかかり、正社員として正式に採用されることになった。今までもそんなチャンスがあった中で、同社を選んだのは何より坪根社長の人柄があるからだ。「坪根社長は聞けばなんでも応えてくれるし、誰よりも一生懸命なんです。すごく高いハードルですが、少しでも坪根社長に追いつきたいです」と金田さん。高い志を持つ金田さんのチャレンジは続いていく。

「成長」そのものがたまらなく気持ち良い

「成長しようとすれば、いくらでも成長できる環境がここにはあります」と金田さん。仕事を進めていく中での必要な資格の取得支援などはもちろん、社内の勉強会なども数多く開催されている同社。金田さんは積極的にその様な機会を生かしながら、勉強し資格取得に励んでいる。「正直勉強はあまり得意な方ではありませんでしたし、もともとは仕事上で必要不可欠だからやっていたいう感じが強いですね」と苦笑いをする金田さん。しかし、勉強を続け、様々なことを自分の知識として吸収するうちに自分自身の成長がやりがいへと変わっていったという。様々な資格を取得してきた金田さんが今後さらに目指すのは同社の業務の中心である半導体製造に関わる、半導体技能士という資格の取得だ。「知識と技術をいっぱい学んで、部下にも伝えていきたいですね」と金田さん。誰に言われるでもなく、積極的に勉強し自分の知識や技術を深めていく金田さんに、仕事人としてのあるべき姿を垣間見たような気がした。

もっと会社を良くしていきたい。自分たちで創りたい

「将来的には会社の中で自分の課か部を持ちたいですね。もちろん実績も作りたい」と語る金田さん。「『ウチは他と比べて、下も上もない。お前たちがやらないと良くならないんだよ』って社長からも常々言われますし、自分でもそう思います」と、持ち前の責任感を露わにする。そして、自分達の成長が会社を支えていくことを部下たちにも伝えてることで、もっと楽しく有意義に仕事ができると確信している。金田さん自身が今まで周りに育ててきてもらったという認識が大きいこともあり、部下を可愛がり、成長させたいという気持ちは人一倍だ。「自らが成長し、部下の成長を支援し、若い人たちでこの会社の未来を作っていきたい」と金田さん。その為にもまずは周りに認められる実績を出して、自分の部署を創っていくことが当面の目標だ。「出来ることはなんでもチャレンジします」という金田さんは坪根社長が開催している幹部塾という社内塾にも入塾した。最年少幹部候補の金田さんが会社を支えていく。
コアになるダイシング加工装置
コアになるダイシング加工装置
要議題を決める幹部ミーティング
要議題を決める幹部ミーティング
スポーツイベントも多彩
スポーツイベントも多彩

全ての鍵は「チームワーク」

-仕事をする上で一番大切だと思っていることは何ですか

これは今の多摩エレクトロニクスホールディングスの課題でもあると思うのですが、どうやって職場のチームワークを良くすることができるか、これに尽きると思いますね。納期に穴をあけないということもそうですし、生産性をより高めていくのには不可欠ですね。仕事中にどういう声のかけ方を工夫したらモチベーション高く取り組んでくれるかなとか、よく考えています。でも、業務の中で円滑に情報伝達をしたり、相互に理解するためには、業務以外の時間のほうがより大切なんじゃないかなという気もします。そのためにも、積極的に業務時間外でコミュニケーションをとっていくことは常に意識しています。自分の夢を語るのと同時に、相手の夢も聞いたりとか。あんまり頻繁にはいけないですけど、飲み会を開いたりするのも大事だと思っています。

―自分が会社でやってみたい試みは何かありますか

多摩エレクトロニクスのバスケットチームを作りたいですね。実はもともとバスケット部だったので。周りの企業はよく会社で野球などのチームをもっているので、自分たちの会社でもやりたいというのは前々から思っていました。単純にバスケットをしたいということもあるのですが、それよりも会社内で横のつながりをなんとか作っていきたいと思っているんです。特に数多くの世代がずれている方も多くいるので、こういうサークルがあったら交流できるんじゃないかなと思っています。部署ごとのつながりも現状密接とはなかなか言えないので、こういったことをきっかけに会社がもっと元気にしていきたいですね。

―最後に、多摩エレクトロニクスホールディングスをこれからどんな会社にしたいか教えてください

やっぱり、皆が笑顔でいられる会社にしたい、そう思っています。下を向いてるよりは、皆が前を向いていて、前に進んでいく、これが一番だと思います。笑顔でいるためには、コミュニケーションをしっかりとって、チームワークを発揮することが重要ですね。チームワークを発揮するためには、目標がないとだめですね。部署ごとに目標と目的があって、それを皆が共有していれば、チームワークは自然と生まれてくるはずです。ただ、様々な年齢層の、価値観の異なる人たちもマネジメントしていかなければいけないので、工夫が必要ですね。厳しいときには厳しく、楽しいときには思いっきり、当たり前ですけど、そんなメリハリの効いた空気の中で、皆が笑顔でいられる会社を創っていきたいです。

監修企業からのコメント

常にチャレンジを繰り返し、進化してきた多摩エレクトロニクスホールディングス。 その全ての根本にある坪根社長の考えや大切にしている価値観についてお伺いさせて いただきました。他の会社とは一風変わった、これまでの会社の成り立ちから今後の可能性まで ぜひ記事を通して皆様に感じていただきたいです。

掲載企業からのコメント

この度は当社を取材して頂きまして、誠にありがとうございました。 取材を通して改めて会社の歩みを振り返る良い機会となりました。 今この業界は変化を求められています。今回お話した今までの想いを大切にしつつ、 しっかり未来を見据えて頑張っていきます。

多摩エレクトロニクス株式会社 代表取締役 坪根 衡
多摩エレクトロニクスホールディングス株式会社
1979年12月 日映電子(株)として設立
1980年 4月 現在地で操業開始、IC特性選別
1990年 3月 資本金8,000万円に増資
1990年 4月 社名を多摩沖電気株式会社と改称
1990年 7月 新工場竣工、ICプロービング事業開始
1993年10月 リニアテスト事業開始
1994年 4月 ISO9002(品質システム)認定取得
1995年 8月 ロジックテスト事業開始
1997年 1月 ISO9001 (品質システム)認証取得
1997年 7月 1997年7月ISO14001 (環境システム)認証取得
1997年12月 DRAMテスト事業開始
1998年 9月 近接スイッチ組立事業開始
1999年 4月 LEDアレー、受光デバイス製品のプロービング事業開始
2002年10月 光学ガラス事業開始
2003年 5月 WCSP生産、一貫工程ラインの構築
2004年10月 光学部品洗浄事業、車載用衝撃センサ組立事業開始
2007年 5月 「ものづくり」生産活動の全社展開
2008年11月 社名をOKIセミコンダクタ多摩株式会社に改称
2009年 6月 社名を多摩エレクトロニクス株式会社に改称
2010年 3月 北上事業所、座間事業所開設
2010年 5月 ISO9001 (品質システム)認証再取得
2011年 2月 秩父事業所開設
2015年 3月 BAGフィルター開発、販売開始
創業年(設立年) 1979年
事業内容 ダイシング加工(シリコン/オプティカルフィルター/セラミック/水晶/その他複合材) 半導体集積回路チップ選別(並べ/外観選別)、光学部品設計製造 プログラミング/データー書き込み(FLASH / MICON / OTP / PLD / DSP) テープリール収納 収納容器変更(テープリール ⇔ スティック) クリーン洗浄 外観選別(集積回路/オプティカル・フィルター/他電子部品) ウェハテスト(ロジック/ドライバ) ファイナルテ
所在地 東京都八王子市中野上町4丁目8番3号
資本金 8000万円
従業員数 7名(2019年7月1日) 単独 289名(2019年7月1日) 連結
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