スター電器製造株式会社 代表取締役社長 鈴木 穰
今回取材させていただいたのは、神奈川県藤沢市に本社を構えるスター電器製造株式会社。同社の代名詞とも言える“SUZUKID”を中心に小型溶接機の製造・販売を行い、溶接機製造業界で確固たる地位を築いてきた。そんな同社が製造する溶接機は、産業界から一般家庭まで幅広い分野で人気を集める。特に一般家庭への普及に力を注いできた同社。現在では大手ホームセンターをはじめ、ECサイトにも販路を持つ。また、溶接機メーカーでは珍しい直営店を複数店運営し、溶接を身近なものへさせる。“モノ”より、“コトを売る”という信念を持つ鈴木社長の溶接への熱い思いを伺った。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
社員のアイディアを取り入れ、まずはやってみる社風
同社には社員のアイディアを取り入れ、まずはやってみる社風が存在する。社員の意見を積極的に取り入れ、社員と共に良いものを創り上げたいという鈴木社長の想いが色濃く存在する。例えば最近では、溶接の良さを発信していきたいという社員のアイディアからYouTubeなどのSNSを活用した情報発信が実行された。「社員全員を信頼している」と鈴木社長の言葉があるように、社員への信頼がまずはやってみるという社風を生んだ。ただ、信頼しているが故に思慮の足りない詰めの甘い仕事は仲間への裏切り行為とも語り、厳しさの奥に真の優しさがあるとも話す。このように社員一人ひとりがアイディアを活発に発信できる環境が同社には存在する。その社風がイノベーションを起こし続け、60年の長い歴史を築き上げてきた。しかし、「社員からのアイディアをもっと増やしていきたい」と語る鈴木社長。今後、より社員からの意見を取り入れ、会社を良くしていきたいと意気込む。
溶接を一般家庭へ
同社は業界で初めて100Vの家庭用の電源で使用することができる小型溶接機の製造・販売を通じて、溶接を一般家庭へ普及してきた。これこそ同社の独自性だ。「溶接の素晴らしさをもっと知ってもらいたい」、「溶接の楽しさを家庭にも届けたい」という強い思いをもつ鈴木社長。その思いをカタチにしたのが直営店Fe★NEEDS(フェニーズ)だ。この直営店はワークショップとして鎌倉と目黒に2拠点を展開し、実際に溶接の魅力を体感してもらうことを目的としてオープンさせた。気軽に溶接DIYが楽しめ「やってみたい。が実現できる空間」を提供している。溶接経験者から未経験者まで幅広い層のお客様が来店し、溶接と触れ合っている。実際に溶接を体験することで、溶接機を購入するお客様も増えた。直営店を立ち上げる前は直接ホームセンターなどに売り込みを行っていたが、現在は先方から引き合いを受けるようになった。溶接を一般家庭に普及していくという同社の独自性は更なる進化を遂げていく。存在としてのナンバーワンへ
「会社の業績や規模ではなく、存在としてのナンバーワンを目指していく」と展望を語る鈴木社長。唯一無二のメーカーへ同社は努力を惜しまない。今後はより一般家庭向けと職人向けのそれぞれで施策を打ち出し、更なる成長を遂げていく。一般家庭向けへはより溶接を身近に感じてもらう仕組みづくりに力を注ぐ。YouTubeなどのSNSでの発信はもちろん、溶接人杯という独自のイベントを開催し、溶接を身近に感じ、実際に体験してもらうことで、魅力を発信していく。職人に向けては「SUZUKIDを通じて、ポジションを確立していく」と語る鈴木社長。これまで小型溶接機を家庭向けに提供することを強みとしてきた同社は、職人の世界でうまく立ち位置を確立できないでいた。今後、職人の世界で立ち位置を確立するため、職人向けの溶接機の製造に力を注いでいく。一般家庭用と職人用の2軸で成長を遂げた同社の未来は明るい。
スター電器製造のフラッグシップモデル
溶接の魅力を発信する直営店「Fe★NEEDS」
社員旅行を通じ、社員同士の絆を深める
鈴木社長が溶接に抱く想い
今後より溶接を身近な存在にするために考えていることを教えてください
今後はより女性への発信を強めていきたいと考えています。実は男性よりも女性の方が溶接に向いていると考えています。なぜなら、女性は手先が器用な方が多く、細かい作業を正確に行えるからです。溶接には細かい作業が多く、器用さが求められる一面があります。現在は圧倒的に男性ユーザーの方が多いですが、徐々に女性ユーザーも増えてきたと感じています。より女性ユーザーを増やすために、某有名DIYファクトリーとコラボするなど、おしゃれな溶接機やその他アイテムを製造しています。今まで男性の世界だと思われていた溶接をどんどん女性に発信していくことで、溶接をより身近に感じてもらいたいと考えています。会社の団結力を高めるために工夫していることを教えてください
会社の方向性を合わせるために、月に一度スクラムミーティングを開催しています。このミーティングは社員からの発案をもとに開催されました。背景には2019年のラグビー日本代表の躍進があります。その躍進を受けてワンチームになることの重要性を感じました。そのためスクラムミーティングというラグビーっぽさのある名前にしました。ちなみにこの名前も社員からのアイディアです(笑)。当ミーティングでは管理職の社員を中心に9名程度が参加し、議題を設けず何でも話し合うことをルールにしました。このルールの下で会議を進めていくと、固定概念に捉われず、様々なアイディアが生まれます。また、会社の団結力が高まり、社員一人ひとりの方向性を一致させることができます。溶接への想いを教えてください
とにかく溶接やその素材となる鉄が大好きです。町を歩いているときなど鉄でできたものを見ると触ってしまったり、カッコいい錆を見ると写真を撮ったりしてしまいます。昨今、テレビ番組でDIYの特集が組まれるなど、溶接の認知度が上がってきました。その中で、溶接があるライフスタイルやワークスタイルをかっこよくしていきたいと考えています。具体的にはエプロンなどのアイテムを普段から身につけていてもオシャレなものにするなど、一般の方々が興味を引くようなものにしていきたいです。また、プロの作業着も安全保護具という目的の位置づけから難しい面もありますが、だからこそ当社がやる意義や価値があると考え、ウェルディングアパレルと呼ばれる文化を築きたいです。"モノ”より”コト”を売る 会社を支える男
スター電器製造株式会社 市川明信様
スター電器製造株式会社の中枢を担う技術部で係長を務める市川さん。2003年に新卒で入社をしてから17年の間キャリアを積み重ねてきた。現在は溶接機の開発を担当しており、その技術力と経験から大きな信頼を得ている。“モノ”より“コト”を売るという考えに共鳴し入社を決めた市川さんのこれまでの軌跡と今後描く未来について伺った。伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
唯一無二への挑戦
「一般家庭用の小型溶接機の製造が面白そうだった」と入社理由を語る市川さん。学生時代は理系の学校に通学しており、将来は設計や技術職に就きたいと漠然と考えていたという。 就活を通じて、同社に出会い選考に進んだ市川さん。当時を振り返り「溶接に興味はありましたが、まったく知識はありませんでした」という言葉通り、何も知らない状態で選考に進んだ。選考を進むにつれて、一般家庭用の溶接機を製造するという他の誰もやらないような事業に興味を抱いた市川さん。「“モノ”ではなく“コト”を売るという考え方に深く共感した」と語るように溶接への挑戦を心に決め、未経験での入社を決めた。その後、数々の経験を通じ成長を続けてきた市川さん。現在では技術部の係長として、同社を引っ張る存在として活躍している。お客様のために、細部までこだわり抜く力
「自分が手掛けた商品がホームセンターやネットで販売されている場面を見た時大きなやりがいを感じる」と語る市川さん。試行錯誤を繰り返し、“溶接”をお客様にとってより身近な存在にするための努力が報われた瞬間だ。同社では一つの製品を一人の担当者が完成まで担当する。「苦労は多いが、商品への思い入れは強くなる」と語るように担当した製品への愛着が自然と湧くという。特に、オーディオ関係のトランス(トランスとは変圧器のことで、従来の溶接機等に使用されてきた同社のコアとなる技術)を製造した時にやりがいを感じたという市川さん。通常の小型溶接機の製造よりも品質を求められ、キズ一つが命取りになる。その緊迫感の中、完成までこぎつけ、お客様から高い評価を得た。苦労しながらも仕事に向き合い続けた市川さんの努力が報われた瞬間だ。試行錯誤を繰り返しながら溶接と向き合う市川さんの姿勢は同社に欠かせない。”モノ”より”コト”を売ることへの挑戦
「溶接人口を増やしたい」溶接への溢れる思いを語る市川さん。「“モノ”より“コト“を売る」スター電器製造の根源を体現していく。溶接をより身近な存在にしていくために、「認知と体感が大切」と語る市川さん。より認知させるためにYouTubeなどのSNSでの発信に力を入れていく。同社はYouTubeチャンネルを開設し、現在は900人を超える登録者数を誇る。実際にYouTubeで溶接を知ったお客様から小型溶接機の発注があるなど効果を発揮している。次に、より体感させるために、直営店Fe★NEEDS(フェニーズ)を通じて、溶接を身近に体感してもらう。現在は男性のお客様はもちろん、女性同士や家族連れで来店してくれるお客様が増えてきたという。今後より幅広い人たちに興味を持ってもらうために、本体だけでなく、アクセサリーなどの付属品のオプションを増やしていく。誰もがおしゃれに手軽に楽しめることで溶接人口を増やしていきたい。市川さんの描く未来は希望であふれる。
新しい技術で、安心安全な溶接作業を実現
熱意を持って仕事に取り組む姿
お客様からの感謝の言葉が並ぶ
市川さんから見るスター電器製造とは
会社の雰囲気について教えてください
社員同士の仲が良く、和気あいあいとした雰囲気をもっています。製造業の会社だと他部署同士の関係が良くないと思われがちですが、我々にそのような雰囲気はありません。これも鈴木社長の人柄が大きな要因だと考えています。誰とでも分け隔たり無くフランクに接してくれる鈴木社長の人柄は社内に深く浸透し、文化となりました。特に技術部は仲が良いと思います。平日の仕事終わりに飲みに行くこともありますし、休日はバーベキューを行ったりしたこともあります。また、溶接人杯には社員を数グループに分けて参加することになりました。自社商品をみんなで使って、一緒に一つのものをつくることは大切だと思います。これからもこの仲間たちと協力し合って溶接の素晴らしさを広めていきたいです。市川さんから見た鈴木社長について教えてください
本当に溶接が好きな方で、溶接への愛情は世界一だと思います。普段から鉄でできた名刺入れを持ち歩くなど常に鉄と触れ合い、日頃から溶接を広めるための仕掛けがないかを模索していています。私も隔週に一度鈴木社長とミーティングを行い、情報を共有していますが、社員との距離感も近く、とにかく人望が厚い人です。誰とでも分け隔たり無く接してくれる人柄で、社員一人ひとりと向き合い、現場からのアイディアをいつでも受け入れてくれます。お客様との関わり合いの中で印象に残っていることを教えてください
お客様に商品を届ける際に、お客様カードを同封して送るのですが、そのカードを通じてお客様と密な関わり合いを実現しています。お客様カードには、お客様から直接ご意見をいただいたり、感謝の言葉をいただいたりすることができます。お客様から直接ご意見をいただくことで、製品の改善につなげることができ、進化を遂げていくことができます。また、「SUZUKIDのおかげで溶接が楽しくなりました」や「今後もSUZUKIDを使っていきます!」など感謝のコメントをいただくと仕事のやりがいにつながります。お客様カードを通じてお客様と密な関係を持てることも同社の強みでもあります。スター電器製造株式会社
昭和35年1月 東京都北区にて創業
昭和36年4月 鈴木産業有限会社に改組
昭和38年2月 鈴木産商株式会社を設立 鈴木 樹 代表取締役社長に就任
昭和38年3月 東京都練馬区に本社屋完成
昭和43年3月 基本方針並びに社是制定・本社事務所を増設
昭和46年5月 生販一体による事業拡大方針の決定、製造メーカーとして生産に着手
昭和47年12月 大阪営業所開設
昭和49年3月 スター電器製造株式会社に商号変更
昭和49年7月 "茨城県石岡市(柏原工業団地)に石岡事業所(工場)完成。
茨城営業所開設"
昭和61年9月 神奈川県藤沢市に本社移転
平成7年10月 福岡営業所開設
平成9年1月 "中国の大連保税区に進出し合弁企業が主流の中で
新たな製造拠点となる現地法人「大連思達電器有限公司」を独資で設立"
平成11年5月 鈴木 樹 代表取締役会長に、鈴木 穰 代表取締役社長に就任
平成21年4月 "現地法人「大連思達電器有限公司」を大連経済技術開発区に拡張移転し
「思達電器(大連)有限公司に商号変更"
平成21年9月 "日本初のリアル溶接体験工房アイアンワークショップ
Fe★NEEDS WELDERS POINT 鎌倉店をオープン"
平成22年2月 カー用品ブランドVECRUZ(ビークルーズ)立ち上げ
平成22年4月 東京ビッグサイトで開催された国際ウェルディングショーに創業50周年を記念して出展
平成29年2月 "アイアンワークショップFe★NEEDS WELDERS POINTの2号店となる
中目黒店を東京都心に日本で初めてオープン"
令和2年1月 創業60周年を迎える
昭和36年4月 鈴木産業有限会社に改組
昭和38年2月 鈴木産商株式会社を設立 鈴木 樹 代表取締役社長に就任
昭和38年3月 東京都練馬区に本社屋完成
昭和43年3月 基本方針並びに社是制定・本社事務所を増設
昭和46年5月 生販一体による事業拡大方針の決定、製造メーカーとして生産に着手
昭和47年12月 大阪営業所開設
昭和49年3月 スター電器製造株式会社に商号変更
昭和49年7月 "茨城県石岡市(柏原工業団地)に石岡事業所(工場)完成。
茨城営業所開設"
昭和61年9月 神奈川県藤沢市に本社移転
平成7年10月 福岡営業所開設
平成9年1月 "中国の大連保税区に進出し合弁企業が主流の中で
新たな製造拠点となる現地法人「大連思達電器有限公司」を独資で設立"
平成11年5月 鈴木 樹 代表取締役会長に、鈴木 穰 代表取締役社長に就任
平成21年4月 "現地法人「大連思達電器有限公司」を大連経済技術開発区に拡張移転し
「思達電器(大連)有限公司に商号変更"
平成21年9月 "日本初のリアル溶接体験工房アイアンワークショップ
Fe★NEEDS WELDERS POINT 鎌倉店をオープン"
平成22年2月 カー用品ブランドVECRUZ(ビークルーズ)立ち上げ
平成22年4月 東京ビッグサイトで開催された国際ウェルディングショーに創業50周年を記念して出展
平成29年2月 "アイアンワークショップFe★NEEDS WELDERS POINTの2号店となる
中目黒店を東京都心に日本で初めてオープン"
令和2年1月 創業60周年を迎える
創業年(設立年) | 1963年2月22日 |
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事業内容 | 溶接機、その他関連機器/消耗材の開発・製造・販売 |
所在地 | 神奈川県藤沢市南藤沢17-15 三井住友海上藤沢ビル3F |
資本金 | |
従業員数 | 50名 |
会社URL |
監修企業からのコメント
「”モノ”より”コト”を売る」というスローガンを掲げ、溶接の魅力を発信し続けるスター電器製造株式会社。
一般家庭からプロの現場まで幅広い客層に対し、圧倒的なサービスを提供しています。
常に新しいことに挑戦し続ける姿はまさに伝統と挑戦の革新企業です。
今後のスター電器製造が作り出す溶接の未来に注目です。
掲載企業からのコメント
この度は取材いただきありがとうございました。今年で創業から60周年を迎えた当社の歴史を改めて考えることができました。また、この記事を通じて溶接の魅力がより多くの人に伝わることを願います。