金杉建設株式会社 代表取締役社長 吉川祐介
金杉建設株式会社は、公共土木を担う技術者集団として、誠実で地道なものづくりを大切にしながらも、ICTやDXといった最先端の技術を積極的に取り入れ、常に変化に挑む建設企業である。購買・積算やICT推進部門が連携し、組織全体で現場を支える体制を築いてきた同社は、地域社会からの厚い信頼を獲得している。その先頭に立つのが、吉川社長だ。「朝令暮改」を恐れず、自らの言葉すら状況に応じて柔軟に見直すその姿勢には、急速に変化する時代に対応していくための強い覚悟を感じる。社員との対話を重視し、若手技術者の育成や新卒採用にも力を注ぐなど、長期的な視点で組織づくりを進めている。吉川社長は、大学卒業後、中堅ゼネコンに入社、その後再度大学で土木を学び直し、同社へ入社した。今回は、そんな吉川社長に、同社の社風や今後の展望について話を伺った。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
常に新しいことを恐れない
同社には、新しいことに躊躇しない文化がある。この文化は一朝一夕に生まれたものではない。長年にわたり、現場での小さな挑戦を積み重ねてきた社員たちの行動の蓄積が、自然と企業全体の気質となり、今の文化を形づくっているのだ。かつては二番手が堅実に勝ち残る時代もあった。しかし今や、世の中の流れは真っ先に動く者に価値を置く時代へと大きく変化してきた。そのため、スピード感を持って挑戦する企業こそが、成長のチャンスを掴めると吉川社長は語る。そうした時代の変化に対応するためにも、新卒採用には特に力を入れているという。
若い人材は、SNSやスマートフォンといった新しいツールに親和性が高く、これまでにない視点や発想を自然と持っている。そうした感覚は、既存の枠組みにとらわれがちな組織に刺激を与え、活性化させる。年齢を重ねた社員の経験と、若手の柔軟な発想が交わることで、組織の新陳代謝が生まれ、常に鮮度が保たれるのだ。
変化に前向きであること。新しいことを恐れず受け入れる姿勢。それこそが、これからも同社が大切にしていく社風の根幹である。
組織全体で現場を支え、ICTで時代の最先端を走る
同社の独自性は、地方のゼネコンにありがちな「現場の個人プレー」ではなく、「組織全体で現場を支える体制」にあるという。多くの企業が現場責任者に業務を任せる中、同社は本社部門による横断的なサポート体制を早期から構築してきた。購買・積算機能やICT・DX推進室がその中核を担い、現場ごとに異なる課題に対しても、知見と技術を集結して対応することができるのだ。また、ICTの活用においても業界内で先行しており、8年前から自社主導による取り組みを開始した。国土交通省の方針を受け、外注に頼った初期経験を踏まえ、自社で技術を蓄積・管理する体制を整備したことが大きな転換点となったと吉川社長は語る。他社へ情報を積極的に公開する姿勢も同社の特徴であり、講師活動や技術共有を通じて外部に知見を還元しつつ、自社もまた学び続けることで技術力を高めてきたのだ。
こうした姿勢が評価され、国土交通省などからの表彰や高評価につながっている。発注者や地域住民に寄り添い、技術と心配りの両面で信頼を得ること。それこそが、同社がこの業界で独自のポジションを築いてきた理由である。
現状に満足せず、常に新しいことを求めて
建設業界は今、大きな変革の時代に差しかかっていると吉川社長は語る。ICTやDXといった技術革新は加速度的に進んでいるが、すべての企業がその波に乗れているわけではない。新しい技術に挑戦しようとする企業と、できない理由を並べて現状維持を選ぶ企業の二極化が進んでいるのが現実である。同社は前者として、最新技術を積極的に導入し、自社内で管理・活用する体制を整備してきた。これからの時代を見据え、工期短縮や通行止めの削減などを実現する二次製品の活用や、3Dプリンター技術の導入といった「製品レベルの革新」にも着目している。受注時の図面通りに施工するのではなく、より良い方法を会社全体で模索し、提案できる組織体制が今後はより求められていくと吉川社長は考えている。
その実現の鍵となるのは、若手技術者の育成という。新卒採用を継続し、人数の層を厚くすることで、切磋琢磨できる環境を整えている。時代とともに変わる価値観や技術に対応できる柔軟な組織を維持するため、教育と組織設計の両輪で成長を支えていく方針である。
価値観を共有すること、それが会社の進化になる
吉川社長が働く上で大切にされていることは何ですか?
私が働くうえで大切にしているのは、「朝令暮改」を恐れない姿勢です。一般的にはマイナスの意味で捉えられがちですが、社会や技術の変化が著しい今、自らの発言であっても、状況が変われば柔軟に見直し、修正することを厭わない。そうした判断を積み重ねることで、組織としての柔軟性が保たれると考えています。また、弊社は公共土木を担う技術者集団として、土木工学の本質を守ることを重要視しています。裏付けのある技術に基づいて仕事をするという原則を貫き、安易な妥協や派手さではなく、地道で誠実なものづくりを重んじています。この考えを社員にも伝えるため、若手社員との懇親の場を設け、対話の中で価値観を共有するよう努めています。形式ではなく、実のあるコミュニケーションを通じて、組織の文化を築いていきたいと考えています。社員はどのようにコミュニケーションを取られていますか?
コロナの影響でしばらくできなかった飲み会やイベントも、最近また活発になってきてます。例えば今夏には会社の駐車場でバーベキューを企画していて、社員同士の交流が増えるのは良いことだと思います。もちろん、飲み会やイベントは会社として材料代は出していますが、企画自体は社員に任せていて、自由にやってもらってます。加えて、コロナで急速に普及した情報通信機器を活用して、会議はwebと対面を併用するスタイルに変わりました。ただ、なるべく直接顔を合わせて話すことを重視していて、実際に会って話す温度感は大事にしています。こうした新しい形のコミュニケーションで、社内の連携も良くなってきている実感があります。どのような学生に入社してほしいですか?
新しい技術に対して前向きに取り組める学生に、ぜひ入社してほしいと考えています。特にICTやDXといった分野は、土木業界でも今後ますます重要性が増していきます。年配の技術者にとってはやや苦手意識のある分野でも、若手であれば柔軟に吸収し、現場に新しい風を吹き込んでくれる。そうした役割に期待しています。また、最近ではインターンシップを通じて、遠方から参加してくれる学生も増えてきました。求人票すら出していない学校から、「この会社は面白そうだ」と自ら調べて応募してくれる。そういう姿勢には、正直うれしさを感じます。自分の将来を自分で切り拓こうとする行動力や主体性は、どの時代でも必要とされる力です。土木の世界は、地道で泥臭い部分もありますが、それだけではありません。最先端の技術を取り入れて、新しい仕組みを生み出すこともできる。そんな挑戦を、ぜひ一緒に楽しめる仲間とやっていきたいですね。
二足のわらじで、職場を変える
金杉建設株式会社 インフラDX推進室 室長 小俣陽平
建設業界の変革期において、現場と技術の両面から会社を支えているのが、小俣室長だ。彼は現在、積算業務を担う管理部門と、ICT施工や3次元測量といった最新技術を推進するインフラDX部門の“二足のわらじ”を履いている。正確な見積もりを出す地道な作業と、業界の未来を切り拓く革新的な取り組み。その両立は決して容易ではないが、「どちらも、建設業の魅力を伝えるために必要な仕事」と語る。また、Instagramを通じて業界の情報を積極的に発信し、若者や未経験者にも親しみやすい建設業の姿を届けているのも特徴だ。ICT施工を広めるために、多くのセミナーの講師としても講演している。そんな小俣室長に、働くうえで大切にしていることや、これからの夢について話を伺った。伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
地元愛が産んだ偶然の出会い
小俣室長が同社に入社した理由は、強い地元志向にあったという。当時は就職氷河期の真っただ中で、何十社と面接を受けたが、結果はすべて不採用。選ぶ立場ではなかったと振り返る。大学で土木を学んではいたものの、特段、建設業に強い興味があったわけではなかったそうだ。むしろ「地元で働きたい」という想いがすべてだった。友人が多く、実家も近い。仕事帰りに仲間と気軽に会えるような環境を望んでいたという。そんな彼に、研究室の教授が紹介したのが同社だった。勤務地は地元・東武スカイツリーライン沿線で、希望にぴったり合っていた。正直なところ、建設業に夢を抱いていたわけではなかった。ただ、当時の彼にとっては「拾ってくれた会社」という感覚が強かったようだ。後に小俣室長自身も語るように、「やりたいこと」が明確でないまま社会に出る若者は少なくない。地元で働きたい、仲間と暮らしを共にしたいという、素朴で率直な理由が、小俣室長と同社の縁を結んだのである。二足のわらじだからこそ意味がある
小俣室長のやりがいは、「2つの役割を担っている」ことにあると語る。ひとつは積算という工事金額を算出する業務。もうひとつはDXを推進する業務だ。通常は別々に扱われるこれらの業務を、小俣室長は一人で担うことで、工事に対して金額と評価の両面から関わっている。「どちらか一方だけより、両方関わった方が達成感は倍になる」と語る。特に、国交省などの発注者との打ち合わせから始まり、工事成績評定(いわば工事の点数)の向上にまでつながったときの手応えは大きいという。現場を支える立場でありながら、単なる“縁の下の力持ち”にはとどまらない。自らの判断と行動で結果が変わる、そんな責任と影響力を実感しているからだ。また、現場の監理技術者や現場代理人と密に連携し、その人たちが評価される姿を自分のことのように喜ぶ小俣室長は、「人のために頑張れるようになったのは、社会人になってから」と振り返る。小俣室長にとってやりがいとは、業務の成果が「誰かの評価」や「工事の成功」につながる実感に他ならない。建設業に興味を持ってもらうために発信していく
小俣室長の夢は、建設業界の未来を支える「担い手」を増やすことである。現在、業界全体で深刻な人手不足が続く中、自ら情報発信という形でアプローチを試みている。発端は、現場でのDX化の進展に気づいたことだったと振り返る。今までの建設業のやり方とは大きく異なる3次元モデルを活用した施工管理やICT施工などが日常となりつつあるにもかかわらず、その変化を社会が知らないことに強い違和感を覚えたという。そこで、自発的にInstagramアカウントを立ち上げ、情報を発信し始めた。会社の許可を得ず個人で始めた試みだったが、次第に業界内外から反響が広がり、展示会で声をかけられるほどになったという。今では学生や若手層にも届くメディアとなりつつあり、「うちの会社でなくてもいい。僕の発信で建設業に興味を持ってくれたら、それが一番うれしい」と小俣室長は語る。小俣室長の夢は、自身の行動が誰かの進路や価値観を変えるきっかけとなること。さらには、古いイメージが残る建設業に新しい光を当てることでもある。
金杉建設で働くとは
小俣室長が働く上で意識していることは何ですか?
私が入社した頃は、正直、社内の雰囲気はちょっとピリついてたんですよね。上の人に話しかけにくかったり、「相談しづらい空気」はあったと思います。でも、それは建設業にありがちな昭和っぽさなんですよね。だからこそ、今はなるべくコミュニケーションが取りやすい雰囲気づくりを意識してます。例えば、部下や後輩が話しかけてくれた際に、必ず手を止めるようにしてます。忙しくても「ちょっと今無理」と言ってしまうと、その人がもう二度と話しかけてこないかもしれないじゃないですか。だからこそ、向き合う姿勢を見せるは大事なんです。小さいことでも早めに相談してもらえるように、話しやすい空気をつくる。それが、ミスを減らす一番の近道だと思っています。コミュニケーションのしやすさって、会社の風通しを決める大きな要素だと思います。吉川社長は、どのような方ですか?
吉川社長は、すごく話しやすい方だと思います。年齢が近いというのもあるかもしれませんが、何より社長の方から気さくに話しかけてくれることが多くて、自然と距離が縮まるんです。新しい技術や製品にも興味を持っていて、僕が「こんなの見つけたんですけど」と雑談レベルで話すと、「それ知ってる」と返ってきたりして、話も早い。資料が完璧に揃ってなくても、まず聞いてくれるんです。あと、以前社長と新潟に出張したとき、私だけに「一度はグランクラスに乗ってみな」と言ってくれて、本当に私だけがグランクラスで、社長は指定席だったんですよ。驚きましたが、「経験してほしい」という気持ちが嬉しかったですね。そういったところに、人を想う気持ちを感じます。今後、金杉建設をどのような会社にしていきたいですか?
やはり私としては、「埼玉で建設といえば金杉建設だよね」と言われるような会社にしていきたいですね。もちろん技術力や仕事の質で知られるのも大事なんですけど、それだけではなく、「若い人がたくさんいる元気な建設会社」って言われるような会社が理想です。若い子が多いと、やはり社内に活気が出るんです。ベテランもその元気に刺激を受けて、会社全体が明るくなる。だから今は、新卒採用にも力を入れてるんですが、そもそも建設業ってまだまだ人気がない。だから私自身、Instagramで現場の魅力や最新技術をどんどん発信して、業界全体のイメージを変えていきたいと思ってます。ICTや3次元の取り組みを続けて、国や業界に注目されるような動きも積み重ねていく。最終的には、自然と人が集まってくる、そんな会社になれたらうれしいですね。金杉建設株式会社
1950年 会社設立、資本金 500,000円
1956年 資本金 1,000,000円に増資
1964年 資本金 3,000,000円に増資
1966年 資本金 5,000,000円に増資
1972年 資本金 10,000,000円に増資
1975年 資本金 30,000,000円に増資
1979年 資本金 40,000,000円に増資
1979年 本社を春日部市南一丁目6番9号(現住所)に移転
1981年 吉川一郎、代表取締役に就任
1982年 資本金 50,000,000円に増資
1989年 資材関係の商社「春光産業株式会社」設立
1992年 資本金 98,000,000円に増資
2018年 現社屋完成
2020年 バーカウンター付 新社員寮完成
2020年 吉川一郎、代表取締役会長に就任
吉川祐介、代表取締役社長に就任
1956年 資本金 1,000,000円に増資
1964年 資本金 3,000,000円に増資
1966年 資本金 5,000,000円に増資
1972年 資本金 10,000,000円に増資
1975年 資本金 30,000,000円に増資
1979年 資本金 40,000,000円に増資
1979年 本社を春日部市南一丁目6番9号(現住所)に移転
1981年 吉川一郎、代表取締役に就任
1982年 資本金 50,000,000円に増資
1989年 資材関係の商社「春光産業株式会社」設立
1992年 資本金 98,000,000円に増資
2018年 現社屋完成
2020年 バーカウンター付 新社員寮完成
2020年 吉川一郎、代表取締役会長に就任
吉川祐介、代表取締役社長に就任
| 創業年(設立年) | 1950年 |
|---|---|
| 事業内容 | 総合建設業、開発企画、一般土木 |
| 所在地 | 埼玉県春日部市南一丁目6番9号 |
| 資本金 | 98,000,000円 |
| 従業員数 | 80名 |
| 会社URL |
監修企業からのコメント
この度は、ご取材にご協力いただきありがとうございました。お話を伺っている中で、ICT建設で時代の最先端を走り続けるために、情報発信を欠かさず常に新しい情報を取り入れている姿勢に感銘を受けました。その取り組みや社風が新卒の学生も働きやすい環境になっているのではないかと感じました。今後の同社の発展に期待しております。
掲載企業からのコメント
この度は、ご取材いただきありがとうございました。弊社が大切にしている常に新しい取り組みにチャレンジする姿勢を伝えることができ、今後建設業界を目指している学生だけでなく、ICTを取り入れようと考えている企業様にも興味を持っていただければと考えております。今後も、新しい情報を発信していき、業界を盛り上げていきたいと思います。