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福永紙工株式会社

紙の新たな価値を 創造する

福永紙工株式会社 代表取締役 山田明良

福永紙工株式会社 代表取締役 山田明良
1963年の創業以来、半世紀以上にわたり、紙の印刷と加工のプロフェッショナルとして歴史を積み重ねてきた福永紙工。これまで、箱などの紙製品の製造が中心だった同社に2006年、転機が訪れる。現社長の山田社長が中心となって行った、福永紙工とデザイナーの共同プロジェクト「かみの工作所」の設立だ。これ以外にも、1/100スケールの模型ブランド「テラダモケイ」の製造販売など、新たな紙の価値を模索する取り組みを様々な形で行っている。海外の美術館でも取り上げられるような、既存の概念を超えた新たな紙の形を次々と生み出す福永紙工は、印刷業界の異端児として多方面から注目を集めている。今回はそんな福永紙工の、世界中から注目されるクリエイティブの源泉に迫った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

クリエイティブを生み出す風通しの良さ

部署間はもちろん、役職においても上下の差なく、コミュニケーションが活発な風通しの良さが、福永紙工の社風だ。正社員数わずか30名の少数精鋭の組織で、常にクリエイティブなものを生み出し続けるには、社員同士が活発に情報を交換しあって、お互いに刺激を受けているような環境が必要不可欠だ。ゆえに、社長や部長、課長といった役職や肩書が情報共有やコミュニケーションの障壁となってしまってはいけない。 「顧客からこういう要望が来ているが、どうすれば実現できるか、どうすればもっと良くなるか」ということについて、部署や役職の垣根を飛び越えて相談し合ったり、喧々諤々と議論したりできる社風を同社は大切にしている。この社風を醸成し盛り上げていくためにも、山田社長自身も役職の枠を超えて、日ごろから社員と直接顔を向き合わせてコミュニケーションをとることを心掛けているという。 少数精鋭のクリエイティブ集団を支える基盤が、同社の風通しの良い社風にあるのだ。

技術力×デザイン力 福永紙工だからこそのクリエイティビティ

福永紙工の強みは、誰もがあっと驚く、新たな紙の形を生み出し続けることができる圧倒的なクリエイティブさにある。そして、このクリエイティブの源泉は、半世紀以上紙の加工を専門に行い続ける中で培われてきた特殊な印刷や紙の加工技術と、新進気鋭のデザイナーとコラボレーションすることによりもたらされたデザインセンスとの融合にある。例えば、立川市と共同で取り組んだ"プレミアム婚姻届け"は婚姻届けというのは役所に提出してその役目を終えてしまうことに注目し、その婚姻届けを手元においておける都内初の複写式を取り入れ、かつ、写真なども同封できるアルバムのようなデザインにした斬新な作品だ。他にもテレビで取材されるようなエッジの利いたクリエイティブなアウトプットを生み出し続けている同社。その結果として、その取り組み姿勢に共感した大手企業から仕事の依頼が舞い込んだりと、同社の利益に大きく貢献している。

1万人に1人でも良いー圧倒的なファンを作る

「1万人に1人でも良いから、福永紙工の圧倒的なファンを作りたいです」福永紙工の進む方向を、山田社長はこう語った。そのために必要なことは、決して顧客の好みや流行に合わせるということではない。確かに、誰もが好むものを作ったほうが、短期的な利益は出せるかもしれないが、単なる二番煎じで廃れるのも早い。「福永紙工でないとやっていない、できない」という先鋭的なアウトプットが極めて重要なのだ。そのために、もっと外部とのネットワークを強化していきたいと山田社長は語る。例えば、「かみの工作所」以外にも、「テラダモケイ」など、様々な形でデザイナーとの共同プロジェクトを打ち出しているが、今後もこの歩みを止めずに、さらにクオリティを追求していく。また、特殊な技術を持つ同業、協力会社とも連携して製造力の強化を図るなど、より幅広い形で紙の可能性を追求していきたいと山田社長は語る。圧倒的なファンをつくるために、福永紙工の挑戦は続く。
かみの工作所 「空気の器」
かみの工作所 「空気の器」
TERADAMOKEI
TERADAMOKEI
MABATAKI NOTE
MABATAKI NOTE

山田社長が何よりも大切にする、福永紙工の価値観とは

―山田社長が社内で一番大切にしていることを教えてください

価値観を共有するということです。私たちの仕事は印刷業ですが、センスや感性といった、感覚的なことが根幹にあります。だから、職種が営業だったとしても、センスや感性を受け入れられる価値観を共有することが非常に大切なんです。また、この価値観の共有は社内だけではなくて、対外的にも重要です。例えばお客様であれば、私たちのデザインや独創性に、そもそも価値を見出してくださる方が、ベストです。一緒に仕事をする外部とのクリエイターさんだったら、その方のデザインの価値観を私たちと共有しなければ、良い形は作れないと考えています。だから敢えて誤解を恐れずに言いますが、私たちは、まずは、私たちの価値を理解してくださる、価値観を共有できる方たちと一緒に仕事をするように心がけています。

―最近はどういうお客様と仕事をすることが多いですか

たまたま最近は規模が大きい会社が多いですね。大手百貨店から、雑貨店、はたまた広告代理店だったり、立川市とも一緒にお仕事をさせていただきましたね。これらのお客様に共通しているのは、その担当の方に福永紙工の価値観に共感していただいていて、その上で僕らとやりたいと思っていただいているという点です。純粋に嬉しいですね。「かみの工作所」をスタートしてから、少しずつでも確実に創造的なものを発信していこうという取り組みをここ何年かやってきて、その種まきの結果が今芽吹き始めているのかなと感じます。色々なデザイナーとのネットワークを作る中で、SNSを活用するなどのプロモーション力が付いたことも、当社のことを知っていただく一助になっていると感じます。

―斜陽産業と言われている紙の業界で、貴社が輝き続けている秘訣を教えてください

業界的には、確かに紙は斜陽産業ですが、福永紙工は他とは一線を画した存在でいたいと思い続けているのが、まず1つだと思います。紙の常識や捉え方を変えてもらうような、紙の温もり・温かさを再発見してもらえるようなきっかけをは提供できる存在でいたいと当社は考えています。こうして紙に対する考え方、捉え方を変えることで、紙の業界の負のスパイラルのようなものから脱却して、良い意味で常識を打ち破って、輝き続けることができているのだと思います。例えるなら紙、印刷業界の天然記念物のような感じでしょうか。今後は、業界にインパクトを与えるというレベルまで持っていきたいですね。
福永紙工株式会社 営業部 課長 京野真也

デザイナーの声を 紙を通じて形にする

福永紙工株式会社 営業部 課長 京野真也

専門学校を卒業後、美容師の道をひた走っていた京野さんが、家庭を持つことを機に福永紙工に入社したのは、「かみの工作所」が福永紙工で設立されたのとちょうど同じ、2006年だった。「かみの工作所」と一緒に同社で成長してきたと、京野さんは誇らしげに語った。持ち前の美術的センスと仕事に対するひたむきな姿勢が、社内ではもちろん顧客からの厚い信頼をも得ている京野さん。ここでは、数ある企業の中から福永紙工を選択した理由から、現在の福永紙工での京野さんの取り組み、ご自身が福永紙工と共に歩んでゆく将来への思いをお聞きした。

伝統の承継と挑戦の未来を担う社員の思い

みの工作所」設立と一緒に入社、社長のルーツにも共感

福永紙工に入社する前、美容師をやっていたという京野さん。結婚を機に新しい仕事を探す中で出会ったのが、福永紙工だった。印刷業界に対する知識を全くと言ってよいほど持ち合わせていなかった京野さんが、数ある企業の中で、敢えて福永紙工を転職先として選んだ一番のきっかけは、デザイナーとの協同プロジェクト「かみの工作所」の設立と入社が同じタイミングだったこと。「良いタイミングだと思いました。新しい何かが誕生する瞬間を自分の目で見ることができるのが何よりも魅力でしたし、かみの工作所と一緒に自分も育っていけると思えたんです」と京野さんは当時を振り返った。また、前職がアパレル業界であり「より魅力的」を追求する山田社長の姿勢に、同じくファッションを追求する美容業で努力してきた京野さんは強いシンパシーを感じ、背中を押されたという。京野さんは入社後も、前職以上にデザインを追求する紙のプロフェッショナルとして活躍している。今後の京野さんの活躍に目が離せない。

お客様の想像する形を創造する、その通訳者が自分

京野さんが営業として果たす責務は、単純な営業活動にとどまらない。顧客から受け取った「こんなものを作りたい」という抽象的な要望を、紙を通じて実現するため、試行錯誤を行うことも、京野さんの重要な役割だ。一般的な印刷会社では、デザインやそのために必要な設計図、素材などを顧客が考えて、それをそのまま印刷するという会社も多い。しかし、顧客が思い描いているデザインを形にするのは難しい場合も多い。「そんな時に、紙とデザイナーの通訳になるのが私達です」と京野さんは誇らしげに語った。福永紙工では、顧客の想い描くデザインを実現できるさまざまな方法を模索して、現場の職人にも相談しながら、どうすればできるかと試行錯誤を繰り返す。どういう図面にすれば良いのか、どんな素材を使えば良いのかなどをとことん考え抜く。その努力が実って顧客の思い描いた通りのものができた時、顧客から「福永紙工さんではないとできなかったよ、ありがとう」と感謝の言葉を貰うことができる。これこそが、京野さんの原動力だ。

営業の幅を広げ、福永紙工を体現する存在になりたい

現在の福永紙工は、提案型の営業ではなく、顧客からの問い合わせに対してアクションを取っていくという反響型の営業が中心になっている。これは、福永紙工の先鋭的な取り組みに共感してくれる方が増えた結果だと京野さんは嬉しそうに語るが、一方で、現状に甘んじず、もっとチャレンジしていきたいという思いを京野さんは内に秘めている。将来的には、新規の顧客や、かつて福永紙工と取引のあった顧客に対して自らアプローチする提案型の営業をして、仕事を獲得していきたいのだという。「今は社内で誰もやっていないことですが、福永紙工の可能性の幅を広げるためにも、自分が先陣を切ってやっていきたいと思っています」と意気込みも十分だ。入社当初は年齢的に一番若い存在だった京野さんだが、徐々に京野さんの後輩も増えてきている。経験値を生かして、後輩の相談にものりながらフラットな立場に立ち、誰もやらない創造的な仕事をする、福永紙工を体現する存在になることが、京野さんの夢だ。
福永紙工の印刷の現場
インテリアライフスタイル2016
インテリアライフスタイル2016
紙器研究所の取り組み
紙器研究所の取り組み

京野さんが語る、福永紙工の仲間達

―会社の仲間と仕事をする上で大切にしていることを教えてください

良い意味でのフラット感、スピード感が大切だと考えています。営業も現場も、何でも言い合える仲ができていないと、私達が追い求めるクリエイティブなものは生み出せませんから、そこは特に気を使いながらやっています。また、営業部の中では、基本的に1人の営業が1つの仕事に責任を持って取り組むというスタイルなので、逆に1人で仕事を抱えこみ過ぎることが無いように、まめに情報共有を行うように心がけています。また、今までやったことがない仕事が多いので、困ったら互いに助け合うチームとして動けるように、普段からコミュニケーションを活発にとることを大切にしています。

―京野さんから見た山田社長について教えてください

感覚が鋭い方だな、と常々感じています。例えば、これは福永紙工の根幹の部分ですが、「かみの工作所」プロジェクトのように、様々なデザイナーさんという会社の外部の力を借りて新たな形を作ろうという発想が思い浮かぶことだったり、デザイナーさんのデザインと福永紙工の紙加工の技術を融合させて昇華させようという考えだったり、「そういう考え方ってあったんだな」といつも驚かされます。自分も以前、美容師をやっていたという経験から、美術的な部分に関しては積み上げてきたという思いもありましたが、まだまだ敵いませんね。自分にない観点をいつも示してくださるところは、本当にすごいと思っていますし、尊敬しています。

―福永紙工がより良い会社になるために必要なことはなんですか

福永紙工の社員は、全員が自らの仕事に責任を持って取り組んでいるなと感じています。明確に自分のテリトリーだと決まっていることに対しては真剣に取り組む力があります。けれども、何かトラブルや不具合などのイレギュラーなことが起こった場合に、もっと全員が寄り添えたらより良い会社になるのではと思います。印刷加工なので、不良や失敗はつきものです。そんな時に、お互いの責任範囲の中だけで対応しようとすると、ミスの擦り付け合いになってしまいます。いざという時こそ、互いに助け合って仲間と連携して、チームプレーで動くことができるようになれば、ミスやエラーを1つのきっかけにして、さらに社内が団結できるのではないかと思います。

監修企業からのコメント

今回取材した福永紙工は、紙を通じてあらゆる形を実現する紙加工のプロフェッショナルです。デザイナーと提携し、「空気の器」をはじめとする、今まで存在しなかった独創的な形を次々と創造し、世に送り出してきました。その最先端の取り組みが、今や日本だけでなく、世界からも注目されている福永紙工。これからの挑戦にも目が離せません。

掲載企業からのコメント

現在取材中です。

福永紙工株式会社
1963年 立川市錦町2丁目に福永紙工所を設立
1964年 立川市錦町6丁目(現在地)に移転
1965年 福永紙工株式会社に名称変更
2006年 「かみの工作所」プロジェクト発足
2007年 福永秀夫会長、山田明良 代表の新体制に
2011年 「テラダモケイ」ブランド設立
        第九回 勇気ある経営大賞 特別賞受賞
2012年 創立50周年を迎える
        「空気の器」が「reddot design award best of the best 2012」
        (Germany)受賞
2013年 ドイツ・フランクフルトで開催された国際見本市アンビエンテへ出展
2014年 「MABATAKI NOTE」プロジェクト発表
        国際交流基金主催 新・現代日本のデザイン
        100選 に「テラダモケイ」「空気の器」2品目が選定
        立川工場のお祭り『 紙工祭 しこうさい 』開催
2015年 紙の構造を考える「紙器研究所」を発足
創業年(設立年) 1963年
事業内容 ・一貫生産によるオフセット印刷、紙器、紙工品、打抜加工品の製造販売 ・Gフルート段ボールに、直接オフセット印刷〜加工、製品まで ・パッケージ、包装用品、化粧箱、ファイル、POP等の製造販売
所在地 東京都立川市錦町6丁目10番4
資本金 4,800万円
従業員数 42名(パート従業員含む)
会社URL

福永紙工株式会社