ホーム

 > 

掲載企業一覧

 > 

株式会社鈴商

「個人商店」から「鈴商」という組織をつくる

株式会社鈴商 代表取締役社長 鈴木 基司

1919年の創業以来、長きにわたって輸入食品の卸を担い、数多くの商品を日本に取り入れてきた会社がある。それが株式会社鈴商だ。テングブランドのビーフステーキジャーキー(以下テング)やハーシーのチョコレートなど、一度は食べたことがあるのではないだろうか。それらを扱っているのが同社である。
かつては輸入食品の希少性の高さから、市場を席巻していた同社。しかし、時代の移り変わりとともに、競争が激化してきた。その中で、優位性を勝ち得るべく、様々な取り組みを行い、さらなる発展を遂げようとしている。今回の取材では、社風や独自性、展望という切り口から、行っている取り組みやそこにかける思いについて、鈴木社長からお話を伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

好きなものが同じだからこそ生まれる仲の良さ

同社の社風について「仕事を仲良く和気藹々とやっていることですね」と鈴木社長は語る。同社には輸入食品が好きな社員が集まっており、好きなものが共通しているからこそ仲が良いのだという。
では、なぜ輸入食品好きが同社に集まったのだろうか。その理由として、かつては限られた企業しか輸入食品を扱えなかったことが考えられる。それが故、有名なブランドを数多く扱う同社に応募が殺到したに違いない。近年においても、「自分のやりたいことは何かを分かった上で入ってきている人が多いのかな」と鈴木社長が話すように、「輸入食品好きが集まる会社」として、さらに輸入食品好きが集まってくる風土がある。
一般的には、企業への入社理由は様々で、全員が同じものを好きである、という状態は珍しい。同じものが好きで、お互いに仲が良い同社では、言いたいことを言い合い、困った時には助け合っている姿が目に浮かぶ。

テングの国内生産によって生み出される収益基盤

商社ながら、OEMによりテングの国内生産を行っている同社。これにより生み出されている収益基盤こそが同社の独自性であり優位性となっている。
元々はアメリカの会社で製造されていたものを輸入していた同社。しかし、狂牛病や干ばつなど、様々な理由によって安定した輸入ができなくなってしまう。そこで、人気商品であるテングを安定供給するために、国内でOEM生産することへと切り替えたのだ。長きにわたって輸入食品を専門に扱っていた同社にとって、国内生産へと乗り出すことは英断であったと言えるだろう。この英断が現在の同社における独自性を作り出している。テングは、国内でOEM生産することによって、輸入食品を扱う商社であるがゆえのジレンマを払拭したため、大手企業を含め他社の追随を許さないのだ。テングによって安定した収益基盤を作り上げ、さらなる歴史を築いていく同社から今後も目が離せない。

付加価値を追求できるような組織を作っていく

「システマティックにやる組織をつくっていきたい」と鈴木社長が語るように、組織としての力を上げ、商品の付加価値を追求できる体制を作っていく。これが同社の目指す先だ。
これまでは、希少価値の高い輸入食品を、各々が「個人商店」としてお客様に提供し、輸入卸の業界を席巻してきた同社。しかし、輸入食品との接点が増え、参入障壁が下がっている今、組織力を強化して付加価値を提供することによって勝ち残りを図ることが必須となる。
まずは、「テングを主軸に売っていく」という旗印を掲げ、全社として向かう先を打ち出した。そしてそれを実行するために社内をセクションに分け、各々の責任の明確化および指揮系統の徹底に取り組んでいる。
ビジネスモデルとして、さらに上流まで網羅するために組織力強化を進めている同社。個の力で他社を圧倒してきた同社において、各々のベクトルが一つにまとまった時、どれだけのパワーを発揮するのか計り知れない。
同社の主力製品であるテング
販促の一環:プロ野球ナイターの協賛
ここから輸入食品を発信していく

現状に囚われず、様々な意見を取り入れる

―個々人の社員を生かしていく上で大切にしていることは何ですか

社員が「これがやりたい」と言える環境を作ることですね。実は先日、全社員と一人ずつ面談を行いました。一人あたり30分から1時間ほどで、今思っていることや、今後のやりたいことについて話してもらいました。普段だとあまり聞くことのできないような意見もぶつけてくれたので、とても参考になりましたよ。社員の要望や希望に応えることも、私の責務の一つだと改めて感じさせられた次第です。
面談で得られた意見は、役員会でシェアした上で今後の方針を考えています。トップダウンで「これをやれ」と言うだけではなく、社員が「やりたい」と思うことも取り入れていきたいですからね。今後も各々の社員が、「これがやりたい」と言えるような環境を整えていく所存です。

―今後の会社作りに向けてアイデアを生み出すために大切にしていることは何ですか

外部の方との交流を大事にしています。外部の方と交流することで、社内にいるだけでは思いつかないような、新しい発想が出てきますからね。また、自分たちでは「当たり前」だと思っていたことが、世間では「当たり前」ではなかった、ということに気付かされることも多いです。自分・自社の考えだけで凝り固まらず、常に情報収集をして、視座を高く保ち続けたいです。
様々な視点から物事を捉えることで発想を豊かにし、一見夢物語のように思われるものを考えて、それが収益に結びつくようであれば実行に移す。それをするのが経営者の役割の一つだと感じています。現状に満足せず、必要なことは取り入れていきます。

―社員の主体性向上のために、行っていることは何ですか

今期より、社員全員にチャレンジシートの提出を課しました。従前の仕事以外でチャレンジをしてくれ、という意図で課しています。これについては、「自分でチャレンジすることを定め、それを実行する」ということ自体が大切だと考えています。もちろん、チャレンジを成功させることが望ましいですが、失敗したとしてもそれが各々の糧となりますし、会社としての糧にもなりますからね。失敗を恐れずに、まずはチャレンジして欲しいです。
「やれ」と言われた目の前の仕事だけに囚われるのではなく、自分からやるべきことを探しにいく。チャレンジシートを通じて、そのような主体性を身につけていってもらいたいと思っています。

大好きな輸入食品を世に広めていく

株式会社鈴商 営業部 部長代理 谷平 恒

今回お話を伺ったのは、子供の頃から輸入食品に慣れ親しみ、その愛ゆえに同社に飛び込んだ谷平さんだ。入社後もその思いは変わらず、輸入食品を世に広めるべく日々奮闘している。
入社後は20年以上にわたり、問屋への卸販売を中心に営業の第一線で活躍してきた谷平さん。現在では部長代理に就任し、「個より和を大事にし、後輩たちが伸び伸びと営業できる環境を作っていきたい」と語る通り、鈴木社長の右腕として組織作りを行っている。組織を作り、「若返り」を図っている同社。本取材では、その中心となる谷平さんにインタビューをさせていただき、谷平さんの輸入食品への愛情とそのルーツ、そして組織作りにかける思いを明らかにしていく。

伝統の承継と挑戦の未来を担う社員の思い

子供の頃から馴染み深かった輸入食品に憧れて

輸入食品への憧れから入社を決意した谷平さんは、子供の頃から輸入食品が好きだったという。アメ横の近辺で生まれ育ち、テングのビーフジャーキーやハーシーのチョコレートに馴染みがあったためだ。「輸入食品はパンチが効いているところが良いですよね」と話す谷平さんの顔には笑顔が溢れており、そこにかける愛情を感じた。 谷平さんは、輸入食品を扱う仕事を探していた際に同社に出会い、迷わず飛び込んだのだとか。とはいえ、テングやハーシーを扱っているのが同社であることを事前に知っていたわけではなかった。入社後に初めてその事実を知ることとなる。輸入食品を愛する谷平さんが、子供の頃から慣れ親しんだ商品に再会したことに、運命を感じずにはいられない。 大好きな輸入食品に囲まれながら行う仕事は、谷平さんにとってまさに天職と言えるだろう。だからこそ入社以来20年以上にわたって、第一線で活躍しているに違いない。

個より和を大切にし、会社作りと向き合っていく

「会社を作っていくことにやりがいを感じる」と語る谷平さん。同社では現在、組織作りが進められており、次期役員候補として谷平さんが部長代理に抜擢されたのだ。 とはいえ、元々は一営業マンとして活躍していた谷平さんにとって、初めてのマネジメント。不安が無いわけではなかった。鈴木社長から役員のお話があった際も、一度は断ったという。しかし、鈴木社長の「会社の若返りを図り、これから会社を作っていきたい」という熱い思いに共感し、このポジションを引き受けた。 「やると決めたからには一所懸命やる」と語る谷平さんは、自発的にマネジメントの講習などにも参加し、真正面から組織作りと向き合っている。「個より和を大事にし、後輩たちが伸び伸びと営業できる環境を作っていきたい」という思いを持って組織作りを行っている谷平さん。谷平さんも後輩社員も、いきいきと働いている姿が目に浮かぶ。

輸入食品のおもしろさを世の中に広めていきたい

自身の夢について「輸入食品の良さ、おもしろさを世の中に発信していきたい」と語る谷平さんからは、輸入食品への深い愛情を感じる。とはいえ、時代の変化に伴い競争が激化している今、従来品を横流しするだけでは思い通りに売れないのが現実だ。毎年新商品を打ち出しているものの、継続して残る商品が1つもない年も珍しくないのだとか。 輸入食品専門店でなくとも輸入食品を仕入れることができる現代においては、「自分たち独自のカラーを出していかないといけない」と谷平さんが話すように、どれだけ付加価値を生むことができるかが勝負となる。テングは、国内生産に切り替えたことで品質が向上し、日本人の舌に合ったものに改良されたという。同様に「日本人に合わせたものを企画開発していきたい」と語る谷平さんの言葉には熱がこもる。 谷平さんが愛情を込めて世の中に発信していく商品に、今後も注目していきたい。
豊かな商品ラインナップ
チョコと言えばハーシー
輸入食品の宝箱のような商談室

部長代理として、会社を作っていく

―部長代理として大切にしていることを教えてください

対話を大事にしています。
以前は同じ課の方としか話していなかったのですが、部長代理を任せていただいてからは他の課の方とも密に話をするようにしています。特に、一人ひとりに合わせた話し方を意識していますね。
例えば後輩に対しては、「どうすれば楽しく商売ができるのか」ということを意識しながら教えています。また、先輩とも、一人ひとりと「会社のビジョンをこうしたい」というようなことを話しています。今後も壁を作らず接していきたいですね。
対話をしないとモノが売れないのと同様、対話をしないとマネジメントもできませんから。営業として培った力を生かして、これからも対話を大切にしていきたいと思います。

―谷平さんから見て、鈴木社長はどのような存在ですか

ご自分の考えをしっかりと持っている方ですよ。様々なことがあって社長になっているので、苦労はすごくされていると思います。だからこそ、「会社をこうしたい、ああしたい」という思いが身にしみて伝わってくるのでしょうね。
また、ご自身が長い間別の業界で働いておられたこともあり、社員の意見も大事にしてくださる方です。僕も「どんどん下から突き上げてくれ」と言っていただいています。これまでも営業の話などをしてきましたが、この先ももっとたくさんの話をしていくことになるでしょうね。仕事の話だけでなく、時には冗談も言い合えるような良い関係ですよ。
思いやアイデアを具現化するために行動してくださる、とても素敵な経営者だと感じています。

―日々輸入食品に対してどのように向き合っていますか

僕はこの仕事を、「世にこの商品を出していきたい、おもしろいものだよって伝えたい」という思いでやっています。
かつては専門店でしか輸入食品が扱えなかったため、商品棚いっぱいに当社の商品を並べていただけていました。しかし、量販店などでも輸入食品が並ぶようになってきた今、棚が自分たちの商品だけだと埋まらなくなっていることに寂しさを覚えますね。
僕らは良いものを仕入れる。そしてそれを専門店で棚いっぱいに並べてもらう。時代は変わっていますが、僕らの原点はここにあります。埋もれてしまっているだけで、まだまだ良いものはたくさんありますよ。専門店や同業者とも一緒になって、切磋琢磨しながら、輸入食品の活気を取り戻していきたいですね。

監修企業からのコメント

誰もが一度は食べたことがあるような輸入食品を扱っておられる鈴商様。鈴木社長と谷平さんからお話を伺い、社員の皆様が輸入食品に対する愛を持っていることを感じました。また、長い年月をかけて培われた歴史と、鈴木社長が吹き込んだ新しい風の融合も感じました。同社から発信されるユニークな商品が、今後も楽しみでなりません。

掲載企業からのコメント

今回の取材を通して、これまでの取り組みを振り返ると共に、弊社の目指すべき先を改めて確認することができました。自分の中で普段考えていることを言語化することができ、様々な発見があったと感じています。とても良い機会をいただき、ありがとうございました。取材で得られた気付きも参考にしながら、今後も邁進していく所存です。

株式会社鈴商
1919年 東京都千代田区麹町平河町にて、シロップ、飲料水の
       製造卸売業を個人商店として始める
1954年 合資会社鈴木商店を設立
1979年 デンマーク政府より現会長・鈴木公史、
       エキスポート・オスカー賞を受賞
1983年 テングブランド・ビーフジャーキーの輸入総代理店となる
1984年 オランダ政府より現会長・鈴木公史、国賓待遇の招待に与る
1985年 株式会社鈴商発足
1993年 優良申告法人として表彰を受ける
1998年 優良申告法人として表彰を受ける
創業年(設立年) 1919年(1954年)
事業内容 食料品及び酒類の輸出入販売及び卸
所在地 東京都新宿区荒木町23番地
資本金 8,400万円
従業員数 50名
会社URL

株式会社鈴商