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株式会社横引シャッター

株式会社横引シャッター 代表取締役 市川慎次郎

横に開くシャッターを街中で見かけたことがあるだろう。まさにその分野を専門とするのが、株式会社横引シャッターである。同社は商業施設や一般住宅、発電所、工場に至るまで、あらゆる現場で使用される横引きシャッターを製造している。
この横引きシャッターの中でも特に上吊式のものについてトップシェアを誇る同社を率いるのが、2代目社長・市川慎次郎氏である。大学卒業後、先代社長と共に働き、お客様対応など幅広い業務を経験した後、総務として約9億円の借金を抱えた会社を6年で7億円返済に導いた。その時市川社長が実践したのは、一つひとつの出費を見直し、無駄を削ぎ落とすこと。これにより見事、経営を立て直したという。今回の取材では、市川社長に同社が成長してきた背景と、これからの展望について伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

「お互い様精神」が当たり前、助け合いの職場づくり

同社の社風を象徴する言葉は「お互い様精神」である。困っている仲間がいればそのままにせず自然と手を差し伸べる。その助け合いの姿勢が同社の根幹にある。こうした社風が形成される前、社内はギスギスとした雰囲気の“暗黒期”にあったという。社員同士の関係は冷え込み、協力の精神とは程遠い状態だった。
その状況を変えたのが、市川社長の一貫した想いである。「それぞれが得意分野で仕事をしているのだから、お互い様だろう」と、14年間にわたり繰り返し伝え続けた。その言葉が少しずつ浸透し、やがて社員がお互いのことを考え、助け合う文化が根付いたのである。
かつては市川社長から「ありえない」という叱責もあった同社。今では、「お互い様精神」は当たり前となり、市川社長からは、プラスのアドバイスを伝えるのみになったという。
取材を通して感じられた社内の温かい雰囲気は、この「お互い様精神」が長い年月をかけて築いてきた信頼と絆の証である。

お客様の“欲しい”を形にする、圧倒的な開発力

同社の独自性は、何よりも「開発力」にあると市川社長は語る。顧客から「こんなシャッターが欲しい」という要望があれば、そのニーズに合わせて適切な製品をつくり上げることを得意としている。
この柔軟な発想とものづくりの姿勢は、アイデアマンだった先代の時代から受け継がれてきたものだ。かつて大手メーカーにも横引きシャッターは試みられた。それは上下式のシャッターを横向きに改良したものだったが、精密さゆえに、実際に取り付けた時にうまく動かなかったという。シャッターはたった0.5mmのズレが施工に大きな影響を与える。一方、同社では顧客の条件や設置環境を細かく把握し、図面上・理論上だけではない、「実際に動くシャッター」を提供している。
創業から40年、横引きシャッターというニッチな分野で存在感を放ち続ける背景には、確かな技術力と開発力が息づいている。

30年の超長期計画で描く、次世代への挑戦

2代目である市川社長は、一昨年「30年の超長期計画」を策定したという。最初の10年は、初代と3代目をつなぐ基盤を整える期間。次の10年は実際の事業承継、そして最後の10年はさらにその先の未来を見据えている。現在はその計画の3年目にあたるが、すでに息子には「事業承継は始まっている」と伝えているという。
市川社長は、先代の時代、そして自らの時代、次の世代の経営はいずれも時代背景が異なるため、同じやり方を踏襲するのではなく、それぞれが時代に合った形で挑戦していくことが大切だと考えている。
徳川将軍が3代目にして花開いたように、会社が継続していくために次の世代へ安心してバトンを渡せるよう、やりたいことがまだまだあると語る。これからも多くの困難が待ち受けるだろうが、市川社長は一つひとつの課題を乗り越えながら、同社の未来を描き続けていくだろう。
防犯とディスプレイが両立するシースルーのシャッター
主力商品である横引きシャッターがグッドデザイン賞2025を受賞!
同社のオリジナルキャラクターカニ部長の口癖は「確カニ!」

「楽しくなければ仕事じゃない」市川社長が語る働く哲学

市川社長の考えをどのように社員の皆さんに伝えていますか?

考えを明確に伝えることを大切にしています。全社員が所属するLINEグループでは、私からの発信だけが流れるグループがあり、社員全員が必ず目を通す仕組みになっています。そこでは、私が日々感じたことや課題、社員に乗り越えてほしいことを率直に伝えています。こうして「社長の頭の中」が可視化されることで、社員との認識のズレがなくなりました。
さらに、社員が新しく入社した時に、「社長が一番喜ぶこと」と「社長が嫌がること」を伝えています。業務の中で判断に困った時の基準は「社長が喜ぶ側を選ぶこと」。明確な基準があるからこそ、社員一人ひとりが自立し、同じ方向を向いて進める組織が生まれています。

今後の発展のために必要なことを教えてください。

今後の発展に向けて、“野生で生きる力”が必要だと思っています。これまで弊社はお客様からの依頼で成り立つ受け身の体制でしたが、これは言わば「口を開けていればエサが入る」状態。本来の営業とは、自ら仕事を取りに行く“攻め”の姿勢であるとべきだと考え、昨年から「全社員で取り組む営業部改革」を始動しました。この改革は営業部だけでなく、全社的な課題として取り組んでいます。社員全員が当事者意識を持ち、「どうすれば改革が進むのか」を考えることが大切です。言われたことだけをこなすのではなく、自ら動いて仕事を取りに行く営業をすること。それこそが、次の成長フェーズに進むための鍵だと思います。

市川社長の「仕事」に対しての考えを教えてください。

仕事が楽しくないと苦痛なので、どうやったら仕事を楽しくできるのかを考えています。そのために重視するのは、「自分たちの正しさを、自分たちで決める」こと。世間で言われていることや教科書に載っていることが正しいのではありません。自分たちが正しいかどうかは、自分たちでしかわからないからです。法律を破ったり、人に迷惑をかけたりしないことが前提で唯我独尊をやっているのです。そのためには力をつけなくてはいけません。「これをやりたい」、「こうなりたい」というような理想の姿を描き、そのために階段を引き、一段ずつ上っていく。それが「誰にでもできる仕事を楽しむ方法」です。

技を磨き、人を育て、次代へつなぐ現場の要

株式会社横引シャッター 工場製作部 工場長 羽賀立臣

同社で工場製作部の工場長を務めている羽賀さん。溶接や稼働テストといった実務だけでなく、営業部や設計部との打ち合わせ、図面のチェック、材料の注文など幅広い業務を担当している。さらに工場長として、会社全体を俯瞰し、誰がどの作業を行うのが最適か考えながら作業員の業務を采配している。
近年では後輩の育成として溶接を始めとする技術の指導をしたり、作業効率向上のために作業環境の改善にも取り組んだりしているという。
取材を通して、羽賀さんから「楽しむ」という言葉が何度も出てきた。市川社長の「仕事を楽しくする」という想いを体現し、日々の業務に取り組む羽賀さんに、その仕事内容や考え方について伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

経験と信頼で選んだ働く場所

前工場長から声をかけられたことがきっかけで同社に入社したという羽賀さん。当時、シャッターの巻き取り部分を収納するボックスをつくる経験を活かせる人材として依頼があったという。羽賀さんはもともと同社で10年勤務しており、その後別の会社で10年経験を積んでいた。しかし、声をかけられたことをきっかけに再び同社で働くことを決めた。 同社に戻ってきた時、市川社長のもとで行われる会社運営や管理の改善を目の当たりにし、ゼネコンや大手工務店からの安定した受注と将来性に魅力を感じたという。社員は安心して業務に集中できる環境が整っていることを実感した羽賀さん。当初は工場長になるとは思っていなかったが、一生懸命仕事をこなし、社長に認められたことで工場長代理を経て工場長に就任した。再入社は、羽賀さんにとって自身の経験を活かし、会社の成長に貢献できる環境を得る重要な契機となった。

会社と共に成長できる仕事の魅力

羽賀さんのやりがいは、自身と会社の成長が重なる点にある。 工場長として多くの業務を任されることで、わからなかったことを学び、自身の技術力が高まり、責任感も強くなったという。業務で困ったことがあっても、遠慮なく社長に相談し、少しずつ経験を積んできた。もし他社に勤めていたなら、単なる日常業務をこなすだけで、ここまでの成長は得られなかったであろう。このように経験を積んできた結果、工場長になることができた。そして、それが会社の利益にも繋がっているのだ。 今後は、大型物件などまだ同社でやったことのない案件にも積極的に挑戦し、会社の利益に貢献すると同時に、「自分がつくった」というさらなる達成感を味わってみたいという。大きな挑戦には怖さもあるが、羽賀さんにとって「やりたい」という気持ちがそれを上回る。日々仕事を楽しみながら会社とともに成長する羽賀さんは、同社の歴史に名を刻む存在となるであろう。

若手に技術を伝え会社を伸ばす

羽賀さんの夢は、自身の技術を後輩に伝え、会社の技術を継承できる人材を育てることである。同社には定年後も希望すれば働き続けられる制度があり、この環境の下で羽賀さんも元気なうちは現役として後輩に指導を続けることで、さらに良い仕事ができるだろうと考えている。 これまで、羽賀さんはプレスや塗装の工程を内製化するという新しいことにも挑戦してきた。これにより、滑車や金具などのシャッターの部品やレールの部品の製作は外注せずに自社でプレス加工から組立、塗装まで行うことが可能になったのだ。 社員は1~2年かけて、実際に手を動かしながらシャッターを製作する工程、そしてリスクなどの知識を学んでいくことが技術継承の基盤となる。工場では30代から50代までの幅広い年齢層のメンバーが在籍しており、様々な業務に取り組んでいる。彼らに技術を伝えていき、ただつくるだけではなく、新しいことにも挑戦していける技術を持つ人材が増えた暁には、会社としてさらに発展していくに違いない。
WorldComAward2024にてダイバーシティ経営のモデルケースとして評価された同社
部品も自社で製作している
作業環境も社員が塗装などをして整えている

工場長が語るチーム力と成長の秘訣

工場長として大切にしていることは何ですか?

最も大切にしているのは、チームワークで仕事を進めることです。一人で担う仕事には限界がありますが、皆で力を合わせれば、どんなに難しい作業でもできるからです。そのため、工場長として自らの経験や技術を誇示せず、あくまで社員一人ひとりの力を引き出すことに注力しています。また、社員の弱点を放置せず、必要な指導やアドバイスを行い、全員が成長できることも心がけています。
さらに、弊社では日本人だけでなく、中国、ベトナム、バングラデシュなど、異なる国籍の社員が働く環境なので、コミュニケーションを円滑にすることも大切です。雑談を通じて文化や考え方を理解することで、チームの結束力を高めています。

市川社長はどのような方ですか?

市川社長は非常に知識が豊富で、会社と社員への責任感が強い方です。社長は社員みんなのことを考えてくれているので、困ったことがあれば必ず社員を支援してくれます。私も、トラブルが発生した時に、助けてもらったことが何回もあり、その度に適切なアドバイスや支援を惜しみなく与えてくれます。
また、会社の利益だけでなく、社員一人ひとりの成長や働きやすさを常に考えています。私も昔、社長から「羽賀さん、いつも一番忙しいね。」と声をかけていただいたこともありますが、本当に見てくれているんだなと感じます。
社長のこうした姿勢を間近で感じているので、私自身も恩返しとして会社に長く勤めたいと考えています。

今後、どのような会社にしていきたいですか?

社員全員が安全で効率良く働ける作業環境を整えていきたいです。作業終了が遅くなることもありますが、今後は作業効率を上げ、定時で退社できる環境を整えることで、社員が家庭や生活をより大切にできるようにしたいと考えています。そのためには、作業の分担を見直し、社員全員で協力して仕事を進める文化が必要です。また、工場内の清掃や整理整頓も徹底し、作業環境を快適に保つことで、社員の健康や士気向上に直結すると考えています。「工場長と一緒に仕事をするのは楽しい」と社員に思ってもらえることを目標に、チーム全体で効率良く、かつ安全に作業できる環境づくりを日々進めています。

監修企業からのコメント

市川社長が社員一人ひとりに真摯に向き合い、明確な基準と信念を持って組織を牽引している姿に感銘を受けました。社風や独自の開発力、社員の自立性がしっかり根付いており、単なる製造会社にとどまらず、人と技術が融合する企業であることを実感できた貴重な機会でした。

掲載企業からのコメント

取材を通じて、弊社の取り組みや社員の姿勢を客観的に見つめ直す良い機会になりました。社内の工夫やお互い様精神、開発力の重要性などを整理して伝えることで、改めて会社としての強みを実感できました。社員と共に歩む経営の姿勢や成長の軌跡を、外部の方に理解していただけたことを嬉しく思います。

株式会社横引シャッター
1985年 株式会社横引シャッター創業

2008年 上吊式の横引きのシャッター」や「水平引きシャッター」など、特殊シャッター技術で、平成20年度の足立ブランド認定

2012年 市川慎次郎が社長に就任

2013年 オフィスの壁を取り払いワンフロア化し「社長戦力外通告」というユニークな方針を打ち出す

2016年 株式会社横引シャッターが「煌めくオンリーワン・ナンバーワン企業」(『21世紀を拓くエクセレントカンパニー2016年版』産経新聞生活情報センター企画、ぎょうけい新聞社)に選出される

2017年 2月24日、株式会社横引シャッターのゆるキャラである「カニ部長」と社長アイドル「スタイリッシュハート」のユニットが結成され、テーマソング「おしえてカニ部長」が全国発売される

2018年 3月2日、東京都より平成29年度「がん患者と仕事の両立への優良な取り組みを行う企業表彰」優良賞受賞

2020年 5月15日、足立区へ新型コロナウイルス感染拡大防止対策として、アクリルパーティション100セットを寄贈
令和2年度東京都スポーツ推進企業に選定される
11月2日、 一般社団法人日本記念日協会より4月5日が「横引シャッターの日」に認定される

2023年 10月18日、市川慎次郎著『新入社員は78歳 小さな会社が見つけた誰もが幸せを感じられる働き方』(かんき出版)刊行。紀伊国屋書店、三省堂書店など複数の書店で売上ランキング首位を獲得
11月25日、『報道ステーション』(テレビ朝日)「高齢者“働き控え”解消につながる?見直しの背景は…年金カット『50万円の壁』とは」にて取材を受ける
創業年(設立年) 1985年
事業内容 特殊シャッターなどの設計、部品製作、製造、取り付けなど
所在地 東京都足立区綾瀬6-31-5
資本金 10,000,000円
従業員数 37名
会社URL

株式会社横引シャッター