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株式会社昇寿堂

株式会社昇寿堂 代表取締役社長 村松孝義

ペーパーレス化が進む現代。逆風が吹いているように見える印刷業界で進化を続ける企業がある。その企業の名は昇寿堂。偽造防止技術や長尺印刷で日本有数の技術を有している。そんな同社の村松社長が入社したのは3年半前。総合商社で新規事業の立ち上げを経験した後、昇寿堂の取引先でもあった外資系機械メーカーの日本法人を設立。会社を約20年に渡り引っ張ってきた経歴を持つ。ある時、たった一度きりの人生について考えた際、中小企業を元気にしたい、もっと新しい価値をつくりたいという想いに直面し、フリーに転身。そのタイミングで昇寿堂から声がかかり、社長を引き受けることを決断。かくして5代目にして初の血縁関係のない社長が誕生。そんな村松社長に昇寿堂の現在、そして未来について伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

よそにはないもので勝負する精神

「よそにはないもので勝負する精神」これは創業時からぶれない昇寿堂らしさである。「なぜよそにはないもので勝負するのか」この質問に「『昇寿堂だから買いたい』と思ってもらいたいから」と答えた。さらにこれは「価格競争を避け、利益を上げることにも大きくつながるのだ」という。その上で大切にしていることが2つある。1つは、今までの積み上げてきた技術を継承していくこと。同社の持つセキュリティ印刷に必要な偽造防止の技術は、誰から見てもレベルが高いとわかるものであるため、その技術を継承していくことが重要だという。同時に、外部の方から「珍しい商品だね」と言ってもらえるような昇寿堂にしかつくれない商品をつくっていくことも大切にしている。今では、若手社員を巻き込み、商品開発に力を入れているそうだ。実際に若手の女性社員が発案した商品をテスト販売するなど、新しいチャレンジを続けている昇寿堂は、技術の継承と新しい風を吹かせながら「よそにはないもので勝負する精神」を継承している。

日本トップレベルの偽造防止技術

インターネットで「偽造防止」と検索してみてほしい。なんと、国立印刷局の次に出てくる企業が昇寿堂なのだ。日本トップレベルの偽造防止技術を持ち、長くその分野をけん引し続けている。長い期間、偽造防止技術を生かした印刷をし続けている企業は、ほとんどない。だからこそ、昇寿堂といえば「偽造防止技術」という言葉がしっくりくる。その技術の高さから、テレビ取材を受けたこともあるそうだ。この偽造防止技術、実は私たちの生活に身近にあり、大きく関わっている技術である。納税証明書、役所の書式、自治体が発行する地域振興券やプレミアム商品券など、様々な部分で生かされているものである。この技術の高さは、村松社長が取引先で社長を務めていた時から感じていたものだという。「もっとこの偽造防止技術を生かしていきたい」と村松社長は話す。この強みを生かし、村松社長は挑戦を続けていく。

今あるものを生かして違うものに変えていく

ペーパーレス化が進み、これからは衰退していくかもしれないと言われる印刷業。そんな中でも村松社長は100年企業になることを見据えている。「今あるものを生かして違うものに変えていく」これが同社が生き残るために大切にしていることだ。実際に紙を印刷することは減っていくかもしれない。ただ、印刷に使っていた技術をデジタルの分野に生かすことはできる。時代対応を続け、長く生き残る会社をつくるべく挑戦を続けている。例えば、デジタルの世界では画面表示の拡大縮小によってスマホ等での模様の表示を変えること、印刷の世界ではデジタル印刷と偽造防止を組み合わせたり、重ね合わせると複雑な模様が変化するような、娯楽の世界や商品のパッケージなどにも使えるものであると考えているそうだ。紙に印刷する際の技術を印刷ではない分野に応用し、その時代に求められる最適な形の商品として提供していく。決して簡単な道ではないが、今の技術を生かしていくことで、昇寿堂が100年企業になることが想像できる。
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昇寿堂にしかつくれない価値をつくり続ける

初の外様社長として意識していることを教えてください

5代目の私が創業家以外で初めての社長なので、まずは距離感を縮めることに力を入れました。社長就任当初は社員との距離感があるのではないかと思っていましたし、最新の技術を知っている自分が社長になることで、「今まで昇寿堂が培ってきたものと置き換えられてしまうのではないか」という心配をしていた社員は少なからずいたと思います。そんな社員からも信頼され、身近に感じてもらえれば一緒に仕事をしやすいと思い、積極的に声をかけることを大切にしています。朝と午後に必ず現場に行き、「おはよう」や「お疲れ様」などの一言でも良いので、社員と顔を合わせるようにしています。その結果、社員から信頼してもらえるようになったと感じています。

昇寿堂の強みを教えてください

偽造防止技術に加え、長尺印刷も自社の強みですね。ダイヤグラムという電車のダイヤが一目でわかるような印刷物があるのですが、これは3メートルほどの長さになるものもあり、紙媒体の印刷技術としては高度な技術が必要なものです。電車の駅で仕事をしている人や、その指令をしている部署の人が使うものです。ダイヤグラムに関して、我々は従来型ではできない技術を有しているため、ありがたいことに、関東近郊では99%のシェアを誇っています。昇寿堂の技術を求めている人はたくさんいると思うからこそ、関東だけではなく、西日本の開拓も進めていき、更なる販路の拡大に挑戦をしていきます。

現在、力を入れていることを教えてください

「よそにはないもので勝負する精神」を大切にし続けるべく、今では商品開発にも力を入れています。成長につながる経験を積めるという点から、若手の社員を中心に、新しいアイデアを出す機会を設けています。「他社と差別化する」という観点からぶれなければ何でもOKというスタンスでアイデアを集めています。このアイデアを事業にできるかを事業計画に落とし込むことまでを体験させ、それが実現可能であればGOサインを出しています。実際に、若手の女性社員発案のブックカバーが形となり、現在はテスト販売をしております。「よそにはないもので勝負する精神」を若手にも継承していき、昇寿堂にしかできない仕事をつくり続けていきます。

株式会社昇寿堂
深川工場  管理部 課長 田中学

昇寿堂・深川工場に勤務する田中さん。現在入社12年目で、管理部において課長として活躍中。田中さんが担う業務は多岐に渡る。DTPという、いわゆるコンピューターを用い、印刷物の設計やデータ入力を行う仕事をメインに担うと同時に、管理部として印刷オペレーターのマネジメント業務をも担っているのだ。また、業界や同社の仕組みそのものを変えるために、抜本的な作業工程の改革に携わることや、今後訪れるであろうノウハウ継承問題にも危機感を持ち、自身が主導となり様々な取り組みを行っている。田中さんが会社を成長させていく上でのキーマンであることに疑念の余地はない。今回はキーマンである田中さんから、会社、仕事、そしてご自身について、様々なお話をお伺いした。

伝統の承継と挑戦の未来を担う社員の思い

自分の強みを生かす

「色に携わる仕事に就きたかった」、そう語る田中さん。田中さんは学生時代、芸文美術を専攻として学んでおり、その知識を生かした仕事をしたいと思ったことがきっかけ。同社が手がけるビジネスフォームは、一般的なカラー印刷に使用される色とは異なり、特別な色を使って印刷を実施するという。入社時は印刷機を回すオペレーターとして配属になったが、瀬戸社長(現会長)がその思いや能力を見出し、色をも取り扱う、現在の設計業務を任せられるに至った。さらに田中さんは「大きな会社に入るより、自分の持っている力を存分に発揮できる環境で仕事をしたかった」と語る。まさに中小企業の醍醐味であろう。入社から12年が経過した現在、田中さんは自分の強みである「色・デザイン」に関して力を発揮することはもちろん、作業工程の抜本的な見直しや業務の標準化等、様々な仕事を行っている。自分の得意領域を伸ばし、そして一人のビジネスパーソンとしても成長していける同社の仕事は、田中さんにとって天職なのだ。

好きなことに携わり、業界そのものを変えていく

「色に携わることができる」、そして「ビジネスフォーム業界の慣習や常識を自社から変えていくことができる」、それが田中さんのやりがいだ。色に携わることができる、これは上述したように、元々の興味に加え、コンピューターを使って設計をしていける、つまり現在の田中さんが行っている仕事そのものがやりがいになっている。また、ビジネスフォーム業界は、他の商業印刷と比較すると、デジタル化の動きが遅れているという。まずは自社からその流れを作っていこうと、問題点を発見しては田中さん自ら提案を行うこともあるのだ。例えば、CTPシステム(コンピューターから直接版板を作るシステム)が主流の印刷業界において、ビジネスフォーム業界、そして同社では従来手法であるアナログの手法が残っていた。そこに対して田中さんが先陣を切り、CTPシステムを導入して仕組みそのものの改革に取り組んだという。新しいチャレンジに参画して会社の未来をつくっていくことができる、田中さんの目は未来を見据えている。

ノウハウの継承と業務の抜本的な見直し

田中さんが現在掲げる目標は、ノウハウの継承。中小企業が直面する問題として、属人的な技術により、特定の人がいなくなったら業務が回らなくなるということや、品質が損なわれるという現象が発生する。印刷業界にも、職人気質の文化が存在し、見よう見まねで覚えて成長していく風習があるという。同社、そして田中さんにおいては、未来に向けて会社を存続、成長させていく上で、ノウハウの継承は最重要と考えている。そのため、現在田中さんが取り組んでいるのは、業務の標準化。誰が特定の業務を担っても、同じ手順、同じ動作で作業ができ、同じ成果を出すことができるマニュアルを整えているのだ。また、現在田中さんはご自身の仕事以外にも、印刷オペレーターのマネジメントという仕事がある。業務の標準化はもちろんであるが、日々こまめにコミュニケーションを取ることで、問題点が浮かび上がってくることもあるという。問題点を一つずつ潰し、未来に向けて素晴らしいノウハウを継承していく、田中さんの挑戦は始まったばかりだ。
ビジネスフォーム印刷
ビジネスフォーム印刷
ジタル印刷(8色ロール印刷機)
デジタル印刷
(8色ロール印刷機)
EU企業視察でのレセプション
EU企業視察でのレセプション

現場発信で、抜本的な改革を推進

昇寿堂の良いところを教えてください

思い切ったチャレンジをしていけることだと思います。ビジネスフォームに主軸を置いている当社で、いわゆる老舗企業ですが、セキュリティ印刷や長尺印刷に取り組んだりと、ベンチャー的な気質を持ち合わせていると感じています。また、主軸であるビジネスフォームという分野においても、時代が変化していく中で、紙ベースの印刷物が減ってきていることから、私達自身も変わって行く必要があります。そのことから、「付加価値」というキーワードを大切に、「私達にしかできないこと」に尽力して日々仕事に取り組んでいる、それも当社の非常に良いところだと思います。

田中さんから見た瀬戸社長(現会長)について教えてください

情報収集力に長けていると感じています。自ら海外の展示会に赴いて新しい機材を仕入れてきたり、常に情報のアンテナが立っていると思います。それがあるからこそ、セキュリティ印刷が導入され、同業他社と差別化できることにも繋がっていますし、尊敬している部分でもあります。また、瀬戸社長(現会長)が担う責務は非常に大きいと思いますし、いろいろと心配をおかけしていると思うので、私達がもっとしっかりする必要があると思います。その思いが一つの原動力になって、社員の一致団結に繋がっている部分もあります。これからは私達世代が主役になると思いますので、瀬戸社長(現会長)に心配をかけずに、当社の良いところである、新しいことへの挑戦をしていきたいです。

社員の特徴について教えてください

ユニークというか、個性あふれる社員が多いと思います。一人ひとりがそれぞれの強みを生かして仕事に取り組んでいると思います。そのことから、強みを生かし合えて、尚且つ協力もし合えるため、仕事の生産性も上がっていると感じます。そういった人の良さも相まって、当社の高い定着率に繋がっていると感じています。また、当社には女性社員が多いというのも特徴の一つだと思います。印刷業のイメージはどちらかという男社会のようなイメージを持つ方も多いですが、女性が働きやすい環境があると思います。これからは女性の管理職登用も積極的に行っていきたいと考えています。

監修企業からのコメント

ペーパーレス化が進む現代であっても、印刷業として100年企業を目指し続けている村松社長の熱い想いに大変感銘を受けました。
常に挑戦を続けている背景には、村松社長が受け継いだ昇寿堂の伝統や技術を大切にしていきたいという想いを感じさせていただきました。
この度は取材のお時間を頂戴し、誠にありがとうございました。

掲載企業からのコメント

取材していただきありがとうございました。
社長になってからまだ年月は長くないですが、取材の中で振り返ってみて自分のやってきたことは間違っていなかったと思うことができました。100年企業を目指し、昇寿堂の伝統と技術を生かしながら挑戦を続けていきます。

株式会社昇寿堂
1947年 4月 瀬戸昇之助個人営業として昇寿堂を創業。(現本社所在地)
        計測記録計用紙方眼紙各種帳票等の製造販売を始める。
1948年 5月 株式会社昇寿堂に改組。
1950年10月 昇寿チャート株式会社(オフセット印刷部門)を設立し、
        地図調製各種オフセット印刷を始める。
1952年12月 ビジネスフォーム印刷機国産第1号機完成、
       ビジネスフォームの製造を始める。
1955年12月 深川工場を新設。
1966年12月 深川工場建物を新改築。
1969年11月 深川工場を増改築併せて空調装置を完備し、品質管理の向上を
        進める。
1972年10月 茨城地区の販売拠点として水戸出張所を開設。
1979年10月 水戸出張所を水戸営業所に改称。
1981年11月 千葉地区の販売拠点として千葉出張所を開設。    
1983年12月 深川工場事務所倉庫を増築深川営業所を開設。    
1986年10月 神奈川地区の販売拠点として横浜出張所を開設。    
1987年12月 埼玉地区の販売拠点として埼玉出張所を開設。     
2008年 2月 デジタルプレス室を新設。
2009年12月 神奈川地区の販売拠点として横浜出張所を開設。  
創業年(設立年) 1947年
事業内容 セキュリティ印刷・加工
特殊印刷・加工
デジタル印刷・加工
フォーム印刷・加工
所在地 東京都中央区新富1丁目8番6号
資本金 4,000万円
従業員数 62名
会社URL

株式会社昇寿堂