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株式会社三光ダイカスト工業所

株式会社三光ダイカスト工業所 代表取締役 三宅ゆかり

静岡県三島市にある三光ダイカスト工業所。高品質のダイカスト加工技術があり、50年以上の歴史の中で金型設計、製作から鋳造・機械加工・処理・組付けまでの一貫体制でお客様の支持を受けてきた企業だ。創業者を父に持つ三宅ゆかり社長は、叔父である前社長の病気により急遽会社を受け継ぐこととなった。それまで美容サロンを経営していた三宅ゆかり社長にとっては全くの異業種。モノづくりは未知な業態であった。しかし社員と社員の家族のことを思い「もう自分がやるしかない!」と腹をくくり、女性ならではの視点を用いて改革に着手する。現場の環境整備で見つけた工場の廃材を利用したアクセサリー製造の展開など、その着想は様々なメディアでも取り上げられた。今回は三宅ゆかり社長に、同社の軌跡と今後の展望について伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

誇れる自社の技術をもっと知ってもらうために

「なんでも言い合える文化」が同社にはある。ただし、これは昔からあった社風ではない。「こんなに良いものをつくっているのになんで宣伝しちゃいけないんだろう…」前職では美容関係の仕事をしていた三宅社長は入社当初を振り返った。大手自動車メーカーの部品を取り扱う同社は、その実績を表立ってPRできない環境もあり、社員は皆まじめだが、自身の技術をアピールする雰囲気はなかったという。スローガンでは「世界を通して信頼される会社」と謳っており、三宅社長は自社の実績や強みがPRできればもっと社員が自信を持てると考え、創業者である父の「とにかく現場を回れ!」という教えに習い、徹底的に現場を見た。社員とも積極的にコミュニケーションを図り、積み重ねられた自社が持つ特有の高い技術を知り、それをお客様に伝えられればもっと仕事を任せてもらえると確信した。そのために新しい事業で会社のブランディングに取り組むとともに、社内でも三宅社長がすべてのミーティングにも参加し、自身の考えを伝えた。特に大事にしたことは、「自分の意見」をしっかり持つこと。正しいかどうかよりも、考えをきちんと発信することを全体で実践しながら社風をつくり上げた。

なくなることのない「ダイカスト技術」

複数の要因(気温、湿度、生産量など)を考慮した上で、同社の技術者が持つ経験値とノウハウは他を圧倒する。三宅社長はダイカストを知れば知るほど「人がやらなきゃいけない部分も多い」と語る。
現在、自動車業界全体として樹脂の利用や軽量化を進めているが、一次的に仕事がなくなることがあっても、品質上「やはり三光ダイカストさんじゃないとダメだ」ということで再度依頼をいただくことも多く、その繰り返しの中でダイカスト技術の可能性に確信を持てた、と力強く語る三宅社長。また、同社は、その強みに甘んじることなく、品質、コストの面でより高くお客様から支持いただけるよう、全社的な取り組みとして常に現場の改善を図り続けている。
さらに、同社はそのノウハウを応用し、新たにスチームパンクのプロジェクト(廃材を利用したアクセサリ製造)を立ち上げるなど、斬新なチャレンジで脚光を浴び、地域や業界の中で注目されている。

三島で一番光る企業となるために…

「三島を基盤に地元で頑張る。宮城で頑張る」と力強く語る三宅社長。売上ばかりではなく、利益も上げなければならないという統一の認識のもと、常に改善活動に取り組んでおり、今後、世代交代やメンバーの入れ替えはあるものの現在の体制で最盛期の2/3までは達成できる見通しが立っているという。三宅社長は、次世代を担う組織を自分自身で作り上げてきた。その取り組みの一環として、1度に色々なことを考えることができる女性を総務担当、1点集中型の男性を製造に配置するなど、適材適所の配置をした。また、三宅社長自身も組織の一員として、社員に頭を下げて教えてもらうこともあるそうだ。「格好を付けずに、助けてもらいながらやるということができたのは、女性ならではだと思います」と話す三宅社長。組織全体を見ながら様々な決断をしてきたことが、今の三光ダイカストにつながっていると感じられた。三島で一番光る会社という社名の由来をもつ三光ダイカストの未来に期待したい。
会社が時代と共に成長・発展しても、ずっと 守り続ける社是
三島で一番光る企業“三光ダイカスト工業所”
廃材の再利用から生まれた新プロジェクト 「スチームパンクアクセサリー」

勇気をもった組織改革と社員との信頼関係

入社当時はどのような様子でしたか?

創業者である父の病気がきっかけで2011年に入社しましたが、当初会社を継ぐというよりは手伝うという感じでした。その父が他界し、後を継いだ叔父も病気になり、次の代表は誰かとなったときに、女性ではありましたが「私が引き継ぐしかない」と思いました。父の苦労を知っていた母には反対されましたが、逆に覚悟が決まりましたね。それでも当時は「急に引き継いだから」「前職はこうだったから」と言い訳をしているうちは全てがうまくいきませんでした。銀行の経営者勉強会の中でMBA式のような学びはありましたが、製造業は全くの未知で、当時の私にできることはまず数値を知るということだと考え、財務の数値とともに業務の実態を数値にして把握しました。ただ、その数字を見て厳しい現状に直面して愕然としましたね(笑)。そこで「社員や社員の家族を守る責任がある!」という意識で前職の経験にこだわらず「私はここの社長」だと覚悟し、やれることはすべてやっていこうと腹を決めました。

スチームパンクの開発秘話をお聞かせください。

環境整備や5Sの一環で、工場を見て回っていた際に散らばっていた余材・廃材が私にはアクセサリーに見えました。そこで社員に「アクセサリーを作れないの?」と言うと「何を言ってるの社長」という反応で初めは相手にされませんでした(笑)。しかし、あるとき商工会議所のご縁でお会いした方に「スチームパンクみたいですね」と言われて、勉強を始めたことがきっかけです。その後、本格的にプロジェクトとして活動し、アクセサリー販売を事業化し、今ではショールームの開設やBtoCの受注製造を行っています。もちろん主要事業はダイカスト加工・製造ですが、“仕事を創り出す”という点で社員のモチベーションアップにつながった点が大きいですね。

社長に就任してから組織づくりについて取り組んだことは何ですか?

私は権限を委譲しなければ人が育たないと考えているので、これからの会社づくりに向けて若くエネルギーのあるメンバーを抜擢しようと考えました。結果として2~3年くらいで組織をほとんど全部変えてしまいました(笑)。自分の意見を持って、会話の中で考えていることが返ってくる人を基準に選びました。その際に、返ってきた答えが間違っていても良いんです。毎日ミーティングをする中で、話し方を見ていました。また、とにかく隠し事はダメと言って、正直に話せる人を上にあげましたね。宮城の執行役員の人は36.7歳という若さで、珍しいと言われますが、私が信じた子(笑)なので年齢は気にしていません。そして何より、私自身も考えていることや困ったことはオープンに話をするようにしています。このように新しい会社の組織の幹を整え、コミュニケーションが良い状態の中で一人ひとりのキャリアアップや成長できる体制を意識しています。

三光ダイカスト工業所の未来のために熱い思いをもつ工場長

株式会社三光ダイカスト工業所 工場長 荻野稔

今回お話を伺ったのは、若くして三島工場の製造全体を統括している荻野工場長だ。同社に勤務して25年。今は先代社長の下で身に付けた経験や知識を現在の組織に活かすことで社長を支えている。ベテラン社員と若手社員の橋渡しをしながら変革を進め、社長からの信頼も厚い荻野工場長。終始物腰柔らかく答えていただいた荻野工場長のお話からは仕事に対する情熱と、常に社員のことを考える優しさを感じられることができた。そんな荻野工場長が見てきた三光ダイカスト工業所の変革の歴史や、ものづくりと若い世代への教育に対する熱い思いを伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

荻野工場長の人生を変えた三光ダイカストとの出会い

三島市出身の荻野工場長。地元でモノづくりの職探しをしていた際に、目に止まったのが三光ダイカスト工業所であった。当時はダイカストが何かもわかっておらず、長く勤めるとも考えていなかった。ただ、その時大きな機械を使い、短い時間でものができることが面白いと感じ、心惹かれたという。初めは鋳造部門の配属で、入社後5年ほど経ったときに綺麗な製品ができるときとそうでないときの条件が少しずつ見えてきた。 そんな荻野工場長の仕事の転機となった出来事は、取引先主催の技術交流会であった。同業他社の技術に初めて触れて、カルチャーショックを受けた。そこで「負けてられないな」と自分の中で技術者としての火が付いた。そこからは自主的に勉強をし始め、いかに良い製品を作るかに情熱を燃やし、少しずつ任される仕事の幅が広がり、技術部門の課長を経て、入社20年経った頃、三島工場長として製造に戻り、全体統括とともに次世代メンバーの育成に力を注いでいる。

不良品を出さないことへの情熱

仕事をする上でのやりがいは、いかに不良品を出さないようにするかどうかにつきる、と荻野工場長は語る。溶けたアルミを形にするという工程は装置の条件設定をすれば終わりではなく、様々なコントロールが求められ、時には経験に基づいた手技に頼る場面も多い。そうして不良を抑えることは、会社の利益に直結するため、今ではチームとして改善活動を進めている。その1つが2020年に新しく立ち上げた「利益改善活動」である。これは、改善の成果を利益として見える化し、意識と行動を変えていく取り組みだ。ポイントは改善活動に女性メンバーを加え、今まで現場に入ることが少なかったがゆえの違う目線が出てきて、女性ならではの細かい点にまで気が付くようになっている。「これがうまく活性化して会社の利益につながってくれば良い」と荻野工場長は語る。誰よりも会社のためになることは何かを考えているからこそ、女性目線の仕事の利点を現場に活かし、そのポイントをうまく他の社員と共有しながら全体のモチベーションにつなげている。

ダイカストの可能性に期待

同社のダイカスト鋳造技術をどこまで伸ばせるか、が夢だと語る荻野工場長。 同社が製造している製品は自動車部品が中心で、電気自動車の台頭によりエンジンが必要ないと言われることも多くなった。しかし、ダイカスト鋳造の技術は、エンジン以外でも必要とされるため、業界としても新しい需要の可能性がある。この分野へのチャレンジ意欲を持って時代への対応を目指している。 また、荻野工場長は「組織として部署全体・会社全体を良くしていきたい」という思いも強い。技術部門を若い社員に任せつつ、自分はマネジメントにシフトしたいという荻野工場長。日ごろのミーティングから、部下に押し付けるのではなく相談しながら物事を進めることを意識しているという。 そのためにも、「もっと色々なことを勉強したい」と答え、自身の成長とともに会社、そして社員全員で成長していきたい、という強い思いが伝わった。
静岡県と宮城県で3つの工場を稼働
ダイカスト鋳造による製品群
技術・ノウハウの集積で圧倒的に低い不良率を実現

技術を伝承しながら若手社員を育てる

先代社長と今の社長はそれぞれどんな方ですか?

先代社長の時に私は課長になり、直接仕事を教えてもらいました。元々営業をやっていた方で、毎朝7時ころ、社員がそろっていなくても現場を回っていましたね。また、休みの日には会社の植え込みを刈っているような人でした。
現社長は、教育へのこだわりと数値管理の意識が高いですね。それと、新しいことをやりたいという思いや危機感もあり、女性ならではの細かい視点での気づきも多く、特に5Sの面では厳しいです。今までのだらしない面をきちんとしなきゃいけないというのはありますね(笑)。
本当に会社が良くなっていると感じています。社長とは毎朝ミーティングを行っていて、コミュニケーションもきちんと取ることができていますね。

若い世代を育てていくという点で具体的に取り組んでいることは何かありますか?

以前、部下に「自分にできることが他人も(誰でも)できると思っていませんか?」と言われ愕然としました。実際、自分でやっていることが経験に基づいているものもあり、誰にでもできるわけではないということにその時気付きました。ダイカスト鋳造は装置産業ですが、細かい部分では熟練した技術が必要です。機械に情報を入力しても、環境が変われば感覚的な調整も必要なので、現場状況の確認とメンバーとのコミュニケーションはきちんと取るようにしています。そういった経験や技術の伝承においては、主にOJTで教えています。当社の仕事は多品種小ロットがメインであるため、最終的に人の手で調整する部分も欠かせません。若手の教育については、それぞれ部門はありますが、会社全体として取り組んでいくという形になっています。

三光ダイカスト工業所に関心をもっている人への会社の魅力を教えてください。

今後はプログラミングができる人に入って欲しいという思いはあります。あとは、新しい発想をもった人ですね。スチームパンクのプロジェクトが軌道に乗った後に、また新規事業をやろうとしたのですが、うまく形にならなかったということがありました。社長は我々にも常に新しいことを考えるようにと話しているので、新しい提案をどんどんできる若い方とぜひ一緒に働きたいと考えています。
製造や技術に関する経験・未経験はあまり重要ではありません。社内の雰囲気として、分からないことがあったら誰かしら答えてくれるし、あいさつもきちんとしよう!という空気があります。スキルを身に付けたい、成長したい、新しいことにチャレンジしたい、など、やりたいことがある人はチャレンジできる環境があると思います。そんな私たちに共感してくれる人が入ってきてくれたら嬉しいです。

監修企業からのコメント

お忙しい中、取材にご協力いただきありがとうございました。
代表の女性ならではの視点による改革、そして若いリーダーによる自走する組織体制の構築など、まさに飛躍できる環境が整った!という印象を受けました。益々のご活躍を期待しています。

掲載企業からのコメント

今回の取材の中で、会社を継ぐ決意をした自分を思い起こしました。何もわからない状態から、時代に合わせた組織づくりと事業の展開で本当にあっというまでした。今後の三光ダイカスト工業所の活動に皆さんが興味を持っていただければ嬉しいです。もし三島に来る機会があればはぜひ、当社を立ち寄りください。

株式会社三光ダイカスト工業所
1964年 2月 :資本金100万円にて、有限会社三光ダイカスト工業所を静岡県駿東郡長泉町下土狩に設立
1968年 1月 :三島市長伏の工業団地に移転
1970年 2月 :有限会社より株式会社に変更し、資本金を300万円に増資
1972年 5月 :資本金を1000万円に増資
1973年 5月 :資本金を1500万円に増資
1974年 4月 :三島市松本に三島工場(加工工場)を新設
1975年 5月 :資本金を2000万円に増資
1976年 8月 :三島工場に鋳造工場を増設、アルミ鋳造を開始
1976年9月 :宮城県角田市に角田営業所を新設
1977年 8月 :三島工場内に、総合事務所を設立し業務開始
1977年11月 :資本金を3500万円に増資
1982年11月 :宮城県伊具郡丸森町に角田営業所を移転し、宮城工場として操業開始
1982年4月 :三島工場内に金型工場を新設
1994年12月 :金型工場を三島市梅名に移転し、梅名工場として操業開始
2003年6月 :三島工場・長伏第一工場・梅名工場でISO9001:2000を認証取得
2003年11月 :三島工場、製品・金型倉庫新設
2004年6月 :宮城工場、ISO9001:2000を追加拡大にて認証取得
2006年6月 :安久工場新設
2008年5月 :ISO14001:2004 全社認証取得
2011年8月 :東日本大震災の被災地復旧・復興に貢献したとして経済産業大臣表彰を受賞
2013年11月 :社長交代、三宅ゆかり社長就任
2014年2月 :三光ダイカスト工業所創業50周年を迎える
    12月 :三島工場 アルミ鋳造ゾーンのリニューアルラインが完成
2016年10月 :三島商工会議所「Mステ大賞」最優秀賞受賞
2016年11月 :テレビ東京放送「ガイヤの夜明け」出演
2017年 8月 :男女共同参画社会づくり活動に関する知事褒賞「チャレンジの部」受賞
2018年 3月 :中小企業庁「はばたく中小企業小規模事業者300社」選定
2020年 1月 :SDGs推進「TGC静岡 2020 by TOKYO GIRLS COLLECTION」
創業年(設立年) 1964年
事業内容 ・ダイカスト製品の成型、加工、表面処理、塗装、組付け ・ダイカスト製品の金型設計制作 ・アクセサリー製造・販売(スチームパンク)
所在地 静岡県三島市松本113-1 電話:055-977-4585 FAX:055-977-0254
静岡県三島市安久64 電話:055-977-2727 Fax:055-977-2980
宮城県伊具郡丸森町大館1-31 電話:0224-72-4194 Fax:0224-72-4195
資本金 3,500万円
従業員数 120名
会社URL

株式会社三光ダイカスト工業所