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株式会社いそのボデー

株式会社いそのボデー 代表取締役社長 磯野栄治

さくらんぼやラフランスなど、果物で有名な山形県に、創業から94年にわたって物を運ぶツールの製造、販売を一貫して手掛けている会社がある。それが株式会社いそのボデーだ。創業当時は自動車がない時代で、荷車や木製の馬車などの製造・修理を行っていたという。時代の流れとともに手掛ける製品は変わっていったが、物を運ぶツールに関わってきたという点はずっと変わらない。扱う素材が木材から鉄、アルミなどに変わる中で、いそのボデーとして時代対応をし続けてきたことが現在の成果として表れている。経営のポイントともいえる時代対応について、どのように行ってきたのか、その歴史とこれから先の未来についてお話を伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

支え合うことができているからこそ独自性が生まれる

社風は何かと尋ねられて、「和」であると答えた磯野社長。どの会社でも、1人で経営することは難しく、社員全員が協力しなければならない。会社を長く残していくためには、数々の競合がいる中で、独自性を出しながら生き残る必要がある。自分たちの価値をどのようにお客様に提供するか。これらのことを、経営陣だけではなく現場の作業員まで浸透させなければいけないと語る。いそのボデーのホームページのトップには、「創造・情熱・誠実」という言葉がある。会社が生き残るために、自分たちができること、そしてなすべきことは何であるのか。その根源となっているのがこの3つの言葉なのではないだろうか。戦いに勝ち抜くためには独自性が必要であり、その独自性を生み出すためには、社員が協力して支え合いながら工夫することが必要である。その結果、納期を早めることが可能になったり、よりお客様に喜ばれる製品を作ったりすることができる。いそのボデーが大切にする「和」。社風だけに収まらず、会社の強みを作りだす原動力のひとつになっている。

お客様とのコミュニケーションからものづくりのヒントを得る

磯野社長が入社してすぐに、自社の特徴的な製品について考えた。それが現在も生産されているi-skip doorというリモコンで自動開閉できるドアである。この製品の一番の特徴はセキュリティ面に優れていることであるが、この製品はお客様の声から生まれたというのもひとつの特徴である。「ものづくりの企業では、自分たちの思いで作ってしまうことがあるが、それはお客様が求めているものではない」と磯野社長は語る。だからこそ、いそのボデーではお客様視点に立ったものづくりを行っている。製品を購入していただいたお客様に対して、販売して終わりではなく、その後のアフターサービスまで徹底して行うことでお客様の声を拾い、その次の製品に応用する。また、徹底的にお客様を知るために、自分たちのお客様だけではなく、お客様のお客様のことまで把握する。このように、何よりもお客様を優先することで、本当に必要とされる製品を製造・販売できていることが、いそのボデーの独自性に磨きをかけている。

物を運ぶツールを一貫してつくり続ける

「10年後ってなかなか読めないですね。こういう時代で5年先も読めない。自動車業界は今が大きな変化点なんです」これは、10年後の会社は、どのような状態を目指すか?という質問への答えである。自動車業界では、2030年にガソリン車が廃止されるという話もあるように、今大きな転換点を迎えている。しかし、動力の変化はあったとしても、自動車に荷物を積むという機能がなくなることはないだろう。特に、いそのボデーで手掛けている建設関係の鉄材や建築現場で使う重機を運ぶ車は、カスタマイズが多い。そしてこれらのカスタマイズには、大手メーカーではすべてに対応することはできない。このようなものは、10年後もおそらくなくなることはないだろう。自動車がない時代から、物を運ぶツールを作ってきた、いそのボデーだからこそ、これから先もそこにこだわり続ける。様々形を変えながら長い間存続してきた、いそのボデーが、これから先どのように時代に対応していくのか。未来のいそのボデーにますます期待をしたい。
いそのボデー本社
重機積ボデー
工場内の様子

日本一を目指してさらに磨き続ける

社長と役員の方の関係性を教えてください。

当社には3人の常務がいて、それぞれ管理部門、営業部門、生産部門の役割を担っています。社長は私なので、決定権は私にありますが、そこまでの過程は常務に任せています。個人的には、3人の常務は会社の3本の矢だと思えるくらい、会社経営についての相談もできる、私にとっても、いそのボデーという会社にとっても、なくてはならない存在です。この3名の常務とともに成し遂げたいと思っていることがあります。それが平ボデーと重機積みボデーの分野で生産台数を日本一にすることです。今は日本で5番目くらいなのですが、この3人と一緒なら、日本一になることができるのではないかと思っています。それを達成することが今の私の夢ですね。

日本一を実現するために必要なことは何ですか?

日本一を実現するために具体的に必要なこと。それは今、最も悩んでいる点ではありますね(笑)。トラックのボデーというのは、大手にはできないカスタマイズが多い製品なんです。というのも、それぞれのカスタマイズに対応していると生産効率がとても落ちてしまうためで、日本一になるためには、この生産効率とカスタマイズに対応する付加価値の両方を満たすことが必要です。そのための仕組みを現在検討中です。現在は、大手メーカーで標準的な製品を作り、それに満足できなかったお客様がカスタマイズを我々のような企業に依頼をしてきます。我々が日本一を目指すために、生産効率を上げるためのノウハウを構築しなければなりません。そのためには当然個々のスキルも必要になってくるので、今後は教育も強化していきたいポイントですね。

今後磨き続けるポイントはどんなところですか?

やはりコミュニケーション能力と問題解決能力ですね。営業や設計など、生産において専門的なスキルは当然必要なのですが、それよりももっと下に、お客様が困っている問題点をいかに捉えるかということが重要です。そのために、お客様との関わりが欠かせません。そして、その悩みをキャッチしたときに、組織内に伝えて実行する。ここまでを行うためのコミュニケーション能力が全社員に求められます。そして、伝えられたお客様の悩みを解決していくこと。これは社員を育てていかなければ難しいことではありますが、絶対に必要だと思っています。そのためには、もう実践しかありません。自分たちがやってきたことをチェックして、次どうするか考え、行動する。これに尽きるのではないでしょうか。

三本の矢のひとりとして、後世に会社を紡ぐ

株式会社いそのボデー 常務取締役 金田肇

いそのボデーの設立は、1964年。その4年前、1960年に山形県で生まれた金田常務。大学卒業後、地元の銀行に就職し、営業職を経験した。銀行マン時代には、様々な会社のトップと接する機会が多かったことを生かし、経営に関する全体的な視点やお客様とのコミュニケーション能力を身に着けた。そんな金田常務の転機となったのが4年前だ。長年にわたって勤めた銀行から民間企業への転職を果たす。その転職先がいそのボデーだった。初めは部長として勤務し、現在は常務取締役を務める。財務、経理、総務といった、会社経営を行う上で必要不可欠な役割を担い、裏方としていそのボデーを支えている金田常務に会社に対する熱き思いを伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

入社10年前の出会いが運命だった

長年にわたり、地元山形県の銀行で営業や融資に関する仕事を行っていた金田常務。そんな金田常務といそのボデーの出会いは、金田常務がいそのボデーに入社する10年前に遡る。金田常務が銀行マンとして働いていたころ、企業研究の対象となった企業がいそのボデーだった。当時いそのボデーで作っていたi-SKIP DOORという安全性の高いスライド式のドアに興味をもった。それから10年後の2017年に取引先の銀行からいそのボデーを紹介された。このような紹介は、その企業に合った人材を紹介されることが多く、入社することに迷いはなかったという。会社の組織については何も分からない状態ではあったが、新しい世界に挑戦してみたいという金田常務のチャレンジ精神で57歳で銀行マンから民間企業へ転職することとなった。金田常務は今年で創業94年を迎えるいそのボデーがこの先も永続的に残っていくために、財務・経理・経営全般の裏方として、いそのボデーを支えている。

それぞれの役割をもって会社として結果を残す

金田常務が担当している仕事は幅広く、財務担当として会社の財務状況を把握し、報告することや、突発的に起こるイベント・建物の管理、その他日常の細かな手続きなどの処理を行っている。金田常務が率いる財務関係のグループには6名の社員がおり、これらの繁雑な業務をチームメンバーと協力して担当している。このような仕事は表に出ることは少ないが、裏方として会社を支え、結果として表れたときに周囲から感謝されることがやりがいだと語る金田常務。派手な部署ではないけれど、なくてはならない大切な仕事に携わっているという自負がある。金田常務は、それぞれの役割を持った社員が、お互いに感謝をしあいながら、いそのボデーとしての結果を残し続けようとしている。その積み重ねは、創業94年目の企業が、100年、200年と歳を重ねるとともに、成果として実証されていくであろう。

今度は自分が恩返し。後世に紡ぐためのサポートを。

会社が永続的に残るために、支えることが目標だと語る金田常務。その動機は、「あたたかい会社だから」だと話す。4年前に入社した当時、業界未経験で専門的な知識はほとんどなかった。社名にあるボデーという言葉も、「率直に、なんでボデーなの?ボディーじゃないの?」とモヤモヤしていたという。教えてくれたのは、社員のひとり。ボデーという言葉は専門用語としてボディーとは別に存在する言葉で、その言葉の意味からボデーを採用しているのであると親切に教えてくれた。この小さく思える出来事は、今でも金田常務の心に残っており、先輩たちが築き上げてきた「あたたかい会社」を後世に残していきたいという動機に繋がった。いそのボデーは、ものづくりの会社であるため、手作業が多くなる。仕事をうまく進めるためには、働く社員同士の人間関係の良さがカギとなる。いそのボデーには助け合うという気持ちが根強くあり、その部分に関する金田常務の思い入れも大きい。アットホームでありながら人としての成長もさせてくれる、そんな会社を後世に紡ぐサポートをしたいと語ってくれた。
チョコ案(改善活動)の
実績グラフ
改善活動発表会
リモコン付
オートスライドドア
「i-SKIP」

地元山形のあたたかい会社を後世に紡ぐために

会社を永続的に残すための今後の課題は?

私の中では、赤字にしないこと、人づくり、時代対応の3つのポイントがあります。1つ目の赤字にしないことについては、基本中の基本ですが、きちんとした適正な利益を社会に還元することが大切です。2つ目の人づくりについては、個々のスキルと協力が重要です。我々の仕事は、手作業が非常に多いです。そのため、支え合えるような人づくりが大事なのではないかと思っています。3つ目の時代対応については、我々は、非常に早い段階からCADを入れたり、パソコンを入れたりするなど、時代の流れに合った活動をやってきました。現在もそういったものをどんどん取り入れようとしており、そういった時代の流れを先取りしていく、あるいは定着させていくことが重要だと思っています。

この課題について取り組んでいることはどんなことですか?

赤字にしないためには、売上というよりはそこから得られる付加価値をどう上げるかが重要です。そのために、いかに効率の良い仕事をするかが大事ですね。人づくりについては、簡単な特効薬があるわけではなく、地道な継続しか方法はないと思います。上司と部下のコミュニケーションが重要で、自分の仕事を部下に落とすことで落とされたほうが1ランク上の仕事ができて、落としたほうはさらに上を目指す、そんなことができればなと思っています。時代対応については、我々経営陣にかかっていると思います。社長の印象的な言葉に、「多少失敗してもいいからやってみろ」という言葉があるんです。時代対応というものは、なかなかかじ取りが難しいと思うんですけれども、経営陣の役割が重要かなと思います。

「赤字にしないこと」「人づくり」「時代対応」を
意識したタイミングはいつ頃ですか?

経営において、「赤字にしないこと」「人づくり」「時代対応」の3つが大切だと感じたのは銀行員時代です。当時、自分なりに経営とはどんなものか、自分なりの視点をもちたいと思い、勉強をしていました。その時に1冊の本に出会い、その本から学んだ内容がこの3つのポイントでした。その本を読んだのはかなり前のことなのですが、時代が変わり、表現の仕方は変わっても本質は変わらないと感じています。様々な本を読み、実践をしながら経営とは何かについて考えてきましたが、最終的にはこの3つのポイントに集約されると思います。さらに、いそのボデーでは、この3つがうまく回っていると思うんですよね。だからこそ、94年という年月を迎えられているのではないかと感じています。

監修企業からのコメント

この度は取材をお受けいただき、ありがとうございました。
物を運ぶツールを作るということに一貫して取り組まれていたこと、また、お話の中から、ものづくりを通して人づくりを行っていること、それがうまく回っているからこそ今があるということに感銘を受けました。生産台数日本一になるために取り組まれている今後のいそのボデー様に期待です。

掲載企業からのコメント

この度は取材をしていただきありがとうございました。
今回の取材を通して改めて我々のこれまでの歩みを振り返るきっかけとなり、大切にしてきたこと、これから目指したい姿を考えることができました。今後も進化し続ける我々に期待していただければと思います。

株式会社いそのボデー
昭和2年      山形県山形市宮町にて創業
昭和39年2月   「株式会社磯野ボデー製作所」を設立
昭和42年4月   新潟陸運局より「自動車分解整備工場」認定
昭和48年11月   山形市西越(現在地)に新社屋・工場を建設し、移転
昭和49年11月   新潟運輸局より「特殊整備工場(車体整備作業)」認定
平成8年11月   貨物自動車の箱型荷室用自動開閉扉「I-SKIP・DOOR」特許出願
平成12年10月  「I-SKIP・DOOR ver,1.0」生産開始
平成14年4月   磯野 栄治が代表取締役社長に就任
平成15年12月  「I-SKIP・DOOR」が山形エクセレントデザインセレクション2003受賞
平成18年7月   貨物自動車の箱型荷室用自動開閉扉「I-SKIP・DOOR」特許取得
平成19年5月   「I-SKIP・DOOR ver,2.0」生産開始
平成20年11月   東北運輸局より「指定自動車整備工場(民間車検場)」認定
平成23年12月   エコアクション21 認証取得
平成27年2月   掃除大賞2015「経済産業大臣賞」受賞
平成27年2月   掃除大賞2016「イノベーション賞」受賞
平成28年12月  「I-SKIP・DOOR ver,3.0」生産開始
平成29年7月   移動式多目的ルーム車FUV レンタル事業開始
平成31年1月   東京都港区青山に東京事業所を開設
令和2年9月   「健康経営優良法人2020」経済産業省より認定
令和2年10月   「地域未来牽引企業2020」経済産業省より選定
創業年(設立年) 1927年
事業内容 トラックボデーの製造及び架装(アルミブロック車・重機運搬車・コンテナ運搬車・バンボデー・保冷車・冷凍車・特殊車両など)
トラックボデー関連製品の製作及び販売(ボデー部品各種・各種ステップ・テールゲートリフター安全柵・バッテリー式クーラーシステム)
車体整備・修理・メンテナンス
移動式多目的ルーム車FUV レンタル
移動式セキュリティルームiSafety  レンタル
所在地 〒990-2226 山形県山形市西越25番地
資本金 3,630万円
従業員数 102名
会社URL

株式会社いそのボデー