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北星鉛筆株式会社

北星鉛筆株式会社 代表取締役 杉谷龍一

北星鉛筆は、1951年に創業した鉛筆製造メーカーだ。鉛筆の市場が年々縮小する中で、「鉛筆がある限り、鉛筆をつくり続ける」という信念を基に、消費者へ良質な鉛筆を届けている。同社は、数々の挑戦を続け、ロングセラーとなった定番の鉛筆だけでなく、高級感のある金属の金具でつくられた"大人の鉛筆"など、ヒット商品を生み出してきた。なぜ、挑戦を続けてきたのか。そのルーツは、創業当時から大事にする、ある考えにあった。それは、"常に考えること"。そこには、ただ考えるのではなく、お客様が求めていることを真剣に考える社風が存在する。そんな同社の杉谷氏に、北星鉛筆の独自性や展望、そして鉛筆づくりの魅力について話を伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

"常に考えること"それが北星鉛筆の社風

"常に考えること"北星鉛筆の社風を表す言葉である。"常に考えること"の中でも相手の気持ちになって考えること、何を求められているのかを考え、行動に移すことを大事にしている。なぜ、相手の気持ちになって考えるのか。それは、作業者の経験値から生まれる考えと、お客様が求めている考えは決してイコールにはならないからだ。だからこそ、一人ひとりのお客様に寄り添い、お客様の考えを引き出し、要望に沿った鉛筆づくりを行っている。そのため、杉谷氏はよく社員に「自分の我を出すのではなく、求められていることを考えながら作業しなさい。それがお客様のためになる」と話すそうだ。決して社長だけの考えでなく、現場レベルでお客様の要望に沿った鉛筆づくりを行っている。そんなお客様から求められることを常に考える会社、北星鉛筆。そのような社風があるからこそ、創業から71年、お客様に愛される鉛筆をつくり続けることができるのだ。

時代に合わせた柔軟なものづくり

北星鉛筆の強み。それは、創業から71年間、時代に合わせた柔軟なものづくりを行ってきたことだ。柔軟なものづくりについて杉谷氏はこう語る。「鉛筆をつくることに関しては、どのメーカーもできていると思います。必要なのは新しいものを生み出せるかです。なので、常に新しいことを考えながら商品開発をしています」。時には、鉛筆にこだわらず、ボールペンを製造したり、iPadなどに使用するタッチペンを製造するなど、時代に合わせ、多種多様に同社の技術力は形を変えてきた。その技術力の多様性が同社の強みであり、お客様から愛され続ける理由の1つでもある。71年もの間、何度も目の前に高い壁が現れただろう。しかし、その度、挑戦を続け、時代の要望を考え続けてきた結果が今の北星鉛筆の土台をつくっている。そして、その挑戦が時代に合わせた柔軟なものづくりを可能にしていると言っても過言ではないのだ。時代に合わせた柔軟なものづくりに挑戦できることそのものが、北星鉛筆の強みであり、独自性であろう。

鉛筆づくりの技術力を他のものに

鉛筆以外のものでも、鉛筆づくりの技術を活かしていく。北星鉛筆の今後を語る上で欠かせないキーワードだ。少子化やスマートフォンの普及により、昔と比較し、鉛筆を使用する頻度は減ってきている。そのような時代背景があるからこそ、他分野への活用を考えているのだ。具体的には、鉛筆の木軸に用いる技術を活用して、持つところが木でできているボールペンやシャープペンを製造したり、そのほかのペン軸などへの活用も考えている。そんな、他分野への挑戦を可能としているのが、確固たる鉛筆づくりにおける技術力だ。長い歴史の中で積み上げてきた、技術力。そして、あらゆるお客様の要望に対応してきた応用力。この2つがあるからこそ、様々な分野に挑戦し続けられるのだ。そして、今後はその挑戦の歩みをさらに加速させ、同社が誇る鉛筆づくりの技術力を他分野に活かしていく。今後、どのような商品が発明されるだろうか。待ちきれない日々が続く。
北星鉛筆が手掛けた
"142cm"の鉛筆
長い歴史の中、
つくり続けてきた鉛筆
"考え続ける"
を大事にする鉛筆づくり

鉛筆の始まりと会社の未来

今後、どのような会社にしていきたいですか?

お客様から求められたことに対して100%応えられる会社にしていきたいですね。欲を言うなら、お客様に対して「こうしたらどうですか?」と提案できるような会社にしていきたいです。そのためには、できないことに対して、どうしたらできるかと考え続けることが重要です。以前、142cmの鉛筆をつくりたいという要望がありました。弊社の機械では、つくることができなかったんですが、違う仕事で関わらせてもらった高知県の会社と連携してつくりあげることができました。お客様からの要望を断らないことで事業が更なる広がりを見せる。その繰り返しがお客様の要望を100%応えられる会社になると思います。

お客様の要望を100%応えられる会社に必要なことを
教えて下さい!

北星鉛筆が持っている技術力を絶やさず、受け継いでいくことだと思います。現在、若い世代の人が多いので、その世代にベテランの技術を受け継がせていくことが重要になってきます。その中でも重要になってくることは、機械一つひとつの部品のことまでしっかりと理解することです。なんとなく、操作の仕方だけを教わって、内容を覚えるだけでは、技術力は進化しません。しっかりと部品一つひとつが担う役割まで理解することが重要なのです。なので、どうしても社員の成長に時間がかかってしまいます。去年より今年、今年より来年と、少しずつ成長を続けながら、弊社の技術力を若い世代に受け継がせていきたいですね。

鉛筆づくりの魅力を教えて下さい!

発祥はイギリス。そして、現代の製品に近い形にしたのがフランスです。当時のナポレオンの命令で黒鉛と粘土を活用した鉛筆が生まれました。そこから約250年、形こそ進化し、様々な変化を遂げましたが、つくり方は大きく変わっていません。そんな鉛筆の良さ、それは、いつの時代でも書けることです。明治時代に使っていた鉛筆でも文字を書くことができます。ボールペンだとインクが固まって書けないですよね。いつの時代でも書け、無くなることがないのが鉛筆です。だからこそ、その時代に合わせた鉛筆をつくり続ける必要があり、それが我々のやるべきことです。だからこそ、同じものをつくっているだけでは駄目で、新しいことに挑戦し続けなくてはいけません。大変ですけど、それが鉛筆づくりの奥深さですね。

"北星鉛筆の物流を支える"
技術継承を促す働きかけとは

北星鉛筆株式会社 物流部 鈴木利規

物流部として、商品の在庫管理と出荷業務を担っている鈴木利規氏。そんな、同氏の入社の決め手は、"ものづくり"への興味。同社の鉛筆づくりに惹かれ、その素晴らしさに関わることを決意した。入社後、最初に配属した部署は営業。営業を9年経験した後、物流部に配属となった。営業を経験したことで商品の知識、そして各部署とのコミュニケーションの重要性を知った。その経験があったからこそ、物流部でも、営業部、包装部など他部署と連携し、同社の在庫管理、出荷業務を支えている。そんな社外の物流のみならず、社内の物流のコントロールも担っている同士。今後、どのようなことに取り組んでいきたいのか。同氏が感じる北星鉛筆の魅力、そして今後必要になってくることについて詳しく話を伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

"ものづくり"への興味

なぜ、鈴木氏は北星鉛筆に入社したのか。その答えは、"ものづくり"への興味である。幼い頃からものをつくることが好きだったと話す同氏。そのような幼き頃の経験、思い出が同社への入社を後押ししたのだ。同社を知るきっかけとなったのは、ある日の新聞。同社のことが書かれている記事を目にしたのが始まりだ。同氏はその時のことをこう語る。「記事を見て、地元にある会社ということで興味を持ち、さらに身近ではあるが、つくられる過程は分からない鉛筆づくりという事業により興味を持ちました」と。入社後は、営業部に配属。右も左も分からない中、試行錯誤を繰り返し、地道に経験を積んできた。その経験があったからこそ、事前に「今回のお客様には、こういうことを伝えよう」とお客様一人ひとりに合わせコミュニケーションを取ることができるようになった。"ものづくり"への興味が生んだ同社への入社。今では、同社を支える人財にまで成長を遂げている。

会社内のものの流れをコントロールする

現在のやりがいについて、鈴木氏はこう語る。「繁忙期になると、一日に出荷する量が日によって、かなり異なってきます。なので、包装部や営業部と連携して、この商品を一日だけ日にちをずらして欲しいとか、社内のものの流れをコントロールして、物事が上手く回った時は、非常にやりがいを感じます」。社内物流のコントロール。決して簡単なことではない。物流部に配属して、わずか2年。できるのには、理由があった。1つ目は、営業部での経験。長い間、同社の営業を経験し、商品のこと、そして出荷までの流れを把握しているのだ。2つ目は、他部署との連携。営業部や包装部と連携を取りながら、業務を進めている。「納期通りに商品を出荷できるのか?」その問いを常に自分に、社内に投げかけ、納期遅れの未然防止に努めている。在庫状況、会社状況など、目の前のことだけでなく、常に未来のことを考え行動しているからこそなせる業なのだ。

技術承継をサポートする

北星鉛筆の技術力を若い世代に継承していく。それが鈴木氏の今後の目標だ。長い歴史の中で受け継いできた技術力を絶やさないように、衰退させないようにと考え、技術継承のサポートに力を注いでいる。直接、社員と話し、技術のイロハを若い世代に伝えるのではなく、物流部として、各部署の業務を裏側からサポートしている。具体的には、在庫から現在の状況を予測し、そこから物事を逆算する。そして足りていないものがあれば、それに必要な動きを促し、また、その動きに対して必要な考え方や気を付けるべき点を伝えている。「誰かが言わなくても、事前にやろうとか自分たちが率先してやるという気持ちになってくれると嬉しいですね。そうなると製造のスピード、生産性がより向上して、今以上に北星鉛筆が良くなっていくと思います」と今後の理想像について語る同氏。今まで積み上げてきた同社の技術力を絶やさないためにも、今後もあらゆる角度から北星鉛筆を支えていくのだ。
在庫管理と出荷業務が
主な業務内容
鉛筆の歴史や
製造方法などを知ることができる
"東京ペンシルラボ"
北星鉛筆が手掛ける
多種多様の鉛筆

北星鉛筆の良さと今後の成長について

今までで大変だったことを教えて下さい!

営業部の時の話なんですけど、お客様からの要望通りに鉛筆をつくり、納期通りに納品する。当たり前のことですが、これが非常に大変で、難しいことでした。お客様一人ひとりによって、求めているものは違います。印刷の仕方一つをとっても「このような印刷をして欲しい」とか、要望を正確に聞き取り、そして忠実に再現することが求められる仕事です。そして何より難しく、大変なことは、完成するまで気を抜けないんですね。印刷も印刷し終わったものを見ないとできているかどうかは分からないですし、安心できません。お客様の要望通りに鉛筆をつくる。当たり前のことなんですけど、非常に難しくて、大変なことだと思います。

今後、必要になってくることは何だと思いますか?

今以上に、部署間のコミュニケーションを活性化していくことが非常に重要なことだと思います。北星鉛筆という同じ会社で働いているので、話しかけづらかったら、難しい装置の使い方だったり、日々の業務を行う上で大切な会話も聞きにいきづらいと思います。なので、一言で言うと環境づくりですよね。我々の会社は、製造部や営業部、包装部、物流部、塗装部など様々な部署に分かれているので、より部署間同士のコミュニケーションは必要になってくると思います。そして、今以上に部署間のコミュニケーションが活性化し、会話が増えると、より効率良く、スピーディーにものづくりができるようになると思っています。

北星鉛筆の良いところを教えて下さい!

"考えることを止めない"これは他の鉛筆屋にはない、北星ならではの強みだと思います。少子化やスマートフォンの普及など、鉛筆を使って書くという機会が年々減ってきている中、どうしたら使ってもらえるかを常に考え、色々なことに取り組んできました。鉛筆づくりを見ることができる工場見学用の施設を設けたり、小学生のみならず、大人も使える鉛筆「大人の鉛筆」などをつくってきました。現会長が「常に考えることを心掛けなさい」とよく話してくれるんですけど、その言葉を体現するかの如く、常に考え続けて、新しいものを生み続ける。この考え続けるという社風は北星鉛筆の良さだと思います。

監修企業からのコメント

今回は、取材をお受けいただき、ありがとうございました。
北星鉛筆様が大事にする"考え続ける"という社風。その社風を深く感じる時間となりました。
考え続けることで、あらゆるヒット商品を生み出した北星鉛筆様。
今後、どのような商品が生まれるのでしょうか。目が離せません。

掲載企業からのコメント

今回は、北星鉛筆を取り上げていただきありがとうございました。
取材を通して、改めて弊社が大事にする考え方、そして今後のビジョンを見つめ直す機会になりました。
創業から築き上げてきた技術力を後世に受け継いでいけるよう絶えず挑戦を続けて参ります。

北星鉛筆株式会社
1897年 北海道開拓時代に屯田兵として北海道に移住。
1909年 木(水松:オンコ・イチイ)の豊富さに目を付け、杉谷木材を開業。
     板製造の企業の中では一番最初に、鉛筆用の板を製造し内地で販売。
1913年 北海道・佐呂間に工場を設立。15馬力のガスエンジンで鉛材を製造し、
     伊勢・津にある伊藤鉛筆を始め、全国に出荷。
1941年 戦争により板業者が統合。北海道鉛筆材工業組合となる。
1943年 東京・大井の月星鉛筆を買収。
     北星鉛筆文具株式会社を設立。(本社:釧路市)
1944年 北星鉛筆文具株式会社に参加
1950年 杉谷木材が月星鉛筆の東京設備を買収。
     初代社長、杉谷安左衛門が現在の場所で、北星鉛筆として鉛筆製造業を開始。
1951年 北星鉛筆株式会社設立。
1964年 本社ビル竣工(地下1階・地上5階)。
1966年 日本工業標準表示JIS表示工場に認定。
1978年 生産動態統計調査協力の功績により、通産大臣表彰を受賞。
1989年 四つ木工場竣工(鉄骨ALC4階)。
1994年 前社長杉谷和俊が4代目代表取締役に就任。
1997年 葛飾区優良工場第一号の認定を受ける。
1999年 越谷物流センター開設。
2000年 東京都で中小企業創造的事業活動の認定を受ける。
2002年 東京都の産学公連携事業認定事業になる(玉川大学)。
2003年 「もくねんさん」が地場産業優秀製品優秀賞「商工会議所会頭賞」受賞。
2005年 「もくねんさん」が中小企業優秀新技術・新製品賞 優秀賞受賞。
    「もくねんさん・ウッドペイント」が東京都ベンチャー技術大賞 奨励賞受賞。
2007年 もくねんさん・ウッドペイント」がホビー産業大賞 日本ホビー協会賞受賞。
    「もくねんさん・ウッドペイント」が葛飾ブランド「葛飾町工場物語」に認定。
2011年 「大人の鉛筆」が文紙フェア大賞 銀賞受賞。
2012年 「大人の鉛筆『彩』」が文紙フェア大賞 銅賞受賞。
    「大人の鉛筆」が日本文具大賞デザイン部門優秀賞受賞。
    「東京ペンシルラボ」をオープン。観光鉛筆モデル工場となる。
2013年 「大人の鉛筆に、タッチペン。 」が文紙フェア大賞 金賞受賞。
    「大人の手帳鉛筆『ミニ』タッチペン付」が文紙フェア大賞 銀賞受賞。
    「大人の鉛筆」がが葛飾ブランド「葛飾町工場物語」に認定。
2014年 大人の鉛筆に、ケシゴム。」が文紙フェア大賞 銅賞受賞。
    「STYLUSな鉛筆キャップ。」が文紙フェア大賞 銅賞受賞。
2015年 「大人のもちかた先生。」が文紙フェア大賞 銀賞受賞。
2016年 株式会社パイロットコーポレーションとの協力関係に合意。
    「大人の鉛筆―和流―」が文紙フェア大賞 銅賞受賞。
2019年 「日本式鉛筆削り634」が文紙フェア大賞 銅賞受賞。
     現社長杉谷龍一が5代目代表取締役に就任。
2020年 「大人の色鉛筆13」が文紙フェア大賞 金賞受賞。
2021年 「大人の色鉛筆13」が東京TASKものづくりアワードで大賞受賞。
創業年(設立年) 1951年
事業内容 鉛筆製造業
所在地 東京都葛飾区四つ木 1-23-11
資本金 9000万円
従業員数 28名
会社URL

北星鉛筆株式会社