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京葉ベンド株式会社

京葉ベンド株式会社 代表取締役 長谷川広志

今回取材するのは、歴史ある企業を受け継ぎ、様々な変革と挑戦を続ける長谷川広志社長である。就任以来、海外展開や外国人採用などの会社のグローバル化を進めるとともに、創業以来の「誰もやらなくてもお客様のためならチャレンジする」姿勢を貫く。
1950年に個人企業山崎製作所としてパイプ曲げの事業をスタートし、その後、設備・機械の設計及び販売を通じて成長しながら、時代の流れの中で変化する顧客のニーズにも誠実に対応してきた。
現在は、装置産業そしてメーカーとして新しいステージで活動をしている。そんなチャレンジ企業のトップに話を伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

「素直」に、「実直」に、そして「人の役に立つ」

「まじめな人が多いですよ、素直ですね」という長谷川社長。短いその言葉の裏には、社風や人材育成に関する根本の考え方が見え隠れする。そもそも人間の成長には時間がかかり、組織としての貢献人材になるためには、能力よりも素直さや実直さが必要という。そして基本的なことの積み重ねと成長意欲を持ったチャレンジが発展を築く。
創業者を祖父に持ち、長男としていずれ会社を継ぐ意思はあったものの、次男が先に入社していたことで、兄弟による経営が会社にとって本当にベストか、自分が入ることで不和を起こさないか、という真剣な思いから、一時は医療IT分野のコンサルティングなど別の道を選んだ。しかし改めて、現会長より「力を貸してほしい」とオファーがあり入社。その後、自身は経営者として、そして弟は調達・製造責任者の常務としての役割を確立した。それは自分がトップとしての責任を自覚し、社員や関係者の役に立ち、そして会社はお客様、業界、社会の役に立つという姿勢を貫いたのだ。

「NO」とは言わない。お客様の要望を実現するチャレンジ

お客様の課題や要求は尽きない。品質、コスト、スピードなど常に進化を求められる。それを、自社の技術をかさに着て「うちは、それできません」と断ることは易しい。しかし同社は、「他社が受けない(受けられない)要求に応えることこそチャレンジ」と考える。この考え方により、パイプ曲げのいわゆる加工屋から装置産業となり、そしてメーカーとしての現在をつくってきた。技術やコスト面での“ムリ”に対して、とにかく前向きにチャレンジし、時には薄利なこともあったが、結果としては信頼につながり、大手(自動車メーカーやカバンのブランド等)含む国内外のお客様とダイレクトでやり取りできる強い関係性を築いてきた。実際に「油圧は床がべたべたするからどうにかできないか?」というお客様の声から、油圧の代わりに電気を用いた新技術を開発し、今や世界で勝負できる水準になっている。チャレンジし続けるこの姿勢は、医療分野や公共施設へ、そして、社会貢献を捉えたメーカーとしての新製品開発へと発展していく。

世界に通用する企業を創る

世界へチャレンジできる企業を目指す。そのために、まずはアジアで一番の企業を目指す。それが当社の掲げるビジョンだ。決して夢物語ではなく着実に成果を上げつつある。
長い歴史の中、現場での創意工夫と成功の積み重ねから「どこまで自分たちが通用するか試したい!」という思いは、ビジネスとしての成長とともに、日本のものづくり業界(製造業=ワーカーというイメージ)を誇りあるものにする、という強い意志がある。
実際に同社のサーボ技術/製品水準は、国内だけでなく海外でも高く評価されていて、様々なオーダーや相談も増えてきている。もっと世界で認知され、高い要求に応え続けることで、さらに同社は強くなる。その展望をもとに事業のストーリーを描き、新たな挑戦を続ける同社は、これからの製造業/メーカーを牽引するだけでなく、日本の光る中小企業としての在り方を示す指標となるだろう。
千葉から世界へ
メーカーとして製造から受託開発まで行う
きらりと光る産業技術として表彰

今まで築き上げた伝統をより良い方向にブラッシュアップする為に

幼いころから現在のように志が高かったのですか?

自分で言うのもなんですが、昔から正直者ではあったと思います。それで損することもありましたけどね。ただ、それでも綺麗ごとできちんとお金儲けができれば良いな、とは考えていました。医療のように、人の悪い部分を治して感謝されるような企業を目指したい。その様な背景があって、どんなお客様の要望も断らず、可能な限り理想を叶える対応をしています。利益は出ないこともありますが、その経験が製品開発につながりますね。例えば、工場といえば非常にノイジーなイメージがあると思いますが、サーボという製品に取り換えることでノイズ音が減少され、近隣対応や作業員のストレスフリーにもつながります。そういった発想は昔からありました。これからも感謝されてお金を頂くサービスを展開していきたいですね。

採用について、意識されていることを教えてください

最近は、外国人採用を強化しています。パターンは様々ですね。エージェントや紹介、個別のエントリーなどです。2年前社長に就任しましたが、以前からグローバルな会社づくりを意識していました。海外人材の良いところは、日本語や日本の仕事の考え方を覚えると、同じ言語を扱う外国人に通訳できる点です。教え方も上手になりますし、良いスパイラルが生み出されると思います。
もう一つは「採用した人が長く働いてくれる環境づくり」です。製造業の場合、2~3年で辞められてしまうのは、単に教育投資で終わってしまう。ビジネスモデルとして最低10年以上は頑張ってほしいし、長く働くと面白さがより分かってくるので、そういった環境の整備を常に意識しています。

事業の進化の軌跡を教えてください

以前は物干し台のパイプ曲げ加工を行っていました。いわゆる加工屋です。一つの部品を曲げるのではなく、均一に二つの部品を同時に曲げる技術など生産性向上につながる技術や機械が評価され、業績が伸びていきました。その後装置産業になってメーカーに至るわけですが、強みとしては時代に合わせて変化させてきた点です。身近なもので言えば、自動車のシート内のパイプやキャリーケースの筐体等の加工装置を作っているのですが、製造業界は工場のオートメーション/無人化がどんどん進んでいます。そういった中でメーカーさんへ直接新しい提案を持っていったり、相談を受けたりする関係が構築できている点は強みですね。そしてその事業を支えてくれるスタッフ一人ひとりが当社の一番の強みです。

“ものづくり”と“ひとづくり”を担うリーダー

技術部設計課  課長 早川雅浩

今回のインタビューは技術部設計課に所属し、課長として製造の前半工程を統括する早川さん。製造のスタッフという立場から管理するポジションとなり、今の時代の育成・教育において試行錯誤し、社長の右腕として事業/組織の両面からこれからの会社づくりに奮闘中である。「長谷川社長のアイデアに技術面からブレーキをかけることも大事な役割です。とはいえ結果としては押し切られて、やった後に成果につながるのですが(笑)」そんな笑い話も出てきたが、社歴が長いからこそ、それに甘んじずトップとの関係性、自分が求められているものを常に的確につかみ、実践し続けるリーダー。そんな早川さんのキャリアや今後のビジョンとともに、会社や社員への想いを伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

入社は縁、その後の努力と成長が重要

「これ話していいんですかね…。普通の会社で、土日休みで一般的な生活を送りたかったからです」早川さんはそう入社理由を語った。以前働いていた会社は飲食業で、若い社員が多く横の繋がりもあり働きやすかったというが、店の閉店が決まったことをきっかけに、休日が不定期で友人と予定が合わないなど、プライベートな理由で異業種での転職を考えた。 「向いてないと感じれば飲食業に戻ればいい、あまり深く考えず、まず見てみよう!」と面接にのぞみ、当時の社長(現会長)と相対した早川さん。少し話をしただけで、その場で採用を受け、面食らったという。転職にあたり、技術に関する行政の教育サポートを多少受けたとは言え、まったくの未経験者をその場で採用する会社に衝撃を受けた。「会社や仕事というのは、やってみないとわからないし、いかに自分がその組織で役割を見出し成長するかが大切」という本質を実体験で学び、それが自身の教育のスタンスにつながっている。

恐れずチャレンジすることがやりがい

同社におけるやりがいについて「新たなことにどんどんチャレンジできることですね!」と早川さんは語った。同社は「能力を身につけ、やりたいことがあればどんどん任せてもらえる」社風がある。この新たなチャレンジをする会社姿勢が、社員育成の環境につながっている。実際、新製品として開発した「CNC-オールACサーボベンダー」というベンダーマシンは、同期制御が可能となり、環境動作の最適化が図られ、生産スピードを向上させるとともに、消費電力が下がりランニングコストの軽減を実現した。この製品は展示会に出展し、様々な有名製品と肩を並べるだけでなく、関係省庁からもその取り組みの認定を受けた。こういった経験から、新しい取り組みに対して、“実際にできるだろうか…”という不安をチャレンジととらえて、管理者の立場で具体化していくことが、今の早川さんのやりがいだという。

育ててくれた会社へ感謝を込めて

「課長ですが、直の上司が専務になるので、実際はマネージャーとして組織における様々な業務の管理を行い、みんなが成長するところを見るのが今後の夢」だという。その想いは、業界において全く無知だった早川さん自身が周囲のサポートによって成長できた、という経験によるものだ。これからは後輩社員に頼られる存在となり、部下を育てることで会社へ恩返ししたいという。自分が持っているノウハウは全て後輩に包み隠さず共有し、将来自分の右腕となる社員を育てる、と情熱をもって臨むが、悩みもある。若い人のやる気を引き出すことやモチベーションを上げることだ。「意思があれば、人は必ず成長するし、それは自分が身をもって体験した」「今のメンバーは自分よりも能力は断然高いので、いかようにも成長できる」それには、コミュニケーション方法や自社のブランド力をもっと高めていく必要があるという。後進の育成を考え、組織改革が進むとき、もっとも企業は成長する。今まさに、同社はそのステージにきている。
ブランディングに向けたイベント出展
海外人材を積極的に戦力化
創業当時のパイプ曲げ装置

京葉ベンドの人材について

長谷川社長の印象を教えてください

社長は、私よりも3~4年後の入社でしたね。初めの印象は、製造業/工業系の職場経験がないと聞いていたので正直、少し心配をしていました(笑)。しかし異業種でやっていたということで固定観念がないので、奇抜な発想もあり、会社に新しい風を吹き込んでいただけましたね。普通「これは難しい」と思うことでも、「とにかくやってみよう!」と悩まず猪突猛進みたいに、製品開発などを行っていました。現場としては不安もありましたし、当然、失敗することもありました。しかし、結果として「新しいことをやってみる」というのは社員がやりがいをもって業務に取り組める要因になりましたし、今の会社をつくっていると思います。

未来に向けどんな方と一緒に働きたいですか?

製造業ですから即戦力は常に欲しいし、技術的に優れている人と一緒に働きたい気持ちは確かにありますが、技術は後からついてくると思っていますね。なので長い目で見ると、今までの経歴とかほとんど関係なく「当たり前のことを当たり前にできる人」が成長していきます。実際私も今の会社と全く違う業種で働いていて、ここまで来ました。日本に会社はいくらでもあって、本当に良い会社、自分に合う会社か、は入社した後にしかわかりません。そして、どう成長するかはその人にかかっていると思います。「自分の仕事に責任を持つ」このことを心掛けて働いてほしいですね。そこからの成長は精一杯サポートします。そのためにも「人間付き合いができる人」、「社交的な人」たちと切磋琢磨していきたいですね。

早川さんの右腕となる人は育ってきていますか?

経験年数が少ないスタッフばかりではありますが、候補達が頑張ってついてきてくれていますし、外国籍の方が入社したことで、より切磋琢磨して業務に励んでいる人が多くなってきています。
社長には怒られるかもしれませんが、いずれ私は「書類にハンコを押すだけ」の人になることが目標ですね(笑)。
そのためには育成の面はさらに強化していきたいです。当社のビジネスモデルだと、具体的には部下の「製品の技術開発力」を高めることと、社員間の「会話の技術力」を磨くことが必要だと思っています。どちらも重要で、どっちも優れているというのは本当に難しいことだと思うので、自分がどんどん教え込んで、みんなが成長してできると良いですね。

監修企業からのコメント

創業から現在まで最先端で走り続けた京葉ベンド。CNC30型左右曲げベンダーは千葉ものづくり製品に認定されており、自社製品には「誇り」を感じました。
常に「新たな取り組み」を大切にされており、本当に世界を代表するメーカーになるという熱い想いに触れ、これからの京葉ベンドの活躍が本当に楽しみになりました。

掲載企業からのコメント

この度は取材をしていただきありがとうございました。改めて会社のことを話すことで振り返る良いきっかけになりました。今後も国内だけでなく世界水準のモノづくりで世界に通用する企業創りのため、気持ちを新たなに、社員のモチベーションを上げながら挑戦していきます!

京葉ベンド株式会社
1950年 東京都墨田区において、個人企業山崎製作所としてパイプ曲げ機械を主力にその他諸機械の設計および販売を目的に創業
1953年 企業発展に伴い組織変更を行い有限会社千代田製作所に改称
1963年 "業務拡大に併せ千葉県市川市にパイプ曲げ加工部門を増設
社名を京葉ベンド鋼管(株)と命名"
1978年 両曲げCNCベンダー、MAC型(MAC-400PS-V)を開発
1981年 CNCベンダー、MACシリーズ化完成 KBCシリーズ化完成
1981年 両曲げCNCワイヤベンダー機を開発
1990年 直線機付き CNCワイヤベンダー機を開発
1994年 京葉ベンド鋼管(株)を京葉ベンド株式会社へ社名変更
2002年 北米サービス拠点としてデトロイトに、[KEIYO U.S.A. CO.]を設立 
2005年 両曲げワイヤーベンダー MWC-E08開発
2012年 "CNC30型左右曲げベンダー 千葉ものづくり製品に認定
NC回転直線機開発"
2013年 "CNC30型左右曲げベンダー 日本機械学会で関東支部技術賞受賞
BNC-30Fシリーズ(オールサーボ含む)開発"
2014年 市川市創造技術振興賞授与
創業年(設立年) 1950年
事業内容 CNCパイプベンダー/CNCワイヤーベンダー/各種専用機、CNC直線矯正機の開発、製造、販売
所在地 千葉県市川市大洲4-7-12
資本金 1,000万円
従業員数 41名
会社URL

京葉ベンド株式会社