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シャボン玉石けん株式会社

シャボン玉石けん株式会社 代表取締役社長 森田隼人

シャボン玉石けん株式会社は「健康な体ときれいな水を守る。」という理念のもと、無添加・無香料の石けん製品を中心に環境に優しい商品づくりを続けている企業である。その製造方法は「ケン化法」という、昔ながらの製法で、じっくり釜の中で天然油脂と苛性ソーダ(苛性カリ)を混ぜて反応させ、約1週間熟成させるという職人の技術と経験が必要となる製法である。この製法により高品質かつ肌に優しい製品づくりを実現している。同社3代目の森田隼人社長は、中高生の頃に先代社長である父の執筆した「自然流『せっけん』読本」の原稿を読み、初めて会社のこと、そして無添加石けんに懸ける父の想いを知った。大学を卒業後、同社に入社。父から受け継いだ想いを決して変えることなく、今も発展を続けている。今回は森田社長に同社の独自性や今後の展望について伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

誠実な対応で信頼関係を構築する

同社の社風は、理念に基づき地道な努力を重ね、顧客との信頼関係を築く姿勢を貫く点にある。なぜなら、同社は一時的な売上拡大に依存せず、創業以来の無添加石けんの価値を正しく伝えることを最優先としてきたからである。森田社長が入社した当時、同社は赤字が続き、中堅社員の離職が相次ぐ厳しい状況であった。一方で、熱意のある若手社員も多く、社内には活気があったという。その後、話題となった書籍「買ってはいけない」や、先代の著書「自然流『せっけん』読本」の影響で売上は回復した。そこから原点に帰り、継続して行っていた講演活動をより加速させ、少人数の集まりにも積極的に足を運んで無添加石けんの理念を誠実に伝えた。また、工場見学を強化し、小売店や消費者に製造工程や素材へのこだわりを直接体感してもらう取り組みも行った。このように、理念をぶらすことなく貫く姿勢は社員にも浸透しており、現在の社風を形づくっているのである。

顧客の「使える」という実感にこだわり続ける

創業以来一貫して守られてきた「ケン化法」と呼ばれる伝統的な製法を、すべての製品に適用している点が同社の独自性である。それは、現代の大量生産・効率重視の流れに逆行するかのように、あくまで愚直に手間のかかる製法を守り抜いてきた姿勢は強みと言えよう。しかも、その製法を一部の商品に限定するのではなく、全製品に適用しているところに真のこだわりがある。また、同社は「健康な体ときれいな水を守る。」という理念を掲げ、あらゆる製品にその価値観を反映させている。単に「ナチュラル」「安心」といった言葉を商品戦略として使うのではなく、企業としての本質的な使命として位置付けている点が他社とは異なる。香料を加えることで一時的に売れる可能性があったとしても、それが肌に合わない人が存在するという事実を前提に、あくまで無添加・無香料に徹してきた。市場の流行に流されず、顧客の「使える」という実感にこだわり続けた結果、合成洗剤や強い香料に敏感な層からの確かな支持を得ている。こうした信念と一貫性こそが、同社の他にない独自性である。

体に良い石けんを全世界へ

同社のビジョンは「石けん」と「合成洗剤」の違いが当たり前に知られている世の中の実現である。石けんは天然由来の油脂とアルカリでつくられ、生分解性に優れ、肌や環境への負荷が少ない。一方、合成洗剤は石油由来の界面活性剤を使用し、洗浄力は高いものの、肌への刺激や環境負荷の懸念がある。同社はこの違いを「バターとマーガリンの違い」のように、誰もが理解した上で自分に合った商品を選べる社会にしたいと考えている。そのために啓蒙活動を継続すると同時に、固形石けんや洗濯用、ボディソープなど主要製品群を、全国の店舗で当たり前に買える状態にすることを目指している。加えて、海外展開にも注力しており、現在10ヵ国に販路を広げている。さらに環境負荷の少ない石けん系消火剤を新たな事業の柱とすべく、JICA支援のもと、まずは海外での実証も進んでいる。災害時の備蓄用途など、新たなニーズの掘り起こしにも取り組み、環境と人に優しい選択肢を世界へ広げていく方針である。
マスコット「シャボンちゃん」が印象的な社屋
シャボン玉石けん初の 日やけ止め
シャボン玉石けんの原点「自然流『せっけん』読本」

無添加石けんの魅力とは

シャボン玉石けんに入社するきっかけは何でしたか?

私自身、物心ついたときから「いずれは家業を継ぐのだろうな」と漠然と思っていました。父から直接言われた記憶はありませんが、どこかで自然にそう意識していたのだと思います。ただ、子どもの頃は家が「シャボン玉石けん」だということが少し恥ずかしという思いがありました。友達の家にあるようなカラフルな石けんと違い、うちのは白くて地味。しかも、当時は地元でも知名度が低く、説明しても伝わらない状況でした。そんな会社に対する印象が大きく変わったのは、中高生の頃に父が執筆した「自然流『せっけん』読本」の原稿を読んだ時でした。その理念に触れて、ようやく会社の姿が自分の中で定まったんです。大学卒業を控えた時、「今なら父と一緒に働ける時間がある」と思い、他社を経ずに新卒で入社を決意しました。母からは「数年外に出ても」と言われたこともありましたが、私は自分の意志でシャボン玉石けんに入ることを選びました。

どのように経営理念を浸透させていているのですか?

企業理念の浸透については取り組みを続けていますが、ここ数年でさらに強化しています。きっかけは、若手社員が中心となってチームを組み、理念の在り方を自ら検証してくれたことです。その過程で「理念をもっと共有し、根づかせていきたい」という想いが自然と生まれました。そこから、ブランドブックを作成したり、社員研修の中でも理念について丁寧に伝える時間を設けるようにしています。特別なことというより、地道に丁寧に続けていくことが大切だと感じています。また、次世代の幹部候補向けには、コロナ禍の時期にネクストボードや部課長研修といった外部研修も実施しました。今後も折を見て、外部の力も借りながら育成を続けていきたいと考えています。理念の浸透と人材育成は、企業の根幹にかかわる重要な取り組みです。

無添加石けんの認知度はどのように変化してきましたか?

私が入社した当初、無添加石けんというものは今ほどは世の中に受け入れられていませんでした。消費者はもちろん、小売店からも話をまともに聞いてもらえないことが多かったという状況でした。しかし今では、感覚的に言えば3〜4倍は受け入れられている実感があります。これは私たちが何か劇的なことをしたというより、時代の流れが大きいと思います。CSRやSDGs、ESG経営といった言葉が社会に浸透し、環境や健康への意識が高まったこと、アレルギーや皮膚トラブルに悩む方々の声が社会に届くようになったことが大きいですね。以前は話を聞いてくれなかった企業から、商談の機会を設けてくれるようになったという変化もありました。我々はぶれずに理念を貫いてきた結果、それがようやく時代の流れとマッチした、そんな感覚です。

日々変化するからこそ、 つき詰めたくなる

シャボン玉石けん株式会社 城戸玲乃

入社3年目、製造部に所属し原材料を釜で炊いて石けんを製造する「釜炊き職人」として日々製造現場の中心を担っている城戸さん。現在24歳という若さでありながら、製品に対する責任感と自社の製品への誇りを強く持ち、仲間とともに、ものづくりの最前線に立ち続けている。小学生の時に工場見学に訪れ、同社を知ったことがきっかけとなった。そこから同社の「健康な体ときれいな水を守る。」という理念に共感して入社を決意したという。部署間の垣根を越えた交流、経営層との距離の近さ、そして若手でも対等に意見を言える風土と、「やってみよう」を歓迎する社風が、自分を大きく成長させてくれたと語る。そんな城戸さんに、同社で仕事をするやりがいやこれからの夢について話を聞いた。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

理念に惹かれて

城戸さんが同社に入社した理由は、「地元で胸を張って働ける会社で仕事がしたい」という想いと、同社の掲げる「健康な体ときれいな水を守る。」という理念が、自身の価値観と重なったことが決め手となった。最初のきっかけは、小学3年生の時に社会科見学で工場見学に訪れたことだった。そこで無添加石けんの製造に触れた体験が強く印象に残り、その後も家庭で同社の製品を使い続けていた。そんな中、自身の就職活動の際「環境に優しい製品づくり」に対する企業の姿勢に信頼を寄せるようになり、そうした理念を実践している会社で働きたいという思いが強まり、自分自身もその一員として地域に貢献したいと考えるようになった。企業が掲げる「理念に共感できた方に入社してほしい」という方針にも共感し、自分の価値観と合致していることが入社の決め手となった。理念を体現し、社会や環境への貢献を実感できる職場であることが、自身の誇りであり、仕事への情熱と責任感の源となっている。

鋭い感覚が求められる職人技

城戸さんのやりがいは、季節や気候の変化に応じて、無添加石けんの品質を安定させる難しい調整にある。石けんづくりは毎回同じ方法でつくっても同じ結果にならず、その時々の湿度や温度、原料の状態を五感で確認しながら最適な調整を行う必要がある。この調整には豊富な経験と鋭い感覚が欠かせず、その難しさゆえに職人としての誇りとやりがいを強く感じているのである。真夏の高温時や冬の低温の時は特に神経を使うという。この感覚は言葉で説明しきれない部分も多く、職人の技術の核心となっている。城戸さんは元々職人への憧れを持ち、体力と感覚を活かしてこの仕事に志望した。周囲から「シャボン玉石けんは良い商品だ」と評価されることも大きな励みとなっており、その評価が自分の仕事の価値を確かめる証であると捉えている。こうした高い品質を追求し続ける責任感と達成感こそが、城戸さんの仕事のやりがいの源泉である。

釜炊き職人として、自分がつくった製品をもっと知ってもらいたい

職人としての技術を極め、一人前の職人となることが夢と語る城戸さん。「釜炊き10年」と言われるほど高い技術と経験が求められる現在の仕事だが、彼女は配属されてから半年ほどで一部の釜炊きの業務を先輩社員と一緒に担い、手ほどきを受けながら製品づくりに関わっている。釜炊きの仕事は座学だけで習得できるものではなく、実際に現場で五感を使い経験を積むことが不可欠である。特に季節の変わり目や予期せぬトラブルに対して即座に対応する力は、長年の経験を持つベテラン職人ならではの技術である。そういった職人たちの日々製造により高品質な石けんづくりが支えられている。こうした環境の中で、確実に技術を継承し、安定した製品づくりに貢献している。さらに城戸さんは、釜炊きの技術を習得したうえで、シャボン玉石けんの魅力を広める広報の役割にも挑戦したいという夢を持っている。自分でつくった製品の良さを伝えることで、会社の価値向上に寄与したいと強く考えている。仕事への誇りと情熱が、彼女の夢を支えていると言える。
新たな分野への挑戦環境にもやさしい「石けん系消火剤」
釜焚き職人は「舌」で出来具合を確認
長く愛され続けているシャボン玉浴用

理念が浸透した社内の雰囲気とは

部署間ではどのようなコミュニケーションを取っていますか?

部署間のコミュニケーションはかなり活発です。業務のやりとりはもちろんありますが、社内イベントが豊富で、自然と他部署の人たちと関わる機会が多いのが特徴です。例えば毎年恒例のクリスマス会や、1〜2ヶ月ごとに行われる社内交流会など、レクリエーションのようなイベントがしっかり用意されています。最近は“ミニ四駆部”が盛り上がっていて、「大会するから参加しない?」といった呼びかけが社内チャットで飛び交っています。社内イベントの前に「作戦会議しよう」と10人くらいで集まってワイワイ話したんですが、そういった場でも自然と仲良くなれます。部署や年齢の垣根を越えて、仕事以外でも気軽に話せる環境があるのは、弊社の良いところだなと感じています。

経営層とはどのようなコミュニケーションを取っていますか?

経営層との距離がすごく近いのも、弊社の魅力の一つだと思います。1年を通して全社員と向き合うために、社員を月ごとに10人程度のグループに分けて、社長や専務と一緒に食事をしながら交流する機会があります。そのグループは年齢も部署もシャッフルされていて、普段関わらない人たちとの会話も楽しめますし、部署間のつながりも生まれやすくなっています。しかも、社長は自分から仕事の話をあえてしない方針で、趣味や家族の話など、ざっくばらんな話題が中心なんです。そういう場だからこそ、緊張せずに本音を言えたり、経営層とも自然に距離が縮まる感じがします。新入社員にも同じように向き合って受け入れてくれる姿勢には、安心感とありがたさを感じています。

社員のモチベーションアップにつながる取り組みはありますか?

弊社では、「健康な体ときれいな水を守る。」という理念を掲げており、その理念と事業内容がしっかりと一致していることが、社員のやりがいや一体感につながっていると感じています。人と環境に優しい製品づくりを通じて、社員一人ひとりが「自分の仕事が誰かの役に立っている」と自然に実感できる環境が整っています。実際、お客様からは毎日のように嬉しいお便りをいただいており、それらは社内イントラネットを通じて全社員が閲覧できるようになっています。例え、直接お客様と関わらない製造部門の社員であっても、「自分がつくった商品が誰かに喜ばれている」ということを肌で感じることができるのです。このように、理念・製品・お客様の声が自然につながっていることが、社員のモチベーションにつながっているのだと思います。

監修企業からのコメント

この度は取材にご協力いただき、ありがとうございます。森田社長のブレない理念と、それを共有し実践される社員の皆さまの姿に深く感銘を受けました。環境への意識が高まる今後、御社の先進的な取り組みはますます注目を集めていくと確信しております。

掲載企業からのコメント

世間でも当社の取り組みがやっと認知されてきましたが、まだまだ無添加石けんの普及が足りていない状況です。これからも「健康な体ときれいな水を守る。」という弊社の理念を貫き活動していきたいと思います。この度は、取材いただきありがとうございます。

シャボン玉石けん株式会社
1910年 現福岡県北九州市若松区で「森田範次郎商店」創業。
1931年 後にシャボン玉石けんを誕生させた森田光德前会長出生。
1949年 法人設立「(株)森田商店」。
1964年 森田光德前会長が、当時の森田商店社長に就任。主力商品は、合成洗剤だった。
1965年 本社を現福岡県北九州市小倉北区に移転し「森田商事(株)」に社名変更 。
1971年 国鉄(現JR)から無添加石けんの注文が舞い込み試作。当時の日本工業規格(JIS)を上回る「石けん分96%、水分5%」の無添加石けんが誕生。自宅で使うと、長年悩んできた湿疹が治る。
1974年 「体に悪いと分かった商品を売るわけにはいかない」と一大決心し、無添加石けんの製造、発売に切り替える。売上は今までの約1%に激減し、半数以上の社員をも失った 。
1975年 シャボン玉粉石けん発売シンボルマークである「シャボンちゃん」誕生。
1975年 固形石けん発売・「(株)シャボン玉本舗」を設立。
1987年 新工場の落成に伴い「シャボン玉石けん(株)」に社名変更、現在地に移転。
1991年 「自然流『せっけん』読本」を出版。低迷を続けてきたが、大きな転機となる商品1割引購入の会員制度「シャボン玉友の会」を設立。
1995年 本社・工場増築落成。
1999年 グループ4社で、環境管理の国際規格である「ISO14001」の認証を取得。
2000年 工場増築落成、創業90周年を迎える。
2001年 環境に配慮した、消火効果の高い石けん系消火剤開発を本格スタート。
2005年 液体製造工場、消火剤製造工場増設。初となる液体せっけんシリーズ発売。
2006年 物流自動倉庫完成。
2007年 森田光德前会長の長男、森田隼人が社長に就任。森田光德前会長が逝去長年の研究が実り、一般建物用消火剤「ミラクルフォーム」本格販売開始。
2009年 林野火災用消火剤の研究を本格スタート。感染症対策研究センター設立。
2010年 創業100周年を迎える。創業100周年記念レセプション開催。
2011年 石けんリサーチセンター設立 。
2013年 JICAプロジェクトのもと、インドネシアにおける泥炭・森林火災用消火剤の開発に着手。
2014年 無添加石けんの製造・販売へ切り替えて40周年を迎え。
2015年 創業105周年記念レセプション開催1% for Natureプロジェクトスタート。
2018年 全国紙で「香害」広告を実施。米国の総合科学雑誌「PlosOne」に石けん(オレイン酸カリウム)の抗ウイルス効果について論文掲載。
2019年 「無香料・無添加石けん月間」スタート。「香害」広告が日本新聞協会・新聞広告賞を受賞。インドネシアにおける森林・泥炭火災用消火剤の開発と普及の取り組みが環境省グッドライフアワード「環境大臣賞 企業部門」を受賞。北九州市と「SDGs包括連携協定」を締結。
2020年 創業110周年を迎える。
2021年 福岡県宗像市地島にて、「未来の海を守る 島まるごと無添加石けん生活~生活排水の環境及び生物への影響に関する実証実験プロジェクト~」実施。「サステナビリティ中期計画」策定。森田千津子代表取締役会長が逝去。
2022年 本社工場・事務所の電力を再生可能エネルギー100%化。無添加石けんの製造・販売へ切り替えて48周年を迎える。
2023年 スマートファクトリー共同研究を開始。「手洗いせっけんバブルガード」ボトルの水平リサイクル実証実験を開始。
2024年 無添加石けんに切り替えて50周年を迎える。
創業年(設立年) 1910年
事業内容 無添加石けんの製造販売
所在地 福岡県北九州市若松区南二島2-23-1
資本金 1億円
従業員数 178名
会社URL

シャボン玉石けん株式会社