細田木材工業株式会社 代表取締役社長 細田悌治
「木材」という天の恵みを社会の役に立てるため、木材に「付加価値」を付けて販売する細田木材工業株式会社。昭和6年に創業してから87年の年月を「何事にも真面目に」取り組む姿勢で時代に寄り添い、愚直なまで物造りに徹し今日まで走り続けてきた。その根底にあるのは、「一.我々は天の恵みである木材を社会の役に立てる使徒であることを自覚しその使命を誇りとする」「二.我々は社業の発展と自己の生活の向上を目ざし常に協力一致して事に当る」「三.我々は『顧客には親切に製品は大切にそして品質第一に』をモットーとする」「四.我々は健全な精神と健康な生活を保持し常に安全な作業を心がける」という4つの信条だ。この記事では、これら信条を基に同社を紐解いていこうと思う。今回お話を伺ったのは、細田悌治社長。木材と会社を心から愛するとてもあたたかい人であった。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
受け継がれていく「真面目」な姿勢
「社風は一言で言うと真面目ですね」細田社長は社風について語るとき、「真面目」と言う言葉を何度も口にした。緊張感の必要な現場であるが故に真面目さは不可欠であることも1つの理由だが、その根幹には大切にされてきた「愚直なまでの物造り」という不倒不屈の精神があるといえよう。同社の創業80年を記念して作られた『木と共に生きて』という著書の中では、先代の「真面目」さがよくわかるエピソードがある。川の流れが強いある日、同社の河岸に筏をきちんと留めないで、そのまま流していってしまう業者に対して、これをきちんと留めさせようと取っ組み合いの喧嘩をして、先代が川に落ちたという話だ。
このように仕事に真剣に向き合ってこられた先代や細田社長の「真面目」な空気がその社風を作り上げているのだろう。
木材に「付加価値」というお化粧を
「細田木材工業は木材に付加価値をつけている会社です」細田木材工業は何の会社ですか、と聞かれた際には常にそう答えているという。製造から加工、塗装、施工まで、木材をただ右から左に流すのではなく、塗装や施工まで行い、様々な角度から「付加価値」を付けているのだ。例えば、木を燃えなくさせる、ということも1つの「付加価値」である。同社が扱う商材の1つである不燃木材は、火災に相当する温度の熱が加えられても燃焼しない・有害なガスが発生しないという大変優秀な木材である。万が一火事になった際にも燃えうつりにくく20分は燃え広がらないで済むという。
これがあれば、火災に発展するまえの消火活動や大事になる事前の避難といった行動ができる。このように、木材に「付加価値」というお化粧を施すことで、さらに木材の良さが引き立つのだと細田社長は嬉しそうに語ってくれた。
時代に寄り添い、必要とされる
「その時代ごとに必要とされる会社になること」と細田社長は語る。これは、「我々は天の恵みである木材を社会の役に立てる使徒であることを自覚しその使命を誇りとする」という同社の掲げる1つ目の信条に基づくものだ。木材を知り尽くしている彼らだからこそ叶えることのできる「木材を最後まで活かしその時代の社会の役に立てたい」という強い願いの証ともいえる。近年同社では、BtoB事業だけでなく、木のリフォームに特化したBtoC事業へも事業の幅を広げ、より広く社会のニーズに応えるべく挑戦しているところである。メディアに取り上げられる機会も増えていき、老舗でありながらも的確な攻めの姿勢は忘れたくはない。社会の役に立ち必要とされ続けることを願い、体現してきた伝統のある同社は、この先も社会にとって不可欠な存在で在り続けるで
あろう。
木材に刻印された社史
大注目!「きえすぎくん」
最新作!浮世絵の「きえすぎくん」
お客様にとってどのような存在でありたいですか。
当社の信条の3つ目に、”我々は「顧客には親切に製品は大切にそして品質第一に」をモットーとする”と掲げています。我々は「木のプロフェッショナル」でありたいと思い、「顧客には親切」であるために木材の調達からリフォームまで、木材に関する疑問点をなんでも相談していただけるような存在であろうと考えております。木材のことでなにかあったら細田木材へ、と言っていただけるような頼れる会社になることを目指しています。社員を育成する取り組みについて教えてください
我々は「健全な精神」を大切にしており、信条の4つ目にも掲げております。そのため、我が社では社員の人間力を高めるための取り組みを行っています。働く人の人格というのは、特にお客様のところへ行ったときに反映されるものです。ですから、社員には人間としても大きく成長してもらいたいと願っています。具体的に言えば、人間学の勉強に取り組んでいます。「致知」「職場の教養」等の雑誌を用いて読み合わせを行うなど、社員全員で勉強会を行い、健全な精神を養っております。大注目!木のホワイトボード「きえすぎくん」について教えてください。
2018年グッドデザイン賞を受賞した、当社一押しの製品です。木のホワイトボードは、「モノ」ではなく「コト」で売ることを考えたときに生まれました。従来のホワイトボードの無機質で少し冷たいと感じるその印象を、有機的で木材ならではの温かい印象に変化を遂げました。そして、書いた時に染みてしまい、消せないという木材の難点を独自の技術で克服し、書き心地が良く、消し心地の良い木のホワイトボードの製作に成功しました。現在オフィスや店舗、教育施設などの内装材として人気が出てきており、すでに多くのメディアに取り上げられています。これからもよりこの「きえすぎくん」が皆様の元で活躍できるよう社員一同努めてまいります。木材で感動を生み出す 担い手として
細田木材工業株式会社 取締役 統括部長 細田俊輔
今回、お話をお伺いしたのは入社25年目で、現在営業本部にてウッドデッキを担当されている取締役 統括部長の細田俊輔氏だ。自社の製品と向き合いお客様に感動を与えたいという想いで日々奮闘を重ねる細田氏。その中で生まれた物語についてや、これからの会社の在り方や夢についてお話を伺った。取材を進めていく上で、話の節々から強い責任感と、木材と社会の未来を見据えて描く大きな夢を抱く姿が見えてきた。伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
木材で世界とかかわる仕事を
細田氏が同社に入社したきっかけは、世界地図。 学生時代から社会の地理が好きだったという細田氏は、特に世界地図を眺めることが好きで、幼少期から身近な存在であった企業の細田木材が、日本に留まらず世界から木材の輸入をしているということを知り、魅力を感じ入社に至ったというのが経緯。 とはいえ、卒業後すぐに同社に入社したわけではなく金融業界で働き、中途入社として未経験の業界にゼロから参画した。入社当初は、木材に関する知識もなく、まさにゼロからのスタートであったが、多くの木材に触れ、たくさんお客様と関わり学ぶことで、現在は、木材の未来や社会の未来を見据えながら会社の在り方を問い続ける仕事に携わっている。まさに同社を支えている人物の一人なのである。自社の製品でお客様の感動を生み出す
「お客様に喜ばれることを目指してやっていますね」そう自身の仕事に対するやりがいについて語ってくれた。細田氏が専門に販売しているウッドデッキでは、お客様のお庭を施工した際「部屋の中のフローリングよりも、綺麗ですね」と驚きと感謝の言葉をいただいたこともあった。お客様の感動を目の当たりにしたことに加え、お客様の感動を生み出せる製品を扱っている点に会社の事業として誇りを感じたそうだ。「顧客に親切」であることを信条にも掲げ重要視している同社に勤める細田氏だからこそ、お客様に喜ばれたときの自身の喜びは計り知れぬものがあるのだろう。木材の欠点を補い日本一になる
「燃える」「腐る」「狂う(割れる)」といった木材の欠点を改善することで世界に木材の良さを広げていくことが夢であるという。木材に「付加価値」をつけて販売するという同社の強みをさらに伸ばしていきたいと語ってくれた。 熱帯雨林の資源が少なくなってきている昨今、限られた資源を有効活用する必要がある。同社では木材を有効活用するため、造作材・フローリング・ウッドデッキをそれぞれの用途に合った使い方を推奨している。また、不燃木材の製造、ウッドデッキに適した耐久性に優れた木材”イペ”をブラジルから輸入して使用するなどして改善も行う。時代の課題に真摯に向き合い、「付加価値」をつけることで木材を最大限に活かしていくこの取り組みは決して簡単なことではないが、「真面目」に仕事を行い社会に貢献し続ける同社であれば、必ず実現できるだろう。
特殊加工で歪み・割れを防ぐ
独自の技術で木材の欠点を克服
木材を使ったワークショップも開催
木材と向き合い、お客様と向き合う
木材が生み出す価値について教えてください
木材は暖かい、という安心感がありますよね。今はオフィスの木質化だったり学校の木質化が流行っているじゃないですか。例えば私が一昨年やったのは小学校の木質化です。小学校は教室の家具やフローリング以外は基本コンクリート造りなので廊下は当然コンクリートなんですよ。そこでその廊下を500メートルくらい、準不燃木材を取り付けました。学校だけでなく、オフィスも冷たい無機質な部屋だと良いアイディアもなかなか出にくく、生産性が下がるかもしれません。木質化ということで木材による有機的な空間を形成することで生産性の向上にもつながるのではないでしょうか。暖かい空間をつくるべく、木質化が進んでくれたらいいですね。貴社の取り組みを1つ教えてください
海外研修を行っています。1・2年に1度、営業のメンバーが実際にブラジル、ベトナム、インドネシアまで出張し、工場を訪れ情報を吸収しに行きます。工場を見て工場の方と懇談し、輸入するようにしています。現地の検品や工程、様子、雰囲気等の状況を把握することができ勉強にもなる。何より販売する際、お客様により詳しく説明することができるようになります。ブラジルでは木材”イペ”を、ベトナム・インドネシアにはフローリングを見に出向きました。現地の方は本当によく働かれる方が多いので刺激にもなりました。他社にはなかなかない研修だと思うので珍しい取り組みかなと思います。お客様の関係について教えてください
1度お付き合いさせていただいたお客様とは長くお付き合いさせていただきたいと思っております。施工が終了した後も「模様替えがしたい」「フェンスをつくりたい」というご要望を頂けることもあります。年賀状を出したり暑中見舞いを出したり、点検させていただいたりしています。イペは耐久性もあって腐らないので張り替えるということは滅多に起こりません。ただし、万が一がないとは限りません。よって、万全を期すためにも年に1度は連絡を取らせていただき、必要な際は訪問させていただき、この目で確かめています。施工後も安心して頼れる会社だと思っていただけるよう、お客様と直に向き合うコミュニケーションを大切にしています。細田木材工業株式会社
昭和6年 創業、北洋材の製材並びに製品の販売。
昭和20年 戦災により全焼。逸早く再建し、復興に多大な寄与。
昭和23年 法人に改組。
昭和51年 現在の江東区新木場に集団移転。
平成元年 インテリア事業本部発足。
平成10年 セーフティー不燃板(化粧貼)が、建設大臣の個別認定を受ける。
平成14年 ウッドデッキ事業本部発足。
平成18年 合法木材取扱い事業者認定取得(化粧合板、集成材)。
平成23年 本社を現在の住所(新木場2-5-3)に移転する。
平成27年 江東ブランドに認定される。
平成29年 不燃設備を導入。不燃事業本部、発足。木製インテリア事業部、発足。
平成30年 木のホワイトボード「きえすぎくん」グッド デザイン賞を受賞。
昭和20年 戦災により全焼。逸早く再建し、復興に多大な寄与。
昭和23年 法人に改組。
昭和51年 現在の江東区新木場に集団移転。
平成元年 インテリア事業本部発足。
平成10年 セーフティー不燃板(化粧貼)が、建設大臣の個別認定を受ける。
平成14年 ウッドデッキ事業本部発足。
平成18年 合法木材取扱い事業者認定取得(化粧合板、集成材)。
平成23年 本社を現在の住所(新木場2-5-3)に移転する。
平成27年 江東ブランドに認定される。
平成29年 不燃設備を導入。不燃事業本部、発足。木製インテリア事業部、発足。
平成30年 木のホワイトボード「きえすぎくん」グッド デザイン賞を受賞。
創業年(設立年) | 1931年 |
---|---|
事業内容 | 木材製品全般、集成材、フローリング、ウッドデッキ、 不燃材、木工事、フローリング工事、ウッドデッキ工事 |
所在地 | 東京都江東区新木場2-5-3 |
資本金 | 9,500万円 |
従業員数 | 47名 |
会社URL |
監修企業からのコメント
創業から現在までの間、時代に必要とされ続けられている秘訣が今回の取材でわかりました。細田社長をはじめ会社全体で木材や社会の未来について長い目線で考えられているからなのですね。そしてそれが出来るのも、木材への感謝と社会への感謝を常に忘れず日々誠実にお仕事をされているからだと感じ大変感動いたしました。この先の時代にも貴社の木材が活き続けると思うと目が離せません!
掲載企業からのコメント
取材をしていただき、ありがとうございました。我が社を見つめなおす良い機会になりました。不燃木材、「きえすぎくん」をはじめ付加価値をつけた製品でこれからも社会のお役に立ちたいと思っております。今後も木材を通じて地域のお客様に喜んでいただける仕事をしてまいります。何卒よろしくお願いいたします。