ホーム

 > 

掲載企業一覧

 > 

株式会社足利フラワーリゾート

株式会社足利フラワーリゾート 代表取締役社長 早川公一郎

あしかがフラワーパークは毎年、年間来場者が150万人を超える植物のテーマパークとしては日本最大規模の誇る。毎年4~5月に開催される「ふじのはな物語~大藤まつり」の壮大さは観る人の感動を生む名物となり、さらにイルミネーションの技術を駆使した季節ごとの演出など様々な趣向で同園は7割を超えるリピートを獲得している。そして2014年にアメリカCNNが「世界の夢の旅行先10カ所」(日本としては唯一)として取り上げてからはインバウンド含む一大観光施設となった。
しかし、2019年の台風19号の影響で園内全域が冠水。さらに新型コロナウィルスの影響で観光産業全体が危機に瀕する。今回の取材ではそんな危機を乗り越え、更なる進化をめざす3代目代表早川氏に、同園の歴史やテーマパークとしての挑戦、未来への思いを語っていただいた。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

トップダウンから組織総合力へ

同社は、2代目である先代社長(現会長)がそれまでの植物園を様々な趣向でテーマパーク化し、地域の観光振興と連携しながら日本一の来場数を誇る施設にまで成長させた。当時の体制はクリエイターの会長とディレクターの早川社長の2トップの体制だったが、社会の多様性、そして時代の変化にこまやかに対応し、組織として困難に勝ち生き残るためには、一人ひとりの可能性を高め、全員でまとまっていかなければいけないという危機感もあり、従業員とともに歩む組織にする必要があるという。早川社長はそれを“全員野球”に例え、今の社風について、一人ひとりがプロとして専門性は高めつつも、人の努力・苦労を知り、認めあう人間性ができてきていると語った。お互いの仕事を助け合い研鑽し合い、園全体としてお客様の感動を生み、その中で全員に仕事のやりがいを感じて欲しいと考えている。「今のスタッフは皆『根も良い人』ですね。仕事との向き合い方が良ければ自ずと成長スピードは早くなり最終的に責任ある仕事や立場を任せられると思っています」と語った。

感動を生み続けること

600畳敷の大藤棚3面や世界でも珍しい八重の大藤棚、そして80m続く白藤のトンネルなど特徴を上げればきりがないが、同園にはお客様の感動への強いこだわりがある。一つは入園料が園内の開花状況に合わせ変動させる時価制だ。1年間を8シーズンに分け四季の花を演出しているが、時期ごとに金額設定していて、特に藤の花の時期は毎日値段が変わることもある。しかし同園では最も入園料が高い時こそ「良かった!今が一番いい状態なんだね」と喜んでくれるという。それは同園が徹底的にお客様の感動・満足、そして納得性にこだわっているからだ。次はもっと良い状態のときに来よう、とリピートにもつながる。そして、夜のイルミネーションについては、若い人に何度も足を運んでもらうため品質を維持しつつ価格を抑える設定にしている。こうしたお客様目線での考え方が感動を生み、遠方のお客様でも年に何回も来るという。そうした取り組みが数多くの受賞につながり、それはスタッフのモチベーションにもつながっている。

関わる人の幸せのために

同園は最も成功しているテーマパークの一つとして他のエリアや時に海外での展開に向けた話もあるという。しかし早川社長は足利の地で「ここでしか楽しめないオンリーワン」の事業を目指しているという。モノづくり、コトづくりに強いこだわりと個性をもって、お客様の感動に向けた質の高いサービスを追及すればそれがブランドとなる。そしてそこには地域に根付いた思いがあり、地域の商業施設、宿泊施設、温泉などを含めた地域全体活性化を目指すものだ。足利市政100周年と同園のイルミネーション開始20周年の官民協業のコラボ事業もその一つで、地場の賑わいと人の流れをつくり、商業の活性に伴い新たな雇用生み出すという、長期的な厳しい社会変動に向け、地場企業と地域の成長をパッケージとして官民連携で仕掛けている。「人は努力も大事だが、運も大事だと思う。自分はこの点恵まれた。今大切にしていることは、仕事も人生も、人のために、そして関わる人の幸せのために何ができるかです」と語った。お客様への感動の提供や、働くスタッフへの待遇や仕事のやりがい、そして地元への思いは、すべてこの言葉に集約されている。
“世界一美しい”と言われる
藤棚とトンネル
日本3大イルミネーションの
選ばれる光の花の庭
1994年から約3年かけて
現在の場所に移植

“全員野球”でともに歩むために

事業承継後数年間で大変な出来事がありましたが
どのように乗り越えたのですか

2019年の台風被害とコロナによる観光の制限がまさにそれですね。乗り越えた今だから言えるのかもしれませんが、組織の根っこを強くするきっかけになったと思います。もちろん大変でしたよ。イルミネーションの開催が近いのに園内全域が冠水。「復旧は2~3か月かかる」と言われてましたが、当時従業員全員がそれこそ本当に一丸となって作業を行い、たった8日間で再開させました。こうして危機に向かい合う経験をしたので、コロナ禍における対策は万全でした。徹底的に業務のムダを改善し、必要なものに投資することで質の高いサービスを提供する体制ができました。そのために自分自身をリーダーとして見つめ直したこと、組織総合力を高めるために社員との2ウェイのコミュニケーションはとても大事にしました。従業員には本当に感謝しかありませんね。

社長の経営哲学について教えてください

代表になったのは2017年ですが、その7~8年前に父が商工会議所の会頭になり、会社の運営はほとんど引き継いでいました。その助走期間があったことや他の経営者の背中を見て学んだことで今の社長像があるかもしれません。でも実は学生の時は自分がこの事業を継ぐとは全く思っていませんでした。親も「お前は好きなように生きろ」って(笑)。大学卒業したら東京で就職を考えていましたが、生活を変える目的もあり結局地元に戻って園内のレストランでウェイターから始めました。社長の息子として見られる部分もありましたが、それ以上に従業員の仕事姿勢や信頼を感じる機会が多く、自分の中に「この人たちのために働こう」という覚悟ができました。そして昔会社が大変な時も自分を東京の大学に行かせてくれた親への感謝もあり、今大事にしてるのは従業員やお客様の、満足と感動です。組織として従業員全員が成長し“人と地域のために” 貢献していくことが使命だと思っています。

あしかがフラワーパークで働くうえで大事なことは何ですか

採用については、性格を重視しています。即戦力はもちろん必要ですが、知識・技術があって能力が高かったとしても、私は結局それは僅差だと思っています。大事なことは「仕事に対するやりがい」が持てるように、自ら目標・目的に向けて自己研鑽ができ、将来社会や組織に役立とう、と思えるかですね。当社は4つ(営業・パーク運営・販売・レストラン)会社があるような組織なので協力し合えることも大事です。仕事を任せていく上で自分ありきの考えだと驕りが生まれたりもするので難しいですね。その点当社は従業員にも恵まれていると思っています。これからもっと「この会社で働いて良かった」と思えるようにやってきたいですね。道半ばではあるけれども、足利市でトップクラスに待遇の良い会社にしていきたい。そして自己研鑽できるような会社にしていきたいです。インバウンドも回復すると思いますし、大きなイベントも打ちだしていきます。興味持って頂いた方がいたら一緒に足利市を盛り上げていきましょう(笑)。

スタッフの成長を支え、組織の未来を築く

株式会社足利フラワーリゾート 営業部
課長 早川純一様

今回話を伺ったのはあしかがフラワーパークの営業として16年勤務する早川課長だ。同社の営業の仕事は幅広い。旅行会社へのツアーの提案やイベントの企画、そして時には入園受付やスタッフのシフト管理まで含まれる。これは仕事区分がないのではなく、園の運営において各業務の忙しさのピーク時間のずれに対して生産性を追求した業務配分だ。そしてその背景には、コスパを最大値にしてお客様の感動を生み出すというスタッフ全員の思いがある。仕事内容を聞くと「園のことは何でもやりますよ(笑)」と明るく語る早川課長に、日本一の来場を誇るテーマパークの仕事のやりがいや会社への思いを伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

期待に応え続けること

「特に花に興味があったわけではなかったですね」と話す早川課長。入社前は、飲食店や自動車整備など様々な仕事をしていた。 成人する前に今まで見たことのないところへ行き、いろんなものに触れようと沖縄への長期旅行で海の綺麗さ、山から見下ろす風景、歴史ある建造物に触れたことが良い刺激になったという。そんな折、地元で営業職の募集があり「自然」を扱う仕事に興味をもって入社を決意する。営業部はパートも含め16名。仕事は企画や提案活動以外にも、スタッフの労務管理や施設運営にも携わり、必要に応じて総務や経理の仕事もする。園の運営全体が仕事と言っていい。職人のように一つの仕事に特化するよりも1人3役で協力しあいながらスキルを身に付けていく。このスタイルも早川課長にあっていた。その中で誰に対しても誠実で、年齢に関わらず誰とでもコミュニケーションを図れるため、いつしか「早川に任せてみよう」と主任、係長、課長と気づいたら責任ある立場となっていた。「もちろんプレッシャーはありますが、期待されている以上精一杯応えたいですね!」と嬉しそうに語った。

お客様の感動を演出する

テーマパークとしての目的は「お客様がたくさん来場し、あの花が綺麗だった!など満足して帰っていただくこと」に尽きる。その中で早川課長は営業として、同園の演出やアピールポイントがお客様の感動に直接刺さっているか、にこだわっているという。特にWEBで様々な情報発信をする中で、こちらの強調している部分とアクセス数や反応の中がマッチして、自分がやってきたことと、お客様の求めるものとのズレがない!とわかった時にやりがいを感じる。常にお客様目線だ。あしかがフラワーパークのお客様の実に7~8割の方がリピーター。これは当然強みではあるが、常に感動を提供し続けていくプレッシャーもある。コロナ禍において広告費を削減させている中で、どんなお客様層へどんなPRをすれば来園いただけるのかというマーケティングにもとても力を入れている。さらに遠方の方の観光と近隣の方の憩いの場としても感じていただく感動のポイントが違う。こういったお客様の立場にたって感動を演出できることが顧客分析力に長けた早川課長のやりがいだ。

地域活性にハブとなること

お花見に代表されるように「花を見る文化」は日本人にとっては当たり前で、お金を払うという習慣はあまりない。逆に海外の人は良い景色を見ることにお金を払うことは当たり前になっていて、その反応はとても刺激になるという。「自分が実はすごい所(笑)で働いているんだなと思いますね」と語り、スタッフは一つひとつの照明や花の向きなど見せ方にとてもこだわっていて、そういった園のこだわりの部分も伝えていきたいという。 それは、営業部として同園がフラワーパークとしてのこだわりをブランドとして発信し、遠方からの来場を増やすことで地域全体として盛り上げていけるような仕掛けになるからだ。実際に2021年足利市政100周年と同園の20周年のコラボで国の史跡に指定されている「足利学校」装飾を監修するなど、地域振興に大きく貢献している。「JRさんにも、あしかがフラワーパーク駅という名前をつけていただいてますし、足利市を盛り上げることがもはや課せられた使命なのかな、とも思っています(笑)」
レストランは庭園を眺めながら
食事を楽しめる
足利市制100周年で
日本最古の学校
足利学校かざり付けを監修する
園の飾りつけは
見える角度や見せ方にも
とことんこだわっている

お客様の“特別な一日”のために

ご自身の成長を感じられた体験はなんですか

部下や社員の成長を見ていくのがとても嬉しいです。今までやれなかった仕事ができるようになってきたとか、これまで自分から発言することがなかった部下が自分の思いを発信できるようになるとか、そういうところは嬉しいですし、それを影ながら支えられたことですね。特にコロナ禍においては暗いニュースが多くて、部下とのコミュニケーションが特に重要で、きちんと取ろうと思いました。月に1回は20分でも30分でも話をするタイミングを作ろうと…、最初は15分くらいかなって思ってたんですが、話してみると「これどうですか?」「こう考えてるんです!」など1時間になっちゃうこともありました。前月の振り返りと次月の取り組みの決定がメインの話題になるんですが、それ以外の話の方が盛り上がりますよね(笑)

大事にしている考え方を教えてください

会長と社長からは「こだわりを持って」ということは常々言われています。これはとても大事なことで、自分で良いと思うものが、お客様に伝わるか、伝わらないのかということは「感動を提供する」仕事においては特に意識しなきゃいけないことですね。現在WEBの情報発信も担当していますが、HPの掲載内容も自分が良いと考えるものが、見る側にたったらどうだろう…、と正しく伝える難しさ感じています。メール会員様に季節のお花の便りを配信する際にも、会員様はどんな状態で見るのか、魅力や情報をきちんと伝わっているかということにもこだわっています。そして、私がさらに大事にしていることでいうと、お花の状況も、きちんと嘘偽りのない見せ方であることです。綺麗で良いアングルだけを提供するのではなく、足を運んでいただいたお客様にギャップを感じさせないリアルを届けることも重要ですね。

今後、より多くのお客様に来ていただくために
取り組みたいことを教えてください

「あしかがフラワーパーク」が働く私たちにとっては「日常」ですが、お客様にとっては「来園したその日がすべて」ということを忘れないことですね。矛盾するようですが、より多くのお客様に来ていただくために、地域との連携イベントや様々なプロモーションがあるわけですが、一番大事なのは、実際に来ていただいたお客様にいかに喜んでもらうか、満足していただくかということです。ここを追求しないとどんなに広告を打っても効果がないと思っています。広告は綺麗だったけど、現地はそうでもないとか、来てみたら従業員の態度が悪かったとか。そういうことは私たちにはあってはならないことで、そのために、各部署の月1回のミーティングや定期的なマナー講習を通じて、日々社内で「場所、モノ、コト、そしてヒト」の研鑽できる環境にしています。

監修企業からのコメント

お忙しい中、取材にお時間を取っていただきありがとうございました。関東屈指の人気スポット「あしかがフラワーパーク」の皆様の思いを聞き、お客様の感動を生み続けるための仕事へのこだわりや、組織としての魅力にも触れ、もっといろんな季節に行きたくなりました。

掲載企業からのコメント

私たちの事業が、地域の振興に役立ち、ひいてはインバウンドも含めた観光推進につながればうれしいです。従業員みな一つのチームとして、ご来園いただくお客様の感動に向け日々励んでいます。四季それぞれ趣向を凝らしておりますので、足利へお越しの際はぜひ当園にお運びください。

株式会社足利フラワーリゾート
1968年(昭和43年) 有限会社早川農園設立
1990年(平成2年) 10月株式会社足利フラワーリゾートの前身である株式会社ラ・コミュニテを設立
1997年(平成9年)4月 あしかがフラワーパーク開園
2014年(平成26年) 米CNNで「世界の夢の旅行先10カ所」のひとつに日本で唯一選ばれる。
2016年(平成28年)12月 日本花普及センター主催の「日本フラワービジネス大賞2016」のチャレンジ・フラワーツーリズム部門において「大賞」を受賞。
2017年(平成29年)10月 日本三大イルミネーション認定
2018年(平成30年)4月 JR両毛線「あしかがフラワーパーク駅」開業
2018年(平成30年)10月 関東三大イルミネーション再認定
2019年(令和1年)10月 施設のほぼ全域が最大1.8m水没する被害に見舞われる。正面ゲートの物販所や園内の大藤も冠水した。
2020年(令和2年) 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、当面の間臨時休園を実施。昨年の台風19号に次いで開園以来2度目の長期休園を余儀なくされる。
2020年(令和2年) 鬼滅の刃のブームと共に、劇中の藤の花の風景が重なるため、あしかがフラワーパークがファンの間で聖地のひとつとされた。
2021年(令和3年) 第9回イルミネーションアワード イルミネーション部門 全国1位(2016年から6年連続第1位獲得)
創業年(設立年) 1990年
事業内容 植物園「あしかがフラワーパークの運営」
所在地 〒329-4216 栃木県足利市迫間町607
TEL.0284-91-4939
FAX.0284-91-4587
資本金 2,500万円
従業員数 社員119名
パート56名
計175名
会社URL

株式会社足利フラワーリゾート