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株式会社櫻井印刷所

株式会社櫻井印刷所 代表取締役社長 櫻井理恵

"kawagoe premium"というフリーペーパーがある。2015年から現在に渡り、埼玉県川越市の魅力を伝え続けている情報誌である。日本タウン誌のフリーペーパー大賞まで受賞する地域の魅力を余すことなく発信する情報誌を発行している会社が株式会社櫻井印刷所だ。同社の特徴、それは、印刷業を情報産業ととらえパートナーの視点で仕事を創造すること。お客様が考えたものを形にする印刷業において、考えそのものを共につくりあげることで、その印刷物を“見る人の心に響くこと”にフォーカスし、最も効果的な手法は何かということを常に考える挑戦企業である。今回は、同社の櫻井理恵社長へデザインに対するこだわり、そして98年間の歴史の中で受け継がれてきた考え方について詳しく話を伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

社員一人ひとりの意見を吸い上げる

櫻井印刷所の歴史は長いが、2代目までは10人前後のそれこそファミリー経営で櫻井社長の父(3代目)の時に事業規模が拡大したという。4姉妹の長女であった櫻井社長は大学で文学や哲学を学び、“昔からずっと残り続けるもの”に不思議と惹かれ、後継者としての使命感というよりは、自分のやりたいことの延長があるのではないかと考え入社した。入社後デザインや編集・ライティングの分野を任され、そのクオリティを上げていくことで、“企画やデザイン”そのものに価値を持たせ、きちんと料金をいただく体制をつくった。このように、自分の発信から会社へ、そしてお客様へ“こうしていきたい!”という発想を形にする文化づくりに取り組み、請負のイメージがある印刷業を、企画提案型の会社に変えていくとともに、社員一人ひとりの意見を商品に取り入れる。そんな風通しの良さを同社の中につくりあげた。櫻井社長は「お客様に言われたとおりに仕事を進めるのではなく、お客様の事を考え、社員一人ひとりの意見を商品に取り入れるようにしています。理屈というよりは、その方が楽しいですよね(笑)」と明るく語った。

"0"から携わる印刷業

櫻井印刷所はオフセット印刷が主力であるが、最近の仕事は企画やデザインの段階から携わる。そんな、印刷物の"0"から携わる同社。始まりは、先代社長の時代まで遡る。先代社長がデザイナーを採用したことをきっかけに、同社はデザインができる印刷会社に進化を遂げる。今まで数多くの印刷物を世に生み出してきた。その1つに川越を紹介するフリーペーパー"kawagoe premium"があげられる。2015年から発行を始め、次回の発行で第7号を迎える。そんな、7年間多くの方に愛され続けてきた"kawagoe premium"。川越の認知度向上の他に、同社の営業力にも繋がっている。その企画を統括しているのが、櫻井社長で、その時はまさに編集長の顔だ。置く場所、手に取る人、その人の心に響く見せ方、書き方にとことんこだわる。こうして"kawagoe premium"を発行してから、問い合わせの数が増え、今では新規の営業をせずとも仕事が入る流れができつつある。そして多くの行政や観光団体からの依頼や、企業からの社史制作などの相談が後を絶えない。

文字に触れる機会を後世に残す

「文字に触れる機会を後世に残す」。櫻井氏は、今後の展望について力強くそう語った。少子高齢化、ペーパーレス化に伴い、文字に触れる機会が減ってきている。創業から印刷会社として100年近く、文字や文章を使い、情報を発信してきた。「今後、発信の方法は姿を変えるかもしれませんが、何かしらの形で1つの印刷会社がやってきた歴史を発信していきたいですね」と話す櫻井社長。印刷という文字、そして情報を扱う事業者ができることとして、商業的なビジネスの成果を上げることだけでなく、文化・教育の観点で価値あるものを伝え残す、こうした角度で櫻井印刷所が地域社会とともに発展していくことが、同社の展望であり存在意義であると確信している。その強い思いとともに、動画やWEB媒体と連動した時代対応の仕掛けを最大限活用し、情報を発信していく未来への土台をつくりあげた。
品切れ続出のフリーマガジン
“kawagoe premium”と
川越の歴史がわかる
“重ね地図”
会社ムービーの撮影風景
企画からキャスティング、
撮影までトータルで対応可能
創業時の社屋と
“活字”と“活版印刷機”

櫻井印刷所の今後について

櫻井社長が大事にしていることを教えて下さい

先代の会長から、よく「印刷会社は、情報を加工する会社」だと言われてきました。私もその言葉を意識して、事業を行っています。弊社は、100年前から印刷を続けてきており、その中で、文字や文章に対するこだわりは、色あせることなく、継承しております。お客様のために何ができるか、自分たちは何を提供できるか。常にお客様のことを考え、会社のことを考え、社会のことも考える。情報を加工する会社として、物事をよく観察し、お客様のために最善を尽くす。100年前から受け継いできた想いを、今後も継続させていきます。父は今も元気で現場も見てくれているので、その点はありがたいですね。喧嘩になることもありますけどね(笑)。

今度、どんな櫻井印刷所にしていきたいですか?

ファミリー的な経営だけでは今後良くないと思っているのと、少しずつ社員が増えてきたので、評価制度や給与体系など、インナーブランディングの強化を行っていきたいですね。そのため、今の組織に合った環境をつくり上がることが、より強固な組織をつくるために、必要なことだと思い、今年はそこに力を入れています。現在、就業規則から見直しを行ったり、外部の方の意見を取り入れながら、今の櫻井印刷所に合った内部環境を構築しているところです。仕事のやりがい、という点では時間を忘れて夢中になれる環境をつくりたい部分もあるのですが、男性も女性もきちんと生活バランスを持った働き方も重要なので、その両面で魅力のある会社づくりが重要ですね!

どんな人に入社して欲しいですか?

オタク気質がある人というのでしょうか…、自分の意志を持って一つひとつのことにこだわれる人が櫻井印刷所で活躍できる人の共通項だと思います。そのため印刷の経験が無くても、選考を受けに来てくれた方に魅力があれば、採用しています。今年採用したWEBデザイナーさんは、未経験の方です。不器用でも、しっかり物事を考えて、自分の言葉で相手に伝えようとする、そんな、一つひとつの言葉遣いを意識して、気持ちを伝えようとすることが何よりも大事だと思います。櫻井印刷所の歴史やこれからのことは、WEBでも詳しく発信しているので、自分の仕事はこれだ!と思った方がいたらぜひご連絡ください(笑)。

"川越市から埼玉県に" 櫻井印刷所の未来を語る

株式会社櫻井印刷所 営業部係長 鈴木克星

「川越市の櫻井印刷所から埼玉県の櫻井印刷所にしたい」と今後の思いを描く社員。入社8年目で櫻井社長直々に営業を教わり同社の未来をつくるキーマンが鈴木係長だ。地元つながりで縁があり、同社に入社し、3年間現場で印刷のイロハを学び、今は同社の顔として営業部に所属し、自社の魅力や製品のクオリティを世に広めている。鈴木係長は、今後活動範囲を川越から埼玉に広げることを夢見て、日々挑戦を続けている。その挑戦が少しずつ身を結び、会社が新しい時代に入っているという実感を最も感じている鈴木係長に、仕事や会社への思い、今後の抱負について語っていただいた。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

縁が結んだ、櫻井印刷所への入社

実家が印刷業を経営しているという鈴木係長。「父の影響で印刷業界に興味を持ちました。もともと父の会社に入社するつもりでしたが、縁があって、櫻井印刷所に入社しました」と語り、同社への入社はあくまで選択肢の一つであったという。入社後3年ほど、現場で経験を積み印刷業のイロハを学ぶ中で、同社の方向性が“業者”としての印刷請負から、“お困りごと”を解決する情報発信の仕事が増えていく過程を体験した。これからの印刷業としての役割を自覚した鈴木係長は、営業部に異動となったことで向かうべき道が明確になったのだという。指示を受けたものをその通りに刷ることと、何をどのように活用すれば効果が上がるか、という企画して提案することでは仕事の質が違う。様々なお客様への営業機会の中で、櫻井社長が体現する“見る人の心に響く”印刷物を一緒に考えるスタンスに触れ、今なお勉強中だ。鈴木係長は一般企業から市役所、公共施設など数多くのお客様を任され、日々現場で企画や営業のノウハウを学びながら進化を続けている。

自分の携わったものが世の中に発信される

「自分が携わったもの(制作したもの)が世の中に出た時がうれしいですね!」と、現在のやりがいについて鈴木係長はこう語った。日々の努力が実を結び、その成果が数多くの人の目に留まることが何より達成感を感じる瞬間だという。そんな鈴木係長が手掛けたものの一つに、百貨店の顧客のメインウィンドウに地元“川越祭り”のイラストを展示したことがあげられる。コロナウイルスの拡大に伴い、開催が中止された川越祭り。実施できなくても、川越祭りを感じられる仕掛けがしたいとのことで地元の百貨店から声がかかった。地元に根付き、地域貢献に尽力してきた同社にこそふさわしい案件だ。今日も数多くの人が同社の印刷物を目にする。その一つひとつが鈴木係長のやりがいに繋がっているのだ。「企画系の印刷物は本当に細かいところまでこだわり抜きます。“ここまでやるの?”と思うこともありましたが、こうやって出来上がりをみると、このこだわりが大事だな、ということを実感しますね」と語った。

川越市の櫻井印刷所から埼玉県の櫻井印刷所に

川越市の櫻井印刷所から埼玉県の櫻井印刷所にしたい!これが鈴木係長が夢見る同社の今後の姿だ。創業から98年間、川越という町から離れず、地元から愛される企業へと成長を遂げた同社。今後、その成長を同心円で川越市から埼玉県へと拡大していく。「すでに、川越以外のお客様から仕事をいただくこともありますし、色々の地域の方々とお付き合いをさせていただいております」と話す鈴木係長。夢への階段を着実に登っていることを楽しそうに話す。印刷業は県内にたくさんあるし、規模を言えばもっと大きな企業がある。その中で、選ばれ、良い仕事をしていくことはこれまでの自分たちの強み(企画)に妥協せず、蓄積したノウハウをさらに進化させ、その実績をブランド化させることが重要だ。同時に同社のセンスも磨いて、このプラスのスパイラルをよりたくさん生み出すことが鈴木係長の夢であり、同社の未来の姿だ。
“小江戸にくるひと
住まうひと”のための
ポータルサイト
“コエドノコト”
見る人の心に響くために
レイアウトや
文量に徹底してこだわる
鈴木さんが手がけた
フリーマガジン
「ちょこたび埼玉」

櫻井印刷所と櫻井社長について

櫻井社長ってどんな人ですか?

どんな時でも妥協しない、力強い人だと思います。ついこの間、お子さんを出産されて、産休から復帰して、すぐに仕事を取ってきたんですけど、さすがにその時は、驚きました(笑)。でも、仕事を取ってこれる要因には、仕事に対するこだわり、デザインに対するこだわりがあるからこそだと思います。仕事に対しては、一切妥協しないですよね。例え、お客様から短納期でお願いしますと言われても、しっかりお客様と話し、お客様が望む形をつくり上げる姿勢は尊敬しますし、真似すべきところだと思います。そんなデザインに対して、熱いこだわりを持って、一切妥協しない方だからこそ、櫻井印刷所は成長を続けられていると思います。

働くうえで意識していることを教えて下さい!

周りの人たちとコミュニケーションを取ることを意識して仕事を行っています。営業は、現場とお客様を繋ぐことが仕事なので、コミュニケーションは非常に大事なことだと思います。その中でもただ、コミュニケーションを取るのではなく、自分のフィルターを一枚通して、伝えることを意識しています。お客様からこういうのをつくって欲しいと言われても、言われたとおりのことを現場に伝えるのではなく、自分の経験や知識を活かして、プラスα、お客様にとって必要だと思うことを付け足して、伝えるようにしています。言われたことをただやるだけの仕事をしていても駄目だと思うので、常に他にできることはないかと考え、周りの人たちとコミュニケーションを取っています。

櫻井印刷所の強みを教えて下さい!

やっぱりデザインができることですかね。印刷会社がデザインから携わること自体、特殊ですし、そこに関しては、よくお客様からも褒められます。デザインから携われるからこそ、よりお客様の考えや要望を形にしやすいですし、お客様に寄り添った提案を行えます。そんな、お客様のこと、読み手のことを考えた印刷物をつくれているからこそ、様々な方から発注いただけていると思います。弊社は、新規営業はしていません。基本的に、お客様に呼ばれて、営業を行う形が主流ですね。このような営業が行える理由も、デザインから携われているからだと思います。これからも、デザインができるということに自信を持って、今以上にお客様のことを考えた提案を行っていきます。

監修企業からのコメント

今回は、取材をお受けいただき、ありがとうございました。
櫻井印刷所様が長い歴史の中で大事にしてきた"印刷会社とは情報を加工する会社"という考え方。常にお客様のことを考え、情報を加工する事業内容に感服いたしました。
今後は、川越だけでなく、埼玉県の櫻井印刷所を目指し、挑戦を続けるとのこと。今後の活動に目が離せません!

掲載企業からのコメント

弊社を取り上げていただきありがとうございました。
取材を通して、創業から98年間、大事にしてきた考え方、そして今後のあり方を再認識する機会となりました。未来に向けてもっとチャレンジしていきます。川越市内および東武東上線駅で弊社が発行している“コエドノコト Paper”があります!近くへお越しの方はぜひ、手に取っていただければうれしいです。

株式会社櫻井印刷所
1924年5月 故初代社長櫻井理助が川越市高沢町788番地にて印刷業を開業。
1947年7月 有限会社に改組。資本金10万円。取締役社長に故櫻井理助が就任。
1956年12月 故櫻井初夫が二代目社長に就任。
1990年7月 櫻井理喜が三代目社長に就任。
1992年10月 有限会社を株式会社に組織変更。資本金を一千万円に増資。
1993年9月 川島町に工場開設。
1994年8月 DTPによるデザインとMacintoshの入出力サービス部⾨開設。
2003年1月 東京営業所開設(飯田橋)。
2004年11月 FSC®森林認証(CoC認証)FSC-C021836取得。
2010年1月 東京営業所移転(九段北)。
2010年3月 Fuji XEROX 700Digital Color Pressを導入。
      オンデマンド出力サービス部門開設。
2011年4月 オンデマンド出力の需要増加に応えるため、
      大型機のRICOH Pro C901SHTを導入。
2012年9月 プライバシーマーク(登録番号第17001280)取得。
2014年10月 櫻井理恵が四代目社長に就任。
2015年10月 フリーペーパー「kawagoe premium」を発行。
2016年7月 川島町に第二工場開設。
2016年12月 「日本タウン誌・フリーペーパー大賞」で大賞他2賞を受賞。
2017年5月 デジタル校正ソフトウェア Proof Checker PROを導入。
2018年5月 川越ポータルサイトのアプリ「コエドノコト」をリリース。
2020年1月 Fuji XEROX Iridesse Production Pressを導入。
創業年(設立年) 1924年
事業内容 総合印刷物の企画・制作・印刷・加工
オンデマンド印刷による小ロット印刷
デザイン制作および出版サービス
販促用品の企画・制作
Macintosh DTP・Windows DTP
印刷アドバイザー/イベント企画・設営/総合広告コンサルティング
所在地 埼玉県川越市元町2-4-5
資本金 1000万円
従業員数 36名
会社URL

株式会社櫻井印刷所