揺るぎない丸三スピリット
株式会社丸三電機 代表取締役社長 竹村元秀
電子機器製品の最先端の街である秋葉原。今では世界に知られるほどに進化し、世界中の様々な人々が集まり、情報発信源となっているこの街に本拠を構え、挑戦と変革を続ける企業がある。創業65年にして、今なお新たな挑戦をし続けている株式会社丸三電機である。元々は電子部品の商社として産声をあげるが、ヒートシンクに不良品が見つかることがよくあり、「これなら自分たちで作った方がいい」とメーカーへの転身を決意した。不良品があると一から作り直すことになり、お客様への対応にも手間が掛かる。不良品をなくせば効率的な事業展開ができるはずと「品質至上主義」を徹底。それから30余年。顧客からは「高品質・低価格・短納期だ」と評価されて短期間で急成長してきた。製造業として評価させるまでに成長した丸三電機を引っ張ってきた竹村社長の経営に掛ける想いを伺った。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
受け継がれるDNAと感謝の心
昭和38年に設立された丸三電機。初代は当時としては珍しい女性経営者であった。常に細やかな対応をしながら、お客様を大切にし、社員を大切にする初代社長の姿は、人としての在り方を大切にする経営として、後の同社の在り方に大きな影響を残している。現社長であり、初代社長の甥である竹村社長は、「何でも社員に話し、隠し事をしない、ガラス張りの経営」で、同社を引っ張っている。社長就任時には、当時としては、数少なかった理念を最初に掲げての経営に取り組み、これまで毎年必ず経営理念と年度方針の発表をおこなってきた。その準備のために3泊4日で山の中にあるホテルに泊まり込みもし、社員へ発表を続けている。こういった真摯な姿勢が、「女性だけの営業部隊」や、「産休・育休の充実」など、男女関わらず活躍できる風通しの良い社風を生み出しているのではないだろうか。品質至上主義からさらなる進化へ
元々不良発生率が高かったヒートシンクという製品。その不良率を徹底的な品質至上主義で克服し、業界で確固たる地位を築いているのが丸三電機である。「品質は品格から生まれる」というキャッチフレーズのもと、原材料から設計、精密加工、表面処理、精密検査から梱包・出荷に至るまであらゆる生産工程で徹底した品質管理に努めてきた。その背景には社員一人ひとりの弛まぬ努力があり、それを継続し続けることで、実績と信頼を築き上げてきた。 そして今新たに取り組んでいるのは超短納期。これまで4週間かけて対応するような図面から加工、製造する一品一様の製品を1週間内外で出来るような体制づくりに挑戦している。常識では考えられない超短納期ではあるが、それこそがまさにイノベーションであり、他の追随を許さない独自性へと発展する。 常に進化し続ける丸三電機の独自性。その裏には、品質至上主義からさらなる進化を続ける丸三スピリット(感謝・誠実・強調・挑戦)をもった社員の努力が垣間見える。「常在元気企業」を目指して
「常在元気企業」とは丸三電機の今後の経営のテーマである。常に社会のニーズ、お客様のニーズをいち早く感じ取り、お客様に喜んでいただくこと、そして社員の幸福を追求しつづけ、健康で明るく元気な社員が誇りをもって働ける会社であることを「常在元気企業」として、全社をあげて取り組んでいる。この「常在元気企業」を実践し続けるためには、常に新製品の市場投入や新技術の提供を続けるなど、常時果敢にチャレンジし続けることが重要だ。そしてそのチャレンジをし続けるのは、人であり、社員である。だからこそ、お客様や仕入れ先に常に明るく元気に接し、一人ひとりが弛まぬ努力をし続けることで生み出される実績と雰囲気を大切にしている。 これまで追求しつづけてきた品質至上主義に、「常在元気企業」という新たなテーマを加え、次なる時代に、元気を波及し続けられる企業へと進化を目指す丸三電機の今後にぜひ注目していただきたい。
ラジオストアーが丸三のルーツ
メディアにも引っ張りだこ
放熱性+デザイン性ヒートシンク
死んでから値打ちの出る本物の男へ
-竹村社長の経営方針の立て方を教えてください
私は「単年度ベスト型経営」で考えております。数年先、十年先のことを考えて計画を立てることは、実はあまり好きではありません。その背景になるのですが、私が社長に就任してからの20年あまり、長らく不況が続いていました。大企業であっても中期・長期計画を簡単に達成できない状況で、変化が大きく先行きを予測することが非常に難しかったので、数年先のことを見据えてもあまり意味がなかったのです。中期・長期計画を立てる代わりに毎年目標を打ち出し、その目標達成に向けて1年間全力を出し切る「単年度ベスト型経営」を心掛けるようになりました。今後も、この方針を続けていこうと考えています。―経営者として大事にしていることは何ですか
「感謝」です。また、私が経営者として大事にしていることの1つ目はお客様に喜んで頂くこと、2つ目は社員を幸せにすることです。お客様に喜んで頂くためには、お客様に感謝して「もっとお客様に満足してもらわなくては」と努力する必要があります。社員を幸せにする上でも、日ごろのがんばりに報いようとする感謝の気持ちが大切でしょう。私は社長として2代目で、初代は私の叔母でした。叔母の働く後姿を見ていて、「感謝」という言葉が経営者にとっては大切だと感じましたね。がんばって働く社員に対して、しっかりと報いられるのは、大企業よりも中小企業の方だと私は考えています。努力する姿勢は必ず経営者・上司の目に入りますし、働きが認められれば昇進・昇給する可能性も高いでしょう。―現在力を入れていることは何ですか
総合的な熱対策のできる企業になることです。ヒートシンクだけでなく、それに関連する部品の調達、製品への取り付けなども含めて対応する「ワンストップ」戦略を打ち出しました。さらに、空気で自然に冷える方式のヒートシンクだけでなく、ファンを回して空気で強制空冷するヒートシンク、冷却液を循環させて熱を奪うヒートシンクなど、また昨年から今年にかけては、2年連続の新製品二種(幅広795m/mまでのヒートシンクや自励振動式ヒートシンク)を、国内・海外とも特許を申請するに至っており、鋭意新製品の研究開発・市場投入を推し進めています。半導体の熱対策は、今後も必要とされることでしょう。さまざまな方式のヒートシンクで、包括的に熱処理の解決策を提供できるメーカーへと成長していきたいですね。感謝の心を忘れず次世代を築く
株式会社丸三電機 常務取締役 宿谷誠
専務取締役 竹村美香
顧客から『高品質、低価格、短納期だ』と評価され、飛躍を果たした丸三電機。製品の不良率を1/50にするほどの徹底した品質管理、また一社一社顧客の要望に合った製品を作ることで信頼を得てきた。そして、それを支えてきたのは人。『高い品質は、それに携わる人間の品格から生まれる」という竹村社長の持論があるように、丸三電機の高品質・高付加価値な製品の提供には、それを生み出す人が鍵であり、土台である。今回はその丸三電機を支える社員の代表として宿谷常務と竹村専務にお話を伺った。宿谷常務は営業そして製造の両面を見ており、大手の名だたるメーカーからの信頼も厚い。竹村専務は卸部門の統括を担当しており、女性の活躍しやすい風土作りに挑んでいる。この取材を通じて二人の丸三電機で働く誇りを感じてもらいたい。 伝統の承継と挑戦の未来を担う社員の思い
竹村社長の後ろ姿
【竹村専務】 『社長に誘われたのが、一番の理由ですね』と語る竹村専務。 就職活動時は当初、丸三電機以外にも、様々な企業を見ていた。その中で、父でもある竹村社長から『手伝わないか』という言葉をもらったことが丸三電機への入社のきっかけとなった。当時を思い出して『素直に一緒に頑張りたいと思った』と懐かしく語る竹村専務。竹村専務が子供の時から背中を見てきた竹村社長。商社からメーカーへの転身や徹底した品質管理で一躍業界の雄となった丸三電機。その丸三電機を牽引してきた竹村社長の後ろ姿は勇猛果敢で憧れの存在であったことだろう。そして、竹村社長に声をかけられ入社してから早17年の時が経つ。ここまで女性のみでの営業部隊を任され率いていくなど、一所懸命に仕事と向き合ってきた。そして、7月から専務になった。当時の『一緒に頑張りたい』と胸に抱いた想いは、今なお彼女の原動力となっているに違いない。品質至上主義を支える人情
【宿谷常務】 『人から人の手へという人情溢れる魅力があります』と宿谷常務はヒートシンクに32年携わるものとしてのやりがいを語る。実は、現在の圧倒的な品質を誇るようになった背景に、この『人から人の手へ』がある。かつてヒートシンクは『品質が悪い・納期がかかる・値段が高い』の3拍子であった。その状況を変えるため、素材や加工、塗装など様々な企業からの協力を得て、圧倒的な品質を成し遂げた。その中では、『おい、お前の繋がりがある』と宿谷常務が語るように、昔は常にヒートシンクを持ち歩き、急なお客様の要望に対応をすることもあった。要望次第では『明日の朝6時にまでにやっておいて』と急に下請けへ頼み、共に一夜漬けの日々もあったと言う。そして約束通りに朝までに仕上げてくるのである。『朝になって、社長夫人がおにぎりを握って待っていてくれたこともありましたね』と当時を懐かしく語る。『品質至上主義』を掲げる丸三電機。徹底的に良いものをつくるために必死にやること、そのために周囲と一緒に取り組む日々にこそプロとしてのやりがいがあるに違いない。ヒートシンクと言えば丸三電機/女性の働きやすい環境作りへ
【宿谷常務】 『ヒートシンクと言えば丸三電機と言われるような製品を作りたい』 宿谷常務は業界№1を目指し、日々仕事と向き合っている。 その宿谷常務の夢は、「バックのブランドと言えばルイヴィトン」と言われるように誰もが知る業界のシンボルとなること。『「丸三電機のヒートシンクを使わなければ」と市場から言われるようにしたい』とその夢を熱く語る。今後はより一層に商品開発にも注力をし、業界№1を取ることに心燃やしている。 【竹村専務】 『女性だからこそ出来ることを生かしていきたいです』と語る。竹村専務は現在、営業部門において女性のみの部隊を率いて、約250もの商社を相手に仕事をしている。その竹村専務は『丸三電機のより一層の成長のためには、女性だからこそ出来るきめ細やかな気配りやお客様へのフォローを生かしていくことが大切である』とその重要性を感じている。会社の更なる飛躍のためにも女性ならではを生かす環境作りを目指す竹村専務の目は輝いていた。
毎年恒例「新年・感謝の集い」
工場は続々と増築中
展示場でも人だかりが生まれる
感謝、感謝、感謝
-【宿谷常務】丸三電機の社員として大切にしていことを教えてください
感謝の経営、ですね。 これは創業社長から受け継がれている精神でもありまして、社訓にも『感謝』とありますように、お客様に喜んで頂くには、お客様に対して感謝の心を持ち、『もっとお客様に満足してもらわなくては』と努力をし続ける必要があります。また、お客様だけでなく、社員を幸せにする上でも、同じ仲間同士の日頃の頑張りに報いようとする感謝の気持ちが大切です。例えば、社内イベントでは感謝の塔を意味する法人五輪塔への参拝を行っております。この塔は社長が20年ほど前に感謝の心を形にするために、毛呂山工場の一角に建てたものです。その法人五輪塔に毎年役員総出で参拝をしたり、社員旅行の時に立ち寄って一年間の感謝の意を込めて挨拶をしているのです。このように社員一同で感謝の心を大事にしていますね。―【宿谷常務】&【竹村専務】社員に期待していることは何ですか
【竹村専務】社員から様々な意見が出てくる会社にしていきたいですね。弊社は社長自らが強いリーダーシップを発揮し、舵取りをすることで今まで発展してきました。より一層の成長を遂げるために、今後は皆にでしゃばるぐらいになってもらいたいです。【宿谷常務】私も同じ意見ですね。うちの社員は皆、仕事も真面目でやる気もすごくあります。ただ良い意味ででしゃばることは少ないです。ですからやりすぎてしまっても構いませんし、たとえ失敗しても構わないので、色々な意見が出るようになったらもっと良いです。【竹村専務】そうですね。社員一人ひとりがもっと突き上げてもらえれば、もっと良い丸三電機になるはずです。【宿谷常務】特に管理者層の人達には喧々諤々の議論を交わして、お互いがぶつかり合うぐらいになって、私たちももちろんですが、社員が会社を引っ張っていくようにしたいです。―【宿谷常務】他社との差別化点を教えてください
より一層に、商品の魅力を増やして勝負をしていきたいです。そのためには品質へのこだわりが重要になります。 今は時代が進み、物流が発達しました。かつては大量に発注しなければ海外で製造したものを輸入することができませんでしたが、今では少量であっても輸入することができます。その結果、業界の傾向として、納期での競争ではなく、価格での競争が激しくなっています。ですが弊社では、価格での競争ではなく短納期対応と商品の魅力を増やして勝負をしていきます。常に大事にしてきた品質へのこだわりをより一層強めて、素晴らしい物をどんどん開発していきます。そして、5~6社ほどある競合他社と比べて、群を抜く品質と魅力で『お客様から売って下さい』と言ってもらえるような製品を作り、勝ち残っていきます。株式会社丸三電機
1950年 (株)秋葉原ラジオストアー設立に参画。第二次世界大戦後4年と数ヶ月を経て設立。
日本の復興とともに今日の電子・電機業界の先導的役割を担う。
1962年 (株)丸三電機設立。
(株)秋葉原ラジオストアーの営業の一部(主としてツマミ部)を譲り受け掛売り部門として
設立。
1975年 マルモパーツ(有)設立。旧秋葉原ラジオストアー・ツマミ部を新組織会社として
独立採算にて営業開始。コネクター他電子部門の店頭販売
1985年 ヒートシンクメーカー(LEXヒートシンク)としての製造販売を開始
1991年 福利厚生施設「蓼科山荘」(温泉付)取得
1992年 (株)丸三電機埼玉事業所(生産管理部・毛呂山工場)開設。
本格的ヒートシンクメーカーとしての生産拠点を確保。
1994年 (株)丸三電機本社移転。
1997年 インターネットホームページ開設
2006年 資本金7,000万円とする。
<東京中小企業投資育成(株)による第三者割当増資実施>
埼玉第二工場完成。ブランディング戦略実行。
2011年 埼玉事業所第三工場完成。
開発技術課新設。モールド管理事務所開設
2012年 丸三電機創立50周年。BCP(事業継続計画)策定
2014年 本工場・第ニ工場・第三工場の屋根に太陽光発電装置設置。
東京都「新製品開発助成事業」に採択される。
埼玉事業所第四工場 完成経済産業省
「中小企業ものづくり革新事業(助成金)」に採択される。
2015年 国際スマートグリッドEXPOに出展
日本の復興とともに今日の電子・電機業界の先導的役割を担う。
1962年 (株)丸三電機設立。
(株)秋葉原ラジオストアーの営業の一部(主としてツマミ部)を譲り受け掛売り部門として
設立。
1975年 マルモパーツ(有)設立。旧秋葉原ラジオストアー・ツマミ部を新組織会社として
独立採算にて営業開始。コネクター他電子部門の店頭販売
1985年 ヒートシンクメーカー(LEXヒートシンク)としての製造販売を開始
1991年 福利厚生施設「蓼科山荘」(温泉付)取得
1992年 (株)丸三電機埼玉事業所(生産管理部・毛呂山工場)開設。
本格的ヒートシンクメーカーとしての生産拠点を確保。
1994年 (株)丸三電機本社移転。
1997年 インターネットホームページ開設
2006年 資本金7,000万円とする。
<東京中小企業投資育成(株)による第三者割当増資実施>
埼玉第二工場完成。ブランディング戦略実行。
2011年 埼玉事業所第三工場完成。
開発技術課新設。モールド管理事務所開設
2012年 丸三電機創立50周年。BCP(事業継続計画)策定
2014年 本工場・第ニ工場・第三工場の屋根に太陽光発電装置設置。
東京都「新製品開発助成事業」に採択される。
埼玉事業所第四工場 完成経済産業省
「中小企業ものづくり革新事業(助成金)」に採択される。
2015年 国際スマートグリッドEXPOに出展
創業年(設立年) | 1950年 |
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事業内容 | 電機・電子機器用部品の製造及び販売 LEXヒートシンク(半導体素子用) アルミ非鉄金属加工品 LEXツマミ(通信機器、測定機器、音響機器用) Hirshmanコネクター(ドイツ・ヒルシュマン社代理店) |
所在地 | 東京都千代田区外神田3-9-2 |
資本金 | 7,000万円 |
従業員数 | 70名 |
会社URL |
監修企業からのコメント
今回の取材を通して、竹村社長の経営者としての考えや一人の男としての生き方を学ぶと共に、自分のあるべき姿やそして自分の周りにいる人に対してどんな貢献が出来るかどうかを考えるきっかけになりました。今後もより一層の丸三電機の発展と竹村社長の経営を楽しみにしております。
掲載企業からのコメント
今回の取材では、社風、独自性、展望といった切り口でまとめて頂き、企業としての存在感、意識など改めて整理することが出来ました。ありがとうございます。このサイトから弊社のイメージを掴んで頂ければ幸いです。また、多くの方に弊社の存在を周知して頂けることを期待します。