株式会社ペリテック 代表取締役社長 井澤年宏

群馬県高崎市に本社を構え、自動車メーカーや半導体メーカー向けの検査装置や試験機を製作している株式会社ペリテック。元々は電話交換機などの電気基盤をつくるところから創業した。基盤をつくり、その検査を自社で行うために、検査装置の製作を内製化してきたのだ。その際、検査が簡単に行えるということで導入したLabVIEW(ラボビュー)というプログラミング言語を使いこなしていることが、同社の大きな特徴だ。創業から36年が経過し、自社での開発だけでなく、エンジニア教育のためのコンテンツ制作など、幅広く事業を展開している。今回の取材では、エンジニア育成を通じて、地方の活性化をも見据える2代目、井澤社長からお話を伺った。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
仕事を通じて、一人ひとりの自己実現を追求する
井澤社長は、会社という組織を「自己実現のきっかけを与える場」として捉えている。そのため、一人ひとりの社員がどのようなビジョンを実現したいかを一緒に考え、各人がそれをイメージして働いていることが特徴だ。これは、「社員の成長で幸せの追求」という企業理念にも表れている。一人ひとりのビジョンを明確にするために、同社の社員は「人生年表」をつくって、お互いに発表しているという。そこには、自分の過去から現在に至るまで、そして今後どんな生き方をしていきたいかまで記されている。そして、描いたビジョンを実現するためには、会社としての協力を惜しまない。エンジニアとしての能力開発はもちろん、英会話などの教育にも力を入れている。さらに、社員主導の部活動に奨励金を出すことで、仕事に直接関わらない部分でも自己実現を促すなど、その取り組みは様々だ。
ただ仕事をするだけでなく、一人ひとりが自己実現を追求している同社だからこそ、個人も会社も成長していくのだろう。
最先端の掛け合わせで、世にないものを創り出す
あらゆる分野の最先端技術を組み合わせて、世の中にないものを創り出すこと。同社の独自性について井澤社長はそう語る。「計測」は、ものづくりにおいてどんな分野でも必要とされている。そのため、同社がサービスを提供している分野も、自動車、半導体、航空宇宙など、多岐に渡る。計測の技術は、「自動車業界では当たり前の技術が、半導体業界においては新技術である」など、業界が違うと求められる技術がまったく違うということも珍しくないという。業界の垣根を越えている同社だからこそ、様々な業界のスタンダードを組み合わせることができる。そのため、お客様から「こんな装置が欲しい」ではなく「こういうものを測りたい」という漠然とした相談を頂くこともあるという。まったく同じものの実績はなくとも、これまでの実績の組み合わせでお客様の要望を実現することができ、その組み合わせがまた新たな技術になっていくのだ。これまでの実績を元に、無限大の可能性を生み出していくことだろう。エンジニア育成を通じて、地域を活性化していく
地域で育った人が地元で働きたいと思い、それにより地域が活性化していく。そのような世界を実現していきたいと井澤社長は語る。そのためには、同社が地域でのエンジニア育成、そして、大手企業や海外企業などの最先端の仕事獲得を担うことが重要になるという。育成については、小学校でもプログラミングが必修化されている中、まだ教えられる人が少ないという現状がある。日進月歩のプログラミングの世界において、子供たちに最先端の技術を伝えられるのは、常にそれに触れている民間企業だと自負している。
また、情報の少ない地域社会では、教育ができたとしても、そのカリキュラムにある知識しか得ることができないことが懸念される。同社の計測を通じて、大手企業や海外企業の仕事とつながることで、教育の幅も広がるのだ。
自社の技術開発だけでなく教育事業にも力を入れ始めた同社が今後規模を拡大し、各地の活性化を実現していくに違いない。

はばたく中小企業にも選出された

エンジニア育成プログラム「MSEP」

同社が活用するLabVIEW
夢の実現に向けひた走る
社長として大切にしていることを教えてください
社員が楽しさを感じながら成長していけるような組織運営をすることですね。当社では、システムという無形のものを扱っています。そのため、常にクリエイティブな思考が求められ、社会の進化以上のスピードで自分たちが進化していかないと、あっという間に社会から求められなくなってしまいます。「エンジニアは下りエスカレーターだ」とよく言うのですが、立ち止まっていると自分たちの価値はどんどん下がり、現状維持すらできないのです。エスカレーターより速く走っていく時には当然苦しさもありますが、そこに楽しさや嬉しさも感じられるような状況をつくっていくことが、私の仕事だと思っています。
なぜ社長を継ごうと思われたのですか?
「多くの人に夢を与えられる仕事をしたい」と思ったからです。そう思ったのは、小学生の時ですね。多くの友達と関わる中で、子供ながらに「井澤ちゃんといて楽しい」「井澤くんと一緒にいたい」と言われる人になりたいなと。その中でも一番夢を与えられると考えていたのが社長だったんです。また、ものづくりも好きだったので、何かをつくることを通して夢を与えていきたいとも考えていました。ものをつくることも、ビジネスをつくることも、人との関係をつくることも、何をするにしてもつくることが好きですね。徐々にその夢が叶いつつありますが、さらに高みを目指していきたいと思います。会社の発展に向けて力を入れているポイントを教えてください
人材育成です。特に、お客様のやりたいことと技術をつなぐことができる営業マンと、計測のスペシャリストであるエンジニアの育成に力を入れています。営業マンには「翻訳家であれ」と伝えています。お客様の要望を的確に掴み、技術の組み合わせによってそれをどのように実現できるかを提示できることが重要になります。その「翻訳家」を増やしながら、根幹である技術を持ったエンジニアを育てることで、規模の拡大につなげていきます。正社員じゃなくとも当社に関わる人を増やして、アジアを中心とした海外展開の強化、そして、国内では「全国の工業地帯の近くにペリテックあり」という状態にしていきたいですね。
群馬から世界へ技術を発信する
株式会社ペリテック 技術グループ
グループマネージャー 兼
執行役員
中山真之介
今回取材させていただいたのは、入社6年目にして執行役員という立場になった中山さんだ。元々技術の奥深さに惹かれてペリテックに入社した中山さん。自分たちの仕事が世界中で活用されるという魅力を感じながら技術を磨き、そのフィールドを徐々にマネジメントへと移してきた。「社員の成長で幸せの追求」という企業理念にあるように、技術だけでなく自身の携わる領域を広げながら成長を繰り返しているのだ。現在では、経営にも携わるために執行役員になった中山さんが、同社でどのようなことを感じ、どんな未来を思い描いているのか。その思いに迫っていきたい。 伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
計測器の奥深さに惹かれて
元々ソフトウェアの制作会社にいた中山さんは、ハードウェアも含めて設計・開発をしたいという思いから同社への転職を決めた。技術屋として腕を磨いてきた中山さんにとって、ソフト・ハードの両面から技術が求められる計測器は、とても奥深く魅力的なものに映ったのだという。そして、技術を誰よりも貪欲に磨き、技術について夢を語る井澤社長の存在も、中山さんの決断に大きく寄与した。その姿を追い求め、入社してから丸5年以上が経過した今でも、「今日行ったことが明日には古いことになっている」ということが日常茶飯事の世界において、日々勉強をしながら技術を追求している。 また、現在ではグループマネージャーという立場で、自身の技術を磨くだけでなく、マネジメント業務にも力を入れている。自身の感じてきた喜びをメンバーが感じられるように、そしてメンバーが活躍できるように場をつくっているのだ。今後も技術の奥深さを追求しながら、その魅力をメンバーにも伝えていくことだろう。自分たちの仕事が世界中で活用されていく
自分たちのつくった計測器を使った製品が世に広まっていくこと。中山さんは仕事のやりがいについてそう語る。同社で製作した計測器を大手メーカーや研究機関に納め、その計測器を用いてつくられた製品が世に出たことを、ニュースや新聞記事などで見た時に達成感があるという。同社では、自動車や半導体関連装置などの測定器に加え、ロケット打ち上げのための気象システムの点検装置なども手がけている。24時間365日トラブルを起こすことなく稼動し続けることが求められるため、「万が一」もあってはいけない緊張感と共に開発を行っている。他にも、国内のメーカーに納めた検査機が海外拠点でも使われるようになり、世界に展開しているケースもあるというから驚きだ。常に新しい技術を追求している同社だからこそ、精度や機密性の求められる案件に関わることができ、その仕事が中山さんのやりがいにつながっているのだろう。多くの人が活躍できる場をつくる
「自分自身は、脚光を浴びたいなどとは特に思わないんですよ」と控えめな一面を見せた中山さんだが、「多くの人が活躍できる場をつくること」という夢を語る姿には、熱い思いがこもっていた。元々「人のため」という考え方が強い中山さんは、グループマネージャーになってからは特に、誰かの役に立ちたい、メンバーを勝たせるためにはどうすれば良いか、ということを考えているという。 「仕事なので、厳しいことや大変なこともある。その中で楽しみを見つけてくれる人が一人でも増えると良いですね」と話す中山さんが率いるメンバーたちは、きっとイキイキと働いているのだろう。中山さんは周囲に良い影響を与えながら、さらにその範囲を増やして、将来的には2つある技術グループ全体を率いていく存在になることを目指している。「もっと勉強が必要です」と話す中山さんの影響力が大きくなることで、活躍できるメンバーが増え、会社としても掲げている事業の拡大につながっていくに違いない。
メンバーが活躍する場づくりに力を入れる

自動車など多様な分野で測定器が用いられている

LabVIEW開発企業から
国内初のプラチナアライアンスパートナーに認定された
国内初のプラチナアライアンスパートナーに認定された
自身の成長を会社の成長へとつなげていく
中山さんから見て井澤社長はどんな方ですか?
とてもパワフルな方ですね。社長業をやりながらも常に最前線の技術を磨き、それを楽しそうに語ってくれます。技術だけでなく、人が好き、お客様が好きという気質もあり、「どうにかしてお客様を成功させたい」という思いで会社を引っ張っていってくれていますよ。また、社員の成長を望んでいる方なので、優しさと厳しさを兼ね備えていると思います。厳しい時もあれば、すごく砕けて接してくれる時もあります。社長だからといって社長室にいるわけではなく、みんなと一緒にご飯も食べているので、とても距離が近いです。そのため、「自分はこうしたい」ということも伝えやすいですね。
会社の良いところはどんなところですか?
やりたいと言えばチャンスを与えてくれるところですね。会社としてはチャンスを与えて、成功すれば良し、失敗した場合でもそこから何か学んでくれれば良しとする考え方で、企業理念にもある「社員の成長で幸せの追求」という言葉が体現されています。私自身、技術者として入社しましたが、マネジメントにも挑戦するためにグループマネージャーになりました。また、井澤社長の行っていることを見ている中で、経営にも携わっていきたいという気持ちが出てきて、執行役員という立場を頂いています。
当社は計測の領域においてはNo.1だと自負しているので、お互いに切磋琢磨して、群馬から日本へ、そして世界へ、この技術を広げていきたいですね。
今後、どんな会社にしていきたいですか?
もっと規模を大きくしていきたいですね。毎年、年度の終わりに、社長から翌年の目標や将来像などを話していただくのですが、その方向に向かって、日々の会話の中で夢を語り合ったりしています。その際、会社の目標だけでなく、個々人としても「これくらい稼げるようになりたい」という話題についても、ざっくばらんに話していますよ。会社としての方向性があり、それに対して個人としてどう頑張れば良いかが明確になっているので、わかりやすいですね。個々人の成長が会社の成長につながっていると感じるので、そのサイクルでさらに会社を大きくしていきたいです。株式会社ペリテック
1985年3月 平豊が群馬県安中市にて株式会社ペリテックを創業
1988年 電話交換機テスターの開発を始める。
1995年1月 LabVIEW受託開発を始める
1997年6月 高崎市に新社屋完成、本社移転
1998年 NI(旧社名:National Instruments)の日本初のアライアンスパートナーとなる
2004年1月 CSIAの監査に合格
2004年2月 アライアンスパートナー初のセレクトに昇格
2006年3月 RFIDテスターを上海VISN社と共同開発
2007年11月 ICテスターを独自開発、販売開始
2008年9月 ペリテック開発センター設立
2011年9月 テクノアルファ株式会社の子会社化
2012年1月 日立ディスプレイズからEMIテスタを譲受
2012年9月 サポーティングインダストリー(ものづくり基盤技術)採択
2013年5月 ISO9001(品質マネジメントシステム)取得
2013年8月 「ものづくり中小企業支援」採択
2013年8月 NIのセレクトアライアンスパートナーよりプラチナアライアンスパートナーとなる
NIのRF and Wireless Specialtyアライアンスパートナーに認定
2016年2月 代表取締役社長 平豊が取締役会長、取締役常務 井澤年宏が代表取締役社長に就任
2017年10月 神奈川事業所 設立
2018年1月 ベトナム事業所 設立
1988年 電話交換機テスターの開発を始める。
1995年1月 LabVIEW受託開発を始める
1997年6月 高崎市に新社屋完成、本社移転
1998年 NI(旧社名:National Instruments)の日本初のアライアンスパートナーとなる
2004年1月 CSIAの監査に合格
2004年2月 アライアンスパートナー初のセレクトに昇格
2006年3月 RFIDテスターを上海VISN社と共同開発
2007年11月 ICテスターを独自開発、販売開始
2008年9月 ペリテック開発センター設立
2011年9月 テクノアルファ株式会社の子会社化
2012年1月 日立ディスプレイズからEMIテスタを譲受
2012年9月 サポーティングインダストリー(ものづくり基盤技術)採択
2013年5月 ISO9001(品質マネジメントシステム)取得
2013年8月 「ものづくり中小企業支援」採択
2013年8月 NIのセレクトアライアンスパートナーよりプラチナアライアンスパートナーとなる
NIのRF and Wireless Specialtyアライアンスパートナーに認定
2016年2月 代表取締役社長 平豊が取締役会長、取締役常務 井澤年宏が代表取締役社長に就任
2017年10月 神奈川事業所 設立
2018年1月 ベトナム事業所 設立
創業年(設立年) | 1985年 |
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事業内容 | LabVIEWによるテスターの開発 LabVIEWによるシステムの構築 LabVIEWによるドライバの開発 外観検査、画像処理・電気回路設計、製作、製造 試験器の設計、製造 |
所在地 | 群馬県高崎市片岡町1-17-2 |
資本金 | 3,000万円 |
従業員数 | 40名 |
会社URL |
監修企業からのコメント
井澤社長、中山様のお話を伺って、事業の特異性はもちろんのこと、「社員の成長で幸せの追求」という企業理念に則った組織づくりに魅力を感じました。一人ひとりが成長し、自己実現をしていくペリテック様は、今後もさらに発展し、様々な地域の活性化に寄与していくのだと思います。ペリテック様の今後の展開から目が離せません!
掲載企業からのコメント
この度は当社を取り上げていただき、ありがとうございました。企業としての成長をしていくことで、地域の活性化につなげていくことは、当社としてのビジョンでもあり、私自身の目標でもあります。世の中より早く進化し続けることで、理想の状態を実現していきたいと思います。