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株式会社ニット・ウィン

株式会社ニット・ウィン 代表取締役 西口功人

「履く人を想うものづくり」を原点に、国内外で挑戦を続ける株式会社ニット・ウィン。70年以上にわたり靴下専業メーカーとして歩んできた同社は、既成概念にとらわれない発想と行動力で、自社ブランド「NISHIGUCHI KUTSUSHITA」を確立し、着実に支持を広げている。三代目・西口社長のもと、早くから海外展開を見据えた戦略を進めるとともに、「社員一人ひとりが主役となる組織づくり」にも注力。その姿勢が、ブランドとしての信頼と社内外の一体感を育んでいる。
変化の激しい時代のなかで、どのような未来を描き、歩みを進めているのか。同社の成長を牽引する西口社長に、企業の強みや今後の展望についてお話を伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

“目的の共有”が生む、風通しの良さと一体感

同社の社風は、“目的の共有”が徹底されていることにある。
その理由は、単なる作業指示ではなく、「なぜその仕事をするのか」という背景や狙いまでを日々の対話の中で共有し合う風土が根づいているからだ。西口社長は「目的を握れているからこそ、“やらされている”という空気が生まれない」と語る。
実際に現場では、朝礼で経営数値や改善状況を共有しながら、社員一人ひとりが自ら判断して動くことが当たり前になっている。役職や雇用形態に関係なく、言葉を掛け合い、笑い合いながら助け合う光景が、自然と広がっているという。
「社員もパートも、“同じボートに乗る仲間”として、目的に向かって進んでいる。それが、ニット・ウィンらしさだと思います」と語る西口社長。その姿勢が、社内の安心感を生み、外部からの信頼にもつながる大きな強みとなっている。

コンセプトありきのものづくり

同社の独自性は、“コンセプトありきのものづくり”を徹底している点にある。
西口社長は「意味のない商品は絶対につくらない」と語る。売れるかどうかではなく、何を届けたいか、誰のどのような一日を変えるかを出発点に、素材や構造、色合いに至るまで一つひとつに理由を持たせている。商品はすべてストーリーをまとい、定番でありながらも選ばれ続ける“理由”がある。
OEMにおいても、顧客の目的を丁寧に引き出し、たとえ前例がなくても意味があれば挑戦する姿勢を貫く。重要なのは“ニット・ウィンらしさ”を守りながら、相手の期待にどう応えるか。右脳的な感性と左脳的な論理を両立する独自の経営スタイルが、それを可能にしている。
模倣ではたどり着けないオリジナル。それが、同社のものづくりの根底にある。

靴下で1日を変える、価値を変える

同社が目指すのは、「靴下で1日を変える、価値を変える」という思想の着実な実現だ。日々の履き心地が変われば、その人の気分や行動も変わる。そんな小さな変化の積み重ねが、暮らしや社会を前向きに変えていく。この想いを胸に、同社は独自ブランドの発信に力を注いでいる。
その実現には、現実の市場環境と真摯に向き合う経営視点も欠かせない。SNSの活用や海外エージェントとの連携による販路拡大を進める一方で、社内的には固定費を抑えながら利益率の向上を図る。社員一人ひとりが複数の工程や機械に対応できるよう育成を進め、少数精鋭での高付加価値体制の確立を目指している。
西口社長は、「現実を過大評価も楽観視もせず、日々の変化に目を凝らす“リアルな洞察力”と、“こうなったら面白い”と未来を描く柔軟な想像力、その両方が必要」と語る。
現実に根差しながらも、“未来をつくる”という視点を忘れない。その姿勢こそが、ニット・ウィンらしさであり、進化の源となっている。
東京ストアの外観
ニット・ウィンのロゴ
本社工場の外観

“この一足が誰かの日常を変える”ーその想いを世界へー

海外展開について教えてください。

少子高齢化が進む日本市場においては、OEMだけに頼るのではなく、粗利率の高い自社ブランドの比率を高める必要がありました。
そして、2050年に人口減少による、市場が縮小することを考えると、靴下とというカテゴリーだけではなく、“ギフトとして選ばれるブランド”として確立することが重要だと考えました。そして、海外でも選ばれるブランドにする必要がありました。
これらの理由から、早い段階から世界市場への展開を視野に入れてきました。
2019年にオランダの展示会で価格と品質の両面で高い評価を受けたことをきっかけに、同年フランス・パリにも本格出展。以降、商習慣の違いに柔軟に対応しながら、現在では30ヶ国以上と取引を行っています。
将来的には、ストア・ニューヨーク、ストア・ロンドンといった海外直営店の展開も構想しており、“履く人を想うものづくり”を世界に広げていくことを目指しています。

社長になった経緯を教えてください。

実家が靴下工場だったので、子どもの頃から機械の音や社員の方との交流が日常でした。企業人として成長したい気持ちもあり、大学卒業後は衛生用品の大手メーカーへ入社しましたが、“家業で勝負したい”という思いが強まり、戻る決意をしました。すぐ社長になったわけではなく、会長と共に組織の土台づくりや仕組みの見直しに取り組み、5〜6年かけて実質的な経営を担ってきました。そして、会社としての方向性が見え始めたタイミングで、39歳で社長を引き継ぐことを決意しました。
任される範囲が徐々に広がっていたこともあり、交代はごく自然な流れだったと感じています。

社員への想いを教えてください。

私は、会社というボートの“目的地”を考える役割を担っていると思っています。そして、そのボートを力強く進めていくのは、社員一人ひとりの漕ぎ手の力です。全員が自分の役割を果たしながら、同じ目標に向かって進んでいける、そんな組織を目指しています。
例えば、市場からの反響や売上の動きを共有することで、「もう少し頑張ってみよう」「これでいいんだ」といった前向きな空気が自然と生まれてきます。その積み重ねが、各々が自分の持ち場で力を発揮し、互いを信じて進んでいく推進力につながっていると思います。これからも、全員が目的地を見据えてオールを漕ぎ続けられるように、信頼し合い、支え合えるチームでありたいと願っています。

靴下づくりの最前線から、 会社の未来を見据える職人

株式会社ニット・ウィン
製造部リーダー 大古浩也

「どんな機械でも任せられる存在になりたい。」そう語るのは、株式会社ニット・ウィンの製造部門を担う大古リーダー。新たな設備の導入にも積極的に向き合い、自ら外部研修に参加するなど、技術習得への意欲は尽きない。入社のきっかけは職場の雰囲気だったが、社長との対話や信頼関係を通じて、会社とともに成長することに喜びを感じるようになったという。特に品質へのこだわりには一切の妥協がなく、使用者の声や自身の実感をもとに改善を重ね続ける姿勢は、同社のものづくりの核とも言えるだろ。「うちの靴下を世界に届けたい。」その想いを胸に、挑戦の日々は続く。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

温かく迎え入れてくれる職場の空気

両親が営む刺繍業を幼い頃から見て育ち、手仕事の世界には自然と親しみを感じていた。20歳の時、両親の紹介で同社を訪れ、「まずは3ヶ月間、研修のつもりで働いてみないか」と声をかけてもらったのが入社のきっかけだった。実際に働き始めると、当時の現場は年上の先輩ばかりで最初は緊張もあったが、皆が非常に温かく迎え入れてくれ、機械の扱い方や糸のつなぎ方など、些細なことまで丁寧に教えてくれた。仕事で何かが起こるたびに『こういう時はこうするんだ』とわざわざ声をかけてくれる姿勢に胸を打たれ、『絶対にやめるなよ』という言葉には励まされるばかりだった。社内には穏やかで前向きな空気が流れており、自然と“ここでなら安心して働ける”と感じられたことが、入社を決意する最大の理由となった。

生活に寄り添う靴下を、自分の手で届けられる喜び

「靴下って、誰もが毎日身につけるものじゃないですか」。そう語る大古リーダーの原動力は、“日常に寄り添うものづくり”を自らの手で支えているという実感にある。 中でも印象的だったのは、筋力が弱って思うように動けなくなった高齢の男性が、自身のつくった靴下だけは柔らかくて履けると話してくれたエピソード。その奥様が「毎日同じ靴下ばかり履くから洗濯が大変だった」と笑いながら話してくれた時、「さすがに泣きました」と当時を振り返る。 製品が誰かの毎日を支え、心を動かす。そんな実感を得られるからこそ、ものづくりの責任や楽しさを強く感じるのだという。さらに、社長が掲げる「履く人を想うものづくり」という思想に応えたいという気持ちも強く、「求められるクオリティをどう形にするか」に真摯に向き合う日々が、仕事のやりがいとなっている。

ニット・ウィンの挑戦を世界へ繋げる存在に

「どんな機械でも任せられる存在になりたいんです」と大古リーダーは語る。100台以上あるという機械の中で、新たに導入された設備に対しても、1ヶ月に及ぶ外部研修を受けに行くなど、技術習得に余念がない。 「“大古に聞いたら大丈夫”って思ってもらえるのが一番嬉しい。」その言葉には、誰にも文句を言わせない圧倒的なスキルと信頼を目指す、まっすぐな思いが込められていた。 さらに、大古リーダーにはもう一つ夢がある。「うちの靴下を世界中に届けたい。」その背景には、西口社長の存在がある。「普通なら、製造部の人間に経営の話はしないと思うんです。でも、うちは“仲間”として話してくれるから、自然と興味が湧いて、視野が広がったんです。」社長の挑戦を支える仲間として、自らも一歩踏み出していく決意がにじんでいた。
手で靴下をセッティング
沢山の機械が並ぶ工場内
手編みで仕上げる

信頼を積み重ねてきた手で、“次の時代”を編む

ニット・ウィンで働く人に共通している点はどこですか?

ニット・ウィンで働く人には、“ものづくりに対する強いこだわり”が共通していると感じます。例えば製品の寸法や風合いひとつを取っても、「あと1ミリ納得できない」といった細部への徹底した姿勢を持つ人が多いです。それぞれが意見を持ち、工場内ではより良い仕上がりを目指して、活発なやりとりが交わされることも少なくありません。
また、年齢の近い社員が多く、職場はとても相談しやすい雰囲気です。私自身も、悩んでいる様子のある仲間には「どうしたの?」と声をかけ、一緒に考えるようにしています。そうした小さな積み重ねが、現場全体の前向きな空気や信頼関係につながっていると思います。こだわりと支え合い、その両方がある職場です。

西口社長について教えてください。

西口社長のことを一言で言えば、“天才”だと思います(笑)。どんな話でもすぐに理解して、判断も的確。こちらが想像するような“遠くから指示する社長像”とは全く違って、自分から動いてくれるタイプです。だからこそ、私たちも自然と「一緒に頑張ろう」と思えるんだと思います。
社長が企画した靴下を見た時、「これ、ええな」と素直に感じることが多いんです。素材の選び方や履き心地への配慮など、使う人への思いやりがすごく伝わってきます。自分で履いて、考えて、改良して。その姿勢にものづくりの本質を見せてもらっている気がします。
さらにありがたいのは、社長がいつも頑張りを見て、しっかり褒めてくれることです。年齢も近いから話しやすく、気兼ねなく相談できる存在ですし、「この人についていきたい」と思わせてくれる、そんな社長です。

品質へのこだわりについて教えてください。

品質には常に意識を向けています。検品を丁寧に行っており、たとえば、靴下に少し糸が出ていたり、サイズがわずかに規格から外れていたりすると、「何が原因だったのか」をみんなで話し合い、次に同じことが起きないよう改善しています。大がかりな会議ではなく、コーヒー片手に意見交換できるような場づくりを大切にしており、その方が率直な意見も出やすいと感じています。
また、品質を見る上で最も重視しているのは、やはり自分で履いたときの感覚です。完成時だけでなく、洗濯を繰り返した後の状態も検証し、履き心地の変化まで確認するようにしています。靴下は靴以上に長時間身につけるものですし、疲労感にも影響するため、使用感には徹底的にこだわっています。
「これで十分」と妥協するのではなく、「もっと良くする方法はないか」を常に考え続ける。その姿勢こそが、ニット・ウィンのものづくりの本質だと感じています。

監修企業からのコメント

お忙しい中、取材にご協力いただき誠にありがとうございました。
西口社長のお話からは、社員一人ひとりと真摯に向き合いながら、組織の未来を見据えて挑戦を続ける熱意が強く伝わってきました。
また、靴下づくりに対する誠実な姿勢や、現場との丁寧な対話を通じた文化づくりから、ニット・ウィン様の「らしさ」と揺るぎない強みを実感いたしました。
今後のさらなるご発展を、心より応援しております。

掲載企業からのコメント

今回の取材を通じて、私たちが大切にしている価値観や社内に根づく文化を、改めて言葉にする機会となりました。
普段の何気ないやり取りや、現場での小さな工夫こそが、ニット・ウィンらしさを形づくっているのだと実感しています。
社員一人ひとりが目的を持ち、仲間と助け合いながら前進していく風土を、これからも大切に育んでいきたいと思います。
引き続き、ニット・ウィンの挑戦にご期待ください。

株式会社ニット・ウィン
1950年 創業者である西口勝次が戦後、靴下の卸売業を開始
     手回し編み機を導入し、自社製造をスタート
1999年 「株式会社ニット・ウィン」として法人化
2017年 天然素材・機械・デザイン・価格にこだわった自社ブランド「NISHIGUCHI KUTSUSHITA」を立ち上げる
2021年 NISHIGUCHI KUTSUSHITA STORE OSAKAをオープン
2022年 自社ブランド商品の国内外500店舗以上で販売
     輸出比率は約45%にまで拡大
2024年 NISHIGUCHI KUTSUSHITA STORE TOKYOをオープン
     工場前に直営ファクトリーストアをオープン
創業年(設立年) 1950年
事業内容 靴下・ニット製品のOEM製造、
自社ブランド商品の製造、販売
所在地 奈良県葛城市木戸195-7
資本金 1,000万円
従業員数 64名
会社URL

株式会社ニット・ウィン