株式会社タカワ精密 代表取締役 渡邉光貴
福島県でFA設備などの設計から製作、組立、配線、配管、制御、設置までを一貫して行っている株式会社タカワ精密。今回お話をお伺いした同社の代表取締役の渡邉光貴様の口から取材を通して何度も「対応力」という言葉が出てきた。この「対応力」こそ、同社が発展し続けてきた根源である。先代が創業した初期、主に金型の製作を中心とした加工業務に従事していたが、製造業全体が中国にシフトした時代、金型製作だけでは維持することが難しくなった。この状況を打開するため、FA設備(自動機、専用機)の製作に着手し、事業の多角化を図ったのだ。時代のニーズに合わせて事業を展開してきた同社。機械製造業の最前線で活躍し続ける企業として、渡邉社長はどのようなことを大切にしているのか、詳しくお話をお伺いした。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
経営改革と挑戦精神
「挑戦・克つ・変化に対応できるスピードでものづくり」というキーワードが社内に根付いていると語る渡邉社長。新しい業界へどんどんチャレンジしていくことで、己に勝ち、さらにはお客様のニーズに対応していくことで発展につながるという意味がある。また、渡邉社長は元々トップダウンだった同社をボトムアップの経営に変えようと考えている。会議もリーダーを集めて行い、「こうやるんだ」と強制させるのではなく、「どうしたらいい?」と意見を出し合って方向性を決定するスタイルに変えている。初めは意見が出にくかった社員たちも、現在では積極的に発言するようになってきた。渡邉社長は、今後は発言の質を高めるステップへ進む必要があると話す。今までは自分の部署や自分の仕事など目の前の挑戦で精いっぱいだった同社。現在では、部署間の連携が強化され、会社全体としての挑戦が求められるという理解へ徐々に変わってきている。一貫生産体制という強み
幅広い案件への対応力。株式会社タカワ精密が一番大事にしていることであり、どこにも負けないポイントである。渡邉社長は「多くの業界では、特定の専門領域を持つことが一般的だが、当社では異なる業界のルールや要件に対応できる体制を整えている」と話す。例えば、食品業界ではステンレスの使用や衛生面での厳しい規制があるが、車載用設備では厳格な検査基準が求められている。このように、業界ごとのQCD(品質・コスト・納期)の要件に柔軟に対応してきた。この広範な対応力を支えているのが、一貫生産体制と挑戦するマインドである。同社は、設計から製造、組立までを一貫して行うことで、多角的な視点から問題に取り組むことができ、顧客のニーズに柔軟に応えることが可能になっている。さらに、新しいことに常にチャレンジする姿勢を持っており、常に革新を追求する文化が根付いている。この柔軟に対応できる体制と挑戦する姿勢を社員全員が大切にしているからこそ、常に顧客の期待を超える製品とサービスを提供し続けているのだ。社員育成と規模拡大
今後、会社の規模を拡大し、より多くの案件に対応できる体制を整えることが渡邉社長の思い描く展望である。現在、面白い案件が多く存在する中で、人や規模が十分でなく、対応しきれず断念していることもあるからだ。例えば、1つの設備は対応できても、10メートルのライン全体を手掛けることは難しい状況にある。こうした制約を克服し、幅広い仕事に取り組むためには、会社の規模を拡大する必要がある。将来的な規模の目標としては、まずは従業員数を現在の倍、約100人に増やすことを掲げている。これにより、大規模な案件にも対応できるようになり、より多くの仕事を受注し、複数の案件を同時に抱える体制を整えることができるようになるのだ。この目標を実現するためには、社員の発言の質を向上させること、次世代のリーダー育成に力を入れることが必要だと語る渡邉社長。新たな挑戦を続け、常に進化を遂げる企業として、今後の発展が期待されている。スピードでものづくり」
福島県にある株式会社タカワ精密
更なる品質管理/品質向上に
取り組んでいる
現在、大事にしていること。そして、これからの未来について
先代から受け継いできたことは何ですか?
会社方針に対する意識が強く根付いており、QCD(品質・コスト・納期)の中でも、特に納期(Delivery)に対するこだわりが大きいですね。納期遵守のためには、マインドとシステムの両方が重要です。社員は単に納期に合わせるのではなく、リスクを考慮して納期の1週間前には仕事を終わらせるというマインドで仕事をしています。また、独自に開発した生産管理システムもその一助となっています。このシステムは、リアルタイムで誰が何をしているかを見える化することで、効率的な生産管理を可能にしています。この姿勢が、顧客からの信頼を確固たるものにしており、「タカワに頼めば、絶対に納期通りにくる」と高く評価されています。渡邉社長が経営において大切にしていることを教えてください。
バランスの取れた経営スタイルを大切にしています。サッカーにも攻めと守りがいるように、経営でも「良い仕事だから」といって全てに飛びつくことは避けるべきで、新しいチャンスを追求しつつ、既存の仕事もきちんと維持することが重要です。このバランスを取ることが、経営者としての責務であると感じています。 過去に、会社の業務の7~8割をひとつの仕事に依存してしまい、それがなくなった時に大きなリスクを抱えてしまいました。この教訓から、1つの顧客やプロジェクトに過度に依存せず、多くても3割というルールでやっています。安定した経営基盤を築きながら、新しいチャンスを追求し続ける舵取りが社長のミッションだと思います。渡邉社長自身は、どんな経営者になっていきたいですか?
社長自らが手を動かすのではなく会社全体の方向性やビジョンを示すだけで、社員がそのビジョンに向かって進む体制を整えたいと考えています。常に柔軟に対応できる余裕のある状態が重要だと思います。現在、株式会社タカワ精密の組織体制では、会長が営業、設計は私が見ています。今後、設計や営業の責任者も必要なため、簡単なフォーマットを作成して他の人でも着手できるようにするなど、営業業務の効率化にも取り組んでいます。このような経営スタイルを実現するためにはやはりひとりひとりの発言の質を高め、責任者クラスを担える人を成長させることが必要だと思います。
株式会社タカワ精密 設計部 サブリーダー 吉田貴文
2018年に中途採用でタカワ精密株式会社に入社された吉田さん。設計未経験ながらも、生産設備やFA設備、治具の設計、3次元CADの操作など、多岐にわたる活躍をされている。2ヵ月ほど前、渡邉社長の期待を受けて設計部のサブリーダーに抜擢。以降、幅広い案件に対応しており、社長からも今後はリーダーとして世代交代の一役を担ってほしいと期待されている。さらに多くの案件やプログラムに挑戦し、経験を積むことで自身のスキルを広げ、「あの人に頼めば大丈夫」と言われる存在になることを目指している。今回は、そんな吉田さんの入社理由や仕事のやりがい、社内改革の取り組み、そしてタカワ精密の未来についてお伺いした。公務員から設計へ挑戦
長男として地元福島に戻ろうと決意し、ハローワークで紹介されたタカワ精密株式会社は、吉田さんにとって新たなステップとなる場所だった。前職は非常勤の公務員で、設計の知識もないまま新たな職に飛び込んだが、未知の領域への挑戦に対しては「なんとかなる」と楽観的であった。実際に入社してから設計のハードルの高さに直面したが、それを乗り越える過程でますます設計の仕事に魅了されていき、仕事に没頭することが好きな吉田さんは無我夢中で設計業務に取り組んだ。設計の経験がない中で始めた仕事だったが、持ち前の集中力と努力で少しずつスキルを身につけていき、今では仕事の面白さを感じながら、日々新しい挑戦を続けていくことで自身の成長を実感しているという。これからもさらに多くの経験を積み、自身の成長を感じながら、未来に向かって前進し続けていくだろう。設計業務の魅力
吉田さんのやりがいは、何よりも自身が携わった製品が完成し、思い通りに動くのを確認した瞬間にある。設計から製造、制御までを一貫して自社で行うタカワ精密株式会社の環境だからこそ、吉田さんはその達成感を強く感じることができるのだろう。ターニングポイントとなったのは、初めて1人で案件を任されたとき。上司から案件をバトンタッチされ、最後までやり遂げた経験は吉田さんにとって大きな自信となった。設計業務に携わり始めた当初、サポート役としての役割が多かったが、社長から挑戦を続ける姿勢を評価され、徐々にメインとして案件を任されるようになった。6年間の中で、吉田さんは設計業務に対する理解とスキルを深め「作り上げることの喜び」と「挑戦することの大切さ」を実感している。今後も、一人前の設計者としてさらなる成長を目指し続けるだろう。信頼される設計者へ
吉田さんは今後の夢について「設計を極めること」だと語る。経験を積むことでさまざまなスキルを身に付け、より多くの要望に応えられるようになりたいと考えているのだ。そのために意識していることは、自分が関わっていない制御やプログラムなどの案件にも積極的に目を通すこと。プログラムの作り方など他の設計者の考え方や方法を学ぶことで、自身のスキルを広げることができる。さらに、吉田さんは後輩とのコミュニケーションを大切にしている。1人で作業をしていると行き詰まることもあるが、後輩と話すことで新しい視点を得ることができ、互いに成長できる関係を築くことが、重要だと考えている。未経験だからこそ貪欲に他の設計者の仕事を学び、自分のスキルを高めている吉田さん。「あの人に頼めば大丈夫」という存在になるために、今後も設計の仕事に真摯に向き合い、挑戦し続けるだろう。FA設備(自動機、専用機)の
製作に着手した
小部品単体でも製作している
伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
どのような会社にしていきたいですか?
今後さらに難しい仕事に挑戦していきたいと考えています。自分のスキルを高め、突き詰めることは、わくわくしますし、会社としてもお客様から必要とされることになり、プラスになるからです。現在、タカワ精密株式会社は加工が主力となっていますが、設計部門が成長することで、より複雑で高度な仕事を受けることができ、結果として会社全体の力が高まるのではないかと思います。そのためには、他の部署との連携がますます重要になるので、会社でのイベントや飲み会などを通じて、社員同士のコミュニケーションを深めていきたいと考えています。これにより、部署間の連携がスムーズになり、難しい案件に対しても一丸となって取り組むことができるようになると思います。会社の良いところを教えてください。
事業の一貫性と会社の雰囲気の良さの2つが挙げられます。事業の一貫性について、設計、加工、組立、そして納品までを一貫して行えることが同社の魅力です。これは業界内でも珍しいそうです。例えば、加工した製品を納品する際にも営業が「こういうこともできます」と設計案件を獲得することができたり、不具合があっても迅速に加工が対応できたりする体制が整っています。会社の雰囲気について、仕事では厳しい一面もありますが、社員同士が気を遣わずに話せる環境が整っています。そのため、仕事上の問題点やアイデアを自由に共有することができ、会社全体の成長に繋がっているのではないかと思います。渡邉社長はどんな方ですか?
渡邉社長は、論理的な思考と優れた判断力を持っていると思います。社員が迷ったときには、的確なアドバイスをしてくださり、さらに新しい考え方を持っていて常に新しい技術や市場の動向に目を向け、時流に乗って会社を発展させようとするチャレンジ精神を持っています。また、社長はタカワ精密株式会社においてモノづくりの基盤を築いてきました。特にQCD(品質、コスト、納期)の中でも、納期(D)に重点を置いて取り組んでいます。社長のリーダーシップの下で、同社はこれからも堅実な経営基盤を築いていくと思います。株式会社タカワ精密
昭和55年
(有)タカワ精密製作所として創立
昭和62年
(株)タカワ精密に社名変更 資本金3千万円に増資
平成2年
本社工場建設
平成13年
組立工場建設
平成22年
創立30周年
平成25年
ISO9001:2008認証取得
平成28年
ISO9001:2015認証取得
令和2年
創立40周年
(有)タカワ精密製作所として創立
昭和62年
(株)タカワ精密に社名変更 資本金3千万円に増資
平成2年
本社工場建設
平成13年
組立工場建設
平成22年
創立30周年
平成25年
ISO9001:2008認証取得
平成28年
ISO9001:2015認証取得
令和2年
創立40周年
創業年(設立年) | 1979年8月 |
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事業内容 | FA設備(自動機、専用機)、精密治工具、プレス金型、設計製作製造販売、その他 |
所在地 | 福島県南相馬市原町区大木戸字八方内77番地 |
資本金 | 3000万円 |
従業員数 | 40名 |
会社URL |
監修企業からのコメント
お忙しい中、取材にご協力いただきありがとうございました。渡邉社長のバランス感覚とリーダーシップが、株式会社タカワ精密の安定と成長を支え、未来への挑戦を続ける原動力となっていることを強く感じることができた取材でした。貴社の更なるご活躍を応援しております。
掲載企業からのコメント
この度は取材をしていただきありがとうございました。私たちの「対応力」をはじめとする強みや、多角化戦略による成長の歩みを知っていただくことができ、嬉しく思います。今後もさらなる発展を目指し、引き続き努力してまいりますので、よろしくお願い申し上げます。