株式会社オオイテック 代表取締役社長 早川みちる

損得よりも品質を考える。きれいごとに聞こえるこの言葉を60年もの間、貫き続けている会社が群馬県太田市にある。自動車部品の金型製作に携わる株式会社オオイテックだ。品質を大切にしてきたからこそお客様から信頼され、長い年月をかけて発展し続けてきた。現在、代表を務める早川社長は4代目。ものづくりが大好きな創業者、営業や経営に手腕を発揮した2代目、こだわりの強い3代目の良さを受け継ぎながら、社員の幸せを追求している。創業家に生まれ、同社を支えてきた祖父、父、兄の背中を間近で見てきた早川社長に、同社の伝統や未来について伺った。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
お金をかけてでも良いものを納める
「お金をかけてでも良いものを納めろ」そんな言葉が使われる会社はどれほどあるだろうか。利益を出すことも大切だが、それ以上にお客様の要望を大切にし、絶対に手を抜かないことを大切にする点が同社の特徴である。職人として顧客の要望に応え続けてきた点は初代からずっと変わらない。現在、代表を務める早川社長は4代目。特に初代、3代目の代表は現場に入って仕事をしており、その姿勢に感化されて今の文化がつくられてきた。そのため、熱くてこだわりの強い社員が多い点も特徴である。もっと良い製品をつくれるとなったらどんな時でも最後までやり抜く、そんな職人魂を感じられる。「お客様の要望にはお金をかけてでも応える」というスタンスを貫き続けたことでお客様の信頼を獲得してきた。「絶対に良いものを納める」という考えを胸に、これからも発展を続けていく。難しい仕事を引き受け続ける
「難しい仕事も大歓迎」そんなスタンスで日々、仕事に取り組む同社。早川社長はそれを実現できている理由について「技術と設備」と答えた。続いて、技術力が高い理由を聞くと「お客様のどんな要望にも応えたいという想いから、難しい仕事に挑戦し続け、その過程で技術力が身につき、その結果、さらに難しい仕事が来て、その過程でさらに技術力が身に付くという好循環に入っているから」だという。また、「最先端の設備があればより多くの要望に応えられる」という考えから、設備投資にも積極的だ。そうやって信頼と技術力を60年の歳月をかけて積み上げてきた同社。「オオイテック=最先端の設備を導入している」というイメージを持たれたこともあって、同社が導入した設備を他社がまねて取り入れていくということもあったというエピソードには驚かされる。技術向上と設備投資によって、さらなる進化を続け、より難しい仕事も受け入れられる体制をつくっていく。社員と喜びを分かち合える会社
社員と喜びを分かち合える会社でありたい。そんな思いで日々挑戦を続ける早川社長。もちろん、業績や事業も大切であるが、すべての根本にあるのは社員の幸せだという。「会社は家族だと思うし、社員が寂しい顔をしていたら元気にしてあげたくなるんですよ」と話す早川社長の表情が和らいだ。そんな早川社長の仕事観を聞くと、「お金をたくさんもらえた時も嬉しいと思いますが、自分が成長してできることが増え、お客様に喜んでもらえた時の方がもっと喜びを感じると思うんですよね」と答えた。続けて「今以上に人に喜んでもらうには『自立自走』がテーマになります」と話す。社員一人ひとりが自ら考えて行動することによって、様々な改善や個々のさらなる成長に繋がるという。そうやって、「1+1が2ではなく、3や4になっていくことでお客様へ貢献できる価値がさらに増え、感謝されることが増え、喜びを分かち合えるようになる。これが理想ですね。私もみんなと一緒に成長していきます」と真剣なまなざしで話した。
全ての製品が
ここから生まれている
オオイテック本社

約1万種類のパーツが
必要と言われる自動車
その一助を担っている

この業界では珍しい
1,600tプレス機
お客様の要望に応えるために
設備投資は惜しまない
「社員は家族」社員の幸せに責任を持つ
社員と関わる際に意識していることを教えてください
謙虚に生きることですね。変なプライドを持つよりも、わからないことがあったら素直に「教えてほしい」という関わりをするようにしていますね。どんな人であっても、絶対に良いところがあると思っています。人の良いところが見えないのは、一つの角度からしか見ていないだけで、違う角度から見たら絶対に良いところがあるはずです。もちろん、受け入れられないことはありますが、それに対しておかしいと思うのではなく、そのような価値観があるんだなと許容することが一つの気付きになると感じます。うちの社員の皆さんもみんな良いところがありますし、みんなで協力し合って、一人ひとりの輝きがさらに増すような状態をつくっていきたいです。働く上で大切にしていることを教えてください
周りにいる方々、そして仕事ができることに対する感謝です。また「感謝」によって生まれてくる「利他の心」も大切にしています。自分優先ではなく、相手を敬い、「利他の心」を大切にすることで「顧客満足度」と「社員の幸せ」を追求していくことを意識しています。ただ、若い頃は「なんで私がやらないといけないの」と思っていました。そんな中、ある時に「そのような気持ちで働いていたら自分は不満だし、周りの人も気分は良くないし、誰も幸せにならない」と気付きました。それからは「どうせやるなら喜んで」という言葉を意識するようになり、感謝を大切にするようになりました。その結果、「顧客満足度」や「社員の幸せ」に繋がり、自分の生きがいとなっていると感じます。これから力を入れていきたいことを教えてください
人間力を高めることですね。私たちは3つ理想の状態を掲げています。「技術力を高め続け、 他社の見本になる会社」「思いやりあるコミュニケーションが取れる会社」「人に紹介できる・自慢できる会社」であることです。中でも特に根幹となるのが「思いやりあるコミュニケーションが取れる会社」になることだと思います。そのために、イベントをやるなど楽しめる場をつくることで、心が喜び、満たされるようにしたいですね。それをきっかけに人としてのコミュニケーションを大切にするようになり、人間力が高まっていき、「この仕事をしていて楽しい」「もっと良いものをつくりたい」など、前向きな言葉があふれる会社となるようにしていきたいですね。
オオイテックと共に成長する若手のホープ
株式会社オオイテック 設計課 藤井智也
一般的には「職人」と言われるような熟練の技を持つ社員が多い同社の中で、若くして輝く社員がいる。20代にして周りからの信頼も厚い藤井さんのことだ。新卒で同社に入社し、様々な経験を積んできた。すぐに戦力になることは難しいとされる設計課の仕事に従事し、図面を描く仕事、上がってきた図面を改良するという改造図に関する仕事、お客様とやり取りをする仕事など、様々な業務に携わってきた。今では若手の教育に携わるなど、若くして頭角を現してきており、社内では「未来のホープ」と言われている。「同社と共に成長し、未来をつくっていく」そんな覚悟で働いている藤井さんに、同社らしさや魅力について伺った。伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
好きなことを仕事に
気付いたら時間が過ぎている。そんな感覚を製図の授業で感じていた。「就職先は設計に関する仕事にしよう」という想いを持ちながら当時の専攻である機械科に通っていた。製図など設計に関する作業を好む一方で、学校で教わることは、旋盤、フライス、フォークリフトの操縦など、設計とは異なるものが多かった。就職活動の時期に、学校に届いている求人を見て、ある会社に設計課があると知った。それがオオイテックとの出会いである。そこから面接を受けに行った際に垣間見えたのは、町工場のような古き良き雰囲気。就活のイベントで出会うような大きな企業とは異なる雰囲気に、何か魅力を感じたという。そして、念願の入社。自分がやりたかった設計課の仕事に従事することとなり、設計課の中でも様々な業務を経験してきた。入社から7年以上経った今でも没頭できる設計課の仕事に誇りを持ち、日々の業務に励んでいる。図面を改良し、高品質な製品へ
図面を見て、改良を加えられる部分がないかをチェックする。一見、シンプルそうな仕事ではあるが、これがなかなか難しい。そんな中、今では毎日20~30の図面をさばく藤井さん。改良を加えられる部分を見つけることができた時、「この仕事をしていて良かった」と思えるという。 入社当初は、何をどうしたら質が良くなるのか、それすらもわからない状態から始まる検図という仕事。上がってきた図面について、「このような場合にはこうしましょう」というパターンをいくつも覚えていく、そんな地道な作業を通じて、検図における力を身に付けていく。この仕事において大切なことは、過去の事例を理解しておくこと。つまり、経験値がものをいう仕事である。それが今では自然にできるレベルにまで成長してきた。そうやって成長してきた感覚、それもやりがいに繋がる一つの要素だという。今では若手の教育までも担い、周りからの信頼も厚い。「検図という作業だけを切り取れば地味に見えるかもしれない。ただ、この仕事によって製品の品質を担保しているんだ」と誇らしく話してくれた。日々ステップアップしていく
若手のホープと言われ続けている藤井さんは「日々ステップアップしていきたい」そんな話をしてくれた。自身の成長に加え、設計課をどうしていきたいかを問うと「システム化、マニュアル化を進めて、誰でも質の高い仕事をできる状態をつくりたい」と力強く話す。ただ、数年前までは将来のことを考えることすらなかったという。今では考えられないが「入社時は無口で人と話すことが苦手だった」と話す藤井さん。そんな状況だった中、なんと、最もコミュニケーション力を求められるお客様とのやり取りをする担当に抜擢。当時は戸惑いがあったというが、その経験を通じた成長をきっかけに、同僚からも信頼され、将来を任せたいと思われる存在にまで頭角を現してきた。「自分の成長のために仕事を任せてくれた上司に感謝している」と謙虚な姿勢を忘れない。オオイテックの未来をつくる存在として、ステップアップを続け、管理職として仲間を引っ張る存在になっていることが想像できる。
お客様の要望に応え
質にこだわる
それがオオイテック全社員に
共通する考え

金型製作における
最初の工程である設計
この仕事に誇りを持って
働いている

日々のコミュニケーションを
大切にする
それが質の高い仕事に
繋がっている
オオイテックの魅力を継承し、未来へ繋ぐ
オオイテックらしさを教えてください
本物の職人の集団というか、最後までこだわり、やり抜くことができる人が多い会社だと感じています。「何が何でも良い製品をつくる」そんな想いを持っている方がたくさんいるので、毎日良い刺激を受けながら仕事に臨むことができていますね。初代の社長が職人気質だったそうで、その時からの伝統を継承し続けているからこそ、今のオオイテックがあると思っています。この強みをこれからも生かしていくためにも、様々な人と話し合い、協力し合い、今以上に連携を強化し、相乗効果を生んでいけるようにしていきたいです。最後までこだわり、やり抜くことができる本物の職人の集団であることを維持しつつ、強いチームとなってさらに会社を発展させていけるように、私自身、精進してまいります。オオイテックの魅力を教えてください
日々新しい仕事ができること、社員の幸せを考えてくれていることの2点だと感じています。毎回同じ製品を製造するのではなく、あらゆる製品に関わるため、日々の仕事内容が異なりますし、常に新たな発見や学びがある仕事ですね。しっかりと勉強して、頑張っていけば先頭に立って様々な仕事に挑戦させてもらえる環境なので、自分みたいに、様々なことをできるようになりたいという考えを持っている人にはとても魅力的ですね。また、社長が「社員は家族」という言葉をよく使うんですけど、社員は単なる仕事を一緒にする人という考えではなく、社員の私生活にまで責任を持つというか、私生活の充実までも考えてくれていると感じます。仕事も私生活も充実した社会人生活を送れることに感謝しています。新入社員に伝えたいことを教えてください
恥ずかしがらないことですね。「これを聞いても大丈夫かな」と心配して行動できないのはもったいないなと思います。私自身、相談する勇気がなく、抱え込んでしまい、迷惑をかけてしまったことがありました。その時にふと言われたこととして印象的だった言葉が「何かを話すことで問題が起こることはほとんどないよ。恥ずかしがらずに話しかけるだけで勉強にもなるし、時間短縮にもなるよ」という言葉ですね。それからは相談をすることを意識するようになり、恥ずかしがっていた頃と比べると、仕事が相当楽になった気がします。恥ずかしがらずに言う、相談する。当たり前のようなことですが、この当たり前を意識し続けることが大切です。私自身、成長していき、仕事効率も高めていきたいです。株式会社オオイテック
1963年08月 有限会社大井鉄工所設立
1967年12月 太田市高林より現在地に移転
1973年06月 型工場南側に仕上工場増築
1978年10月 仕上げ工場南側にプレス工場を増築
1983年03月 仕上げ工場東側に新工場を増築
1984年10月 型工場(機械)東側にプレス工場を増築
1991年10月 有限会社大井鉄工所より組織及び称号変更
株式会社オオイテックとなる
2005年06月 第三工場を増築
2018年07月 第四工場を増築
1967年12月 太田市高林より現在地に移転
1973年06月 型工場南側に仕上工場増築
1978年10月 仕上げ工場南側にプレス工場を増築
1983年03月 仕上げ工場東側に新工場を増築
1984年10月 型工場(機械)東側にプレス工場を増築
1991年10月 有限会社大井鉄工所より組織及び称号変更
株式会社オオイテックとなる
2005年06月 第三工場を増築
2018年07月 第四工場を増築
創業年(設立年) | 1963年8月 |
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事業内容 | 金型設計・製作 |
所在地 | 群馬県太田市西矢島町84-1 |
資本金 | 1,000万円 |
従業員数 | 70名 |
会社URL |
監修企業からのコメント
創業家に生まれ、先代の背中を見て育ってきた早川社長の覚悟や、若手として未来を見据える藤井様の想いを伺い、「損得よりも品質」というシンプルでありながらも実行するには難しいことを平然と行っている貴社の強さに気付かされました。今回お話を伺っている中で、貴社の未来がどうなっていくのか、とても楽しみな気持ちになりました。
掲載企業からのコメント
オオイテックは今まで何を大切にしてきたのか、そして私はどんなオオイテックにしていきたいのかを改めて言語化する機会になりました。このようなことは、社員に向けて発信をしていますが、改めて気を引き締めて日々の業務に臨んでいきたいと思える時間となりました。