株式会社エステック 代表取締役社長 鈴木誠一
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静岡県に高精度な加工技術で航空宇宙関連のエンジン部品を主力として製造する企業がある。それが株式会社エステックだ。同社の技術力の源泉には創業から50年以上にわたって蓄積された経験とノウハウがある。23年前に2代目社長の鈴木誠一氏が引き継いだ際に本格的に航空機部品の製造を始め、受注を増やしてきた。現在では、若手社員が先代から受け継がれてきた技術力を元に同社でつくった専用の工具を使って、他社で断られるような案件にも果敢に挑み、技術力を一層高めているのだ。今回は鈴木社長に、同社の確かな品質を追い求める挑戦について、さらには今後の同社の未来についてお伺いした。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
高難度に挑む!挑戦心あふれる職場
「できないものはない。他社ができないものは大好物」これが同社の社風だ。鈴木社長は「図面に描かれていることなら必ずできる」と語ってくれた。図面とは誰かの頭の中で完成しているものであり、通常なら実現が難しいとされるものであっても、今までの経験をもとに方法を組み合わせたり、新しい手段を考えたりして製造しているという。この言葉通り、他社が断るような高難度の案件にも果敢に挑戦している。そんな同社の平均年齢はなんと30代。同社の「すぐ断らない、絶対断らない」という姿勢は若手社員にも深く浸透しているのだ。そのため、営業の場で高難度案件を「できますか?」と問われても、まずは断らずに社内に持ち帰り、議論を通じて解決策を見つけ出している。このような挑戦を恐れない姿勢があるがゆえに「困った時はエステック」という評価を得ているのだろう。1/1000mmの精度に挑む技術力
高い技術力とそれを支える管理力が同社の独自性だ。同社が製造している航空宇宙機器の部品には1/1000mmの誤差も許されない。通常、製造用工具は既製品が使われることが多いが、同社では一般の刃物では切れない素材を取り扱うこともあるため、自ら工具を削り、手作業でつくることもあるという。これだけの工具やノウハウを有している会社は他に類を見ないだろう。また、同社はJIS Q 9100や航空機・エンジンメーカーが求める認証であるNadcapといった国際認証を取得できるほどの厳格な検査体制と管理体制を構築している。これらの取得には、例えば表面処理やめっきなど全ての工程において目視できない細かい傷がないか検査をする必要がある。協力会社も同等の認証を持っていることが求められるため、実現できる会社は数少ない。このように常に最先端を追い求める高い技術力と高度な認証に証明される管理力が、顧客の高い要求に応える姿勢を維持しているのだ。新たな事業の柱を!未来を見据えた多角化
「常にお客様のご満足を得られる製品の提供」を目指し、鈴木社長は失敗を恐れず積極的にチャレンジを続けていく。その一つとして新たな事業の柱をつくりたいと教えてくれた。現在の主力事業は二つあり、一つは航空宇宙機器の部品製造、もう一つは油圧ホースに接続して、機器の揺動、回転の自由度を向上させる継手であるスイベルジョイントである。それぞれの事業発展と同時に、今後ますます需要が高まる医療機器業界の拡大を視野に入れている。医療機器業界は人命に直結するため、高い技術力と管理力が求められる分野であり、同社の実績を活かせる絶好の機会となるだろう。これにより、同社は事業の多角化を進め、技術のさらなる向上を目指している。最後に鈴木社長は「弊社でできるかできないかの瀬戸際の難しいものにどんどん挑戦していくことで技術力が上がる」と語ってくれた。今後も同社は常に進化を続ける企業として、技術と管理力の向上に努め、社会に貢献する存在であり続けるだろう。_代表者様①-1.png)
難削材の加工
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開発から製作を行った
スイベルジョイント
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若手の挑戦と成長、精密加工を支える教育の秘密
若い集団で高い技術を実現するために何をしていますか?
弊社では、社員全員が高い技術を習得するために、独自の技術継承と実践的な教育を行っています。例えば、若手社員にも熟練の技術が身につくよう、先代から引き継いだ技術力を一人ひとり細やかに教育しています。さらに、弊社ではオールマイティな人材育成を目指しており、社員は単なる製造だけでなく、仕上げや検査、設計までを幅広く担当します。そのため、一般的には専門の担当者を置くことの多い三次元測定器の操作にも、全員が積極的に挑戦できるよう台数を揃えるなど、環境を整えています。これにより、社員たちは現場のあらゆる場面で活躍できるスキルを身につけています。御社の教育体制について教えてください。
JIS Q 9100の認証に基づく教育体制を整えています。加えて、実際の現場で柔軟に対応する作業も多く、そうした場合は上司が現場で直接指導するという実践的なアプローチを取っています。これにより、若手社員は実際の作業を通じて学び、技術を磨くことができるようになると考えています。また、上司には頭ごなしに指示するのではなく、柔軟な発想を促しながら指導するよう伝えています。例えば、難しい材料の加工では、失敗することもありますが、それを恐れずに試みる姿勢を育てています。万が一失敗した場合でも、上司や先輩がしっかりとフォローし、改善策を一緒に考えることで、若手社員の考える力を育てることができるからです。このように、弊社では社員が自らの力で課題を解決できるような教育を行い、技術力の向上を図っています。社員のみなさんに期待することは何ですか?
弊社が手掛ける製品は非常に高い精度が求められるため、製品の質は社員の技術力と判断力に大きく依存します。そのため、社員には自分たちの仕事がどのように社会に貢献しているのかを理解し、誇りを持って取り組んでほしいと願っています。我々がつくる部品は、ロケットの内部など実際に見ることができないものが多いです。そこで社員が自らの仕事の成果を実際に見る機会を提供するため、種子島でのロケットの打ち上げに社員を招待することを計画しています。こうした経験を通じて、社員は自分の仕事の重要性を実感し、自信と誇りを持って働くことができるでしょう。社員一人ひとりが主体的に動くことで、同社は今後も業界をリードする企業として成長を続けていきます。_社員様トプ画.png)
挑戦し続ける営業リーダーの 未来への架け橋
株式会社エステック 営業課 係長 相磯栄希
同社で営業課の係長として活躍する相磯さん。元々は商社で働いていたが、ものづくりに対する強い興味から製造業に飛び込むことを決意し、2019年にエステックに入社した。現在は、既存顧客のフォローのみならず、人脈を活かして新規案件の獲得に尽力している。受注する際には製造部と相談のうえ、見積もりを提出しているが、自身でもその判断ができるように技術営業としてのスキル向上にも余念がない。また、採用担当も兼務しており、同社の未来をつくる人材確保も担っている。異業種に飛び込み、社内外共に活躍する相磯さんは一体何に魅かれ、何を目指しているのか。異業種から転身した理由やその中でのやりがい、今後の夢について伺った。
伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
可能性を信じて選んだ未来
相磯さんが同社に入社した理由には、以前勤務していた商社での経験が大きく影響している。そこで扱っていた工具のユーザーの一社がエステックだったのだ。転職先として複数の企業を検討する中で、同社は航空機関連の製品を扱っており、将来性があることに魅力を感じたという。また、製造業への興味も大きな動機であった。商社勤務時代には仕入れた製品を顧客に販売する業務に従事していたため、実際にユーザーがものづくりの現場で活用している場面に立ち会うことが少なかったという。だからこそ同社の製造現場に直接関わり、ものづくりのプロセスを深く理解しながら働ける環境に魅かれたと振り返る。「製造業に従事することで、”もの”ではなく”技術”を売ることができ、”ものづくり”の充実感を得られている」と相磯さんは語ってくれた。自ら切り開く道、ものづくりへの深い喜び
製造業の現場に深く関わりながら、自分で仕事を決められる自由度と責任感を持てる点に相磯さんはやりがいを感じている。現在、どの業界を攻め、どのお客様にアプローチするかを自身で決めていることが、責任と共に楽しさにつながっているのだ。また、製造サイドとの調整も相磯さんの重要な役割の一つである。営業が持ち帰った案件を、納期や技術的な制約がある中で、実現に向けて現場と協力しているのだ。特に印象に残っているエピソードとして、航空機部品を扱う大手企業との取引を挙げてくれた。その案件のために会社として設備投資を実施し、相磯さん自身も何度もお客様先に通いながら案件を進めてきたという。一からプロジェクトに関わり、現場に入って製造と密に連携しながら業務を進めたという経験は、自由度と責任感にやりがいを感じる相磯さんにとってさらなる成長へつながったに違いない。さらなる成長を目指して、次なるステージへ
相磯さんは、部署を越えた知識を身につけ、よりお客様に合った提案をできるようになりたいと語る。営業経験はあるが、製造に関する知識はまだまだ未熟であると感じているという相磯さん。そのため、より技術的な知識を深め、技術営業としてお客様と直接的なコミュニケーションを取りながら、即時に適切な判断ができるようになることを目指しているのだ。 また、将来の事業拡大に向けて新しい案件を取りたいと教えてくれた。現在、同社では宇宙産業にも力を入れており、ロケットに関連した部品を製造している。今後はさらに熱源探査機や火星探査機といった先進的なプロジェクトにも関与すると同時に、毎月安定的に新しい案件を獲得できる体制を構築し、単品加工だけではなく量産へのシフトを進めたいという。 このように、技術と営業の両面でバランスの取れたスキルを持つことが、相磯さんが目指す理想の姿であり、その実現に向けて着実に取り組んでいる。_社員様①-2.png)
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つながりを深め、広がる未来への挑戦
今後、会社としてどんな事業をしていきたいですか?
今後は、いまある航空機関連とジョイント製品を発展させ、さらには医療分野を新たな柱として取り入れたいと考えています。現在やっている防衛関連の仕事に加え、民間機の量産、宇宙関連のプロジェクトにも力を入れていき、併せて医療機器の認証を取得し、事業の柱を3本立てることで、安定した事業基盤を築いていくことが可能になります。また、今まで以上にお客様の希望に応えていきたいと思っています。現在、機械はあっても人手不足が原因でお断りしている仕事もあります。そのため会社の規模を拡大し、従業員数を増やしていきたいと考えています。機械をフル稼働させ、これまで見送ってしまった仕事も受けていきたいです。どんな風土の会社にしていきたいですか?
部署間の横のつながりをさらに強化していきたいですね。小規模だった頃には、兼業になることがほとんどで社員同士のつながりが強かったと聞いていますが、人数が増え、各部署での役割ができたことで、より情報共有が重要になっていると感じています。例えば、情報共有が不足していて、一方の部署は知っているけれど、別の部署は知らない情報があったり、お互いにこだわりがあるからこそすれ違いが起こったりすることもあります。そのため、お互いに情報共有を適切に行い、現場でのロスをなくしていきたいと思っています。みんなで協力して、難しい案件にもワクワクしながら挑戦できる風土を目指しています。鈴木社長はどんな方ですか?
鈴木社長は2代目の社長で、会社を今の規模まで成長させたその手腕には非常に感銘を受けています。社長は常に「まずやってみる」という姿勢を大切にしており、何事にも挑戦する意欲が強い方です。その原動力は、やはり「ものづくりが好き」という気持ちだと思います。また、よく「他社にできてうちにできないことはない」と言っており、その言葉と情熱には私も刺激を受けています。社長が案件を「やろう」と決めた時、社内も「やってみよう」という雰囲気になりやすいですね。最初は難しそうに感じても、やってみると成果が出て、結果的に利益が上がることも多いです。現場の若い社員たちのモチベーションを高めるために、ロケットの打ち上げを見に行く機会を設けるなど、社長のもとで新しいことに挑戦する機会が増えています。株式会社エステック
1971年4月 静岡県駿東郡長泉町竹原61-4に鈴木鉄工所を創業
1979年7月 同場所に(有)鈴木鉄工所を設置(資本金100万)
1989年9月 工場設備の拡大に伴い、長泉町本宿626に移転
1991年4月 資本金を300万円に増資
1993年12月 業務拡大に伴い、資本金を1000万円に増資。(株)エステックに社名変更
2002年5月 業務拡大に伴い、静岡県駿東郡清水町伏見385-2に自社工場を購入、移転
2015年8月 業務拡大に伴い、第2工場を設立
2018年9月 工場設備の拡大に伴い、清水町久米田181-1に移転
2018年10月 資本金を2600万円に増資
1979年7月 同場所に(有)鈴木鉄工所を設置(資本金100万)
1989年9月 工場設備の拡大に伴い、長泉町本宿626に移転
1991年4月 資本金を300万円に増資
1993年12月 業務拡大に伴い、資本金を1000万円に増資。(株)エステックに社名変更
2002年5月 業務拡大に伴い、静岡県駿東郡清水町伏見385-2に自社工場を購入、移転
2015年8月 業務拡大に伴い、第2工場を設立
2018年9月 工場設備の拡大に伴い、清水町久米田181-1に移転
2018年10月 資本金を2600万円に増資
創業年(設立年) | 1971年 |
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事業内容 | 航空機用スイベルジョイント設計製造 航空宇宙機器部品製造 半導体用ジョイント製造 油圧ジョイント製造 |
所在地 | 静岡県駿東郡清水町久米田181-1 |
資本金 | 2,600万円 |
従業員数 | 45名 |
会社URL |
監修企業からのコメント
この度は取材を受けていただきありがとうございました。株式会社エステックの社員様がこだわりを持って難削材加工に挑む姿に大変感銘を受けました。また、自分の仕事に誇りを持ち、常に成長を目指している様子も非常に印象的でした。今後、製造業界を牽引する存在になるであろう同社の未来が非常に楽しみです。
掲載企業からのコメント
取材を受けて、私たちが大切にしている「挑戦を恐れない」姿勢と「高い技術力」が、独自の強みであり、これからも磨きをかけていかなくてはいけないと改めて感じました。多くの方に弊社の魅力を知って頂けるきっかけになったら嬉しいです。ありがとうございました。