株式会社アクト 代表取締役 伊藤啓介
株式会社アクトは「電動工具のリサイクル専門ショップ」として国内最大級の規模を誇る企業だ。その根底にあるものは創業当時の自動車解体の事業から徹底しているリユースにおける再生寿命の長さだという。利用者の口コミで「アクトの製品は良質で長持ちする!」と定評ができ、埼玉県戸田市の1号店から東京、千葉、神奈川へエリアを広げ2020年には本社を東京へ移転。そして2021年には北陸エリアにも出店し15店舗になっている。今回は、2代目社長である伊藤啓介氏に、同社の歴史と挑戦、未来へのビジョン、そして人と組織の成長について強い思いを語っていただいた。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
人を大切にしてこその企業
創業者である伊藤社長の父親は生粋の技術者だった。勉強熱心で実際に車を直すのも、家を建てるのも、フォークリフトの修理もすべて自分一人でやってしまったという。当時の事業である自動車解体には風圧、水圧、エンジンなど機械の原理となるものが全てが詰まっていて、このノウハウが現在の工具修理の高い品質につながっている。しかし「とにかく技術・知識を持った人が偉い」という文化が色濃くあり、社員が増えていくにつれ、コミュニケーションがうまく取れず、伊藤社長の入社間もないころスタッフの半数が退職するという事態が起きた。この経験から理念経営の必要性を感じ、勉強と実践を繰り返しながら「社内の働く全てのスタッフとその家族に幸せ」という文化の土台をつくった。伊藤社長自身がその浸透にむけ、徹底的に社員とコミュニケーションを図り、それが教育・評価という組織づくりにつながっていっている。そしてスタッフが100名を超える今、同社の文化を体現し、後輩へ発信する社員も育ち、新しい段階に入っている。お客様に選ばれ続けるために
同社のお客様の多くはプロの職人だ。7~8割寿命を使い切った工具を店舗に売りに来て、中古の良品を買うという流れがある。この工具の再生品質が悪ければ当然クレームになる。一方で再生に時間をかけ過ぎると売価が決まっているため生産性が下がる。その見極めが個人の経験に頼る部分があるため、店舗のスタッフの熟練度によって利益差異が大きくなってしまう。同社の取り組みとして、メンテナンスセンターによる修理一元化や動画等を使った技術の教育体系を整備し、品質・生産性の標準化を進めている。さらに同社の強みとして、店長の裁量の大きさがある。現在ある15店舗のディスプレイや売り場づくりだけでなく、店売り・ネット売りの判断も店長に任せ、個別に販売戦略を立てている。こういった環境で目標に対して店舗が意欲を持ってチャレンジでき、お客様にとってはいろんな店舗に行く楽しみにつながっている。「店長への権限委譲はかなりしています。あまり個人の趣味が強いものは注意しますが(笑)」と明るく語った。未来像を共有するために
2030年までに国内で50店舗、そして海外の出店が中間ゴールだという。そしてそれは毎年社員に配布する経営計画書に実現に向けた数値計画、戦略、それを実践するスタッフの処遇や教育まで克明に示されている。さらにその根底にある理念とともに伊藤社長の思いを手書きで綴っている。この経営計画書を指針として毎朝社員が読み合わせ、会社の将来と自身のキャリアを重ねていくことで、スタッフ全員でビジョンを実現させることが同社の展望だ。伝統として受け継いだ超強力な職人技術をセンター機能として活かし、販売接客力を高めていきながら、国内のシェア拡大とともに、海外へもっと「日本のものはいい!」と感じてもらうことで、リユースの価値と感動を世界に発信し、その喜びを全スタッフと分かち合いたいと語り、伊藤社長のビジョンには常にスタッフの幸せな姿が浮かんでいる。
経営ビジョンを共有
(2019年まで)
2021年に初の北陸富山店誕生!
プロの職人が唸る修理技術
社員が自立自走し、成長し続ける組織へ
受け継いだもの、進化させたもの
CtoBtoCというビジネスモデルで「リサイクルのプロショップ」という技術や品質への強いこだわりは、創業からずっと守られていますね。父は技術者として優れていましたし、私ももともとリユースが好きで、学生の頃アルバイトで手伝ったときも面白くて仕方なかったです。PCやプログラミングが好きでその業界に最初就職しましたが、その世界にはその方面の天才がいて、これはかなわないな、と思いましたね(笑)。仕事は楽しかったですが、会社の上場直前で退職し、アクトに入社しました。組織づくりやQCの考え方、そして勉強会での学びなどは今の理念に取り入れています。自分の代になってからは何より、スタッフを大切にすることに重点を置きました。働く人が魅力を持てるように福利厚生や人事の制度導入などあまり計算せず全部やったイメージです。経営者として、いつから学び始めましたか
38歳のときです。はっきり覚えている理由は中学生の時に祖父が76歳で亡くなり、初めて人生というものを意識しました。そして自分がその祖父の人生の半分を超えたとき、とても焦ったんですね。ただ、何をすべきかわからずまず学ぼうと思いました。そのきっかけとなったものはセミナーと書籍です。それまでセミナーなど形のないものにお金を払うことが怖くて1年躊躇したのですが、参加したことで読書の大切さを知り、新卒の頃とても読めなかった7つの習慣やいわゆるビジネス書、原理本を手にとるようになりました。自分が悩んでいたことの答えが全部載っていたりすると楽しくて一気に読んでしまいます。昔の自分には想像できなかったので、やはり人にはそのタイミングがあるのだと思います。社員教育はどのような取り組みをされていますか
会社としてはなるべく教育機会を多く提供したいと思っています。店舗がいろんな地域にあるため外部研修や通信も利用していますが、リーダーたちに伝えている点は会社のロイヤリティを発信することですね。自分の経験では悩んでいるときに適切なアドバイスをもらうと成長速度が上がります。そういう意味で向かい風というのは必要で、リーダーは部下の悩みに対して解決策を一緒に考え、会社としてのあるべき姿を自分の言葉でいえるようになってほしいです。そういった機会をつくるため、今店長クラスとは毎月30人くらい面談をしています。昔のリーダーは対会社としての代表みたいな空気もありましたが、その点は全く変わることができたと思っています。これからのリーダーは理念の翻訳者であり、現場を正解に導く良きフォロワーとなってほしいですね。会社の未来創りを任せられる
次世代リーダー
株式会社アクト
草加店 店長 宝生和気
今回取材したのは、株式会社アクトの新卒採用1期生で、入社8年目になる、草加店店長の宝生氏だ。入社後最大規模の川口店(当時は総合リサイクル店)に配属され、様々な商品知識やお客様が楽しめる店づくりを学んだ。スタッフ一人ひとりの得意分野に合わせて役割を決めたり、目標を決めて工夫しながら達成するという実績を重ね、5年目を迎えるときには気づいたら店長になっていた。さらに店舗運営だけでなく、社内の人事制度設計の委員になるなど、会社の成長に合わせた組織づくりに大きく貢献している宝生氏。同社の次世代を築いていくキーマンから、アクトの魅力や将来について語っていただいた。伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
業務内容よりも働く仲間で決めた
大学ではアイデンティティ社会学を学び、就職活動にあたっては、社員間のコミュニケーションといった働く仲間を重点に選択したという。合同説明会で見た同社の写真や説明から、スタッフの明るい雰囲気が感じられ、「電動工具」という仕事より「アクト」という会社に興味を持ち入社した。選考の中で、会社の給料体系やキャリアのイメージを詳しく説明されたことが新鮮だった。「面接などで、会う方々の熱意や人柄に惹かれました」と入社の決め手を語り「私が選考のころ、ちょうど伊藤社長がサハラマラソンにチャレンジしていた時期で、実は初めて社長を見たのは入社式でした(笑)」という。つまりすでに社員がきちんと会社の魅力や方向性を伝えきる土台が出来上がっていたのだ。入社後社員スタッフには、店舗のアルバイトスタッフへの指示など様々な管理業務があるが、宝生氏は年上のスタッフとも丁寧かつきめ細かいコミュニケーションを図り、すぐに良い関係を築いた。こうしてどんどん今に至るまで宝生氏に任せる仕事の領域は広がっている。レベルアップが実感できる職場
アクトは直営店とFC店で現在15店舗あるが、各店のレイアウトやディスプレイといった店づくりは店長の裁量に委ねられている領域が広い。さらに各スタッフが担当の売り場を持ち、時には木材を切り出して、プロ顔負けの陳列棚を作ったり、商品選びの楽しさを演出している。そして主力商品となる電動工具の取り扱う種類は数百にのぼる。スタッフは段階的に商品知識や修理技術を身に付け、1~2年経つ頃には自分で買い取った工具を自分で直して、それが売れてお客様から満足の声をいただく、という経験をする。「宝生さん!この間のインパクト(釘打ち機)すごく調子いいよ。ありがとう」と言われた瞬間がこの仕事の醍醐味だ。そういった経験を他のスタッフと共有していくと、工具ごとの不具合の発見や効果的な修理方法のノウハウも身に付いていく。 さらに、同社にはそうした一人ひとりの頑張りが評価として半期ごとにわかりやすくフィードバックされることで、自分のレベルアップを実感できる点もやりがいになっているという。こうして自身の成長とともに現在は部下を育成する立場になった。この人みたいになりたい!と言われる存在
「会社の核となる部分を強化していきたい。若いスタッフが“こんな道もあるんだな”というものを切り拓いていきたい」と語る宝生氏。同社は経営計画書で組織の将来像を明確に数値や状態で示している。一方で社員に若い人が多く、現在は店長までの育成は道筋が見えているが、その先のエリアマネージャーや部長、本部長へのステップは見えにくいという。会社が示すキャリアステップではゴールを3つ掲げている。1つ目はマネジメントとして同社の経営に携わり、2つ目は技術のエキスパートとして品質を支え向上させること、そして3つ目は協力パートナーとして独立オーナーとなることだ。「自分はまだ店長ですが、将来どの道を選ぶにしても、まだ実際になった人がいないので、いつか自分がモデルとなって、若いスタッフが、どうすればなれるのかを明確にできるといいですよね。働く人が夢や希望を持って働けるようにしたいです!20年くらい先ですけどね(笑)」2030年同社が50店舗となるころ宝生氏がどんな立場で活躍しているかが楽しみだ。60,000点以上の
商品取り扱い実績を誇る
充実した技術講習
若手スタッフの道しるべとなるために
店長として店舗運営でこだわっていることはなんですか
外部研修や技術講習以外のスタッフ教育は、店長、副店長が行うことが多いのですが、各店舗独自性があり、販売の面では良いのですが教育としては、会社で統一した考えが必要だと思っています。異動があったときなど仕事のやり方や考え方が違ったりすると成長スピードも変わるので、よく他の店長や社長とアクトとしての正解をすり合わせる機会を持つようにしています。またスタッフとの面談には多くの時間を割いています。副店長がプレイングマネージャーとして現場を任せられるようになってきたので、数値管理や教育に力をいれられるようになりました。困っていることに対して、答えは持っていたとしてもなるべく一緒に考えるようにしています。ただ私はほめることが苦手なのでその点は反省ですね(笑)。会社の成長や進化が実感できるのはどんなときですか
自分が入社した時はまだ6店舗でしたが、今は15店になりました。「会社が大きくなったな」と実感したのは10店舗を超えたくらいですね。店長の上にエリア店長という役職ができ、複数店舗を管理するポジションが生まれ、毎月の店長会議でもいろんな議論がでるようになりました。経営計画発表会や入社式の規模や内容も進化したと思います。対外的にはCMを放送したり、ラジオ出演などもあり、お客様からの印象も変わってきてますね。それに伴って、お客様感謝祭のようなイベントも以前は駐車場を使って青空市を行うくらいでしたが、今はもっと趣向を凝らした大規模なイベントが組めます。残念ながらお店の営業の関係で長期の社員旅行などは難しいのですが、社内向けのイベントももっと充実させていきたいですね。新卒1期生から見て伊藤社長はどんな方ですか
伊藤社長は「働く人の幸せ」というのを大事にしていますが、それを言葉だけでなく、どうやって実現させるか、またそのために必要な数字を実際に達成してしまうところがすごいですね。その点はリスペクトしかありません。あとは強いリーダーというよりは教育者の印象があります。そして以前は各店長に対して「〇〇をしてほしい」などの具体的な指示でしたが今は「こんなマネジメントをしてほしい」という内容に変わってきています。実は私が入社してからずっとお世話になっていた上長が退職しました。店舗運営や数字面での管理ももちろんですが、メンタルの面でもスタッフを支えていた部分がありとても残念ですが、マネジメントという観点を考えれば会社のこういった世代交代を経て、今後は自分たちが担っていかなければいけないんだ!という意識を持つきっかけにもなりました。株式会社アクト
1975年 中古車販売・解体事業開始(伊藤解体)
1979年5月1日 本店を戸田市美女木に移転
1983年 中古家電販売事業開始
1988年 2号浦和店オープン
1991年1月22日 有限会社アクト 登記
1992年 中古 電動工具事業 開始
1999年2月 自社ホームページ公開
2000年9月 3号アクト川口店オープン
2006年3月 店頭在庫とネット在庫の連動システム構築
2006年6月 宅配買取サイトをオープン
2007年6月 株式会社アクトへ社名変更
2010年12月 4号アクト草加店 初の中古工具専門店としてオープン
2011年9月 工具売買の講習会をスタート
2012年3月 人事評価システム「人間力・成長曲線見える化プロジェクト」スタート
2013年2月 5号アクト町田店オープン
2013年10月 6号アクト鴻巣店オープン
2013年7月 代表取締役交代 新代表 伊藤啓介
2015年3月 リサイクル工具専門店の屋号を『アクトツール®』に変更、登録商標の登録完了
2015年3月 フランチャイズ1号店 7号アクトツール®久留米店オープン
2015年5月 8号アクトツール®川崎店オープン
2015年8月 9号アクトツール®岩槻店オープン
2016年5月 中小企業大学校東京校の診断調査店舗としてアクト川口店が選ばれ、第三者によるビジョンが描かれる
2016年6月 10号アクトツール®所沢店オープン
2016年8月 11号アクトツール®桶川店オープン
2017年10月 フランチャイズ2号店 12号アクトツール®博多店オープン
2018年12月 3号アクトツール®川口店 工具専門店としてリニューアル
2019年12月 13号アクトツール®東大和店オープン
2020年2月 本社を豊島区池袋へ移転
2020年6月 14号アクトツール®八潮店オープン
2021年4月 1号アクトツール®戸田店 店舗の建て替えによりリニューアルオープン
2021年7月 フランチャイズ3号店 15号アクトツール®富山店オープン
1979年5月1日 本店を戸田市美女木に移転
1983年 中古家電販売事業開始
1988年 2号浦和店オープン
1991年1月22日 有限会社アクト 登記
1992年 中古 電動工具事業 開始
1999年2月 自社ホームページ公開
2000年9月 3号アクト川口店オープン
2006年3月 店頭在庫とネット在庫の連動システム構築
2006年6月 宅配買取サイトをオープン
2007年6月 株式会社アクトへ社名変更
2010年12月 4号アクト草加店 初の中古工具専門店としてオープン
2011年9月 工具売買の講習会をスタート
2012年3月 人事評価システム「人間力・成長曲線見える化プロジェクト」スタート
2013年2月 5号アクト町田店オープン
2013年10月 6号アクト鴻巣店オープン
2013年7月 代表取締役交代 新代表 伊藤啓介
2015年3月 リサイクル工具専門店の屋号を『アクトツール®』に変更、登録商標の登録完了
2015年3月 フランチャイズ1号店 7号アクトツール®久留米店オープン
2015年5月 8号アクトツール®川崎店オープン
2015年8月 9号アクトツール®岩槻店オープン
2016年5月 中小企業大学校東京校の診断調査店舗としてアクト川口店が選ばれ、第三者によるビジョンが描かれる
2016年6月 10号アクトツール®所沢店オープン
2016年8月 11号アクトツール®桶川店オープン
2017年10月 フランチャイズ2号店 12号アクトツール®博多店オープン
2018年12月 3号アクトツール®川口店 工具専門店としてリニューアル
2019年12月 13号アクトツール®東大和店オープン
2020年2月 本社を豊島区池袋へ移転
2020年6月 14号アクトツール®八潮店オープン
2021年4月 1号アクトツール®戸田店 店舗の建て替えによりリニューアルオープン
2021年7月 フランチャイズ3号店 15号アクトツール®富山店オープン
創業年(設立年) | 1975年 |
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事業内容 | 工具専門リユースショップの運営 フランチャイズ経営指導 ECショップ運営 |
所在地 | 〒171-0014 東京都豊島区池袋2丁目40−12 西池袋第一生命ビルディング5階 電話:03-6914-3443 FAX:03-6914-3444 |
資本金 | 1,000万円 |
従業員数 | 101名 |
会社URL |
監修企業からのコメント
この度は取材をお受けいただき、誠にありがとうございました。取材の中で、伊藤社長がリサイクルのプロショップとしての誇りやこだわりを大切にしていることや、宝生様が新卒一期生として自ら道を切り拓いているということに大変感銘を受けました。貴社が伝統を大切にしながらも発展を続けていくことを心より願っております。
掲載企業からのコメント
弊社を取材していただき、誠にありがとうございました。取材の際に改めて過去を振り返ることができ、今まで乗り越えてきたことや大切にしてきたことに気付くことができました。アクトとして大切にしていることを未来につなげていくためにこれからも精進してまいります。