有限会社バーゼル洋菓子店 代表取締役 渡辺純
四季折々、様々な表情を見せる東京の名峰"高尾山"。そんな高尾山を有する八王子を中心に12店舗のケーキ屋、カフェを手掛けている会社がある。有限会社バーゼル洋菓子店である。同社の代表取締役を務める渡辺純は、今後のバーゼルを考えるうえで"長熟経営"という考え方を大事にしている。この考えの根源はオーストリアのウィーンにあるとある菓子店。150年後も同じ姿を維持するために取り組んでいることを目の当たりにし、目先の利益だけでなく、何十年、何百年後のお客様のことを考えることが大事だと考えるようになったのだ。そんな渡辺代表に同社の社風、独自性、これから目指す姿について詳しく話を伺った。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
長熟経営から生まれた、ほんわかとした社風
社風について「ほんわかしている、割とのんびりかな」と語った渡辺代表。その社風はお店の雰囲気にも見られる。売上数字を社員やアルバイトが課せられていないため、数字に追われることがなく、お客様へのサービス提供に努めることができるのである。それはバーゼルが新規出店したときのその店舗の目標達成は10年後であるということにも表れている。新規出店して、目標達成するのが10年後でいいというのは日本企業としてはかなり珍しいだろう。このような思考は渡辺代表の描く「長熟経営」に紐づく。「長熟経営」に至ったのは、オーストリア・ウィーンにあるお菓子屋との出会いがきっかけだ。このお菓子屋の本店の改装費は数十億にも及ぶが、実はこの改装費の返済期間は長く、数十年かけて返済するのだ。それはこのお菓子屋が100年以上も前から続く企業であり、銀行から信頼されていることに起因する。すなわち、長く続く会社はゆっくりと成長をしていくのだ。目先の利益だけにとらわれず、人を大切にし、成長していくバーゼルだからこそ、このほんわかとした社風が形成されているのである。何事にもチャレンジできる
何事にもチャレンジできること、これこそがバーゼルが成長を続けてきた要因の1つである。お客様に喜んでもらうため、店舗ごとに現場のスタッフがこの店舗をより良くするためにはと考え、挑戦を続けることができている。また、渡辺代表がやると決めたことに対しても店舗と連動し、素早く行動にうつせる組織力も強みだ。具体的には、スパークリングワインを無料で1杯提供するサービスを始めたこと。渡辺代表がやると決めた翌日にはそのサービスが始まっていたという。そのスピード感があるからこそ、現場のスタッフもフレキシブルに様々なことに挑戦できるのだ。挑戦の根源は、より良くすること。お客様やスタッフ、店舗のことを考え、今以上にお客様に来てもらえる、好きになってもらえるようにバーゼルは今日も挑戦を続けているのだ。"長熟経営"の実現
社風にも影響する"長熟経営"。この言葉はバーゼルの今後を語る上でも欠かせない。地域密着型の事業を展開している同社。何十年も何百年も地元に愛され、子供からお年寄りまで世代を超えて愛してもらえるような店舗を今後も目指しているのだ。これは、長年通い続けるヨーロッパの各地にある田舎町のお店から発想を得ているのだという。何十年もの間、地元で愛される人がいて、不格好でも愛されるパンがあるお店こそが長年人気であり続けるのだという。これを目の当たりにしてから、渡辺代表の考えが変わった。目先の利益にとらわれることなく、お客様のことを想い、事業を展開している。これからも目指していく姿は地域に密着して、何十年後も何百年後でも変わらず地元民のために洋菓子を提供し続けること。長い期間、数多くのお客様に愛され、その愛がバーゼルを熟す。まさに"長熟経営"だ。京王八王子駅前店の外観
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人生を変えた出来事とは
八王子の魅力を教えて下さい!
都会に比べて、人との繋がりを大事にしていますよね。八王子の中でも南部にあるニュータウンと呼ばれる場所と私たちがいる旧市街と呼ばれる場所があるんですね。イベントをニュータウンで行うと家族単位で行動することが多いです。しかし、旧市街でイベントを行うと、知らない人同士が「こっち来なよ!」とか「一緒に食べよう」などの発言が多く、一緒に何かをするっていう気持ちが非常に強いなと感じています。なので、新しいことを始めようとした時も都内だと決定するのに時間がかかるのですが、八王子だといつも即決ですね。数多くの人と協力しながら、色々なことができるのでこっちの方が楽しいですよね(笑)。人生のターニングポイントを教えて下さい!
以前、有楽町のデパ地下で店舗経営をしていたんですね。ある1人の店長から休みがないと言われたことがありまして、その時に各店舗ごと売上を伸ばせたら伸ばせた分だけ給料に上乗せする仕組みをつくったんですよ。だけど、ある日、アルバイトの女の子から「社長止めましょう、私はお客様の笑顔を見るのが目的で働いているんです。数字を伸ばすことが目的じゃありません」って言われたんですよ。その時ハッとしたんですよね。目標と目的を履き違えていたと感じました。そこからですね、数字もあまり見なくなりましたし、目先のことを意識するのではなく、お客様が喜ぶことをどんどんやっていこうと思うようになりました。これからどんな会社を目指していきたいですか?
女性スタッフが非常に多いので、縦串が通った組織では無く、横串が通った組織を目指していきたいですね。女性って得意じゃないですか、情報収集したり情報交換するのが。なので、その強みを生かして女性陣が経営を行うような状態を目指していきたいですね。ただ、課題はあります。スタッフを店舗単位で雇っているので、横串を通し辛いのが現状なので、その課題を改善するのがポイントになってくると思います。会社全体が盛り上がっている時は横の流れが良い時だと思うので、店舗の雰囲気を良くするという意味も込めて、横串が通った組織を目指し、会社を発展させていきたいと思います。お客様に愛される店舗を目指し
様々なことに挑戦する
有限会社バーゼル洋菓子店
BASEL Adviser 松本唯
アドバイザーとして、社長と現場の橋渡し、現場スタッフの育成を主な業務として、より良い店舗をつくるために挑戦を続けている松本氏。そんな、同氏は子供の頃からバーゼルで働くことを夢見ていた。取材中、子供の記憶を思い出しながら楽しそうに当時のことを話している姿が印象的だった。現在、子供の頃から好きなバーゼルを今以上に数多くのお客様に好きになってもらうため、店舗ごとの改革を行っている最中だ。店舗をより良くするために今までどのような挑戦を行ってきたのか。同氏が感じるバーゼルの魅力、そして今後、挑戦していきたいことについて詳しくお話を伺った。 伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
子供の頃からの憧れの店へ
子供の頃からバーゼルに憧れを抱き、働きたいと思っていた松本氏。同氏は幼い頃、お父さんの誕生日ケーキを買いにバーゼル洋菓子店の系列店に足を運んだ。様々な味を楽しみたいという同氏のわがままをお店は叶え、ホールケーキをワンカットずつ味を変えたオリジナルの誕生日ケーキをつくってくれた。バーゼルの温かさに触れた幼き頃の思い出を思い返しながら、楽しそうに当時のことを語った同氏。専門学校を卒業後、同業種の別会社で経験を積んだのちバーゼルへと入社。初めの業務は、店舗の接客。そこから、カフェへの営業などを経験し、今では、アドバイザーとして3店舗に入り込み、渡辺社長の想いを現場に浸透させる橋渡し的な役割、また、現場スタッフの育成を主な業務として活躍を続けている。子供の頃から好きで、この業界に入るきっかけとなったバーゼルを今後もより多くの人に好きになってもらえる店舗にすべく、同氏は挑戦を続けているのだ。お客様が笑顔で来てくれて、笑顔で帰ること
"お客様が喜んでくれること"がやりがいだと語る松本氏。日々の大変なこと、辛いこと、これを忘れさせてくれるのがお客様の笑顔だという。常連のお客様が店舗に足を運んでいただき、友達のように笑顔で手を振ってくれる。そういったお客様が笑顔で店舗に足を運んでもらって、笑顔で店舗を後にしてくれる。そんな微笑ましい光景こそが同氏のやりがいに繋がっているのだ。また、お客様に好かれる店舗を目指すため、渡辺社長が決めた11ヵ条の浸透にも力を入れている。現在、その項目に対して現場のスタッフが自ら気付いて行動できる状態を目指している。そして、現場のスタッフが何も言われなくても率先して行動している姿を見た時に嬉しさを感じるのだ。"お客様が喜んでくれること"そのやりがいこそが、さらに喜んでもらえる店舗を目指すための接客や教育の源泉となっているのだ。永続する会社のために挑戦を続ける
「バーゼルのことが好き、だからこそ、この会社を永続させていきたい」松本氏は今後の夢についてこう語った。会社の永続、そのためには会社を発展させていくことは必要不可欠である。同氏は、よりお客様が愛してくれるバーゼルを目指すため、日々、挑戦を続けているのだ。具体的に取り組んでいる項目としては、ワインの飲み放題。他店舗からソムリエの方が異動してきたことを機に、更にこの挑戦が現実味を帯び、スタートに向けて着々と準備を進めている。お客様に喜んでいただくために、本気でお客様のことを考えて挑戦をしている。挑戦することに対して同氏は、「社長からは失敗しても良い、どんどん新しいことに挑戦しなさいと言われているのでその言葉に甘えています」と笑みをこぼしながら話した。お客様の笑顔をつくるため、そしてバーゼルを永続的に発展させていくために挑戦を続ける同氏の姿が目に浮かぶ。新商品のサンドイッチ
色とりどりの洋菓子
"チャレンジできる会社"バーゼルの魅力を語る
バーゼルの魅力を教えて下さい!
店舗ごとに味だったり色があることです。ここの店舗だと、シャンデリアとかも飾ってあってムーディーな感じですけど、他の店舗だったら可愛らしいところもあるなど、店舗ごとによって色が違うところが面白いなと思います。各店舗ごとの色を決めるのは店長やアドバイザーの仕事です。店舗のコンセプトからメニュー、そして店舗のレイアウトまで現場の社員も巻き込みながら各店舗の色を決めていきます。なので、現場スタッフの裁量は非常に大きいです。その分、責任感は感じますが、その重圧以上に楽しく様々なことにチャレンジできる会社だと思います。様々なことにチャレンジできるからこそ各店舗ごとに色の変化が生まれ、より一層仕事をする楽しさが生まれていると思います。松本さんがチャレンジしたことを教えて下さい!
どんな店舗にしたいかというコンセプト設計からメニューの考案まで携わったことです。楽しい経験をさせてもらいましたけど、売上を上げなければいけないという責任感から、少しだけ怖かったですね(笑)。メニューの考案は、1ヵ月半で販売まで行いました。私がメニューの考案をして、メニュー表をシェフの人がつくってくれて、現場のスタッフが実物をつくり、データでも出してもらって、あと副社長にも関わってもらいました。なので5人がかりで取り組んでいました。でも、販売してからの方が大変でした(笑)。金額だったり、器にもこだわりがあったので、洗わないとすぐ無くなってしまったり、器が壊れてしまったりとか、トラブルがありながらもその都度ごとに対応しながら進めていました。本当に、何もかも1から考えることができた非常に楽しかった思い出ですね。店舗にはどんな人が多いですか?
最近は、八王子の店舗にいることが多いので、この店舗の話になってしまいますが、モチベーションが高くて、責任を持って働く人が多いですね。本当にこの店舗のことが好きで、良くしていこうという気持ちを持って行動してくれているんです。「今、オーダー大丈夫?」とか「明日入れるよ!」とか、休みのスタッフが店舗に言いに来たり、スタッフ同士が自ら率先して行動するので、本当にすごいなと思います。そのような姿を見ると刺激を受けますし、私自身も店舗をより良くしていこうと改めて感じることができるので、スタッフの子には本当に感謝しています。有限会社バーゼル洋菓子店
1969年 創業/1号店を京王八王子にオープン
1971年 有限会社バーゼル洋菓子店の設立
2018年 Brasserie BASEL(京王八王子駅前)リニューアルオープン
2020年 HILLSIDE CAFÉ BASEL(八王子みなみ野)オープン
2020年 デリバリーサービス開始
1971年 有限会社バーゼル洋菓子店の設立
2018年 Brasserie BASEL(京王八王子駅前)リニューアルオープン
2020年 HILLSIDE CAFÉ BASEL(八王子みなみ野)オープン
2020年 デリバリーサービス開始
創業年(設立年) | 1969年 |
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事業内容 | 生菓子製造業 菓子小売業 |
所在地 | 東京都八王子市高倉町64-7 |
資本金 | 500万円 |
従業員数 | 40名 |
会社URL |
監修企業からのコメント
この度は、取材をお受けいただき誠にありがとうございました。
取材を通して、バーゼル様のお客様愛を非常に感じました。お客様のことを考え、あらゆるサービスに挑戦してきた御姿に感銘を受けました。今後はどのようなことに挑戦していかれるのか、目が離せません!
掲載企業からのコメント
本日は弊社を取り上げていただきありがとうございました。
弊社の魅力、そして八王子の魅力が少しでも多くの人に伝われば幸いです。
今後もお客様のために、八王子のために様々なことに挑戦していきますので、バーゼルの活動に期待していただければと思います。