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大和ツキ板産業株式会社

大和ツキ板産業株式会社 代表取締役 三好美寛

大和ツキ板産業株式会社は、天然木を0.2ミリの厚さにスライスした「ツキ板」を各種素材に貼り付けた天然木化粧合板の製造・販売を手がけている。創業者はその可能性に魅せられ、公務員から転身して同社を立ち上げた、現社長・三好美寛氏の父親だ。異色の経歴をもつ父の背中を見て育った三好氏は、大学卒業後に一度は食品製造会社へ就職するも、同社の人手不足をきっかけに入社。以降10年間にわたり営業と製造を兼任しながら会社を支えてきた。その後、父の急逝により急遽代表に就任し、事業の舵取りを担うこととなる。現在は、自社ブランド「FORESTERIOR」や、金属箔とツキ板を融合させた特許製品「INGOT」など、ツキ板の新たな可能性を切り拓く製品を展開している。今回は、そんな同社の独自性と、未来への展望について話を伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

真面目に、真摯に向き合う

同社は、「真面目な会社」という言葉が自然と馴染む社風を持っている。社員一人ひとりが「お客様に喜んでいただくこと」を第一に考え、困りごとにも真摯に向き合う姿勢が自然と共有されている。やったことがないからできない、面倒だからやらない、といった発想はなく、「どうすればできるか」を前向きに考えることが当たり前の文化だ。同社の経営理念は「顧客満足と皆の幸せ」。これは「お客様に喜んでもらうことで、私たち自身の幸せが実現する」という考え方に基づいており、社内では繰り返し語られている。顧客満足をないがしろにして、自分たちの幸せは成り立たない。その信念が社員の行動の軸になっている。社長が事業の厳しい時期にバトンを受け取った際も、少人数の社員が共に支え、会社を立て直した。社員は日々勉強を重ねながら自発的に動き、成果を自分たちの喜びとして分かち合う。驕ることなく謙虚に、お客様に向き合い続ける。それが、大和ツキ板産業らしさである。

他社がやりたがらない領域への挑戦

同社の独自性は、まず「最後まで責任を持ってやりきる姿勢」にある。ツキ板は天然素材ゆえに個体差があり、クレームが発生しやすい製品でもある。しかし同社ではクレームが発生したからといって対応を打ち切るのでは、お客様を困らせるだけ、そんな考えのもと、同社では最後まで責任を持って対応する姿勢を大切にしている。そんな「当たり前のことを、誠実にやりきること」が同社の強みである。また、外注が一般的な塗装工程を自社で内製化。色の違いによるトラブルが多い中でも、自社で完結することで柔軟かつ責任ある対応が可能となり、顧客との信頼関係を強化している。加えて、物件ごとに異なる仕様管理にも高い対応力を発揮し、ニーズに合わせた柔軟な製品づくりを実現。さらには、レーザー加工による金属と木の融合など、デザイン面でも独自性を追求。特許製品「INGOT」をはじめ、ツキ板の新たな可能性を切り拓く製品開発にも取り組んでおり、技術力と創造性の両面で業界に新しい価値を提供している。

ツキ板業界の未来を見据えて

同社はツキ板業界全体の活性化を目指し、ツキ板プラットフォームの構築に取り組んでいる。ツキ板の製造工程では、用途が限られたり形が不揃いで使いにくい端材や未利用材がどうしても生まれてしまう。そういった木材に新たな価値を見出すために立ち上げたのが、自社ブランド「FORESTERIOR」だ。製造過程で生まれた木材を、デザインと掛け合わせて商品化することで、これまで見過ごされていた端材や未利用材の可能性を引き出している。展示会などでも注目を集めており、実際に問い合わせも増加している。この動きは単なる商品展開にとどまらず、「業界に埋もれていた素材に新たな価値を与える」という挑戦でもある。「FORESTERIOR」 は、SDGsやアップサイクルといった時代の関心と親和性が高く、これをきっかけにツキ板の魅力に触れる人も増えている。こうした動きが業界全体の需要拡大や循環に繋がっていくことを目指している。
広島県福山市に本社を構える
天然木を薄くスライスしたツキ板
破材を活用した自社ブランド「FORESTERIOR」

社員が笑顔で働ける会社に

三好社長が大切にしている想いは何ですか?

「みんなが笑顔で働ける会社にしたい」。これは、私がずっと大切にしてきた想いです。誰かが不満を抱えたままでは、心から幸せに働くことはできません。だからこそ、社員に対して公平であることを常に意識しています。そのために、年に2回、賞与のタイミングに全社員との面談を行っています。一般社員には10分、役職者には30分ほど時間を取り、困っていることや気になることがないかを丁寧に聞くようにしています。例えば「現場が暑い」といった声があがった際には、空調服を導入しました。すぐに改善できない課題もありますが、少しでも快適に働けるよう、工夫は惜しみません。公平さを心がけ、誰一人取り残さないようにすること。それが、経営者としての私の責任だと思っています。

現在、どのようなことに力をいれていますか?

現在力を入れているのは「意図をくみ取る力」を養う取り組みです。お客様の要望やその背景を正しく理解し、製品やサービスに反映させるためには、相手の真意を感じ取る力が欠かせません。そのため、役職者向けには「理念と経営」という冊子を用いた勉強会を行っています。記事を読み、設問に対する考えを発表し合うことで、価値観や考え方を共有する場としています。さらに全社員を対象とした朝礼では、毎日異なるテーマについて意見を述べ、他の社員がそれを要約し感想を述べるスタイルを導入しています。こうした活動を日常的に重ねることで、意図を読み解く力はもちろん、自然と前向きな言葉が社内に広がり、雰囲気も明るくなりました。「できない」とは言わず、「どうすればできるか」を共に考える。そんな“可能思考”の姿勢を根づかせることこそが、私の目指す組織づくりです。

三好社長が大切にしている考え方は何ですか?

はじめから「できない」と言わないことです。まずは一度考えてみる。その姿勢こそが、お客様から「まずは相談してみよう」と思っていただける信頼にも繋がるのではないかと思います。もう一つ大切にしているのは、「みんなが幸せであること」です。自分が儲かって贅沢ができていたとしても、社員が辛そうな顔をしているのであれば、私にとってこれほど辛いことはありません。私は性格上、社員の様子が普段と違っていることにもよく気づきます。だからこそ、社員が笑顔でいてくれることが、私にとって何よりの喜びです。そのためにも、何かを一方的に押しつけるのではなく、社員一人ひとりが自ら前向きに働けるような環境づくりを心がけています。

営業の枠を超えてものづくりをリードするプロデューサー

大和ツキ板産業株式会社 営業部営業課 次長 山影一博

大和ツキ板産業の営業として活躍する山影氏は、「売る」だけにとどまらず、お客様と会社の間に立ち、より良い製品づくりをリードするプロデューサー的存在である。主な業務は、東京エリアを中心とした出張営業、顧客折衝・見積もりやサンプル手配といった提案業務、そして社内の製造部門との調整だ。加えて、後輩や営業事務の育成・マネジメントなど、人材面での役割も担っている。顧客の要望に応えながら現場と調整を重ね、最適解を導き出す姿勢には、営業という枠を超えた責任感と熱意がにじむ。「天然素材は難しい」と語る山影氏だが、その複雑さに真正面から向き合い、製品が顧客のもとに届くまでを見届けている。今回は、そんな山影氏にお話を伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

人生の節目で出会った会社

山影次長が大和ツキ板産業と出会ったのは、第一子の誕生を控えた頃だった。家族を守るためにも、「しっかりと、ずっと長く働ける会社がいい」という思いが強まり、転職を決意する。そんな中で出会ったのが、同社だった。面接では、三好社長から「君は仕事に何を求めているのか?」と問われ、「お金です」と率直に答えた。加えて、「家族を幸せにしたい」そして「今の自分に一番足りないのはお金だ」という正直な気持ちも伝えた。すると社長は、「もちろんお金も大事だけれど、弊社は真面目に仕事をする人をきちんと評価したい。しっかりやる人には、しっかり応えたいと思っている」と語ってくれたという。その真摯な姿勢に強く惹かれ「この社長のもとで働きたい」という思いで入社を決意した。今は、この言葉通り真摯に向き合ってくれる社長をはじめ、上司、部下と共に充実した日々を送っている。

自社の製品が一つの作品となる

山影次長がやりがいを感じる時は、大きく二つある。一つは、自社で製造した製品が、空間を彩る重要なアイテムとして完成した姿を目にした時だ。工場ではただの平面だった製品が、現場では壁や天井、家具などへと形を変え、一つの空間という作品をつくり上げている。その場面に立ち会えた時、言葉にできないほどの感動が湧き上がるという。製造の過程では、顧客の要望に対して想定通りにいかないことも多い。そんな時は、製造現場と何度も話し合いながら、最善を模索していく。だからこそ完成した姿を見ると、そこに至るまでのやり取りや工夫も思い出され、達成感はひとしおだ。もう一つは、部下の成長を間近で感じられた時だ。あえて少し難しい仕事を任せた若手社員が、想定を超える対応力を見せ、しっかりと成果を出してくれたことがあった。その姿には、自分のこと以上の喜びを感じた。かつて自分も、上司や社長に育ててもらった経験がある。だからこそ今は、部下の成長を支えることに大きなやりがいを見出している。

自社の技術を海外へ

山影次長が描く将来の夢は、海外進出の実現である。これまで国内で培ってきた技術や品質、そして独自の価値は、海外でも十分に通用すると確信しているからだ。特に、天然木を扱う自社製品は、世界の建築空間においても高い評価を得られる可能性があると語る。現在は、2030年まで続くとされる国内のホテル建築ラッシュや、大阪・夢洲で進められているIR事業への対応が最優先となっており、海外展開に向けた具体的な動きはまだないが、社内では新たな可能性として自社ブランド「FORESTERIOR」が立ち上がり、すでに多くの反響が寄せられている。山影次長自身も、将来的には商品開発などにも関わりながら、海外営業の道を切り拓いていきたいという強い意志を持っている。国内の需要を着実にこなす一方で、その先にあるグローバルな展開を見据える姿勢には、営業職としての誇りと、会社への深い信頼がにじむ。世界の舞台で活躍する日を夢見ながら、今はその足場を着実に固めている。
特許を取得した金属箔とツキ板を組み合わせた「INGOT」
勉強会では技術だけでなくお客様の意図をくみ取る「感性」も磨く
真面目さと誠実さ、そして愛がある会社

一人ひとりが成長できる会社づくり

仕事をする上で心がけていることは何ですか?

製造とお客様との間に立ち、良好なコミュニケーションを築くことです。天然木という「一点もの」を素材として扱う弊社では、製造側のこだわりと、営業がお客様から求められる要望がぶつかることも少なくありません。だからこそ、日頃から製造の仲間と信頼関係を築いておくことが大切だと考えています。社長や上司から、「営業の責任がゼロになることはない」「営業はどの工程にも関わっていく必要があるんだよ」というお話を受けたことがあります。私自身も経験を重ねる中で、製造現場の苦労を理解した上で営業活動を行うことが、品質の高いものづくりに繋がると実感しています。そして何より、日々の声かけや意見交換といった小さなコミュニケーションの積み重ねこそが、信頼と成果を生むのだと思っています。

会社の更なる進化に必要なことは何ですか?

社員一人ひとりの生産性の向上が、会社が進化するために欠かせない要素だと思っています。そのためには、社員全員が向上心を持って働ける環境を整えることが不可欠です。特に製造現場では、木に対する日本人ならではの特別な感覚や価値観が、仕事になるとつい意識されなくなりがちです。だからこそ「お客様の笑顔や反応を還元する」ことを大切にしています。自分たちの製品が、お客様にとってどのような役割を担い、どのような価値を提供し、喜んでいただいているのかを伝えることで、自分たちの製品に誇りをもち、価値の再確認に繋がり、向上心を持って取り組めるようになると思います。そうなれば自然と生産性も高まり、人材も育っていくと信じています。私は、そうした好循環を生む会社の土台づくりに、これからも全力で取り組んでいきたいと思っています。

三好社長はどんな人ですか?

三好社長は、誰よりも会社と社員、そして製品に深い愛情を持っている人だと感じています。その厳しさの裏側にある温かさこそが、社員を育てる力になっているのだと思います。私自身は、可愛がっていただく中で、その想いに触れる機会が多くありました。ただ、その愛情にすぐ気づける人ばかりではありません。だからこそ今は、自分がその“愛の在りか”を伝える役割を担っていると考えています。
社長があえて言葉にしない想いや、厳しさの本当の意味を、現場の後輩たちにきちんと伝えていくこと。それが、自分の責務でもあると思っています。こうした想いの連鎖こそが、会社全体に温かさと成長をもたらしていくのではないでしょうか。私は、この愛のある会社で働けていることに、心から誇りを感じています。

監修企業からのコメント

今回の取材を通じて特に印象に残ったのは、社員一人ひとりが主体的に学び合い、前向きな姿勢を培っている点です。勉強会や朝礼といった日々の取り組みが、組織全体の雰囲気を明るくし、挑戦を後押しする文化へとつながっていることを強く感じました。さらに、三好社長が社員に深い愛情をもって接しておられる姿勢にも心を打たれました。今後のさらなるご発展を心より楽しみにしております。

掲載企業からのコメント

この度は、ご取材いただきありがとうございます。私たちが大切にしている社員同士が互いに学び合い、前向きに挑戦できる風土は、社内の雰囲気を変える大きな力となっています。「できない」ではなく「どうすればできるか」を皆で考える姿勢を軸に、これからも可能思考の組織づくりをさらに進めていきたいと思います。

大和ツキ板産業株式会社
1967年 三好健夫が個人企業として家具用化粧合板の製造を行う
1975年 会社設立 現第一工場新築
1978年 「ダイワ不燃銘木石綿」不燃材料として認可取得
1980年 室内内装各種化粧合板の製造及び造作に専念
1994年 第二工場増設
1995年 三好美寛が社長に就任
1996年 営業エリアを東京に拡大
1998年 塗装部門設立
1999年 「ダイワ不燃銘木Dライト」不燃材料として認可取得
2002年 初の大型物件を手掛ける(六本木ヒルズ)
2004年 全天連業界認定取得(F☆☆☆☆関連)
       東京事務所開設
2007年 NC工作機導入
       「ダイワ不燃銘木DL」不燃材料として認可取得
2011年 第三工場取得
2014年 「スマートデスクトップ」実用新案取得
2017年 創業50周年を迎える
2018年 第四工場・事務所増築
       大型レーザー加工機導入
2023年 「INGOT」 装飾材の製造方法として特許取得
2024年 オリジナルブランド 「FORESTERIOR」を発表
創業年(設立年) 1967年
事業内容 天然銘木化粧合板
不燃化粧合板の製造・販売
所在地 広島県福山市御幸町中津原1790-1
資本金 1,000万円
従業員数 74名
会社URL

大和ツキ板産業株式会社