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トーニチ株式会社

トーニチ株式会社 代表取締役社長 岸秀樹 

1962年に冷凍倉庫業として創業したトーニチ株式会社。創業者は、缶詰会社での経験を基に、食品保存の未来は冷凍技術にあると確信し、この事業を開始した。その後、日本の経済成長に伴い、福島に中央卸売市場が開設されることになり、卸業に転換。さらに、製造業にも進出した。冷凍野菜や冷凍食品の製造を経て、デザート製造へとシフトした同社は現在、アレルギーがあるお子様でも食べられる学校給食のデザートや、高齢者でも食べやすい介護食などニッチな業界に照準を絞り、業績を伸ばしている。今回は、そんな岸社長に会社の歴史や今後の展望を伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

真面目な社風だからこそ、目的を明確に

トーニチ株式会社の社風は、真面目な社員が多いことが特徴である。この真面目さを活かし、社員のモチベーションを高めるために様々な施策を実施している。例えば、全社員が改善提案を提出し、毎月の優秀者を表彰する制度がある。さらに、年に一度の成果報告会では年間最優秀者が選出され、賞金が授与される。また、社員の家族にも社員の活躍を知ってもらうために、5年前から社内報を発行している。社員やその家族に最近の出来事や活躍する社員を紹介することを目的としている。これにより、社員は自身の努力や成果を家族に見せる機会を得られ、誇りを持って働くことができるのだろう。
また、岸社長はそれぞれの役割を明確にし、常に目的意識を持って社員に働いてもらうことを意識している。製造部門が利益を生み、営業部門は新たなビジネスチャンスを会社に持ち込む役割を担っている。こうした役割の明確化も、真面目な社風だからこその同社の特徴である。このような取り組みが、トーニチの持続可能な発展と社員の幸福に繋がっている。

ニッチな業界のニーズに応え続ける

同社の独自性は、ニッチな市場に的を絞ったビジネスアプローチにある。大手食品メーカーが主流とする市場では、1年で100億円を売り上げる商品開発が求められるが、同社は1年で1億円を売り上げる商品でも大きな利益を見込む、中小企業ならではの事業構造を持っている。アレルギーのある子供たちやその家族向けの安全なデザート製品など、ニッチながらも確実な需要が存在する市場へのアプローチにより、同社は競争の激しい食品業界で差別化を図り、成功を収めている。岸社長は、このような収益構造によって「売上」を上げる仕組みが確立されたからこそ、「売り方」を求めると述べる。例えば、自社のオンラインショップの開設や、道の駅での販売がその具体例である。営業担当が外に出て顧客のニーズを把握し、開発部門がそれを形にし、製造部門が安全な商品をつくる。これにより、市場規模が小さくとも高付加価値な製品を提供することが企業成長につながっている。

次世代のために儲けられる環境と人材を

今後の展望として、「21世紀を担う人々の未来に夢と希望を与えられる企業」を基本方針として掲げている同社。その実現のため、社員が考える力を養う小規模チームによるプロジェクト活動を推進し、部門を横断した連携を強化している。これにより、次世代のリーダーを育成し、将来の企業成長を支える基盤を築いている。
また、2034年を目標に工場の生産能力を45億円に拡大する計画を進めている。先輩たちが築いた30億円規模の工場をさらに発展させ、次の世代が成長できるようにするための取り組みである。段階的な生産拡大により、過去の経験を踏まえた現実的な成長戦略を描いている。
さらに社員のモチベーションを高めるため、東日本大震災を契機に賞与制度を9月と3月に変更し、業績に連動させている。賞与月を決算に合わせることで、計画以上の成果を上げた場合に適切な報酬を還元し、社員の働きがいを向上させている。
これらの取り組みにより、同社は持続可能な発展と社員の幸福を両立し、未来に向けて確固たる基盤を築いている。
このように、同社は環境と人材づくりに力を入れているのだ。
アレルギーをお持ちのお子様でも
食べられるデザート
健康的でおいしい商品を生み出す製造現場
社内のエンゲージメント向上に向けた
PJT活動

苦しい時代を経験したからこそ、これからの社員に希望を持ってもらいたい

岸社長が経営する上で大切にしている考え方は何ですか?

私たちの先輩が築き上げてきたものがあって、私はそのおかげで仕事ができるようになりました。いろんなことを教わったし、時には叱られもしました。だからこそ、先輩たちへの恩を感じています。その恩を次世代に同じように伝えていくことが大切なんです。これが組織で一番必要なことだと思っています。
経営って、人生と同じだと思うんです。私が考える仕事は大きく二つに分けられます。一つは『生まれてから成人するまで育てる仕事』。家庭や学校、育児、私たちが手がけている学校給食もこの一部だと思います。そしてもう一つは『その子供たちが社会人になった時に生活できる環境をつくる仕事』です。会社も同じで、20代をどう育てるか、40代になった時に人をどう育てるかという環境をつくっておくことが重要です。

人材育成はどのように行っていますか?

当社の人材育成は、若手や中堅層に特に力を入れています。例えば、大手メーカーにお願いして数ヶ月間の勉強機会を設けています。他社の工場見学は視野を広げる貴重な経験です。また、エネルギー効率化を目指す「3Eプロジェクト」や最新のRPA技術を学ぶプロジェクトを展開し、GoogleのAppSheetやExcelなど幅広いスキルも習得しています。さらに、従業員満足度向上の「ESプロジェクト」では、スポーツ大会や食事会を通じてチームビルディングを図っています。全社員が何かしらのプロジェクトに参加し、協力し合いながら学び続ける環境を整えています。

御社の商品の魅力を教えてください。

当社の商品は、健康的でありながらおいしさにも自信があります。特に介護食やアレルギー対応食品といった、食べられるものが限られる人々に向けた商品を多く扱っています。健康的な食品は多く存在しますが、私たちは食品メーカーとして「おいしい」と言っていただけることに強いこだわりを持っています。食べることは楽しみであるべきで、おいしくないものは食べたくないのが本音です。当社はその思いを大切にし、健康に配慮しながらも味に妥協しない商品を開発し、世に送り出しています。これからも「健康的でおいしい」という価値を提供し続けることを目指しています。

監修企業からのコメント

この度は取材をお受けいただき、誠にありがとうございます。
苦しいこと時期を経験したからこそ、それぞれの役割を明確にして成果を出されているところに感銘を受けました。
また、社内のエンゲージメント向上のために、PJTやイベントなど様々な取り組みをされており、未来へ向かって進まれている印象を受けました。
今後も同社の発展に注目してまいります。

掲載企業からのコメント

この度は弊社の取材をしていただきありがとうございました。
私は、2003年に弊社へ入社し、当時は経営的にとても苦しい状況でした。
ただ、先人たちが今の工場をつくってくださったからこそ、今があると思っております。これからも食品を通じて、お客様の声に耳を傾け、「おいしい」にこだわった商品を皆様にお届けしてまいります。

トーニチ株式会社
1962年
東日本冷蔵株式会社設立(冷蔵倉庫業として創業)
1970年
冷凍食品工場建設 冷凍野菜生産開始
冷凍食品販売開始 宅配業務、食材及び器材販売、病院給食食材販売
1971年
東日本冷蔵ブランド調理品生産開始
日本冷凍食品協会加入確認工場となる
赤城乳業(株)氷菓製品の生産を開始
福島市を中心とした学校給食、病院給食へ食材販売開始
1973年
ゼリー・プリン生産販売開始
1975年
冷凍野菜スーパーマーケット販売開始
1976年
排水公害処理施設完成
1981年
アップルシャーベット販売開始
1983年
東北各県学校給食会取引開始
自動充填シール機新設、OEM生産開始以後拡大
1986年
関東各県学校給食会取引開始
1988年
関西・中四国・九州地区商品展開
1989年
関連会社福島低温物流協同組合設立
1990年
トンネルフリーザー完成
1991年
ピロー包装機新設
1992年
自動充填シール機新設
1994年
パウチ充填機設置
1999年
福島市瀬上町に新工場竣工
東日本冷蔵(株)の商号を変更し、トーニチ株式会社に変更
2002年
市販用(生協関係)商品展開厚生労働大臣表彰
2003年
コージェネレーション設備完成
ゼリー2列4列充填機設置
2005年
アイスライン冷却プレート増設
2007年
X線装置導入
2008年
二層ライン冷却装置 搬送ライン増設
2010年
ゼリー新充填機導入
2013年
ムース生産設備導入
2014年
太陽光パネル設置(最大50kwh売電開始)
2016年
建屋増築 焼成設備導入
2017年
ゼリー新充填機導入
オンラインショップ開始
2018年
焼成設備増設
2019年
ゼリー仕込ライン増設
創業年(設立年) 1962年8月
事業内容 食品の製造販売
所在地 福島市瀬上町字新田中通1-3
資本金 3,600万円
従業員数 役員7名、社員96名(契約社員含む)
会社URL

トーニチ株式会社