株式会社シロキホールディングス 専務取締役 砂川弘
今回ご紹介するシロキグループは、1922年に創業。祖業である紙製品の卸売り業の「株式会社シロキ」、建築・道路用遮熱塗料の製造から施工を一貫して行う、業界唯一のビジネスモデルを持つ「シロキコーポレーション株式会社」、そして、グループの統括を行っている「株式会社シロキホールディングス」から成り立っている。紙の卸売り業界では珍しく、大手資本が親会社として存在しない独立系として発展し、社会・環境への貢献を追い求め、新規事業にも積極的に取り組んできた。それぞれの事業において、より迅速で柔軟な経営を実現することを目的とし、2017年に分社化し、ホールディングス化を図った。そんな同社で専務を務めるのが、2010年2月に入社した砂川専務である。入社後は人材育成・教育に力を入れ、キャリア採用を開始するなど、多くの改革を行ってきた。シロキグループの成長を、先頭に立って牽引する砂川専務に、同社の強みや今後の展望について伺った。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
グループ全体の調和を大切にし、伝統を守っていく
100年続く伝統を持ち、シロキグループの調和を大切にしながら経営を行っている点が同社の社風に繋がっている。当初は紙製品の卸売り業を中心に事業展開していた同社だが、今では更なる社会貢献のために、多くの事業を展開している。また、新規事業を展開していく中で、積極的にキャリア採用を行っている同社。新規事業分野のスタッフは、大半が中途社員で構成されているようだ。グループが拡大すればするほど、個々が力を持ち、独立していく傾向がある。だからこそ、グループ全体の繋がりが希薄にならないように、月に一回グループ全体での‟グループ連携イノベーション会議”を行い、調和を図っている。また、調和を保てる要因として、オーナーの調和も挙げられる。シロキホールディングスの土台を支える白木家の方々は、常に社員と会社を優先した判断を行っているのだ。これからも同社では、調和を大切にしながら、200年、300年と企業を発展させていくのだろう。独立系の強みを活かした、自由な事業展開
紙製品の代理店を長きにわたって取り組んできた同社。そんな同社は、代理店であるが、‟独立系”であるがゆえに、自由な事業展開ができる。それこそが何よりの同社の強みであり、独自性である。当初紙以外の新しい事業に取り組むというのは、他の代理店では考えられないことだったが、同社ではその自由度の高さを活かして、積極的な事業展開を行っている。もちろん、順調にいった事業ばかりではない。今ではヒット商品となった遮熱塗料の「ミラク―ル」を扱う環境ソリューション事業だが、事業発足当時には6年ほどの赤字期間があったとのこと。しかし、本業である紙業が安定していたからこそ、長い目で見て事業を育て、今では塗料業界誌で総合評価一位を獲得するほどの大人気商品となった。独立系で、「新しいものをどんどんやっていこう!」という土壌がありながら、始めたものについては、しっかり育てていく。堅実でもありながら、独立系として自由で大胆なチャレンジを行っていく同社の事業展開に今後も注目していきたい。社会貢献に、更に力を入れていく
100年続いたシロキグループの伝統を守りつつ、新規事業を積極的に展開していきたい。砂川専務は今後の展望について、このように語ってくれた。グループの中核を担ってきた紙製品の卸売り業だったが、2000年から3割程度、紙の内需要は減少している。そこで社会貢献に舵を切り、新たな事業を創出してきた。紙業でも新規事業に取り組んだり、M&Aに取り組んでみたり、新たな分野に挑戦してみたり…。シロキグループが今まで構築してきた販路を活用して、様々な事業展開を行っている。実際に今取り組んでいる事業は「秋田県でのさつま芋ビジネス」や「千葉のベンチャー企業と協業で始めたアルカリ電解水の販売事業」など、紙業からは想像できないような事業だ。今後も更なる社会・環境への貢献を目指し、経営陣で一丸となって新規事業の構築に奮闘している。伝統を守りながらも、シロキグループのリソースを最大限活用して、積極的に新規事業に挑戦していく同社の今後が楽しみだ。台湾での社員旅行の様子
「株式会社シロキ」
の創業当初
シロキホールディングス
本社
成長の肝となってくるのは、人材育成・教育
今後経営を行っていく上で、肝になってくるのはどういった点ですか?
肝になってくるのはやはり、人材だと考えています。なので人材を採用し、育成していくことが必要だと思っています。採用という観点でいうと、新卒採用とのバランスをとりながら、‟キャリア採用”には引き続き力を入れていきたいです。例えば海外に事業展開をしていこうとなった場合、ビジネス英語に卓越した人材が必要になってきますよね。グループに‟新しい血を入れる”取り組みに力を入れ、事業を拡大していきたいと思っています。育成の観点で言うと、社員の待遇を、他社を見て決めるのは止めようといった話をしているんです。「他の代理店はこれくらいだから」とか「紙業界の相場はいくらだ」と限定するのではなく、人材が育つ待遇に引き上げていく。そんな取り組みを積極的に行っていこうと思います。グループのシナジーを生むための取り組みを教えてください
‟グループ連携イノベーション会議”を行って、グループのシナジーを積極的に生み出しています。これは先日迎えた100周年を機に「原点に戻ろう!」となったのがきっかけなんです。実は各社が大きくなるにつれて、東京・名古屋・大阪と拠点が分かれてきたので、なかなか連携を取るのが難しくなっていた時期があったんですよね。なので、グループ全体で行う‟イノベーション会議”を立ち上げて、グループ各社の経営企画担当が月1度集まり、グループ全体の戦略推進や各社間のシナジー増強について議論する場を持っています。話し合うのは今後の方向性についてや、グループ全体での連携を深めるための取り組みなど、色々なことを議論していますよ。今後も更にグループ全体の連携を深めて、生み出せる価値を最大限に引き上げられるように、この取り組みを大切にしていきます。今後の個人としての目標を教えてください
社員に色々なミッションを与え、育成し、自分自身のポジションをバトンタッチすること。それが私個人の目標です。というのも、私もう今年で65歳になるんですよ。本当は63歳で引退しようなんて思っていましたけど(笑)。トップと一蓮托生で挑んでいるので、もう数年頑張りたいと思っています。けれど、いつまでも私が先頭に立って会社を引っ張っていくというのは難しいと思うので、自分の代わりにトップを走っていける人材を育てるのが一番の課題ですね。弊社には良い人材が揃っているので、実現する日もそう遠くはないと思っています。引退までもう少し、頑張っていきたいと思います。伝統を大切に、 チャレンジ精神を持って 社会に貢献する事業を展開していく
シロキコーポレーション株式会社 代表取締役社長 堀智彦
グループ会社である、シロキコーポレーション株式会社の代表取締役社長を務める堀社長。そんな堀社長は、シロキグループ100年の歴史において、初めて白木家以外で社長を務めた実力者だ。前職で20年間営業を務めていた堀社長だったが、自分が更に活躍できる場を目指して同社に入社。取材の中で、シロキグループという強固な基盤の中で、積極的に挑戦できる環境に感謝の気持ちを示しながら、期待以上の価値を残していきたいと語ってくれた堀社長。謙虚でありながらも情熱的な姿勢はとても印象的だ。今回はそんな堀社長に、仕事でのやりがいや、自身の会社の今後の展望についてお伺いした。伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
更に活躍できる環境を目指し、異職種へ転身
自身のキャリアを見つめ直し「もっと自分が活躍できる場で仕事をしたい」と、営業一筋から一転し、同社の「経営企画職」に入社した。同社に入社する前は、新卒入社した大手ガス器具メーカーで20年勤めた堀社長。営業の第一線として活躍し、早い時期から出世を重ねてきた。生涯に渡り会社に貢献する気持ちで働いていたが、キャリアアップを目指して退職を決意。そして、更に挑戦できる場を求めて転職活動していた堀社長の元に、同社から「管理本部:経営企画職」のオファーが届く。「営業で外を走り回ってきたから、管理本部はできないだろう」との想いから最初はこのオファーを断ったそうだが、挑戦できる環境を求め、チャレンジすることを決めた。挑戦を求める人には、その機会が訪れるのだろう。入社早々、当時は新規事業だった環境資材部を任される。これまでの経験を活かし、事業の拡大に大きく寄与した。現在では、シロキコーポレーション株式会社の代表取締役社長として、日々会社のために邁進している。社会に貢献する商品を生み出すこと、それが何よりのやりがい
‟自分たちが提案した工事が、社会に貢献している”そう感じる時が一番の仕事のやりがいだと、堀社長は語った。特に自社商品である「遮熱塗料ミラク―ル」はその実感を強く与えてくれるそうだ。ここで突然だが、皆さんは「地球煮沸化」という言葉をご存知だろうか。「地球温暖化」は馴染みがある言葉かと思うが、それよりもレベルが高い状態を表す言葉であり、2023年7月に「地球温暖化」という言葉では表現しきれないほどの猛暑が世界各地で発生したことから誕生した。そんな恐ろしい「地球煮沸化」状態だが、その猛暑対策として「遮熱塗料ミラク―ル」が大きく注目されている。この塗料を塗布するだけで、「建物の」表面温度の上昇を抑え、建物内を涼しくしてくれるのだ。実際に、多くの企業の工場・倉庫・店舗の屋根に塗装が施されているだけでなく、都の道路などにも使用され、猛暑対策に絶大な影響をもたらしている。‟自分達が儲かるかどうか”ではなく‟社会に貢献できているかどうか”を大切にしている堀社長。今後も社会に大きく貢献する製品及び工法を生み出していってくれるに違いない。「仕事が楽しい!」社員がそう感じられる会社へ
「休み明けが憂鬱だと感じたことはないですね」「日報やメールを読むことは、新しい情報を得れるので楽しいです」と、堀社長は自身の仕事への感じ方についてこのように教えてくれた。楽しい休日を終え、翌日から始まる仕事に憂鬱さを感じる人が多い日曜日ですら、そのように感じることはないという堀社長。そんな堀社長の夢は、自分と同じように仕事を楽しんで取り組める社員を増やすことだという。そんな夢を抱くのは、「早く仕事と決別したい」と、60歳を過ぎて年金が貰えるようになるまで、ただひたすら頑張って会社に行くという人が、同世代ではどうしても多いと感じているからだ。自身が仕事の楽しさを誰よりも知っているからこそ、社員もそう思えるような会社にしていきたいと語る。そして自分が社長を降りる時も、「しんどいから」ではなく前向きな理由で引退したいと教えてくれた。そう明るく語る堀社長であれば、きっとそんな会社を実現していってくれるだろう。展示会出展の様子
遮熱塗料「ミラクール」
首都高代々木PA
期待以上の価値を残していきたい
人材採用についての考えを教えてください。
弊社では、様々な業種から中途社員を積極的に採用していますから、いわゆる純血ではないんですよ(笑)。そういった意味では、人材をまとめ上げるのは大変ですね。事業が安定しているうちに、次なる新規事業に取り組まないといけないと思っているので、そういった人材を弊社では一番必要としてるんです。だからこそ、例えば、うちは基本的に改修工事をメインとして行っているんですけど、あえて新築に携わってきた人を採用したりしてます。そして、その人が「新築工事をやりたい!」となったら、「じゃああなたがリーダーとしてやってみてください!」と言った風に積極的に任せるようにしています。今後も積極的に採用して、新規事業を立ち上げていきたいです。どのような想いで社長を務めておられますか?
私が社長に就任したのは、平成31年の1月です。会社として上場を目指していこうと決まったタイミングで引き継ぎました。上場するとなると、2年間くらいは相当なパワーをかける必要があります。だからこそ、前社長に私のパワーを買っていただき、会社を引き継ぐことになりました。創業100年という非常に長い歴史の中で、白木家以外の社長という点でも、祖業の紙ではなく新規事業を行っているという点でも私はかなり特殊だと思っています。そして、それはとても光栄なことだと思っていますし、期待以上の価値を残していきたいと考えています。これからも、伝統を大切にしつつ、新しくて良いものを積極的に取り入れて、会社と共に成長していきたいと思います。着実に売上を伸ばしている秘訣を教えてください
販売パートナーとの協力が、売上向上には欠かせなかったと思っています。最初は展示会に参加して、自分たちで売るというスタイルだったんですけど、やっぱりそれだけでは限界がありました。なので、6.7年前から販売パートナーの開拓を行うようにしたんです。例えば、工場に出入りしている商社だったり、金融関連の企業も私たちの大事なパートナーです。彼らが随分活躍してくれているので、売り上げは着実に向上しています。現在中期経営計画で、今期37億のところから来期43億、再来期は50億という計画を立てていますが、この目標に向かってさらに力を入れていきたいと思っています。シロキグループ
1922年
白木松次郎が名古屋市東区宮町で合名会社白木洋紙店を設立
1948年
株式会社白木洋紙店に改組し、本店を名古屋市北区東大曽根町に置く
1962年
春日井市に土地を購入し、倉庫(現 春日井物流センター)を建設
1972年
株式会社白木洋紙店から株式会社シロキへ社名変更
白木松次郎が代表取締役会長に、白木浩一が代表取締役社長に就任
1986年
白木和夫が代表取締役社長に就任
1991年
本社ビル・名古屋本店ビルが完成
2003年
赤川紙株式会社の株式を取得
2004年
環境資材部(現 シロキコーポレーション株式会社)を新設
アスクル事業部を新設
2005年
ミラクール販売株式会社(現 株式会社ミラクール)を設立
2009年
白木和夫が代表取締役会長に、白木栄次郎が代表取締役社長に就任
2017年
会社分割し持株会社体制に移行
・株式会社シロキホールディングス:持株会社
・株式会社シロキ:紙板紙事業、ライフ&マーケティング事業を継承
・シロキコーポレーション株式会社:環境ソリューション事業を継承
2022年
シロキグループ創業100周年を迎える
白木松次郎が名古屋市東区宮町で合名会社白木洋紙店を設立
1948年
株式会社白木洋紙店に改組し、本店を名古屋市北区東大曽根町に置く
1962年
春日井市に土地を購入し、倉庫(現 春日井物流センター)を建設
1972年
株式会社白木洋紙店から株式会社シロキへ社名変更
白木松次郎が代表取締役会長に、白木浩一が代表取締役社長に就任
1986年
白木和夫が代表取締役社長に就任
1991年
本社ビル・名古屋本店ビルが完成
2003年
赤川紙株式会社の株式を取得
2004年
環境資材部(現 シロキコーポレーション株式会社)を新設
アスクル事業部を新設
2005年
ミラクール販売株式会社(現 株式会社ミラクール)を設立
2009年
白木和夫が代表取締役会長に、白木栄次郎が代表取締役社長に就任
2017年
会社分割し持株会社体制に移行
・株式会社シロキホールディングス:持株会社
・株式会社シロキ:紙板紙事業、ライフ&マーケティング事業を継承
・シロキコーポレーション株式会社:環境ソリューション事業を継承
2022年
シロキグループ創業100周年を迎える
監修企業からのコメント
この度は、取材にご協力いただきまして誠にありがとうございました。急成長・急拡大を遂げる貴社のパワーに、取材をしていてとても圧倒されました。また、主力事業である紙業だけでなく、様々な事業を積極的に挑戦しているシロキグループ様にも今後も注目して参ります。
掲載企業からのコメント
今回取材をしていただいて、改めてビジネスを行っていく上で大切にしていることを振り返る機会になりました。ありがたいことに現在弊社は売上を着実に伸ばし、成長を遂げていますが、これもお客様や一生懸命働いてくれている社員のおかげです。更に上を目指して積極的にチャレンジしていきますので、今後も弊社の成長を見守っていただければ嬉しいです。