ゼット工業株式会社
代表取締役 山内滋子
フィルターから水処理システムの構築まで、確かな技術と信頼で多くの支持を得てきたゼット工業株式会社は、1966年の創業以来、”水処理装置の専業メーカー”として60年間という長い歴史を歩んできた。同社は、カートリッジフィルター、バッグフィルター、各種フィルターハウジング、水処理装置、純水製造装置など、多彩な水処理ソリューションを自社にて一貫設計・製造。さらに設置からメンテナンス、アフターサービスに至るまで、ワンストップで提供している。同社を牽引する2代目社長、山内滋子氏は、「品質第一」「お客様第一」の理念を大切に、ろ過技術を通じて、社会に貢献してきた。そんな山内社長に、組織について、そして、100年企業を目指して歩み続ける同社の今後の展望についてお話を伺った。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
「元気」から始まる、声を掛け合う組織
同社の社風を語るうえで欠かせないのは、「元気」というキーワードである。品質第一、お客様第一を前提としながら、山内社長が大切にしているのが、まず元気に挨拶をすることだ。採用面接でも第一声のインスピレーションを重視しているという。これは山内社長自身が「元気のある人が好き」という前提もあるが、先代の姿勢も影響している。先代は明るく社交的な人柄で、社員への声掛けを大切にしており、その姿勢は、山内社長にも自然と受け継がれている。また、他にも先代から続く「提案制度」も、同社に根付く文化の一つだ。工場内の物の置き場所を変えることで作業性が上がるといった現場の気づきから、会社の改善につながる提案まで、内容を問わず社員が発信できる仕組みである。提案は一年ごとに表彰される仕組みとなっている。他にも最も元気に朝の挨拶をした社員に金一封を贈るということで「できる、できないは別として、まずやろうとする姿勢」を評価する取り組みもしている。先代から受け継いだ文化はこうして今もなお、文化として根付いている。
在庫が支える、翌日出荷のスピード
同社の独自性としてまず挙げられるのが、圧倒的なスピードでお客様の要望に応える姿勢である。他社では納期に1~2週間かかるところを、同社では受注後、最短で翌日出荷を可能にしている。その背景にあるのが、豊富な在庫を持つという選択だ。在庫を抱えることも、注文を受けて翌日に出荷することも決して容易ではない。それでも創業以来、この対応を強みとして守り続けてきた。さらに、同社は自社で製造設備を持ち、製品の製造まで一貫して手掛けている。基本となる製品だけでなく、お客様から寄せられる「こうしてほしい」という細かな要望にも、できる限り「できません」と言わずに応える。営業が現場で聞いてきた声を社内の製造につなげ、形にしていけることも同社ならではの強みである。「ろ過で困ったことがあれば、何でも声を掛けてほしい」。そうした姿勢でお客様と向き合うことで、スピードと柔軟性を兼ね備えた対応力を築いているのである。
拡大ではなく総合水処理メーカーへの強化
同社が描く未来は、急激に規模を拡大することではなく、少しずつでも着実に成長し、次の世代へ会社を繋いでいくことである。かつては「とにかく会社を大きくしたい」と考えていた山内社長だが、3代目を担う常務が入社したことをきっかけに、現実を見据えながら一歩ずつ成長していく考えへと変わったという。その具体的な取り組みの一つが、現在のフィルターとろ過機という二本柱に加えた、三本目の柱づくりである。約10年前から手掛けてきたイオン交換樹脂の事業を本格化させるため、専門工場を新設。製造部から3名ほどを配置し、9月の稼働に向けて準備を進めている。すでに受注の見込みも立っており、今後の成長が期待される事業だ。「ろ過で、未来を豊かに。」という言葉を掲げ、総合水処理メーカーを目指す同社にとって、事業の柱を一つずつ増やしていくことは、単なる事業拡大ではない。水に関する困り事に幅広く応えられる会社へと進化しながら、次の世代へ確かな土台を残していくための歩みなのである。



時代に合わせた「変化」と、変えない「文化」
ゼット工業が大事にしてきた考え方は何ですか?
我々が大切にしてきたのは、「品質第一、お客様第一」です。もちろん社員ファーストという考えもありますが、私たちの仕事はお客様に選んでいただいて初めて成り立ちます。まず品質で応え、お客様を第一に考える。そこは創業から変わっていません。どこかに掲げているわけではなく、事あるごとに私が声に出して言い続けてきましたので、社内には間違いなく浸透していると思っています。数年前までは毎日朝礼を行い、最後に社是とISOの標語を全員で唱和していました。朝礼そのものは時代に合わせて取りやめましたが、あの言葉は皆の体に染みついているはずです。掲げるよりも、言い続ける。それが浸透の近道だと思っています。
山内社長から見た、常務はどのような存在でしょうか?
私とは真逆の、頼もしい存在です。私は思いつきで「こうしよう、ああしよう」と口にするタイプなのですが、常務は「ちゃんと調べましたか」「これをやらなくて良いのですか」と、必ず歯止めをかけてくれます。そういう性格だと知ったのは、一緒に働くようになってからでした。大学を卒業した後、この業界に入る前提で、水処理の会社に4年ほど勤めていました。最後は自分でやろうと決めてくれたことは、よくぞ戻ってきてくれたなと、今でも感謝しています。6年前の入社を境に、旧態依然のやり方が当たり前だった弊社は、時代に合わせて変わり始めました。私にとっても会社にとっても、あれがターニングポイントでした。この先は、常務が切り開いていってくれるはずです。
次世代に紡いでいってほしいこととは?
次の世代に繋いでほしいのは、お客様のもとへ自分の足で出向くという習慣です。私が社長になった時、父に全国のお客様回りへ連れて行ってもらいました。北海道から沖縄まで、何月にどちらへ伺うかが大体決まっていて、それを今も続けています。常務が入ってからは、父が私にしてくれたように、私が常務を連れて回っています。先代の頃からお世話になっているお客様ばかりで、先方も世代交代をされています。それでも、長年にわたり弊社を支えてくださった大切なお客様ばかりですから、営業をしに行くのではなく、お顔を見て、お話をする。これは私が退いた後も続けてほしいと思っています。これは、社員にも同じことを願っており、やはり顔を合わせて肌で感じるものはありますね。
熱い思いと行動力で会社を牽引する次世代のキーマン
ゼット工業株式会社
営業部営業課係長 土屋翔哉
液体に含まれる不純物を取り除く糸巻きフィルターと、それを収めるろ過装置。この二つを自社で製造し、水処理に関わる幅広いニーズに応えるゼット工業株式会社。その営業の最前線を担うのが、営業課係長の土屋氏である。入社以来、全国各地のお客様のもとへ足を運び、製品を納めるだけでなく、それぞれの現場が抱える課題に向き合ってきた。現在は営業課に加え、今年から技術営業課も兼務。既存事業にとどまらず、純水という新たな分野にも挑戦している。一方で、土屋氏が同社へ入社するまでには、現在の仕事からは想像しにくい経歴と、一つの印象的な出会いがあったという。営業としてお客様と向き合いながら、新たな可能性を切り拓く土屋氏に、これまでの歩みや仕事への思い、そしてこれから描く夢について話を伺った。
伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
遠い記憶にあった「水」への思いと社長の情熱
土屋氏が同社への入社を決めた一番の理由は、山内社長の水処理に対する情熱だった。面接の場で多くの共通点が見つかり、会話は自然と弾んだ。その中で聞いた、水処理という仕事にかける熱い思いが、土屋氏の心を強く動かし、「この人のもとで働きたい」、そう思ったことが入社を決意する決め手となった。そもそも同社を知ったのは、転職活動の際に目にした求人誌だった。結婚を機に京都から名古屋へ移ることが決まり、新たな環境で腰を据えて働ける会社を探していた。そこで当時、目に留まったのが、創業から50年を超える歴史を持つメーカーという存在だった。そして、土屋氏自身も、水が豊富な地域の出身ということもあり、幼い頃から水に関心を持ち、夏休みの自由研究で調べるほどだったという。ペット業界から水処理業界への転身は、一見すると大きな方向転換にも見える。しかし振り返れば、幼少期から抱いていた水への興味と、山内社長との出会いが重なったことで、新たな道が開かれたのである。
やりたいように、やれる
土屋氏が最も大きなやりがいを感じるのは、「裁量をもって挑戦できるところ」である。なぜなら、同社の営業には裁量が与えられており、責任は伴うものの、どこへ足を運び何を提案するかを自分で決められる。日本全国、さらに海外まで、各地でいろんな人と出会い、話を聞き、学んでいく。特に印象に残っているのが、沖縄・小浜島へのプール用ろ過装置の納入である。飛行機を乗り継ぎ、石垣空港からバス、さらに船でたどり着く島だ。オープンの知らせとともに届いたのは「綺麗なプールができて嬉しい」「こんな最南端の島まで来てくれてありがとう」という言葉だった。液体のろ過は環境負荷の低減にも直結し、導入してよかったと感謝をいただく機会も多い。このように、自分の判断で営業活動ができること、そして何より自分の足で向かった先で感謝の言葉をいただき、誰かの役に立てることを実感できることこそが、土屋氏にとってのやりがいとなっている。
時代を引っ張る水処理メーカーへ
土屋氏の夢は、同社が100年企業となるための「新しい柱」をつくることである。同社は1966年の創業時から、糸巻きフィルターとろ過装置という二本の柱で、水処理業界に確かな地位を築いてきた。老舗として名前を知られていることは、先人が積み上げてきた大きな財産である。その信頼のうえに、これからの時代を引っ張るもう一本の柱を重ねたい。そこで今動き始めているのが、半導体産業の広がりを背景に需要が伸びる、純水の分野である。従来の糸巻きフィルターでは物理的なろ過にとどまっていたが、イオン交換樹脂を用いることで、イオン状の不純物まで取り除けるようになった。すでに、大手メーカーや協力会社の力を借りて商品化、販売も始まっている。さらに今後は、海水を飲み水に変える淡水化装置への挑戦など、同社の可能性をさらに広げたいと考える。歴史に頼るのではなく、歴史の上に積み上げる。時代を引っ張る水処理メーカーへ。それが土屋氏の描く未来である。



老舗としての信頼の上に、新しい柱を
仕事をするうえで、一番大切にしていることは何ですか?
私が営業で大切にしているのは、他社さんの動向と、お客様の市場ニーズの二つです。SDGsが注目された時期には環境に配慮した提案が求められましたし、災害が続けば災害対策のろ過装置が欲しいと言われるなど、水処理のニーズは本当によく変わるんです。お客様が今何に困っておられるかは、常に見ておかないと分かりません。具体的には、そのニーズに他社がどう動いているかまで見ています。同じことをやっても勝てませんので、ゼット工業だからこそできる提案は何か考え、戦略を立てます。こうした情報は会社として、報告書を社内の情報共有ツールに挙げれば全員が検索できるようになっています。ニーズを掴み、他社とは違う道を選ぶ、そこが営業の面白さだと思っています。
ゼット工業の中で、誇りに思っていることは何ですか?
私が誇りに思っているのは、糸巻きフィルターとろ過装置、その両方を自社でつくっているところです。それぞれをつくられている会社もいらっしゃいますが、その二本柱を両方持つメーカーは、日本で探しても弊社くらいではないかと思っています。そして、品質保証部にパーティクルカウンターという、液体に含まれる粒子の粒度分布を測る装置があります。粒子の大きさや量を数値として把握できます。感覚ではなく、技術的な裏付けと根拠をお示ししたうえでご提案できます。つくれること、そして数値で証明できること。この両方こそ、私が誇りに思う弊社の魅力です。
山内社長について、尊敬している点はどんなところですか?
私が尊敬しているのは、フットワークが軽く、とにかく情熱的なところです。新しいことをやりたいと言うと、まず「やろう」と返ってきます。こういう装置が欲しいと相談すれば、では買うためにどうするかを一緒に考えてくださいますし、成長につながる挑戦には、必要な投資を惜しまない方です。具体的には、先日のモノづくりワールドへの出展です。出展を言い出したのは私ですが、相談すると、出るなら日本一の場所でと、東京ビッグサイトへの出展を即断してくださいました。展示会初日には代表自らブースに立ち、みんなの先頭にたってチラシを配っていました。こうして社員の挑戦を後押ししてくださる姿勢があるからこそ、安心して挑戦することができます。
創業年(設立年)
1966年
事業内容
各種カートリッジフィルター・ろ過装置の製造、水処理装置のメンテナンス
所在地
愛知県名古屋市守山区新守山3412番地
資本金
4,950万
従業員
50名
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