大阪ラセン管工業株式会社
AIにも解析できない技術で未来を切り開く100年企業

大阪ラセン管工業株式会社

代表取締役社長 小泉星児

日本で初めて金属製フレキシブルチューブ・ベローズの量産化を始めた大阪ラセン管工業株式会社。現在では、超高圧、超柔軟、超極細という三つの領域で世界最高クラスの技術を誇り、内径0.9ミリの「Nanoflex®」や、ゴムホースのような柔軟性を持つ「Worm Free Flex®」など、110年以上の歴史を持ちながら、常に挑戦と進化を続けている。そんな同社を率いるのが、6代目小泉星児社長である。2015年の社長就任時、小泉社長は自らを「100人のプロの中で、自分だけが素人」と社員に発信し、専門的な分野への過剰な口出しを行わないことを名言することで、社員の力を引き出し、会社全体を前に進めることに徹した。そんな同社の大切にしている考え方や、これから目指す未来について話を伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

ワンマン経営から「社員の力を借りる経営」に

同社の社風は、星児氏の就任を境に大きく変化した。先代である父の時代は、強いリーダーシップで会社を引っ張るワンマン経営であり、社員が自由に意見を出すことが難しい雰囲気もあったという。そこで、星児氏は就任時に約100名の社員を前に「私は技術のことは分からない素人です、だから皆さんの力を貸してください」と自ら発信した。経営者がすべてを指示するのではなく、それぞれの専門性を持つ社員を信頼し、力を借りながら会社をつくっていく、その姿勢を明確に示したことで、会社全体が明るくなっていった。星児氏自身も、社長として何でも答えを出すのではなく、社員の声に耳を傾け、それぞれが持つ知識や経験を生かすことを大切にしている。その変化は明確で、ある時、先代から「星児が入社してから、会社が楽しそうになった」と言われたという。先代までが築いた技術や事業基盤を受け継ぎながら、社員が自分らしく力を発揮できる組織へと変えていく。その変化こそが、同社を形成する社風なのである。

世界一の「技術」と「品質」で真っ向勝負

同社は、長年培ってきた技術を土台に、他社が容易に追随できない領域まで技術を追求し続ける姿勢にある。星児氏は同社の強みを「技術、品質は誰にも負けない」と語り、価格についても高くなることを恐れない。なぜなら、同社が提供しているのは単なる金属製チューブではなく、他社にはつくれない性能と品質だからである。実際に同社は、超高圧、超柔軟、超極細という3つの領域で世界最高クラスの製品を生み出している。さらに、その開発の原動力は、必ずしも顧客から明確な依頼を受けたからではなく「どこまでできるのか」という純粋な探究心から技術の限界に挑み、その結果として宇宙関連など新たな用途へと可能性を広げてきた。既存市場の中で価格競争をするのではなく、誰にもつくれないものをつくることで、新しい価値そのものを生み出していくこと、それこそが、110年以上にわたって同社が培ってきた最大の独自性なのである。

新技術の製品化と社員の職場改善

同社が見据えているのは、これまで培ってきた技術をさらに進化させ、新たな産業分野へ活躍の場を広げていくことである。まずは製品化した内径0.9ミリの「Nanoflex®」の拡販、そして折りたたみ可能なホース「ORIGAMI-BELLOWS®」の製品化を進めている。Nanoflex®は医療分野、ORIGAMI-BELLOWS®は宇宙分野での活用が期待されており、従来の半導体関連を中心とした事業領域から、さらに可能性を広げようとしている。また、静岡工場の刷新を進め、2028年には新工場が完成する。技術面だけでなく、社員が働く環境をより良くすることも重要なテーマと考えており、大阪本社工場、静岡工場共に冷暖房を整備し、社員が力を発揮できる環境を整えることにも注力している。既存の技術に満足せず、新たな可能性を追求していく。100年以上続く技術を守るだけではなく、その技術から次の100年を支える新しい価値を生み出していくことが、同社の目指す未来なのである。

技術には口をださず、責任には言及

会社の環境づくりで大切にしていることはなんですか?

社員同士の交流では、年2回の鍋パーティーやバーベキュー、2年に1回の社員旅行などを行っています。私が大切にしているのは、こうしたイベントを会社が一方的に決めるのではなく、できるだけ社員が参加して決められるようにすることです。社員旅行も、行き先をアンケートで決めています。その中でも一番大きな「参加型」の取り組みが、本社工場の外壁のデザイン選びでした。いくつかの案を用意して、社員全員にシールを貼って投票してもらいました。どの案を選んでも費用は同じだったので、あとは皆が「これがいい」と思うものを選んでもらったんです。経営判断は私がしますが、みんなが使う場所については、できるだけみんなの意見を聞きたいと思っています。そうやって、自分たちの会社を自分たちでつくっているという感覚を持ってもらえたらいいなと思っています。

技術の伝承はどのように行われているのですか?

正直なところ、まだ分からない部分も多くあります。弊社では長年培ってきた設計や製造の中に、言葉では説明しきれない「勘どころ」が多く残っています。私が社長になった当時は、高齢の職人が多かったのですが、皆、すごい技術を持っていました。そこで、作業の様子を動画で記録したり、若い世代を工場長に据えて管理していくなど、誰が担当しても一定の品質を出せる仕組みづくりを進めてきた結果、属人化はかなり減ってきたと思います。一方で、職人の長年の経験や感覚の言語化や、AIを活用したフレキシブルチューブの設計など、約2年間かけて挑戦したのですが、見事にできませんでした。結果、無駄にはなりましたがやってみることで、次はできるという確証も得られたので、「無駄じゃない無駄だった」と思います。

新製品の開発はどのように進められているのですか?

新製品の開発については、基本的に任せています。技術部が中心となって設計や開発を進めていますが、私が細かい工程まで口を出すことはありません。私自身、技術の専門家ではないので、そこに口を出しても仕方がないと思っています。私が求めているのは、「この日までにできるのか」ということだけです。そのために、試作や検査などを含めた大まかなスケジュールは出してもらいますが、その中身について細かく指示することはなく、それぞれが考えて進めてもらいます。もし期日までにできないのであれば、「なぜできないのか」を聞きます。それが正当な理由なのかを確認して、納得できれば「それなら仕方ない」と判断します。逆に、言い訳であれば、それはきちんと指摘します。任せるところは任せる、その代わり、約束した期日には責任を持つ。それが、新製品の開発を進めるうえで大切にしていることです。

フレキシブルチューブの価値と可能性を発信するフロントマン

フレキシブルチューブの価値と可能性を発信するフロントマン

大阪ラセン管工業株式会社

営業部係長 小田裕士

今回、同社の代表社員としてお話を伺ったのは、営業部係長を務める小田裕士氏である。入社14年目というキャリアの小田氏は、救急救命士を目指して専門学校へ進学し、その後は介護職を経験するなど、現在とは異なるキャリアを歩んできたが、自身の将来を見据えて転職を決断、求職活動を進めるなかで、100年以上続く企業には、長く事業を続けられるだけの強みを持つことに魅力を感じ、入社を決意したという。現在はセールスエンジニアとして、顧客の要望を聞き、技術部門と連携しながら製品化へとつなげる役割を担っている。時には1年以上かけて顧客と打ち合せを重ね、一つの製品を形にすることもある。異業種で培った「聞く力」を生かしながら、顧客と社内をつなぐ小田氏に、仕事への思いや、今後の未来について話を伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

長い歴史という「強み」に惹かれて

100年以上続く企業には、長く事業を続けられるだけの確かな強みがある。その環境で長く働きたいと考えたことが、同社へ入社した理由である。小田氏は救急救命士を目指して専門学校へ進学した後、介護職として約3年間働いた。しかし、給与や勤務時間、休日など将来を考える中で転職を決意。次の仕事では営業職に挑戦したいという思いもあり、転職活動を進める中で同社を知った。当時はフレキシブルチューブがどのような製品なのかも全く知らなかったが、100年以上にわたり事業を続けている企業は、景気に左右されにくい何らかの強みがあるはずだと考え、入社を決意したという。前職の介護職で身につけた相手の話を聞き、何を求めているのかを理解する力は、顧客の要望を聞き出し、技術部門と相談しながら最適な提案を考える上で、相手の言葉の奥にあるニーズを捉えることが生かされているという。

要望に応える喜び

顧客が求めているものを一緒に考え、製品として形になった時に、やりがいを感じるという。小田氏が担当する営業は、単に製品を販売する仕事ではない。顧客から「こういうものが欲しい」と相談を受けるところから始まり、仕様や価格、納期などを確認しながら、技術部門と連携して製品をつくり上げていく。既製品では対応できない場合には、仕様を変更したり代替案の提示など、何度も打ち合わせを重ねる。時には顧客の要求するスペックを満たすまで1年以上かかることもある。その過程では、営業として顧客の要望と、技術的に可能な方法を考え、社内と顧客の双方が納得できる着地点を探ることが求められる。だからこそ、長い時間をかけて完成した製品が顧客に採用されたときの喜びは大きく、長期間にわたって相談や試作を繰り返すうちに、顧客でありながら一緒に製品をつくる仲間のような関係になることもあるという。前職で「聞く力」を培ってきた小田氏にとって、顧客の言葉を技術で形に変えていくことこそが、この仕事の醍醐味なのである。

次世代を育て、同社の知名度をさらに高める

小田氏が描く夢は、目の前の営業成果だけではなく、同社を次の100年へつなげていくことである。そのためには、若手人材の育成と同社の知名度が必要だと考える。フレキシブルチューブは多くの産業を支える製品でありながら、その存在はあまり知られていない。しかし、小田氏は、同社の技術や製品をより多くの人に知ってもらうことが、将来の人材不足の解消にもつながると考えている。実際に、工場の環境を見て「ここで働きたい」と応募した若手社員や、この会社で働いていた祖父から会社を勧められて入社した社員もいる。会社の魅力を外へ発信することで、「ここで働きたい」と思う人を増やしていきたいのである。そして最終的には、誰もが知る製品の中に同社の技術が採用されたことを家族に話せるような会社にしたいという思いがある。100年以上続いてきた企業だからこそ、次の世代へ技術と誇りをつないでいく。そのために自らも営業として会社の魅力を伝え、若手を育て、企業の存在感を高めていくことが小田氏の描く未来なのである。

充実の職場環境と「兄貴の存在」

ご自身が感じる大阪ラセン管工業の魅力は?

弊社の魅力は、まず給料の面と、休みが多いことだと思います。製造業の中小企業としては給与水準も高い方だと思いますし、年間休日も現在は125日以上あります。実際、介護職から転職してきた私としては「休みが1ヶ月くらい増えた」と思います。こうした働きやすさは、採用にもつながっています。以前、工場を見て「すごくきれいだから、ここで働いてみたい」と自ら応募してきてくれた方もいました。また、弊社で働いていたおじいさんが、お孫さんに「大阪ラセン管は良い会社だよ」と勧め、入社につながったケースもあります。自分の家族に勧めてもらえる会社だというのは、すごく嬉しいことですよね。そうした働きやすさに加えて、自分たちの製品がH3ロケットなどに使われていることも、社員が仕事に誇りを持てる理由だと思います。

小泉社長はどんな人ですか?

社員に対して本当にフレンドリーに接してくれる人です。言い方が悪いかもしれませんが、お兄ちゃん的な人というイメージがあります。社員との距離が近く、話しかけやすいので、自然とみんなが社長のところに話をしに行くんです。そうした会話の中から、現場で起きていることや、報告だけでは出てこないような情報も把握されているのだと思います。一方で、締めるところはしっかり締める人です。会議などで私たちが間違った方向に進んでいる時にはきちんと正してくれますし、時には叱られることもあります。人柄が柔らかく、社員との距離が近い一方で、社長として判断すべきところではしっかりと判断する。その切り替えができる人だと思います。また、頭の回転が本当に速く、現場の話を聞きながら状況を理解し、情報を整理していくところも、さすがだなと感じています。

営業をしていくうえで大切にしていることを教えてください。

弊社は専門性の高い製品を扱っているので、お客様との打ち合わせでは、製品についての知識がなければ、代替案の提案などもできません。そのため、常に学ぶことを意識しています。自社製品について勉強するのはもちろんですが、他社から新しいフレキシブルチューブが出ていないかなど、情報収集も欠かしません。そうして得た知識は自分だけのものにせず、後輩にも伝えるようにしています。知識やノウハウを共有することで、営業全体の力を高めていくことが大切だと思っています。また、営業部では週に一度、30分ほどのプレゼンテーションの練習を行っています。もともとは「一度やってみよう」というところから始めた取り組みですが、1年半ほど続いています。少人数だからこそ、自分だけが良ければという考えではなく、みんなで知識を共有しながら成長していくことが大切だと思っています。

監修企業からのコメント

コメント
取材を通して「技術」と「人」の両方を大切にしている会社だということをすごく感じました。AIにも解析できないほどの職人技を受け継ぎながら、新しい製品にも挑戦する。その一方で、社員の意見を取り入れ、任せるところは任せる。次の100年を見据えて変化を続ける姿勢は、多くの企業様にも参考となる事例だと思いました。今回は、ご協力いただき、ありがとうございます。

掲載企業からのコメント

コメント
うちが特別なことをしているとは思っていません。社員を信じて、それぞれが考えて動いてくれたらいい。技術も一朝一夕では身につきませんが、先輩から後へ受け継いでいけば、また新しいものが生まれる。そうやって技術を残しながら新しいことにも挑戦して、次の100年に続く会社にしていけたらと思っています。
大阪ラセン管工業株式会社

創業年(設立年)

1912年

事業内容

金属製フレキシブルチューブ及びベローズ式伸縮継手の設計・製造及び販売

所在地

大阪市西淀川区姫里3-12-33

資本金

8,000万円

従業員

120名

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