株式会社キンポーメルテック
技術をつなぎ、人をつなぎ未来のモノづくりへ

株式会社キンポーメルテック

代表取締役社長 宮澤正宏

精密板金加工にとどまらず、組立、塗装までを一貫して担い、金属箔のレーザー加工にも対応する株式会社キンポーメルテック。創業時はチリトリやバケツなどの製造から始まり、1990年代に精密板金へと事業を転換。長年培ってきた技術を受け継ぎながら、新たな挑戦も行ってきた。そんな同社は、さらなる成長を目指し、M&Aによって新たな技術承継の形をつくるという道を選び、技術承継機構グループへ参画。その後、代表に就任したのが、4代目となる宮澤正宏氏である。宮澤氏は一人ひとりの社員が持つ高い技術力の素晴らしさという武器があるが、それらを社内で十分につなぎ切れていないという課題も感じているという。M&Aという新たな道を歩み、自身が考える未来の姿など、お話を伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

「まずやってみよう」が根付く会社

同社の社風を表す一つの言葉が、「まず、やってみよう」である。お客様から難しい相談を受けた際にも、すぐに「できない」と判断するのではなく、「どうすればできるのか」を考え、挑戦してみる。創業以来、さまざまなモノづくりに挑戦し、お客様の要望に応え続けてきた経験が、こうした姿勢につながっている。一方で、この文化は、まだ確立されたいないと宮澤氏は語る。だからこそ今後、「まず、やってみよう」という姿勢を、同社らしい社風としてさらに強化していきたいと考えている。その土台となるのが、今後10年を見据えて掲げる「つなぐ品質」という考え方だ。溶接が部品と部品をつなぐように、仕事においても人と人をつなぐことを大切にする。自分の工程だけを見るのではなく、次の工程を担う人のことを考えて仕事を渡す。その積み重ねが手戻りやロスを減らし、生産性の向上にもつながる。「まず、やってみよう」という挑戦と、人を思いやり仕事をつなぐ姿勢。その両方をこれからの社風として育てていく。

一貫生産から生まれる対応力

精密板金加工における幅広い工程を社内で一貫して担える点が同社の強みである。一般的な板金加工では、レーザー加工や曲げ、溶接など、それぞれの工程を外部に依頼するケースも少なくない。一方同社では、レーザー加工、曲げ、溶接に加え、塗装、配送までも自社で対応している。さらに、金属箔のレーザー加工といった特殊な領域にも対応している。一貫生産の強みが特に発揮されるのが、トラブルが発生したときだ。複数の会社に工程を分けて依頼している場合、どの工程で問題が起きたのかを確認するだけでも時間がかかる。しかし、社内ですべての工程を完結できれば、原因究明も、自社の工程で、迅速に対応することができる。さらに、20名を超える溶接工を抱えていることも、同社の対応力を支える要素の一つである。部品点数の多い案件にもスピード感を持って対応できるのは、単に設備が揃っているからではない。各工程を担う人材と技術が社内に蓄積されているからこそ実現できる強みである。

技術と仕組みの融合で、更なる成長を

同社が描く展望は、会社の規模を大きくすることではなく、現状の規模を維持しながら売上と利益を伸ばし、その成果を働く人たちへ還元できる会社を目指すことである。その背景には、人口減少による人材不足という課題がある。今後、働き手が減少する中、人を増やすことで生産量を伸ばすことには限界がある。そこで同社は、人手が不足する部分やロボットに任せられる工程へ部分的に自動化を取り入れ、生産性を高めていく考えだ。一方で、モノづくりの中心にあるのはあくまでも人であり、職人には人にしかできない仕事や高度な技術が求められる工程に集中してもらう。また、技術やノウハウの伝承も重要な課題である。今後は動画撮影や生産管理システムの活用も進め、人と技術を次世代へつないでいく。人を大切にしながら新しい仕組みを取り入れ、生産性を高め、その成果を従業員へ還元する。働く人がより幸せになれる会社をつくることが、宮澤氏の描く未来である。

受け継がれるモノづくりの遺伝子

宮澤社長が経営をする上で、一番大切にしていることは何ですか?

私が一番大切にしているのは、座右の銘でもある「求めあらば応ず」という言葉です。小学生の頃に担任の先生から言われた言葉なんですが、当時は自覚していなかったものの、自分の中にあったモヤモヤに、ようやく名前がついたような感覚でした。この言葉は、今の会社の姿勢やお客様との関わり方にもつながっていると思います。お客様が困っていて、弊社にできることがあるのであれば、何とか実現したい。社内だけではできないことでも、協力会社さんのお力を借りて形にしたいと思っています。ただ引き受ければ良いわけではなく、お引き受けする以上は、より良い形でお届けする。そこまで含めて「応ずる」ということだと思っています。求められたことに、できる限りの形で応えていく。この姿勢はこれからも大切にしていきたいですね。

ご自身の考え方や価値観に影響を与えた人はいますか?

考え方を変えてくれたのは、弊社製造部部長の小島です。私とはかなり正反対の人間で、彼は人の心をすごく大切にします。一方、私は数字を優先して、理論的に物事を進めたいタイプでした。私が代表になると決めた後、部長たちと面談したのですが、小島だけは快く思っていなかったんです。私の仕事のやり方や考え方が合わなかったんだと思います。「そのやり方ではダメだ」と、かなりきつく言ってくれました。以前の私だったら「ふざけるな」と思っていたかもしれません。でも、そのときは不思議とすんなり受け入れられたんです。それから、人との接し方について勉強するようになって、デール・カーネギーの本を何度も読み直したり、話し方を変えたりしました。考え方は正反対でも、「会社を良くしたい」というゴールは同じだったので、受け入れられたのだと思います。

貴社が求めるのはどんな人材ですか?

弊社の社員は、一人ひとりを見ると、本当に高い技術を持っています。他の会社に行っても、十分に活躍できるんじゃないかと思います。ただ、一人ひとりの力がつながって、持っている以上の力を発揮できているかというと、まだまだだと思っています。だからこそ、自分の工程だけを見るのではなく、次の工程の人のことまで考えられる方に来てもらいたいです。例えば、自分の仕事が10%増えたとしても、次の工程の人の仕事が20%減るのであれば、会社としては良くなります。そういう「全体最適」の考え方を持ってもらえると、会社はもっと良くなると思います。ありがたいことに、親会社や協力会社、お客様から「キンポーさんは雰囲気が良いよね」と言っていただくことがあります。自分の力を発揮しながら、周りの人のことも考えられる方には、ぜひ仲間になってもらいたいと思っています。

人を想い、現場を動かすモノづくりのリーダー

人を想い、現場を動かすモノづくりのリーダー

株式会社キンポーメルテック

製造部部長 小島光弘

同社の製造現場を束ねるのが、製造部部長の小島氏である。地元・飯田の出身で、岐阜の大学を卒業後、新卒で入社し、レーザー加工機を担当、その後、約10年間にわたって曲げ加工を担当し、機工課のリーダー、課長を経て、M&Aに伴う組織再編を機に製造部部長へと就任した。現在は機工課・溶接課・塗装課の3課、40名を超える製造現場を率いている。管理職となった今も、現場から離れず、人手が足りない工程があれば自ら助っ人に入り、社員と同じ目線で仕事をしている。「一番大事なのはコミュニケーション」と語る小島氏の言葉からは、20年間現場で培ってきた人とのつながりを大切にする姿勢が伝わってくる。入社のきっかけから、現場で感じるやりがい、そしてこれから実現したい会社の姿など、話を伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

「つくってみたい」から始まった20年

小島氏が同社への入社を決めた理由は、意外にもシンプルな「モノをつくってみたかった」である。岐阜の大学では経済情報学を専攻し、モノづくりとは無関係だった。将来のビジョンとして地元である飯田に戻ることだけは決めていた小島氏も、もともと職人がものをつくる仕事への憧れもあったため、市が開催した企業ガイダンスに足を運んでいた。そこで就職先として最後まで残ったのは、営業職と同社の製造職であった。営業にも魅力は感じたものの、周囲から「モノをつくるのは楽しい」と聞くうちに、自分の手で形にする仕事への興味が強くなっていったという。こうして入社し、今年で20年目を迎える。特別な志望動機があったわけではないが、当時の「つくってみたい」という素直な気持ちは、自身の原点となった。振り返れば、最初から明確なキャリアを描いていたわけではなく、目の前の仕事に向き合い、一つひとつ経験を積み重ねてきたことが、現在の小島氏のキャリアにつながっている。

現場の笑顔が、何よりの手応え

小島氏が仕事で最もやりがいを感じる瞬間は、現場で働く社員が笑顔で仕事をしている姿を見たときである。現在は製造部部長として3つの課を束ね、生産計画や人員配置を担っている。納期が厳しい案件では、負荷のかかっている工程を見極め、応援を送るなど現場全体の最適化を考え、全体で支え合うことを大切にしている。また、社員から寄せられる改善提案にも耳を傾け、改善に取り組んでいる。こうした取り組みの根底にあるのが、社員の人たちが「働きやすいか」である。忙しい時期を皆で乗り越え、納期を守れたときの達成感ももちろん大きい。しかし、それ以上に小島氏が嬉しいのは、社員が活き活きと仕事をしている姿を見ることだという。製造部部長として数字や納期に責任を持つことは当然だが、最も目を向けているのは「人」である。誰かの負担を減らし、誰かが前向きに仕事に取り組める環境をつくる。その積み重ねが、現場を支える小島氏自身のやりがいとなっている。

「仕事が楽しい」と思える会社づくり

小島氏が描く夢は、社員一人ひとりが「仕事が楽しい」と思える会社をつくることである。通勤時間まで含めれば、一日の大半を仕事のために使うことになる。だからこそ、その時間が少しでも充実したものでなければ、人は長く働き続けることができないと考えている。そのために力を入れたいのが教育である。小島氏自身、これまで体系的な研修を受ける機会が少なく、我流で仕事を身につけてきた。だからこそ若いうちから幅広い知識に触れ、さまざまな可能性を知ったうえで自分の道を選んでほしいという。特に重視しているのが、人間的な知見を広げることである。グループディスカッションなどを通じて、自分の意見を伝え、人の話を聞く経験を積むことで、先輩から技術を学ぶ力も育っていく。そうして社員が成長し、楽しく働き続けられる環境ができれば、自然と会社の力も高まり、売上の向上にもつながっていく。その先には第二工場の建設など、さらなる成長も見えてくる。社員の成長と会社の成長が循環していくことこそが、小島氏の描く未来なのである。

モノづくりの遺伝子とは、繋がりである

仕事をする上で、一番大切にしていることは何ですか?

私が大切にしているのは、一人ひとりが自分で考えて動きながら、お互いに支え合える組織をつくることです。モノづくりは、一人だけでは完結しません。営業、製造、品質保証など、多くの部署がつながって、初めて製品になります。だからこそ、部署や役職に関係なく、困ったときに気軽に相談できたり、意見を言えたりする環境が大切だと思っています。品質も、仕組みだけで守れるものではありません。最後は社員一人ひとりがどう考え、どう行動するかです。だから、困っている人がいれば自然に助ける、分からないことがあればお互いに教え合う、そんな関係をつくっていきたい。一人ひとりが主体的に動き、力がつながっていく。その先に、お客様からの信頼と会社の成長があると考えています。

小島部長が思う「モノづくりの遺伝子」とは何ですか?

私にとっての「モノづくりの遺伝子」は、人と人とのつながりだと思っています。社員同士はもちろん、社員とその家族、協力会社さん、お客様まで、すべてがつながっています。技術も同じで、先輩から後輩へ、そして次の世代へと受け継がれていくものです。だからこそ、私が一番大切にしているのがコミュニケーションです。どれだけ機械やロボットが進化しても、動かすのは人ですし、人には感情があります。人と人がしっかり対話することから、仕事も技術も生まれてくると思っています。私自身、前社長の時代に、気にかけてもらったことで何度も助けられました。だからこそ、お金ではなく、信頼関係があってこそ、人は動くものだと思っています。自分が受け取ったものを、次の誰かへつないでいく。その積み重ねこそが、前社長から受け継いだ「モノづくりの遺伝子」なのだと思います。

宮澤社長はどんな人ですか?

一言で言えば、私とは正反対の人です。私はコミュニケーションが何より大切だと思っています。一方で宮澤は一歩引いて外から会社を見るタイプです。言い方は悪いですが、「ドライになれる人」だと思います。でも、それは社長にとって絶対に必要な部分だと思います。会社を経営していれば、踏み込まなければならない決断があります。そのときに、感情で判断していたら決められないこともある、そこをきちんと判断できる人なんです。社長になる前の宮澤は、一人でいるのが好きで、あまり人と話すタイプではありませんでした。それが社長就任を打診されてから変わっていきました。会社を背負うと決めたことで、自分自身も変えたのだと思います。私とは考え方が違う、でも、会社を良くしたいというゴールは同じ、だからこそ、お互いの足りない部分を補いながらやっていけるのだと思っています。

監修企業からのコメント

コメント
今回の取材を通して感じたのは、高い技術力だけでなく、「人と人とのつながり」を大切にしている会社だということです。お客様の求めに応えようとする姿勢や、社員同士が支え合う風土が、長年培われたモノづくりの力につながっていると感じました。これからの益々の発展が楽しみです。

掲載企業からのコメント

コメント
「求められたことには、できる限り応えたい」。それがキンポーメルテックの原点だと思っています。一人ひとりの技術力は高いので、これからは人と人をもっとつなげて、その力をさらに引き出していきたい。M&Aという新たな選択も活かしながら、社員に還元できる会社へ成長していきたいです。

株式会社キンポーメルテック

創業年(設立年)

1931年

事業内容

精密板金加工・試作開発
超薄型金属箔製品の製造

所在地

長野県飯田市三日市場2111

資本金

1,000万円

従業員

65名

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