株式会社隅田鋲螺製作所
「ゆるまない熱意でものづくりを支える」ファブレス企業

株式会社隅田鋲螺製作所

代表取締役社長 隅田貴昭

「ねじの町」として知られる大阪府東大阪市に本社を構える株式会社隅田鋲螺製作所は、ボルトやナットをはじめとする締結部品を専門に扱う、創業80年超の老舗商社である。自社工場を持たない「ファブレス」の強みを活かし、全国600社にのぼるサプライヤーから届く製品の中から、品質・価格・用途に応じた最適な一品を提案し、全国2,000社以上の顧客から厚い信頼を獲得してきた。同社を率いるのは、3代目社長の隅田貴昭氏である。幼少期から家業を継ぐことを見据えて育ち、大学卒業後は大手飲料メーカーで営業経験を積み、同社に入社。倉庫管理、経理、営業などの部署を経験。代表就任後は、社員がより働きやすい環境づくり、品質管理部門を立ち上げるなどの、積極的な改革を行ってきた。今回は、そんな隅田社長にお話を伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

社員の声から感じた未来の可能性

同社は、3代目となる貴昭氏の就任を境に大きく変化した。入社当時は先代のトップダウン色が非常に強く、カリスマ的な力を持つ先代の判断が会社の方向を決めていた。「自分ができたのだから、お前たちもできる」という思いから、社員たちそれぞれに、数値目標を与えていた。3代目就任後、最初に手掛けたことは、社員の話を聞くことであった。すると、表には出ていなかったが、社員は会社を良くするための意見を持っていた。そこに可能性を感じ、社員の声を拾いながら業務改善を推進。さらに、「何をすれば評価されるのか」という基準が曖昧だったため、理念を掲げ、目指す方向を明確にした。貴昭氏は「こんなことを言うと先代が悪いように聞こえてしまうかもしれないが、今の基礎をつくったのは先代であり、その功績には今でも大きな尊敬を抱いている」と語る。そのうえで、自分の役割は、社員が働きやすく、力を発揮できる会社へと進化させることだと考えている。このような背景から、同社では実際に「現場から会社が育っていく」社風が根付いているのである。

「ファブレス企業」としての責任

同社は、サプライヤーから仕入れた製品を自社で品質保証する「ファブレス企業」である。かつては仕入れた製品を流通させる商社だったが、あるお客様から「何もしていない」と言われたことから自社のあり方について考えた。そんな時、不良品の流出によって、お客様に迷惑をかけるという出来事があった。そこから品質管理部門を立ち上げ、製品を検査したうえで責任を持って納品する体制へと転換。この品質へのこだわりは、社員が自ら品質管理に関する資格を取得するという動きに繋がり、今では同社の強みとなっている。また、それぞれが得た知識や経験を自身で留めるのではなく、情報共有ツールで積極的に共有し、誰がどの分野を得意としているのかを互いに理解し合い、その強みを生かしながら仕事を進められる環境が構築されていった。品質を追求する姿勢から生まれた「自ら学び、知識を共有する」文化は、競合との差別化を生み出す独自性となり、今では同社に根付いた文化にもなっている。

拡大ではなく一人ひとりが豊かに働ける会社づくり

同社が目指しているのは、会社の規模を拡大することではなく、今ある組織をより良くし、社員一人ひとりが豊かに働ける会社にすることである。貴昭氏は、これまで人が行ってきた作業を減らし、人にしかできない仕事に集中できる環境をつくり、より自社の価値を高めることで、社員一人ひとりの稼ぎをさらに増やしていきたいと考えている。新しい事業を立ち上げることを目的としているわけではないが、社員それぞれが日々の仕事の中で新しい取り組みを始め、これまで扱っていなかったねじ以外の商材を取り扱うなど、自然と事業の幅が広がっている。貴昭氏が「自分自身もその変化についていくのがやっと」と笑うほど、社員発の新たな動きが生まれているのだ。こうした挑戦を生み出す組織風土を守るためにも、同族経営を続けていくことを大切にしている。急激な拡大ではなく、社員が働きやすく、努力が収入にもつながる会社として、今の風土を次の世代へ受け渡していくこと。それが貴昭氏の目指す未来である。

性善説を基軸にした「信じきる」経営とは

隅田社長が大切にしてる考え方はなんですか?

自身のことと、一緒に働くメンバーを大切にしてほしいということです。自分の可能性を諦めたり、一緒に働くメンバーをないがしろにしたりすることはやめてほしい。それ以外だったら、何をしてもいいと思っています。そんな私が大切にしてきたことを集約したのが、「スミダのあるべき姿5箇条」です。これは私自身が人生の中で大切にしてきたものを並べただけです。もともとは、親から「墓参りは行かなあかんねん」と教えられたり、「なんぼアホでもええけど、友達は大事にしろ」と言われたり、そうした幼い頃からの教えが自分の考え方の根っこにあり、それを分かりやすい言葉にしました。いろいろ詰め込んで立派に見せるよりも、シンプルであることが大事だと思っています。生きていく上での根幹になるような考えだからこそ、誰にでも分かる言葉にして、常に見えるようにしておく。それが、5箇条であり、大切にしている考え方です。

「スミダのあるべき5箇条」はどのように作成したのですか?

「スミダのあるべき5箇条」は、理念をより具体的な行動につなげるために作成しました。もともと「感謝」「向上心」「チームワーク」「自責の気持ち」「プライベートと健康」という5つの項目を掲げていましたが、当時は「自責ってどういうことやろね」というように、その中身がなかなか社員に伝わっていない部分もありました。そこで、この5箇条をもとに行動規範をつくることにしました。3、4年ほど前、係長以上のメンバーと合宿を行い、まずは一人ひとりが「自分が許さないこと」「大事にしたいこと」などをオープンに話しました。みんなが言いやすい雰囲気をつくりながら、それぞれの考えを共有し、そのうえで5箇条ごとの行動規範案を出してもらいました。特別なことを書いたわけではなく、「人として当たり前のこと」ばかりですが、だからこそ日々の行動として意識できるよう、皆で言葉にしたことに意味があると考えています。

「社員を信じきる経営」について具体的に教えてください。

私が会社を運営するうえで大切にしているのは、社員を信じきることです。だからこそ、会社の状況や数字は共有しますが、細かいことまで口を出すことはしません。新しい取り組みについても、「決まりましたのでお願いします」という報告のみで、私自身が議事録を見て指摘することも、しないようにしています。それをしてしまうと、「任せている」と言いながら、実際には任せていない会社になってしまうからです。もちろん時には思うこともあります。それでも、社員を信じきるしかないと思っています。お客様に迷惑をかける失敗は避けなければなりませんが、社内の改善で失敗したのであれば、やり方を変えればいい。社員を信じ、余計な口出しをせずに任せる。性善説に基づくこの考え方こそ、私の経営の根幹にあるものです。

人を想い、現場を動かす東北のリーダー

人を想い、現場を動かす東北のリーダー

株式会社隅田鋲螺製作所

東北地区統括所長 出町隆一

同社で執行役を務め、東北エリアの統括所長を担う出町氏。青森、山形、岩手、秋田にある東北地区の拠点を統括し、各拠点を回りながらメンバーの相談に耳を傾け、業務改善や人材育成、サプライヤー対応の強化まで幅広く手掛けている。同社に入社する以前は、大工やトラック運転手など、現在とは異なる仕事を経験してきた。入社後は八戸営業所で15年間勤務し、その後は新たな拠点となる山形営業所の立ち上げに尽力するなど、東北の地で長く現場を支えてきた人物である。現在は、次の世代への技術継承も見据え、後輩の育成にも力を注いでいる。取材では、幾度となく「信頼」という言葉が聞かれた。東北の拠点を長年支えてきた出町氏が、なぜ「信頼」を大切にするのか。そして、これまでの経験を今後どのように次世代へつないでいくのか、お話を伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

信頼が積み重なった31年間

出町氏が同社への入社を決めたのは「福利厚生が整った会社で働きたい」という思いだった。学校卒業後は大工やトラック運転手として働いていたが、仕事は不規則で、将来を考えたときに、より安定した環境で働きたいと考えるようになった。そんななか、知人からの紹介により入社。八戸営業所で15年間、その後は山形営業所の立ち上げにも携わり、31年間にわたって同社で経験を積んできた。入社当初は安定を理由に選んだ会社だったが、長く働くなかで、その思いは少しずつ変わっていったという。特に感じるのが、社員を信頼して仕事を任せる社風だ。新たな取り組みや業務改善についても決裁を取ってから進めるのではなく、現場に任されている。それは、ただ自由にやっていいということではなく、「任せてもらっているからこそ、自分たちも責任を持って応える」。その積み重ねが、会社への信頼につながっている。入社時には「働きやすい会社」を求めていた出町氏も、今ではこの会社で働くことに誇りを感じている。

気配りが積み重なる、やりがいの正体

「やりやすくなった」と喜んでもらえることが一番のやりがいだと出町氏は語る。特に印象に残っているのは、立ち上げから携わった山形営業所から八戸営業所に戻ってきた際の気付きだった。以前と同じ職場のはずなのに、業務の進め方には非効率な部分が多く残っていたのだ。とりわけ倉庫内で働くメンバーからは、暑さで作業が辛いという声が上がっていた。そこで空調を設置したものの、十分な効果が得られなかった。そこで、レイアウトそのものを見直し、風が届きやすい配置へと変更。さらに、棚や作業台も効率の悪い配置を一度すべて入れ替えた。特別な専門知識を学んだわけではなく、現場で働くメンバーの声に耳を傾け、困っていることを一つずつ形にしていったという。その結果、作業効率の向上は業績にもつながった。「何より、現場の人たちが働きやすくなったのが良かった」と出町氏。日々の小さな気配りを積み重ね、現場をより良くしていくことが、大きなやりがいにつながっている。

次の世代へ、技術と気づきをつないでいく

出町氏の夢は、これまで積み重ねてきた技術やノウハウを、次の世代へしっかりとつないでいくことだ。現場では50代の社員が多く、数年のうちに世代交代の時期を迎える。だからこそ、今のうちから次世代の育成を進めておく必要があると考えている。育成で大切にしているのは、「人に興味を持つこと」だという。人に興味を持たなければ、相手の変化にも気付けない。そこで出町氏は、メンバーたちにもまず人に関心を持つことの大切さを伝えている。さらに、メンバーとの対話で大切にしているのが「答え合わせ」だ。ある出来事について、メンバーが何を感じ、どう判断したのかを聞き、自分の考えと照らし合わせる。答えを教えるのではなく、自分では気付かなかった視点を見つけてもらうための機会にしているのだ。技術やノウハウを受け継ぐだけでなく、人への関心や物事を見る視点まで次の世代につないでいく、そうして後輩たちが成長し、次の世代を育てられるようになることが、出町氏の描く未来である。

足で稼ぎ、理念で束ねた東北の拠点

お客様との印象に残るエピソードを教えてください。

印象に残っているのは、山形営業所を立ち上げる少し前の、まだお客様が少なかった頃のエピソードですが、あるお客様から、納期に間に合わないのでどうしても今日中に品物が欲しいという相談をいただきました。そこで大阪の業者さんになんとか仙台空港までの最終便に荷物を乗せてもらい、私が空港まで引き取りに行って、そのままお客様のところへお届けしたんです。すると、担当の方と社長さんが待っていてくださって、「ここまでしてくれる会社はなかった」と言っていただき、その日は泊まって一緒にご飯までいただきました。今では山形で一番のお取引先になっています。ピンチな状況ほど、チャンスに変えられると思っています。

仕事をするうえで大切にしていることはなんですか?

仕事をするうえで大切にしているのは、スピード感です。現場で働くメンバーの声にとにかく耳を傾け、困っていることや改善したいことがあれば、できるだけ早くアクションを起こすようにしています。営業所ではある程度のことは任されているので、必要な改善については自分たちで進め、金額が大きくなる場合は社長に相談します。なぜスピードを重視するかというと、せっかくメンバーから声を聞いても、なかなか動かなければ信用を失ってしまうからです。もちろん、やってみてうまくいかないこともあります。その場合も、なぜダメだったのかをきちんとメンバーに説明するようにしています。ダメでも、まずは動いてみる。そうやって声を聞き、すぐに行動することが、メンバーからの信頼にもつながっていると思います。

自主的に動く社員をまとめているものはなんですか?

それはやはり理念だと思います。弊社は社員に大きな裁量が任されている一方で、みんなを束ねる軸となっているのが「スミダの5箇条」です。私自身、仕事で迷ったときには、いつも理念を見返します。感謝の気持ちを忘れないこと、自責で考えること、常に向上心を持つこと、チームプレーに徹すること、プライベートと健康を大切にすること。この5つは、仕事の中でも「今のチームプレー良かったね」というように、自然と会話に出てくるほど浸透しています。しかも、これは社長一人が決めたものではなく、拠点長や課長、係長クラスのメンバーが合宿で意見を出し合い、みんなで作り上げたものです。だからこそ、自分たちのものとして誇りを持てる。理念や5箇条があるからこそ、自由に動きながらも、判断の軸は同じでいられるのだと思います。

監修企業からのコメント

コメント
隅田社長のお話から、会社の強みは制度や仕組みだけでなく、社員との「対話」と「信頼」を積み重ねる経営姿勢にあることを強く感じました。品質管理部門の立ち上げや5箇条を軸にした行動規範づくりなど、課題に真摯に向き合う姿勢が非常に印象的でした。理念を言葉だけでなく行動で実践し続ける姿から、多くの学びと気付きを得たインタビューとなりました。

掲載企業からのコメント

コメント
今回のインタビューを通じて、「皆が信じさせてくれた」という言葉に込めた思いを改めて振り返る良い機会となりました。先代から受け継いだ会社を、対話と信頼を大切にしながら変えてきた歳月を思い出しながら、これからも社員やその家族が誇れる会社づくりを続けていきたいと感じました。

株式会社隅田鋲螺製作所

創業年(設立年)

1941年

事業内容

各種鋲螺及び締結部品の製造・販売

所在地

大阪府東大阪市金物町1-8

資本金

5,000万円

従業員

73名

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