株式会社志村精機製作所
代表取締役 志村哲央
金属の切削加工と、樹脂の切削加工。この二つを高い精度で両立できる企業は、決して多くない。多くの企業が管理の煩雑さやノウハウの壁からどちらか一方に絞る中、志村精機製作所はこの二領域を高いレベルで両立させ、独自の強みを築いてきた。四代目として同社を率いる志村哲央社長は、技術者としての顔を持ちながら、時代の変化に合わせて事業の柱を大きく組み替えてきた人物である。かつて主力だった事務機・カメラ関連の仕事から、今では半導体や医療分野へと軸足を移し、価格ではなく技術で選ばれる会社であり続けている。そんな志村社長に、同社の社風や今後の展望についてお話を伺った。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
人のつながりが生む、アットホームな一体感
同社の社風を一言で表すならば、「アットホームな一体感」である。なぜなら、志村社長自身が人と人との繋がりを何よりも大切にしており、社員間のコミュニケーションが仕事の質にも直結すると考えているからだ。その象徴が、毎年開催するようにしているという忘年会である。東京と千葉、拠点ごとに分けず、あえて全社合同で、家族の参加も歓迎する形で実施している。普段顔を合わせる機会が少ない拠点間であっても、年に一度は互いの状況を語り合える場を意図的につくっているのだ。社員旅行もまた、社員間の交流を深めたいという想いから続けている取り組みの一つである。かつては役員主導で行われていた企画も、今では社員が主体的に立ち上げるようになったというのだから、驚かされる。こうした積み重ねの一つひとつが、拠点や世代を越えて社員同士が繋がり合う、同社ならではの温かい社風を確かに育んでいるのだ。
二つの素材を、高精度で使いこなす技術力
同社の独自性は、金属と樹脂という二つの素材を、共に高い精度で加工できる点にある。多くの企業は管理の煩雑さやノウハウの壁から、どちらか一方の素材に特化するのが一般的だとされる中で、同社はこの二領域に長年向き合い続けることで、他社にはない対応力を築いてきた。拠点ごとに得意な素材を分けて管理することで、効率と品質を両立させているのだ。お客様からしても金属と樹脂の両方を一社で任せられ、微細な部品加工まで幅広く対応できる、これほど心強い存在はないに違いない。価格競争に走るのではなく、「品質と技術力そのもの」で選ばれることに、同社はこだわり続けてきたのである。その姿勢は、事務機やカメラ関連が中心だった事業を、半導体や医療分野へと柔軟にシフトさせてきた原動力にもなっている。この二つの素材を極める技術力と、品質へのこだわりこそ、他社にはない同社の強みである。
技術で切り拓く、未来への挑戦
同社が目指す未来は、一つの分野に依存せず、常に新たな領域へと挑戦し続ける企業になることだ。というのも、これまでも事務機やカメラといった主力事業が、時代の変化とともに縮小していく経験をしてきたからだ。そこで今は半導体関連の仕事を大きな軸としながらも、そこに頼りきりにならない体制をつくっていく必要があると考えている。今は好調であっても、いつまた状況が変わるかわからないからだ。だからこそ医療分野や宇宙関連といった新しい領域にも、少しずつ挑戦を始めているところである。「技術を評価してくれる場所なら、業種にこだわらず飛び込んでいきますよ」。そう語る志村社長のもとには、実際、展示会で思いがけない業種の方から声がかかることもあるというから面白い。こうして特定の業種の枠にとらわれず、常に領域を拡げ続けること。それこそが、同社が描く未来の姿である。



妥協なき技術が、次の信頼をつくる
志村社長が経営において一番大切にしていることはどんなことですか?
私が一番大切にしているのは、「人」と「技術」の両方です。社員が弊社に入って良かったと思ってもらえなければ、会社は成り立ちません。やりがいを感じてもらい、こんなこともできるんだと感じてもらうこと。そのためには、コミュニケーションを大切にしながら、人を大事にする姿勢が欠かせないと思っています。そうした関係性の中でコミュニケーションが深まれば、自然と技術力も底上げされていきます。私が持っている以上の技術を、社員の皆さんにも身につけてもらいたいですし、それが新しい仕事の獲得にもつながっていくはずです。実際、海外案件も着実に技術力で獲得できている部分がありますから。人を大切にすることと技術を磨き続けること、この両輪が今の弊社をつくっています。
志村社長のものづくりに込める想いを教えてください。
先日、展示会に自分でつくった小さなハサミのサンプルを持っていきました。実際に切れるように刃を合わせてかしめてつくったものでしたが、それを見た方から「模型に持たせたら面白い」と声をかけていただき、「このハサミ買えないんですか」と聞かれることも何度かあったんです。お金儲けのつもりでつくったわけではなく、こういう技術を持っていると知ってもらいたい一心で作ったものでした。こうした遊び心のあるものづくりは、効率だけを追い求めていたら生まれてきません。現場のメンバーもこうした自由な発想でのものづくりをしている時の方が、楽しそうに見えるんです。遊び心を持ってものづくりに向き合うこと、そこにこそ、ものづくりの楽しさがあるんだと思うんです。
これからの志村精機について、思い描く姿を教えてください。
今、それぞれの幹部が得意な領域で力を発揮し、役割分担も少しずつ形になってきていると感じています。そうした中で、これから先に見据えているのは、この志村精機の技術を次の世代へつないでいくことです。まずは身近な社員へ技術を伝え、そこからさらに下の世代へと裾野を広げていきたいと考えています。時間はかかるかもしれませんが、焦らず、一人でも多くの社員に技術を渡していきたいです。社員一人ひとりが技術者として力を発揮できる組織をつくることは、父の代から続く夢でもあります。みんなが楽しくものづくりができる会社であり続けること。それこそが、私にとって一番の理想です。
行動力が信頼に会社を支え続ける大きな柱
株式会社志村精機製作所
工場長 中川豊文
金型の設計から製作、そして成形品として形になるまで。ものづくりの現場では、この一連の工程を一貫して担える人材は決して多くない。中川様は、志村精機製作所の東京本社工場と第2工場、2拠点の製造・品質管理を統括する責任者として現場を束ね、会社を牽引する存在だ。中川様が担う仕事というのは、単なる技術者にとどまらず、見積もりや顧客との交渉にも自ら踏み込み、営業と現場をつなぐ役割にまで及ぶ。前職では設計職として、部品図面を金型会社に依頼する立場だった中川様。20年にわたり金型一筋で技術を磨き、未経験の領域から今では会社に欠かせない存在として、多くの部下を率いる立場になった。そんな中川様に、仕事へのやりがいやこれからの目標について伺った。
伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
決められた仕事から、新たな挑戦ができる世界へ
中川様の背中を押したのは、「いろんなことをやりたい」という、当時から抱いていた強い想いだった。前職は、決められた業務を確実にこなすことが求められる環境だったという。設計職として図面を描き、金型会社に製作を依頼する立場にありながら、次第に「つくる側」の仕事にも興味を持つようになった。そんな時、志村精機製作所が新たに金型事業を立ち上げるにあたっての求人を目にする。金型は未経験の領域であったものの、「やりたい」という気持ちだけを頼りに迷わず電話をかけ、自ら志望したそうだ。志村精機に入社してからは金型一筋で技術を磨き続け、今では東京本社工場と第2工場、2拠点の製造・品質管理を統括する責任者となった中川様は、会社にとって欠かすことのできない人財である。未経験の領域にも臆せず飛び込んだ、この時の行動力こそが、中川様のキャリアの原点となっている。
自分の成長より、部下の成長が喜びに
中川様が仕事において最も大きなやりがいを感じる瞬間。それは、部下の成長を実感した時だという。以前は自分自身の成長に喜びを感じることが多かったが、今では部下の成長を見ることに、より大きな楽しさを感じるようになった。中川様が幅広い世代のメンバーと向き合う中で大切にしているのが、「自分自身に矢印を向けて考える」という姿勢を伝えることだ。思うようにいかないことがあっても、「自分に何ができるか」と考えることで、仕事への向き合い方は変わっていく。中川様は対話を重ねる中で、そうした考え方を伝えているそうだ。すると少しずつ、部下の仕事への向き合い方にも変化が見られるようになったという。特別な仕掛けを用意するのではなく、一人ひとりと向き合いながら、その変化を見守る。そうして部下が成長していく姿を実感できることが、今の中川様にとって大きなやりがいとなっている。
「長く存続してほしい」その一心で向き合う日々
中川様が思い描く未来、それは「会社が存続してほしい」というシンプルながらも強い願いである。これは、20年にわたり勤務する中で、会社の好調な時期と厳しい時期の両方を経験してきたからこその想いだ。今は決して悪くない状況だからこそ、次に訪れるかもしれない厳しい局面にどう備えるかを常に意識している。そのために向き合っているのが、属人化した業務体制の改善といった組織課題である。第2工場を任された際に実践した「自主的に取り組む」という考え方を、他拠点にも広げていきたいと考えている。指示に従うだけでなく、自ら考えて動く風土を築いたことが、かつての成功体験になっているという。東京と千葉、拠点ごとに文化は異なるが、だからこそ統一を急がず、互いの良さを共有し、課題を共に乗り越えていきたい。こうした姿勢の根底にあるのは、「会社が長く存続してほしい」という、中川様の変わらぬ願いである。



一つひとつの技術に、最大級のこだわりを込めて
お仕事に向き合う上で大切にしている考え方は何ですか?
私が大切にしているのは、「顧客ファースト」という考え方です。というのも、たとえば、自分の立場からの都合を優先してしまうと、現場と営業がぶつかるケースがあります。ただ、本当はお客様が求めていることを基準に考えるべきで、そのためにぶつかるのなら、むしろいいと思っています。これは前職で設計という上流工程に携わっていた経験が影響しているのかもしれません。お客様が本当に何を求めているのかを考える視点は、その頃から自然と身についていた気がします。製造業ではありますが、ある意味サービス業に近い部分もあり、お客様が満足してくださることこそが、最終的なゴールだと思っています。
金型や成形への新しい発想はどこから生まれるのですか?
正直に言うと、やりたいことやアイデア自体はいつもたくさんあります。というのも、展示会に足を運んだり、他社の工場を見学させていただく中で、自然と新しい知識や刺激が入ってくるからです。ただ難しいのはそこから先で、アイデアを実際の仕事に落とし込み、形にしていく作業には、相応の行動力が求められます。やりたいことがいくらあっても、すべてをやりきれるわけではないのが正直なところです。それでも、外部との接点を持ち続けることが、新しい発想の土台となっているのは間違いありません。だからこそ、忙しい中でも、なるべく展示会や他社との交流の機会は大切にするようにしています。このように、外の世界に触れ続けることこそが、新しい発想を生み出す一番の近道だと感じています。
中川様に聞く、「志村社長のここがすごい」
技術やものづくりへのこだわりを、今も変わらず持ち続けているところだと思います。経営判断において、お金になるかどうかだけで決めるタイプではないんです。面白そうだ、チャレンジしてみたいと感じたら、率先して動いていく。その根っこにあるのは、「ものづくり」そのものへの純粋な楽しさなんだと思います。だからこそ、社員もものづくりを楽しめるように、周囲の声に向き合ってくださいます。仮に現場でトラブルが起きた時も、まずは当事者双方の話に耳を傾けるところから始めてくれるんです。チャレンジを恐れない強さと、みんなの声を大切にする謙虚さ。その両方があるからこそ、ものづくりへのこだわりも強くなっていくんだと思います。それが、志村社長らしさであり、私が尊敬しているところです。
創業年(設立年)
1964年
事業内容
樹脂、金属の試作と量産
精密機器、事務機器、光学機器、医療機器の切削加工
所在地
東京都大田区東馬込1-49-6
資本金
1,000万円
従業員
84名(2026年現在)
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