株式会社富士製作所
世界基準を見据えた製品づくりと挑戦

株式会社富士製作所

代表取締役社長 村上吉秀

今回は、プレスベアリングで業界シェアNo.1を誇る富士製作所の三代目、村上吉秀氏にお話を伺った。学校を卒業後、設計会社に勤務。当時、後を継ぐことは全く考えていなかったという吉秀氏だったが、前職で自身が設計した店舗が、どんなに繁盛しても自分たちには還元されないことに虚しさを感じていた。そんな時、先代の父から声がかかった。当時、入社には消極的だったが、ある時、メーカーは製品をつくって売れば、自分たちに還元されるということに気づき入社を決意。現在はベアリングの他に自社開発のFUJI NINJA WHEELが「2020年度 グッドデザイン・ベスト100」「グッドフォーカス賞[技術・伝承デザイン]中小企業庁長官賞」を受賞するなど、輝かしい業績を残す同社について伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

ワンマン体制からの脱却

村上社長の就任以降、同社の社風は大きく変わった。なぜなら、前社長のトップダウン体質のもとでは、社員は常に社長の顔色を伺い、不都合な情報が上にあがってこないような閉塞感が社内に蔓延していたからだ。そうした「ものが言えない」組織風土を変えるために、村上社長は信頼関係の構築を進めた。まず、開発・製造・営業など現場を4年かけて回り、業務を理解しながら社員一人ひとりとの関係づくりを進めていった。また、お取引先とも積極的に関係性を築くなど、社内外からの信頼を得る努力を重ねていった。そうして改革を進めていた最中、リーマンショックによる売上半減、そして前社長の急逝という形での事業承継と、困難が重なり社内には重苦しい空気が漂っていた。そんな雰囲気を打破するべく、長らく休止していた社員旅行や忘年会などの社内イベントを復活させ、積極的な交流を図った。「コミュニケーションを取りながら互いを理解し合い、思いやりを持って謙虚にやっていく」という思いを大切に、社員と向き合い続けた結果、社内には「皆で困難を乗り越えよう」という一体感が生まれ、社風は大きく変わっていったのである。

一貫体制とグローバル展開が生む競争力

同社の強みは、製造から販売までを一貫生産できる体制にある。その理由は、大きく3つのポイントに集約される。第一に、プレスや切削を中心に、金型の設計から最終組立までを社内で完結できるため、高品質でありながらコストを抑えた製品づくりが可能になること。第二に、この一貫体制によって、お客様の多様なニーズにも柔軟かつスピーディに応えることができる点。そして第三に、販売面においても国内外ともに商社を通さず、直接販売を行える独自の販売網を構築しており、同社のグローバルな競争力を下支えしているという点である。実際、1970年から始めた海外展開では、販売拠点を上海に、製造拠点をベトナム・ホーチミンに置き、現地での迅速な対応と高いコスト競争力を両立。こうした体制を活かした高精度な製品は、大手自動車メーカーの高級車にも採用されるなど、その実力が確かな形で評価されている。短納期・高品質・低コストを実現する同社の生産と販売の仕組みを活かし、さらなる成長への期待が高まる。

創業100年に向けたビジョン

同社は2039年の「創業100周年」に向け、売上100億円の達成を目標に掲げている。これは単なる数字の達成ではなく、自社製品を「世界標準」へと高めるという明確なビジョンに基づく挑戦である。そのために、まずは製品の品質と価値を磨き上げ、全世界から選ばれる企業となることを目指している。現在、同社が開発し、特許を取得した「FUJI NINJA WHEEL」や「オムニホイール」は、自動搬送車の車輪として大手自動車工場で、すでに採用されている。これらの製品は、真横や斜めにも自在に動くという特性を持ち、従来のキャスターでは実現できなかった高機能性を発揮している。さらに、移動型レントゲン機などの医療機器への採用も進んでおり、世界的な医療機器メーカーからの引き合いも増加し、今後、さらなる発展が期待できる。村上社長は「自動搬送車分野でのナンバーワンを目指し、文化となる当たり前の製品を世界中に届けていきたい」と語る。100周年に100億円という目標は、その覚悟と展望の象徴なのである。

物流」というインフラへの貢献

御社が現在、取り組んでいることは何ですか?

製造業として、あらゆるインフラへの貢献を考えた事業を展開しています。例えば物流業界で使用されているコンベヤローラを、以前はベアリングのみの製造だったところから、ローラも製造してベアリングを組み入れてお客様に納品しています。更に人手不足が進み、その設備の老朽化に対してのメンテナンスができなくなってきているところへの製品供給からコンベヤ組付けまでを請け負っています。製造、販売、納品、組付けを一手に引き受けることで日本全国からローラの注文が増え、我々にとってもかなりのボリュームとなっていきます。そのことが物流というインフラへの貢献にも繋がっていきます。他にも医療現場で移動式レントゲン機や、空港の荷物の運搬用ラックのキャスターに「FUJI NINJA WHEEL」や「オムニホイール」が採用されることで、現場の方々の負担軽減にも役立っています。

新しい製品のアイデアはどのように考えられているのですか?

お客様から、こんなものはできないかという問い合わせなどをいただき、その課題に対して意見を出し合って肉付けをしていくという感じです。私は、前職が設計だったこともあり、本来なら真っ白い紙から図面を描いて、一から創りたいと思っているんですけど、一から創るのはなかなか難しいので、何か課題に対して製造技術、営業、品質保証のメンバーが集まって会議を重ね、そこから試作を行い失敗を重ねながら新しい答えを考えることが多いですね。例えば「オムニホイール」は、元々は空港の荷物を、飛行機の胴体の中に入れるコンテナステージに使用されていたものを、キャスターに採用すれば、場所を限定せずに移動できるようになるのではないか、というところから始まりました。根底にはインフラ業界に貢献したいという思いがあるので、製品の開発も基本はそこがベースになっています。

どのような人材を求められていますか?

思いやりがあり、謙虚さ、協調性がある。そういう方が1番だと思います。例えば、素晴らしい学歴があったとしても、年間で莫大な売り上げを上げる営業マンや、モノづくりですごい能力や知識がある人だとしても。やっぱり協調性がなければダメだと思います。スキルや知識に関しては、入社してから学べる仕組みも整え、入社後でも成長できるので、やはり謙虚で協調性がある人になりますね。他には我慢ができる人です。理由は現在の場所に工場を移転してから、敷地内を全面禁煙にしました。健康面もそうですが、自己管理ができることが必要だと思います。禁煙を実施するにあたって1年後に工場を移転します。新しい工場に移ったら禁煙にしますということを社員のお奥様やご家族の方に手紙を書いてUSJにご招待しました。それはご家族にも禁煙の応援をしていただくことへのご協力と、日頃の感謝を込めて実施しました。

愛社精神を発信する行動派リーダー

愛社精神を発信する行動派リーダー

株式会社富士製作所

生産部部長兼経営企画室室長代理 坂下智浩

入社15年目の坂下部長は、現在、生産部部長と経営企画室室長代理を兼任している。「地元伊賀の製造メーカーで仕事がしたい」という想いから転職を決意し、転職活動を始めた。その際、同社の募集を偶然見つけたことで入社した。ベアリングという業界の知識はなかったが、製造メーカーで自社製品を売っていくことに魅力を感じ、入社を決意した。本来は前職の経験を活かし営業職として入社しているが、そこから開発・設計・生産と、幅広い部署を歴任し今に至る。そんな坂下部長は、過去、社内の改革について、自身の進退をかけて社長に直談判し、社内改革チームを発足させ、推し進めていった実績がある。その功績が認められ、現在の役職に抜擢された。社内での信頼も厚く自らが行動することで可能性を広げてきた坂下部長に、仕事のやりがいや今後の夢について伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

地元からの新たな領域の挑戦

坂下部長が同社に入社した理由は、地元である伊賀市で仕事がしたいという思いと、自社製品を販売するメーカーの営業がしたいという明確なビジョンを持っていたからである。学校を卒業後、鈴鹿市で自動車販売店の営業に従事していた。同じ三重県とはいえ、自身の地元である伊賀市とは全く違う環境で働く中、地元への思いが次第に強くなり、転職を決意。その際に同社の募集を偶然見つけたという。同社の主力製品のベアリングや、マテハンという業界についての知識はなかったが、自身が次の目標にしていたメーカーでの営業ということもあり、すぐに応募。結果、採用となり晴れて同社でのキャリアをスタートさせた。地元での再スタートとキャリアの新たな挑戦を同時に実現できた点が、入社の大きな決め手となったのである。

経験に裏打ちされた幅広い業務領域

坂下部長は、生産と経営の両方に携わる現在の立場に強いやりがいを感じている。なぜなら、自らの判断や行動が会社全体の成長に直結しているという実感があるからだ。7年前、従来はベアリング単体を顧客に納品していたが、ネット通販の拡大を背景にマテハン機器の需要増加を見越し、新たに自社のベアリングを組み込んだコンベヤローラの生産を決定した。同社はそれまでコンベヤローラは製造していなかったため、一からのスタートであったが、生産技術担当や製造部門のスタッフと力を合わせ体制を構築。結果、お客様から求められる厳しい納期や品質基準を満たすことができたのである。さらに品質面では、既存メーカーを上回るとの高い評価を得ることもできた。坂下部長は現在、生産のみならず、経営面でも事業計画の立案やビジョンの策定などにも携わっている。こうした多岐にわたる役割を担うことができるのは、営業・開発・設計といった多様な経験をしてきたからに他ならない。一つの判断が会社全体に影響を与えるという責任も大きいが、その分だけやりがいも大きいと坂下部長は語る。現場と経営の両輪で挑戦を続ける姿勢が、同社の未来を着実に形づくっている。

自社の誇りと愛社精神の醸成

坂下部長が目指す姿は、経営理念にも掲げられている「正直な意見交流のできる誠実な会社」の実現である。なぜなら根底には「会社を好きになってくれる仲間を増やしたい」という強い想いがあるからだ。それは社員一人ひとりが会社に誇りを持ち、愛社精神を育むことが会社全体の成長や売上にも貢献すると考えているからである。そのために大切にしているのが、日々の何気ないコミュニケーションによる職場の雰囲気づくりである。そうした雰囲気が会社の風土となり、社員同士が自然と関係性を築ける土壌を育み、社員と会社が相互に信頼し合うようになると考えている。他にも坂下部長は自社の製品が担う社会的な役割にも強い誇りを持っている。当たり前のように品物が届くこの時代において、物流を支える技術は人々の暮らしを根底から支えるインフラと言える。そうした中、次に目指すのは、物流の「当たり前」を変えるような革新的な製品を世に送り出すことだ。ベアリングにとどまらず、生活や物流の在り方そのものに変革をもたらすような新しい技術を創出することで、業界全体に新しい価値を提示したいと考えている。社員と共に会社を好きになりながら、物流の未来を切り拓いていく。その挑戦はすでに始まっている。

愛社精神が広がる職場づくり

今後の展開について、進化させていくところは何ですか?

創業86年目のこの会社が、今大きな転換点にあると思っています。というのも、これまで弊社でつくってきたベアリングのラインナップやコストなどが、時代や市場の流れと少しずつギャップが出てきていると感じているからです。例えば、中国からの輸入品が非常に安価で手に入るようになってきていて、なかなか日本でつくる当社の製品のコストが合わないというのが現状です。ですので、今のこの状況をどう乗り越えていくかというのが、私にとっての宿題だと思っています。まずは3年を目標に、品種や生産方法、そして社内の利益構造を見直していくことで、しっかり時代の流れに合わせた体制をつくり、次のステージに向けて準備を整えていきたいと考えています。

会社を好きになる仲間を増やす具体的行動は何か行っていますか?

現在社内で行っている取り組みに「金ピカ」があります。これは土曜日の休日を年に2回出勤日に変えて、普段できない社内の掃除や補修作業などをみんなで行う活動です。当初は有志のみで全社員の3割程度の参加でしたが、今では全員参加型の活動になっています。正直、不満の声が出るかと思っていましたが、年1回実施している社員アンケートでは「金ピカ」が一番残したい社内活動に選ばれたんです。これは本当に嬉しかったですね。有志参加型の時から積極的に参加してくれている社員には感謝の気持ちを伝えるようにしていたので、そうした積み重ねが実った結果だと感じています。そこから会社を好きになる、いわゆる「愛社精神」につながっていくと実感しています。みんなが会社をきれいにしていくという共通の目的に取り組むことで、仲間意識も芽生え、より会社を好きになる仲間が増えていくと思っています。

より社内を良くしていくための活動は何ですか?

組織を良くするためには、村上社長が発信している「自走できる会社を目指そう」ということについて実践して行くべきだと考えています。そのためには全員が積極的に考えて行動する文化を根付かせることが必要です。文化の醸成を促すための取り組みは、私が所属する経営企画室を中心に行っています。具体的活動として、表彰制度、サンクススタンプカード、QCサークル活動、部署を横断的にチームを作る小集団活動など、全社員が活躍できる環境づくりを積極的に推進しています。他にも資格取得支援では会社が奨励する技能士や資格を取った際には、お祝い金プラス資格手当という形でサポートも行っています。また入社3年以内のQC検定三級取得を義務化し、係長以上にはビジネスマネジャー検定取得を必須条件にしたり、経営者の感覚を養えるようにということで、マネジメントゲームMG®の研修を受けたりと、文化の醸成よりも一歩進んだ幹部育成のための取り組みも行っています。

監修企業からのコメント

コメント
本日は、ご取材へのご協力誠にありがとうございます。御社が取り組んでいる「インフラへの貢献」は、これからの日本の発展に大きく寄与していくと確信しております。今後のご活躍を楽しみにしております。

掲載企業からのコメント

コメント
本日は、取材いただきありがとうございます。私たちがパーパス(存在意義)として常に意識している「世の中を豊かに便利にするモノやサービスを発想し、文明・文化を創造する」という想いを忘れず、まずは創業100年に向けて、これからも精進してまいります。

株式会社富士製作所

創業年(設立年)

1939年

事業内容

プレスベアリング、及びコンベヤパーツの設計・製造・販売

所在地

三重県伊賀市炊村3108

資本金

5,000万円

従業員

57名

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