その前線に立つ
株式会社木内計測
代表取締役社長 木内啓文
計装とは、温度や圧力といった設備の状態を測定・制御し、安全かつ安定的に稼働させるための技術である。各工程が正しく機能していても、設備全体が問題なく動くとは限らない。今回取材を行った株式会社木内計測は、点検や組立にとどまらず、実際の動作確認までを一貫して担い、設備全体を繋げている。
創業当初は計器やバルブの代理店販売からスタートし、約10年でメンテナンスへと軸足を移した。さらに、東日本大震災を機に原子力発電所が停止したことを背景に、工事や建設分野へと事業領域を広げてきた。現在では電力会社をはじめ、日本のインフラを支える存在へと成長している。
同社の5代目社長として事業を率いる木内氏に、同社の社風や今後の展望について話を伺った。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
「誰のために」を問い続ける
同社の社風の根底にあるのが、「誰のために」という問いである。それは社訓「誠実」「努力」「協調」に向き合い続けてきた中で育まれた。
その姿勢を象徴するエピソードがある。2019年の現社長就任時に、役員・役職者15名ほどが集まり、会社の将来を見据えたグループワークを実施した。何が課題で、何が問題なのかを徹底的に議論し、社長自身はあえて議論に加わらず、役職者たちが自らの言葉で方向性を示す場とした。
当時は、部下が上司の顔色をうかがうような雰囲気もあったという。だからこそ視野を外へ向けてほしかった。トップを見るのではなく、お客様を見る、社会を見る、仲間を見る。その意識を共有することから始めたのである。
その後も方針説明会や記念行事のたびに社訓を語り続け、価値観を浸透させてきた。その結果、社訓は社長だけの言葉ではなく、社員一人ひとりが語れる共通言語となった。「誰のために誠実であるべきか、努力するべきか、協調するべきか」考える。それが同社の社風である。
時代を読み、やり続けたメンテナンスの道
同社の独自性は、ものを「つくらない」という選択をし、メンテナンスの分野で技術を磨き続けてきた点にある。
高度経済成長期は、設備をつくり、増やすことが価値とされた時代であった。多くの企業が製造や建設へと舵を切るなか、同社はあえてメンテナンスに目を向けた。手間がかかり、人に依存し、決して効率の良い領域ではない。それでもこの分野を選び、業界内でも長年の実績を重ねてきたことが、結果として他社が容易に参入できない市場を形づくった。
同社の仕事は、機器を売ることでも、設備をつくることでもない。現場に入り、音や振動、数値と向き合いながら、泥臭く調整を重ねる。ビジネスモデル上、売上は労務単価が中心となり、一人当たりの売上が高くなるわけではない。それでも70年にわたり技術を積み上げ、確かな信頼を築いてきた。
時代背景を読み、その道を選び、やり続けたからこそ、市場の中で確かな存在感を放ち続けているのである。
技術で守る、日本のインフラ
同社の展望は、日本のインフラを支え続けることにある。
現在、計測業界では深刻な人材不足が進んでいる。仮に、人材不足で事業継続が困難になる企業が増え、計装・メンテナンスの技術が失われれば、日本のインフラそのものが揺らぎかねないだろう。
そんな中で、同社は自らを「インフラを支える最後の会社」と位置づけ、その責任を強く自覚している。だからこそ、衰退につながる現状維持ではなく、成長を選び続けることが使命であると考えている。
その実現には、社員の待遇を整え、安心して技術を継承できる環境をつくることが欠かせない。同時に、同社が培ってきた技術の価値を正しく伝え、理解してもらうことも重要である。価格だけで評価されるのではなく、相応の価値として正当に認められる存在であり続けなければならない。
唯一無二の技術で社会を支える。その貢献価値は、これからさらに高まっていくだろう。同社は今後も成長を止めることなく、日本のインフラを支え続ける存在であり続ける。



年に1回、各拠点から選ばれた代表者が出場している
人で支え、人でつなぐインフラの未来
木内社長が経営をするうえで、一番大切にしていることは何ですか?
私が経営で一番大切にしているのは、「人間味」です。
弊社の仕事は、ものづくりではなく、すべて人がやる仕事です。だからこそ、技術や仕組み以上に、人としてどうあるかが大切だと思っています。ホームページでも「木内の中には人がいる」とうたっているように、一人ひとりに目を向ける姿勢は、経営の根っこにある考え方です。
評価制度を考える時も、温かみのある人であってほしいという話をしました。お客様に対しても、仲間に対しても同じです。実際、70代になっても現場に立ち続けている社員もいます。仕事が好きだという気持ちや責任感、人とのつながりがあるからこそだと思っています。
人を大切にする会社でありたい。その姿を自分自身も見せられるよう、これからも向き合い続けていきます。
木内社長の熱量の源泉はどこから来るんですか?
私の熱量の源泉は、やっぱり人ですね。お客様に喜んでいただき、その姿を見た社員もまた誇りを感じ、長く勤めてくれる。その循環こそが、私にとって一番の原動力になっています。その積み重ねが、「まだまだやらなあかんな」と思わせてくれます。正直、これからどうなりたいかを細かく描いているわけではありません。なるようにしかならないとも思っています(笑)。ただ、今はまだ変えたいことがたくさんあります。業界のこと、会社のこと、社員の働き方。そうした課題が目の前にある限り、熱は冷めません。
この熱量がなくなった時が、引退のタイミングなんでしょうね。でも今のところ、その気配はまったくありません。ですので、まだまだ全力で走り続けます。
社員やこれから入社する方へ伝えたいことは何ですか?
ぜひ、この業界の「顔」になる人を目指してほしいと思っています。
計装のメンテナンスの仕事は、担い手が減りつつある分野です。だからこそ、「あなたがいないとインフラが守れない」と言われる存在になってほしい。会社としても、そうした人材を一人でも多く育てていきたいと考えています。
実際に、バルブのメンテナンスに不可欠な切削加工や、原子力発電所建設計装など、高い専門性が求められる技術を有する社員が在籍しています。10年後、20年後に彼らがいなければどうなるのか。そう考えると、同じように頼られる存在を何人も育てていく必要があると感じています。
そのための環境づくりには、会社として全力で取り組みます。一緒に、インフラを守る仕事に挑戦していきましょう。
創業年(設立年)
1954年
事業内容
工業計器及び自動制御弁等のメンテナンス
プラント計装工事の設計・施工
所在地
大阪市天王寺区清水谷町4番12号
資本金
6,000万円
従業員
425名
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