マテックス株式会社
代表取締役社長 松本浩志
マテックス株式会社は、建築資材の卸販売を中心に展開している老舗企業である。1928年に創業した同社は間もなく100周年を迎えるが、時代の変化に合わせて業界の多様なニーズに応え、その実績を重ねてきた。2009年に代表に就任した松本社長は、アメリカの大学とビジネススクールで経営を学び、MBAを取得後大手電機メーカーで国際業務を経験。マテックスに入社後は、社内改革や営業を通じて組織の本質に向き合ってきた。「成果を生み出す土壌づくり」を軸に、理念やパーパスの再構築を推進。「窓から日本を変えていく」という言葉は、単なるスローガンではなく、「この時代を奇跡的に生きている私たちの使命」として掲げ、社会と未来にしなやかに呼応する組織づくりの象徴となっている。今回はその背景と展望について話を伺った。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
意志をもって文化を育てる
現在、同社には誰もが安心して意見を発信できる、風通しの良い文化が根づいている。その背景には、かつて同社に存在していた「上司が絶対」という厳格な上下関係がある。松本社長が入社した当時、社員はプレッシャーを感じながら成果を出す働き方が常態化していたという。そうした働き方に違和感を抱き、それが当たり前とされる風土に疑問を持ち続けた松本社長は、社長就任後、支配型から支援型のリーダーシップへと方針転換を図った。社員から価値観や考え方の声を集め、200を超える意見の中から厳選して「コアバリュー」を選定。「自然にできあがる風土」から「意志をもって育てる文化」へと変革を進めた。さらに2019年にはこの指針を実践的な形へと進化させ、価値観の共有が組織の基盤となった。その結果、社員一人ひとりの個性が尊重され、協力し合いながら成長できる組織へと大きく変わったのである。
成果を生み出す環境づくり
表面的な成果や制度の整備ではなく、「土壌づくり」に力を入れてきた点が同社の独自性と言えるだろう。先述した社風ともつながるが、理念や文化を育てる風土を耕すことで、組織の目的と社員一人ひとりの意志が結びつく基盤が形成された。その文化が、同社の卸売業の枠を超えた多くの挑戦を生み出した。例えば、「注文をつくる」「できるを増やす」「存在に意義づけをする」といった独自の視点で、顧客や地域社会に深く貢献するプロジェクトが次々と生まれている。さらに、社員の人間的成長を支える社内大学「マテックスカレッジ」や地域とつながる場としてのサードプレイスの開設も、その延長線上にある。これらの背景にあるのが、松本社長が社長就任の際に、先輩社員やOBの声に耳を傾け、90年以上続いてきた会社の「本質とは何か」を見つめ直したこと。その過程で得た「成果を追うよりも、成果を生み出す環境づくりこそが重要である」という考え方に基づき、これらの文化が形成されてきたのである。
主体性を養い、理想の未来へ
同社の展望は、「職業人としてだけでなく、一人の人間としての成長が実感できる会社」をつくること。そのために、働き方の改革と学びの機会を積極的に整えてきた。これまでの日本型教育や企業文化は、指示に従う“自主性”に偏り、本来誰もが持っている“主体性”を奪っているのではないかという松本社長の気づきから様々な取り組みがスタートしている。個々が自らの意思で学び、動く「創造域」を支援する環境づくりとして開設された社内大学「マテックスカレッジ」。スキルだけでなく、人間としての成長も支援する場となっている。2023年には、本社近くにサードプレイス「HIRAKU 01 IKEBUKURO」を開設。世代や立場を越えた多様な人々が集い、対話や学びが生まれる空間を通じて新たな「“生きる”の可能性」を模索している。今後も同社は、「より良く働き、より良く生きる」未来の実現に向けて歩みを進めていく。



機能的視点と情緒的価値の融合
「窓をつうじて社会に貢献」という理念について教えてください
弊社では「窓をつうじて社会に貢献する」という理念を掲げ、卸売業の枠を越えて地域や社会とつながる企業を目指しています。その理念を具現化する取り組みの一つが、環境経営です。2010年より「エコアクション21」という環境省が推進する取り組みに参画し、どれだけ自社でCO₂を排出しているのかを定量化。2013年を基準に2030年に55%削減を達成しようという目標を掲げて参りましたが、実は、昨年の2024年に一気に61%の削減を達成しました。そこから、その知見を社外にも還元するためにパートナー企業向けに「SPRING Fest」というイベントを開催し、環境経営の共創を進めています。実際にこの場を通じて、自社でも環境活動を始めた企業が生まれるなど、理念に基づいた好循環が生まれており、経済的価値だけでなく社会的価値を提供することにつながっています。
製造と販売、それぞれの社員への教育はどのようなことを行っていますか?
弊社は、製造と販売という異なる立場の社員にも、共通した視座を高めることを大切にしています。仕事が「誰のために、何のためにあるのか」を見つめ直すことで、人と組織の成長につながるという考えが根底にあるからです。製造現場には外部の人を積極的に招き、仕事の背景や意義を見つめ直す機会を創出。展示会や全社セミナーでは、部門を越えた交流の場を設け、互いの理解を深めています。特徴的なのは、学びの場を「参加型」で設計している点です。社内イベントや勉強会などには公募制を取り入れ、好奇心や成長意欲を持つ社員が自発的に集う仕組みとしています。役職や年齢に関係なく意欲ある人にチャンスが設けられており、参加者が得た気づきは自然と社内へ還元されていきます。こうした取り組みにより、「仕事を作業で終わらせず、意味ある営みに昇華する」という文化が、徐々に全社へと浸透し始めています。
100周年に向けて、これから力を入れていく取り組みを教えてください
弊社が掲げる「窓から日本を変えていく」というビジョンは、単なる製品販売ではなく、暮らしや社会の在り方にまで踏み込む挑戦です。これまで窓の断熱性能や防災機能など“機能的ベネフィット”を発信してきましたが、今後は「窓辺で過ごす時間が人生を豊かにする」といった“情緒的ベネフィット”の提案にも注力していきます。そのために、自社だけで完結せず、地域や顧客とともに創造するプロジェクト型の展開を強化しています。実は、社員の自主的な提案から生まれた窓辺体験企画が、地域イベントで好評いただくなど小さな実践が社会的反響につながりつつあります。今後は、“いきるを満たす窓”という価値観を軸に、心と身体の健康、環境、教育といった領域でも貢献を広げることで、「窓から日本を変える」取り組みを一層進化させていく予定です。
信頼と実績を積み重ねる次世代の力
マテックス株式会社
池袋支店 稲垣萌菜
「窓の商社」という言葉が心を捉えたと語る稲垣さんは、就職活動中にキャリア形成論の講義で企業インターンに参加して同社を知った。一言ではイメージがつかない「窓の商社」という言葉のインパクトが心に残り、入社に至った。現在、入社2年目となり営業事務として見積もりの作成や受発注を担当し、社内外からの問い合わせに応える日々を送っている。最近では後輩への指導も担うようになり、徐々に「教える立場」へと成長。商品知識が求められる中、社内勉強会などを活用しながら日々学びを積み重ねている。自ら動き、興味を信じて踏み出した一歩が、今のキャリアにつながっている稲垣さんに、同社の魅力について話を伺った。
伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
思いとマッチした会社
大学3年生の夏、就職活動の中で企業のインターンシップに参加する機会を得た稲垣さん。その中で「窓の商社」という耳慣れない言葉に自然と目が止まった。そのワードが頭から離れず、独自で調べていく中で、同社の窓を通じた環境問題への取り組みを知る。大学時代は経済学を専攻していたが、就職活動の際にメディアを通じて環境問題に触れ、地球温暖化が促進されていることに危機を感じていた。自身もその問題解決に少しでも携わっていきたいという思いを漠然と抱いていたが、どのように実現するか悩んでいた時期であった。その思いが同社の環境への意識と合致し、「自分がやりたいことはこれだ」と信じて入社に至る。気になることを自ら積極的に調べ、行動した結果が最高のマッチングを生み出したと言える。この就職活動でも発揮された稲垣さんの行動力は、現在も仕事の中で発揮され高い評価を得ているのだ。
お客様や社会への貢献の実感
お客様との信頼関係を築き、現場の円滑な進行や品質確保に貢献していると感じる瞬間がやりがいであるという。実際に、お客様から「納期に間に合って助かった」「予定通りに工事が進んだ」と感謝の言葉をいただくことが多々あり、自分の仕事が現場の重要な一部であると強く感じている。特に、自身が手配した窓やドアがお客様の暮らしの一部となる様子を身近で感じることで、責任の重さとともに大きな達成感を得られている。また、同社の高性能な建材を正確かつ確実に届けることで、社会のインフラや環境対策の一端を担っているという自負も、モチベーションにつながっている。同社では、定期的にお客様からの声や成功例、失敗例が共有されるミーティングある。この取り組みがチーム全体の知識や対応力の向上に起因し、より良いサービス提供につながっている。このように切磋琢磨できる環境の中で仕事を進められることが、稲垣さんにとって大きな励みであるという。
信頼の積み重ねがファンを生む
「マテックスのファンを増やすこと」が夢だと語る。「この会社、この人だから頼みたい」と思ってもらえる関係性を築くことで、企業として選ばれ続ける存在になることを意味する。価格や納期といった条件が優先されがちな業界においても、「人」を通じて選ばれる企業こそが、長く支持されると彼女は考える。実際、同社の営業担当が、お客様から信頼され受注を得ているという事例に触れ、そうした姿に憧れを抱いている。だからこそ、自身も相手に寄り添った誠実な対応を心がけ、先回りの提案を意識して日々業務にあたっている。さらに社内においても、困っている人に自ら声をかけ、支え合える存在でありたいと語る。周囲の変化に気づく人間であり続けたいという思いが、彼女の仕事観の根底にはある。その姿勢が、同社の「信頼という礎」を支えていくに違いないだろう。



次世代へつなぐ先輩からの想い
自身の成長を感じる場面はどんな時ですか?
私が成長を実感するのは、知識や対応力が向上し、後輩に目を配れるようになったと感じた時です。1年目は自分の業務をこなすことで精一杯でしたが、2年目となり仕事の流れや対応のパターンを掴めるようになりました。その結果、タイムスケジュールを自分で立てられるようになり、同じ仕事量でも短時間でこなせるようになったと感じています。そうした“時間的・精神的な余裕”が、後輩への配慮へとつながりました。現在は新入社員のメンターも担当し、自分の経験をもとに少しでもサポートできるよう努めています。まだまだ学ぶことは多いですが、後輩に「頼れる先輩」と感じてもらえるよう、自分自身の仕事を磨きながら、相手に寄り添う姿勢を大切にしていきたいと考えています。
仕事をする上で大切にしている考え方は何ですか?
私が仕事をする上で意識しているのは、「相手の立場に立って考えること」です。日常業務の多くは見積もりや発注などですが、それを“作業”で終わらせず、誠意を持って対応するよう心がけています。たとえば見積もりひとつでも、ただ金額を提示するだけではなく、納期や他の選択肢など、お客様が求めている以上の情報を先回りしてご提供するよう努めています。この考え方は、弊社に入ってから先輩社員の姿を見て学んだものです。お客様の気持ちに寄り添い、丁寧な対応を徹底するその姿勢に感銘を受け、私も実践したいと思うようになりました。どこまでできるか限界もありますが、可能な限り相手にとって最善の提案ができるよう、常に意識しています。お客様との関係づくりにおいて、誠意と先回りの姿勢は、私の大切な軸です。
後輩に伝えたいメッセージはありますか?
後輩に最も伝えたいのは、「素直に学ぶ姿勢を持つことの大切さ」です。入社当初は分からないことがあって当然で、できないのも当たり前です。しかし、分からないことをそのままにせず、勇気を持って質問し続けることで、成長のスピードは大きく変わります。実際、私自身も入社1年目の頃は分からないことばかりでしたが、先輩方に何度も質問しながら一つずつ理解を深めていきました。そして今は、後輩のメンターとして関わる立場になり、気づいたことは「聞きやすい空気をつくること」も先輩の大切な役割だということです。忙しそうな雰囲気や壁を感じさせてしまうと、後輩は質問しづらくなります。だからこそ、私は常に笑顔で接し、どんな小さな質問にも丁寧に対応するよう心がけています。互いに信頼し合える関係が、個人の成長とチームの活性化につながると思っています。
創業年(設立年)
1928年
事業内容
ガラス・サッシ・エクステリア・インテリア建材の卸売り
所在地
東京都豊島区上池袋2-14-11
資本金
1億円
従業員
287名
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監修企業からのコメント
掲載企業からのコメント
弊社は創業以来、建築資材の専門商社として「誠実」と「挑戦」を大切に歩んでまいりました。今後もパートナー企業の皆さまと共に、新しい価値を創造し、業界の発展に貢献してまいります。本記事を通じて、当社の想いが少しでも伝われば幸いです。