九州木材工業株式会社
業界ナンバーワンを目指す歴史と技術

九州木材工業株式会社

代表取締役社長 角 博

昭和5年に創業した九州木材工業株式会社は、水溶性防腐剤の加圧注入による防腐処理電柱の製造から事業をスタートさせ、鉄道の枕木製造など「腐らない木」の製造において確固たる地位を築いた。その技術は現在の主力商品「エコアコールウッド」に引き継がれ、平成22年には世界遺産「厳島神社」の束柱の材料として採用された。そんな同社の4代目である角博社長は、大手損害保険会社に11年間勤務したのち、同社に入社。「いつか地元である九州の発展のために役立つ仕事がしたい」という想いを抱いていた中、学生時代から40年間取り組んでいたラグビーの先輩からのご縁がきっかけで入社に至ったという。今回は、まもなく創業100周年を迎える同社の取り組み、そして未来の展望について、お話を伺った。

伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質

職人集団から、組織力への進化

角社長が入社した頃の同社は、先代社長を中心に、それぞれの社員が、良くも悪くも個人商店という運営で成立しているような雰囲気であった。背景としては、長く地元の大企業との強固な関係性があったが故に、組織として運営せずとも会社が順調に成長していったという背景がある。こういった強固な関係性があることは非常に大きな強みであったが、大手企業からの転職であった角社長にとっては組織としての課題が多く感じられたという。それは中小企業の性質として一人ひとりの力で支えられている面が多く、その一人が万が一抜けた際の穴がものすごく大きいということをつくづく実感した。そこからどのように組織的にカバーしていくように進化させるか、ということが自身の使命であると気付いたのだ。今後は、組織力強化と同時に、会社の永続的な発展は「社員の幸福」から生まれるとの想いから、社員が人として成長でき、働きがいと自己実現を実感できるような社風を築くことを目指している。

お客様の要望や期待に応える技術と情熱が、新たな道を切り開く

木材加工という「メーカー」としての製造業と「サービス」という大きな柱が同社の独自性だと語る角社長。メーカ―としては、毒性のない独自の処理をして木材を30年以上もたせることができる「エコアコールウッド」の開発と、今までの不燃木材と違った初めての薬剤を使い、燃えない木材「不燃木」の開発を行なったという。日本に燃えない木材を製造している企業が何社かある中で、この商材は特許を取得し、他社の追随を許さない品質を誇っている。また、サービスとしては指導や考え方の軸にポイントがある。例えば、良いサービスをつくる秘訣として、「自分たち都合でものづくりをしたら、どれだけ良いものをつくっても絶対に商品は売れない」ということを社員に徹底的に指導しているとのこと。これにより、お客様からの要望には努力して応えようという姿勢が全社員に根づいているのだ。

社員を守り、夢のある次の100年を目指して

5年後には創立100周年を迎える同社が描く未来について、角社長は、業界ナンバーワン企業を目指し、日本を代表する木材保存処理・不燃木材加工メーカーとしての地位を確立することだと考えている。これは単に売上や利益の追求ではなく「社員の質、製品の品質」というナンバーワンである。そのためには社員のモチベーションが重要であると考えている。同時に「社員が夢を持てるような会社をデザインしていきたい」という思いも持っている。そのための取り組みとして、社員が働きやすい環境づくりを進めており、新しい工場の整備や最新の設備の導入、DX化の推進などを積極的に進め、安全で快適な職場環境づくりに注力している。その取り組みの背景には社員を最も大切にすることが経営者としての責任であり、社員の命を守ることが最優先であるという角社長の強い思いがあるからである。このように業界ナンバーワンを目指し、夢を持てる会社づくりに取り組む同社の今後に期待したい。

技術を活かし、ご縁を活かし、心を磨く

角社長が大切にしている考えとは何ですか?

私が大切にしているのは、「流れに逆らわず、与えられたご縁に素直に従うこと」です。なぜなら、自分の人生は、ご縁によって大きく形づくられてきたと感じているからです。実際に、前職への入社や結婚を機に現在の会社に入ることになったきっかけも、学生時代から続けてきたラグビーを通じたつながりからいただいたご縁です。そして入社後の新規取引先の開拓も、ラグビーの先輩、後輩を含めた関係者からの紹介によるものでした。私は、そうしたご縁に対して無理に抗わず、自然の流れに従ってきました。その結果として、今の自分があると感じています。もし変に抗っていたり反発していたら、今の私はいないと思います。これからもご縁と流れを大切にしてきていきたいと思っています。

九州木材工業の強みは何だと思いますか?

弊社の強みは、長い歴史と常に挑戦する姿勢にあります。私が入社してから様々な危機がありましたが、常にお客様からの要望に応える「積極経営」の精神と、木材と向き合ってきた自社の歴史の力で乗り越えてきたと強く感じます。そして自社には腐れに強い木材や、燃えない木をはじめとする高品質な製品を安定して供給する技術力があることです。その背景には、製品の供給を常に絶やさないために、初代社長の時代から山を買い、自社で所有していることも大きな要因です。木材を切るだけではなく、植えるという循環利用を徹底することで、供給を絶やすことなく続けてこられたのです。今後も、九州の自然の恵みと共に歩み、日本の大切な木の文化を守りながら、持続可能な社会に貢献していきたいと考えています。

社員教育において、どんなことに取り組んでいますか?

社員教育において、価値観の共有と社員一人ひとりの心を磨くことを大切にしています。具体的な取り組みは、環境整備活動として、掃除を10年前から徹底しています。全社員が一丸となって取り組み、社内を綺麗にしてお客様にも喜んでもらうことが、たくさん来てもらうようになるということに繋がります。掃除は技術と心が大切で、心を磨き、人間性も高めないと「掃除道」は突き詰められないのです。また、書籍を読んで感想文を書き美点凝視する場を設けています。そのことで、その人の価値観を知ることになり、認め合えることに繋がります。理屈で考えるのではなくまずは行動から実践し、そして後からでも心がついてくるようにと考えて取り組んでいます。

木への思いと情熱が育む未来への思い

木への思いと情熱が育む未来への思い

九州木材工業株式会社

営業グループサブリーダー兼製造管理チーム 田中 冬馬

学校を卒業し、音楽で生計を立てる夢を抱き、デビューを目指しながら飲食店で焼き鳥職人として働いていた田中さん。ある時、音楽活動で使用していたギターが木でできているということに気づき、素材で全然違う音が出るという木が持っている個性、魅力に惹かれていったという。そんな時、結婚という新たな夢のために音楽活動を一時休止し、就職活動を行った。その際、長い歴史のある九州木材工業という会社を知る。木に興味をもっていたことと、長い歴史、そして何より国産材を有効に活用するという会社の考えに共感したことが大きかったという。そこから面接を行っていくなかで、会社の雰囲気、他にはない技術に「是非ここで働きたい」という思いを抱いたという。そんな同社の魅力、夢などを伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

長い歴史と木材に魅了され

田中さんは、木という身近でありながら素材の持つ奥深さと個性に面白さを感じ、強く惹かれ、長く関わっていきたいと感じたことが入社の決め手である。学校を卒業後は、音楽の道を志ざしながら、焼き鳥店で働いていた。そんな中で、自身が大切にしているアコースティックギターを通じて、木材には一つとして同じものがなく、音色や質感に個性が表れることに興味を持ち始めた。その経験から、「木は生きている素材であり、時代に流されない魅力がある」と改めて気づいたのである。そして新たな家族を持つことがきっかけで地元へ戻り、就職を考えた際、歴史ある同社の理念や国産材を活かす姿勢、そして現場で働く社員の雰囲気にも強く共感し「ここでなら本気で木と向き合える」と感じた。音楽で培った感性が木材への関心につながり、それが同社との出会いに結びついたのだ。

木の魅力に惹かれ、関われる喜び

木は一つ一つ違う木目という個性、そして素材や湿度などでも変化する。それでいて温もりもあるという素材で、日本人にとっては、身近であり特別なものと感じているという。そう語る田中さんの仕事のやりがいは、自身が木材に関わる仕事に携わっていることだという。また、今日の福岡では、天神地区の再開発が進んでおり、新たな建造物が生まれている。そんな中、今まで木が使用されることが少なかったビルの外壁や公共施設などの非住宅分野での木材の需要が増加している。そこで使用される木のほとんどが特注品のため、営業から製造管理まで一貫して携わることで、設計者との調整や提案に深く関われることにも魅力ややりがいを感じているという。建築士との対話を通じ、単なる木材販売に留まらず、設計目線の提案が求められる場面も増えている。将来的には建築士の育成や、社内外の関係者と連携して新しい用途の開発にも挑戦し「木の持つ可能性」を広げていきたい。

「気遣い=木づかい」で描く未来

田中さんの思い描く今後の夢は「木材の新たな価値を創造し、社会に広めていくこと」だ。腐らず燃えにくい特殊木材の開発を通じ、これまで木が使われてこなかった場所へも提案が可能になり、ビルや駅舎、学校など非住宅分野への需要が高まっている一方で、お客様からの要望も多岐に渡るようになってきているという。例えば木材はコンクリートのような工業製品ではないため、どうしても紫外線を吸収してしまい、それが変色につながる。その変化を神社仏閣など歴史的建造物では「味」と捉えられるのに対し、他では劣化や、汚れと捉えられてしまうという矛盾もある。そういった消費者の認識が変化していってほしいという思いを持って取り組んでおり、それが使命であると語る。日本の文化や暮らしに根ざした存在である木の魅力、価値を次世代へと伝えていくことが、職人たちが口にする洒落の「気遣い=木づかい」に繋がっていく。その思いを広め、木材がもたらす豊かな未来を切り拓いていきたいという。

木を愛する心と、誠心誠意対応する「きづかい」

仕事をする上で大切にしている事はなんですか?

仕事で大切にしているのは、何事も継続が第一、そして誠心誠意対応し続けること、小さなことでも創意工夫することです。それは継続的な努力が信頼を生み、やがてお客様からの再依頼という形で返ってきます。営業を始めた頃はうまくいかないことも多かったのですが、例えばお客様への対応スピードだったり、小さな工夫や迅速な対応を積み重ねることが、その人の個性というか独自の色になっていく。そしてその人の記憶に残る、つまり名前を覚えてもらい、声をかけてもらえるようになりました。納品して終わりではなく、その後のフォローを丁寧に行うことが関係の継続に繋がります。こうした積み重ねが自分の色となり、信頼や仕事に結びついていくのだと感じています。

田中さんが強化したいと思う点を教えてください。

今後、強化したい点としては、設計側の視点からの提案に関して、もっと強化するべきだと思います。特に非住宅分野での木材需要が拡大し、一級建築士の方々とのやり取りが増えていますが、実際の木材の活用方法を「設計」と「販売」という両側面で見て落とし込んでいけるようにしていきたいと考えています。そのためには建築的視点からの提案力をもっと強化することが急務です。私一人で対応するのには限界があるため、建築士の採用や育成を進め、社内に知識の土台を築く必要があります。仲間とともに新しい技術や使い方をもっと提案し、木材の魅力を建築分野でも活かしていくことが私たちの使命であり、そこから売上にも繋がっていくと考えています。

今後、どの様なことに取り組んで行きたいと考えていますか?

もっと外に向けて、木の良さや正しい使い方を発信していきたいです。木はきちんとメンテナンスをすれば長く使えますが、それを知らない人がまだ多いんです。例えばウッドデッキも「すぐ腐る」と誤解されがちですが、防腐処理や定期的な手入れを行えば長く美しく使えます。その魅力や手入れのコツをSNSやYouTubeなどを通じて発信し、もっと木に興味を持ってもらえるよう努力しています。また、社内活動で行われている掃除などを通じて「気づく力」を養う取り組みにも積極的に参加して、自身の心を育てています。まだまだ全然足りていませんが、知識や経験を深めながら、木の魅力をもっと広げていきたいです。

監修企業からのコメント

コメント
この度はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。他社にはない製品開発の技術力という強みと、ますます高まる建築木材の需要は、より貴社が注目されていく事となるでしょう。まもなく創業100年ということで、今後の更なるご活躍を心より期待しております。

掲載企業からのコメント

コメント
この度はご取材いただき、誠にありがとうございました。当社の腐らない、燃えない木材は日本の文化、歴史を紡いでいく上で欠かせないものとなっていくという確信がありますが、木が持つ可能性をもっと追求して参ります。今後ともよろしくお願いいたします。
九州木材工業株式会社

創業年(設立年)

1930年

事業内容

保存処理木材の製造販売

所在地

福岡県筑後市大字和泉309-1

資本金

4,956万円

従業員

188名

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