株式会社TOK
これまでにない動きで次の100年をつくる

株式会社TOK

代表取締役社長 吉川桂介

東京都板橋区に本社を構える株式会社TOKは、産業機器や家具などに使用される可動部分に欠かせない精密部品を手がける老舗メーカーである。現在7代目となる吉川社長は、大学卒業後に大手化学メーカーに技術職として入社。10年勤めたのち、父親が経営していた株式会社TOKに転職した。入社後は営業部門の数値分析を担い、営業をサポートする業務から始まり、やがて前職でも経験があった海外事業の責任者を務め、ヨーロッパやアメリカをはじめとするグローバル展開にも携わってきた。2025年に創業100年を迎えた同社。今までの100年の歴史をもとにまだまだ変化を続ける社風づくりと、次の100年に繋がる展望について、吉川社長に話を伺った。

これまでにない動きで次の100年をつくる

自主性が育つ環境への転換

「自主性の尊重」、それが同社の社風である。吉川社長の入社当時、同社は既存顧客のフォローを中心に利益を上げ、安定した経営を維持していた。そのため、社内には新しいことにチャレンジするよりも、今あるものを大切に守ろうとする社員が多かったという。しかし、吉川社長の就任を機に、その社風に変化が現れ始めた。ドイツへの事業所開設を皮切りに、海外展開への取り組みが本格化。さらに、医療業界への進出といった新たな市場への挑戦も始まっている。従来の枠を超えた取り組みによって、組織全体が次のステージに向けて動き出しているのだ。そうした変化を支えているのが、「自ら考えて動く」という文化である。トップダウンではなく、社員一人ひとりが自律的に動けるよう、吉川社長はあえて現場に任せる姿勢を貫いている。その結果、小さな工夫や判断の積み重ねが組織全体の前進に繋がっている。今後、この自発的な姿勢が同社の原動力となり、新たな価値を生み出してくれるだろう。

顧客の信頼を築く、諦めない姿勢と提案力の強み

同社の独自性は「技術力」と「諦めない姿勢」である。特にカスタム品やオーダーメイド品の製作においては、「できるまでやる」という想いが社内に根づいており、他社では対応が難しいとされた案件にも粘り強く取り組んでいる。この姿勢は顧客からも高く評価されており、信頼関係の構築にも大きく寄与している。その背景には、高度な知識や発想力がある。しかし、同社の強みはそれだけではない。重要なのは、顧客の要望を真摯に受け止め、それを「当たり前のこと」として捉え、行動し続ける点にある。その継続が社員の意識や行動に浸透し、実行力となって発揮されているのだ。そして、結果として自社の技術力を底上げし、100年という長い歴史を築いてきた要因の一つになっている。単なる製品提供に留まらず、顧客ごとに最適な提案を行う中で信頼を深めていく姿勢が、同社ならではの価値なのだろう。

ASEAN進出と新領域挑戦で成長を加速

同社は、今後ASEAN地域への進出を視野に入れた海外展開を加速していく方針だ。現在、中国、ドイツ、アメリカ、香港など、すでに複数の国へ展開しているが、今後、大量生産への対応は中国の工場を活用し、広いニーズに応える体制を整えている。一方、同社の強みである精密部品など難しい製品の生産は日本で行っていくという。最近お客様から、電動ではなく機械式でブラインドをゆっくり等速で降ろすという難しい要望があり、試行錯誤を重ね、実現させた事例があった。そのような難しい要望には、やはり日本での生産が望ましいという。その他に、新たに医療業界への参入にも注力しており、既に海外で同社製品の「ワンウェイクラッチ」搭載の製品が採用されるなど、今後はさらにその領域を広げ、手術や健康維持に関わる製品分野への展開を目指す。医療分野は景気の変動に左右されにくい点でも大きな魅力である。新たな販路開拓や業界への挑戦を通じて、同社の持続的成長を支えていく姿勢に今後も期待したい。

育て、挑戦し、成長し続ける

社員の成長に対する考え方を教えてください。

私は社員の成長、能力アップなくして会社の成長はないと思っています。そのため、弊社では社員が自ら学べる仕組みを整えました。内容は通信教育による資格取得をサポートする制度で、受講する資格は仕事に関連していなくても対象となります。理由は、どのようなことでも構わないので、新しい知識を入れることがその人の成長に繋がるという思いがあるからです。最近、個人目標を立てようという話をしたのですが、営業の社員が弊社の使用する樹脂材料についての知識を深めようと決め、通信教育講座から見つけて勉強しているという話があり、良い方向に向かっていると感じました。今後も社員の成長を積極的に支援し、皆で会社を成長させていきたいです。

管理職に対してどのような成長促進の取り組みを行っていますか?

管理職には自己啓発を強く推奨しています。本を読んで1ヶ月後までに実践する内容を自分で考えてもらい、その振り返りを提出することを義務付けています。管理職の社員が成長しない限り、会社や部下も成長できません。さらに商工会議所が行っているビジネスマネージャー検定に合格することを、幹部に昇格するための条件としています。若手社員が自主的に取得したこともあり、積極的な姿勢を持ってくれていることを嬉しく思っています。以前は昇格に対して年功序列の考え方がありましたが、今は「部下と一緒に成果を上げる」ことが重要だと思っています。それにより、最初は意識が不足していた管理職も、現在では全員でマネジメントに取り組む姿勢へと変化しています。

社員全員に対してどのように成長を促しているのですか?

社員の成長を促すために、私自身が「任せる」姿勢を大切にしています。自分で考えて行動することが、社員一人ひとりの成長に繋がると信じているからです。まず、私は社員に対して業務を任せるだけでなく、情報の取り扱い方や問題解決のアプローチも自主性に任せています。例えば、改善提案制度を導入し、この制度を通じて、社員は自分で考えて行動する力を身につけることができます。もちろん、最終的な責任は私が取りますが、任せることで社員が自発的に動き、成長できる環境をつくり出すことが可能になると思っています。社員が自分の考えで行動し、結果を出すことで、個々の成長と会社の成長が繋がっていくと考えています。

新しい挑戦で医療の発展を支え世界平和を目指す

新しい挑戦で医療の発展を支え世界平和を目指す

株式会社TOK

経営企画室 医療事業開発グループ エキスパート 一ツ町清楓

部品メーカーで働く父の影響を受け、幼い頃から部品を身近に感じていた一ツ町さん。学生時代はフランス語を専攻しており、現在とは全く違う道を進んでいたが、部品分野への興味と同社製品の社会的意義、そして働く社員の人柄、会社の雰囲気に惹かれ、入社を決めた。現在は新規開発を行う部署において、医師と連携しながら、医療機器の製品開発に取り組んでいる。展示会への出展や、許認可、製品保険等の業務にも携わりながら、手探りで新しい分野を切り拓いているという。取材を通して特に印象的だったのは、未経験の領域にも自ら飛び込んでいく積極性と、知識を吸収する姿勢だ。そんな一ツ町さんに、現在の仕事のやりがいや、新たな分野に挑戦する中で抱いている将来の夢、想いについてお話を伺った。

伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い

小さな部品から広がる未来

部品を通じて世界を支えたいという想いから、新卒で同社に入社した一ツ町さん。幼少期、部品メーカーに勤めながらミニ四駆が趣味であった父親の影響を受けて部品に親しみを持った。就職活動では、自身の興味がある部品を扱っていることに加え、オフィス家具から工場設備まで幅広く使われる同社製品の社会的意義、そして社員の温かな人柄や会社の雰囲気に惹かれ、入社を決意。入社後は国内営業に携わっていたが、社長へ「新規開発に携わる部署にいきたい」と熱烈にアピールしていたこともあり、現在は医療機器を扱う新規開発部署に配属されている。医師と連携し、部品の提案から医療機器そのものの開発に加え、倫理委員会の審査や製品保険の手続きといった業務を手探りながらも上司との二人三脚で乗り越えている。新しい分野を開拓することによる積み重ねが、やがて同社における医療事業の確固たる柱となるという確信とともに、一ツ町さんの挑戦は続いている。

手探りで切り拓く新規事業の道

医療の現場で使われる製品を、一からつくり上げていく。そんな挑戦に、一ツ町さんはやりがいを感じている。医療機器向けの製品開発は、これまで携わっていた国内営業の業務内容とは異なり、展示会への出展や、許認可、製品にかける保険など、すべてのことが手探り状態であるという。そのような業務を、上司と協力し、乗り越えながら、少しずつ新しい領域を切り拓いているのだ。また、自身の知識を深めるために自主的にセミナーに参加したり、臨床試験の場に立ち会う中で医師から実践的な話を聞き、自分でも改めて調べ直して理解と知識を積み重ねているという。さらに、患者への安全配慮にも細心の注意を払っている。製品を使用するうえで滅菌期限やねじの緩みをチェックするなど、人の命を預かる一人として自覚を持ち、不利益が出ないように神経をつかって仕事に臨んでいるという。一ツ町さんは現場と向き合いながら、専門知識を身に付けながら、確かな一歩を積み上げているのだ。

未来に残る医療機器を生み出すために

医療分野において自社の新たな柱をつくり上げるという目標に向かって、一ツ町さんは、日々挑戦を続けている。現在一ツ町さんが中心となって開発している製品はまだ市場には出ていないが、この製品をきっかけに医療事業のルートを確立し、最終的には医療メーカーにも匹敵するような、確固たる地位を築きたいという強い意気込みを持っている。さらに、いつか自分が開発した医療機器を、これから先、自身に手術が必要となった際、使用してほしいという夢も持っている。それと同時に、自社で開発した製品により、患者さんを痛みや苦しみから解放し、ストレスのない穏やかな世の中を創出することを描いている。そしてその集大成として世界平和につながることを目指している。「私が言うのもおこがましいですが」と語っていたが、その眼には本気で世界平和を目指し、製品開発に携わろうという強い意思が感じられた。一ツ町さんの夢への一歩は、きっと大きな成果に結びつくことであろう。

前進し続ける、柔軟な思考と強い意志

入社してから、製品知識はどのように身に付けたのですか?

入社後すぐ、新入社員向けの製品勉強会がありました。まずはそこで概要を掴み、その後は先輩に同行して現場を見ながら、一つひとつ製品の理解を深めていきました。扱う製品は3000種類以上と非常に多く、最初は戸惑うこともありましたが、関わった製品を起点に、知識をどんどん増やしていきました。半年に1回開催される成果報告会も、自ら吸収する良い機会です。これには全社員が参加し、どの製品がどこで使われているのか共有されるため、他部署の取り組みを知るきっかけにもなっています。昨年は、自分の発表が評価され、MVPを受賞しました。せっかく発表するなら一位を取りたいという想いで今まで勉強したことを元に事前準備をしたので、結果として評価につながったことは非常に励みになりました。

現在の部署での強化ポイントを教えてください。

最大の強化ポイントは、「体制の強化」だと感じています。現部署は私と上司の2名のみで構成されており、意思決定のスピードや小回りの利く動きができる一方で、大型案件に対応するには明らかにマンパワーが不足しています。今後、全国展開などを視野に入れる中で、人員を増やし、社内における医療分野の比重も高めていきたいと考えています。医療業界は、信頼性や安全性が重視される分、実績がなければ案件が前に進まないケースも多く、そこに難しさを感じる場面もあります。ただ、一つひとつ乗り越えることで確実に前進している手応えがあり、やりがいも大きいです。この分野を事業の柱として成長させていくためにも、今が重要な時期だと捉えています。

自らのやりたいことを叶えるために、どのようなことを意識していますか?

小さい頃から「これがやりたい」と素直に言葉にしてきました。中学生の頃にはすでに東京の大学に行きたいと親に伝えていたので、上京も特に反対されることはありませんでした。やりたいことを言葉にすることで、周囲が自然とサポートしてくれる環境ができていたのだと思います。入社時から「新規開発に携わる部署に行きたい」と社長に伝え続けていたことで、その想いが伝わって、今回希望していた部署に抜擢してもらえたのはありがたかったです。社会人として当たり前のことかもしれませんが、自分の意見を臆せず素直に伝えること、誰にでも分け隔てなく接することを意識しています。私には人見知りな部分もありますが、自分から一歩踏み出すことで、相手との距離も縮まり、関係性も深まるのではないかと思っています。

監修企業からのコメント

コメント
この度はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。100年という長い歴史を持ちながらも、既成概念にとらわれず変化に挑む姿勢に、ものづくり企業としての強さと柔軟性を感じました。今後、貴社がどのような新たな価値を社会に提供していくのか、非常に楽しみにしています。これからのさらなる成長とご活躍を心より期待しております。

株式会社TOK

創業年(設立年)

1925年

事業内容

メカニカルコアパーツの開発・製造・販売

所在地

東京都板橋区小豆沢1-17-12

資本金

1億

従業員

172名

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