株式会社SANKEI
代表取締役社長 岡田篤典
今回取材をさせていただいた株式会社SANKEIは、創業74年の歴史を持つ、国内トップシェアを誇る折りたたみチェアや、オフィス家具の製造を手掛けるモノづくり企業である。自社工場での高品質な製品づくりと、企画から製造、販売、アフターサービスまでを一貫して行うこと、顧客の声を迅速に商品開発へ反映させる体制を整えているのが特徴だ。今回は現在3代目として手腕を振るう岡田社長。岡田社長は4年間のカナダ留学を経て三惠工業に入社。製造部門を経て32歳で副社長となってから経営に携わり35歳で代表取締役に就任した。オフィス家具にとどまらず新たな分野への挑戦を視野に革新を続ける同社について話を伺った。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
社員の意見を尊重し、共創する社風を目指す
岡田社長が入社した約15年前、社長からの指示を上司が部下に落としていく「トップダウン型」の組織形態だったという。現在は当初よりは緩和されてきているが、上司が部下を引っ張っているという社風は、今も残っている。しかし、岡田社長は「100人いれば100人が考える会社」いわゆる「共創型」の組織づくりを進めている。共創という定義は、社内だけにとどまらず、顧客や協力企業など、当社に関わる様々な人達からの意見も積極的吸い上げていくべきだという思いを持っている。「1のアイデアに様々な意見が加わると10にも100にもなる」そして、そこから生まれたアイデアを形にする。そんな会社にしていきたいと語る。そのためには社員がもっと意見を言いやすい環境づくりも必要だと考えている。さらに岡田社長は、当社はあくまでもモノづくりの会社であり「モノづくりで頼られる会社」に、もっとなっていきたいという思いも抱いている。
技術力と挑戦を武器に、新たな領域へ
同社の強みは、長年培ってきた技術力と知識の積み重ねにある。先代たちが築き上げたモノづくりの基盤は、今も同社の発展を支えている。しかし、岡田社長は「長年の歴史にとらわれるのではなく、今までにない新しい価値を生み出すことが、これからは重要になってくる」と語る。モノづくりの本質は変えず、今までになかった仕事を生みだしていくことが、企業の存続と成長につながると考えているのだ。また、同社がここまで成長した理由の一つに「OEM製造」と「メーカー」という両面を持っていることがある。様々なメーカーからの厚い信頼と、全国に広がる独自の代理店販売網がバブル崩壊などの影響で、同じような規模の会社が事業を縮小するなか成長を続け、シェア80%以上を誇る実績を作りだしたのである。現在も北海道から沖縄まで全国の代理店との強固なネットワークを活かしながら、技術と品質にこだわり、新たな分野への進出を目指して成長していく。
世界を見据えたモノづくりと新たなコラボレーション
同社は、今までの概念にない新しいモノづくりの形を模索している。例えば、会議室の机と椅子が床や壁から出てくるようにできたなら、体育館や家庭でも同じように実現できたとしたら、空いたスペースを有効活用した新しい生活スタイルを提案できるのではないだろうかと考えている。このような未来を見据えた革新的な製品開発をしていくために「家具メーカーは建設業と、もっと関わっていく必要がある」と岡田社長は語る。それと同時に自社の建築に関する専門知識の向上も必要であると考えている。そのためにも新たなパートナーシップを築いていくことが重要になってくるのである。今後、ビジョンを実現するためには、建築士の資格を持つ人材とコラボレーションするのか、社内で資格取得を支援するのかを検討している。いずれにせよ従来の枠を超え、より広い視野でのモノづくりに挑戦していく考えである。同社の進化はこれから更に加速していくであろう。



成長する企業へ向けた新たな取り組み
今後会社を成長させていくために取り組まれていることはありますか?
さらに成長していくための取組みとして、社内の意識改革とスキル向上に向けた取り組みを進めています。その一環として、社外から講師を招いての研修を導入し、社員の意識向上を図ろうと考えています。研修を行う目的は、社員一人ひとりが主体的に成長し、より高いパフォーマンスを発揮できる環境を整えることです。外部の専門家による講義を受けることで、業務に対する新たな視点を持ち、柔軟な発想や問題解決力を高めることが期待されます。この取り組みを通じて、社員の成長を促し、より活気ある企業へと進化していくことを目指しています。技術力だけでなく、組織全体の意識や文化を高めることで、これからの時代に求められる企業へと成長していくと思います。
岡田社長が考える課題と解決に必要なことは何ですか?
現在、優秀な人材が多く活躍している一方で、人材の流動化という課題もあり、今後さらに進むと考えています。そのためには、長く働き続けてもらえる環境づくりを重視しています。特に、社員が「やりがいを感じられる」「会社や生活が充実している」と思えることが重要で、そうした職場環境を整えることが、解決のひとつです。それと会社の方針や方向性を決めるのは経営層ですが、会社の成長には社員の成長が不可欠です。さらなる成長のためにも、知識や経験を持った人材を大切にし、ボトムアップ型の組織を目指していきます。そのために「自ら学び、成長し続ける意欲のある人」に入社してほしいと考えています。会社としても、社員の成長を応援する環境を整え、共に成長していける組織を築いていきます。
今後どのようなことに取り組んでいきたいですか?
モノづくりという根幹を残しつつ、どのように発展させていくかを大きな課題と捉えています。そのため、新たな挑戦として、これまでにない事業を生み出すことに力を入れていきます。例えば、旅館やサービス業に興味があるため、三重県の魅力を活かしたインバウンド向けの事業、特に長期滞在型の外国人向け旅館の構想を描いています。日本を訪れる外国人は、短くても1~2週間、長い場合は1カ月以上滞在することが多いです。そうした旅行者に、日本の魅力を存分に楽しんでもらい、長く滞在してもらえる施設を提供することが目標です。異業種へ目を向けつつ、幅広く考えを巡らせ、新しい価値を生み出すことで、地域の活性化にも貢献していきます。
ものづくりの未来を支える情熱
株式会社SANKEI
企画開発部生産技術係 係長補佐 橋本力紀
新しい商品を生み出すためには、それを製造するための治具や金型の準備が不可欠である。橋本さんは、企画開発部の生産技術係として、まさにその役割を担っている。新製品の生産体制を整えるため、3D CADを用いた設計や金型の制作を行い、時には社内で、時には外部の専門家と連携しながら、最適な形を追求しているのだ。この業務の魅力は、高度な技術力を駆使して製品を生み出すことにある。特に、少数精鋭のチームであるため、互いに密な連携を取りながら業務を進められる環境が整っている。そのため、技術的な知識を深めながらも、自由に意見を交わし、チームワークを大切にできるのが強みだという。そんな橋本さんに、高い技術力を発揮している秘訣や同社のこれからについて伺った。
伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
興味から始まったモノづくりの道
2013年に同社に入社した橋本さんは、もともと機械に興味があり、製造業の道を志していた。東海地方はモノづくりの町で、特に自動車関連の企業が多い。そのなかで「椅子の製造」という異色の業種に魅力を感じ、「面白そうだな」と思ったのが、きっかけだった。実際に働いてみると、その環境の良さに驚いたという。接客業のアルバイト経験もあったが、自分にはモノづくりの仕事が合っていると感じ、やりがいを持って業務に取り組むことができたそうだ。初めて任されたのは溶接ロボットの操作。初心者には難しい作業だったが、説明書を読み、自分で勉強しながら挑戦し、乗り越えてきた。同社では「分からないことを分からないと言えること」が大切だと橋本さんは語る。技術的な課題に直面しても、周囲に相談しながら解決できる環境があるからこそ、挑戦し続けることができるのだろう。
狙い通りの寸法が出る瞬間
橋本さんが仕事で最もやりがいを感じるのは、設計した通りの寸法が一発で決まったときだという。モノづくりでは、設計と実際の製品にズレが生じることが少なくない。調整を重ねながら、狙い通りの形に仕上げることが求められるため、簡単ではないのだ。しかし、試行錯誤を繰り返し、最適な加工条件を見つけたときの達成感は格別だ。特に、新製品の立ち上げでは短い期間の中で試作を進め、不具合が出れば迅速に改善しなければならない。そのため、技術的な課題を解決しながらモノづくりに取り組むことが求められる。半年に一度ほど、「この条件なら完璧だ」と思える瞬間が訪れることがある。その瞬間こそが、橋本さんにとっての大きな喜びだという。同社は、モノづくりに情熱を持つ人が活躍できる環境が整っている企業である。笑顔でやりがいを語ってくれた橋本さんから、同社は自ら考え、挑戦する姿勢を持つ人にとって、非常にやりがいのある職場であることが伝わってきた。
頼られる技術者を目指して
これからも機械に携わり続け、技術者として成長し続けることが橋本さんの夢である。幼い頃から機械を触ることが好きで、その延長線上に今の仕事がある。自分に合った仕事を楽しみながら、さらに高いレベルの技術を身につけたいと考えている。その中でも特に興味があるのは、自社でロボットの生産ラインを構築し、設備の立ち上げを行うことだ。製造業において、自動化はますます重要になっており、ロボット技術の活用は不可欠である。そして、その夢の実現には、常に技術を磨き、知識を学び続ける必要がある。加工方法の最適化や素材の特性を理解することはもちろん、日々の業務の中で経験を積み重ね、知識を深めていくことが求められる。橋本さんは、「知らないことを聞かれたら、答えられる技術者になりたい」と語る。そのためには情報収集を怠らず、最新の技術動向にもアンテナを張ることが欠かせない。最終的には、「橋本さんに聞けばなんとかなる」と思われるような、頼られる技術者になることが目標である。



答えを導き出す技術者の使命
どのようなところにこだわりを持って製造をされていますか?
モノづくりにおいて、仕上がりの美しさは品質の高さを示す重要な要素です。私は特に「面の綺麗さ」や「溶接の接続部分の美しさと歪みの少なさ」にこだわりを持って製造に取り組んでいます。例えば、ロボット溶接の試作においても、仕上がりの精度を求めて試行錯誤を重ねています。このこだわりを実現するためには、高度な技術が求められます。いままで社外の講習にも積極的に参加し、技術力向上に努めてきました。しかし、最も重要なのは、自ら工夫し、試行錯誤しながら最適な方法を見つけることだと思います。モノづくりには正解が一つではなく、自分なりの答えを導き出す力が必要です。弊社では、そうした探求心を持つ社員が成長できる環境が整っていると思います。
機械が好きになったきっかけはなんですか?
私が機械に興味を持ったのは、子どもの頃、身の回りにあるものを分解し、「どのように動いているのか」を探ることが好きだったことがきっかけでした。壊してしまうこともありましたが、それも学びの一つでした。こうした探究心が自然と、ものづくりへの興味につながり、やがて職業訓練校へ進学することを決意しました。学校の先生に勧められたこともありますが、自分自身が「機械の仕組みを理解したい」「技術を身につけたい」という気持ちを持っていたことが、大きな決め手だったと思います。現在も、仕事の中で「どうすればもっと良くなるか」を考え続けています。幼い頃から培ってきた探究心が、今の仕事の原動力になっています。
同社のいいところはどのようなところですか?
社員一人ひとりが自分の考えで仕事を進められる環境だと思います。「ひとりで仕事を任せてもらえること」に大きなやりがいを感じ、試行錯誤を重ねながら、自分なりの工夫を加えて成果を出せることが、モノづくりの面白さにつながっています。また、会社全体の雰囲気も魅力の一つです。働く環境が良く、社員同士のコミュニケーションが活発であるため、仕事をしやすいと感じています。さらに、弊社では社内イベントも定期的に開催されており、例えば年に1~2回のボウリング大会は社員同士の親睦を深める場となっています。自由な発想で仕事に挑戦できる環境と、社員同士の良好な関係性が、弊社の魅力を形づくっているのだと思います。
創業年(設立年)
1951年
事業内容
金属製家具製造業、木製家具製造業
所在地
三重県鈴鹿市上野町字助町48番地
資本金
5,000万円
従業員
約100名
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