山口産業株式会社
代表取締役 山口篤樹
かつては炭鉱で栄えた佐賀県に本社を構える山口産業株式会社。今回インタビューをさせていただいた山口篤樹氏は、二代目社長として、創業者である父の意志を継ぎながら事業を拡大してきた。
同社のルーツは炭鉱用の資材製造にあり、特にビニール製の送風管の製造に注力していた。しかし、エネルギーの主役が石炭から石油へ交代する中で、炭鉱の閉山が相次ぎ、事業の方向性を見直す必要に迫られた。そこで同社は、炭鉱資材からテントの膜と鉄骨を含む膜構造建築の製造にシフトした。現在では、農業施設や公共施設、さらには陸上養殖施設など、多岐にわたる用途に対応している。
誰もやらなかったことにチャレンジしていく同社。今回は山口社長にテント業界で活躍する同社ならではの組織づくり、そして同社が見据える未来についてお伺いした。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
組織改革で成長加速!目標達成への道のり
同社の社風について、「目標達成のために、変化を恐れないこと」が特徴であると山口社長は語る。しかし、初めからその社風があったわけではない。
創業当初、同社の社員数は約20名であり、事業は創業者がけん引して進められていた。山口氏が二代目社長に就任した当時も、営業・設計・調達のすべてを社長が指揮する体制。そこから、さらなる発展を遂げるためには、組織全体の力を引き出す必要があった。
そこで山口社長は「組織づくり」に着手。その結果、社員数は約130名に増加し、現在では各部門長がけん引する形で、常にトライ&エラーを繰り返しながら事業領域を拡大し、目標達成に向けた動きを加速させている。
この取り組みの成果は数字にも表れており、組織づくりから約8年で売上も急成長した。山口社長は「存在感がある会社、自慢できる会社にしていきたいと、みんなが思うようになった」と語る。
個々の力が組織として結集し、同社は今後もさらなる発展を遂げていくだろう。
全国でも希少な一貫生産企業
山口社長は同社の独自性について、一貫した生産体制と語ってくれた。同社は営業、設計、製造、現場施工、さらには図面作成や役所対応までを自社内で完結させる体制を整えている。全国に約2000社あるテント業界の企業の中でも、同社のように一貫生産体制を持つ会社は1割程度に過ぎないという。
社長が同社の命と語る「スピード対応」もこの体制に起因する。テントは一般建築物として、工期が短いことが選ばれる理由の一つとなる。だからこそスピード対応が必要なのだろう。外注すると最短でも1ヶ月半必要となる設計が同社では1ヶ月で可能になる。これは設計から役所の手続きも同社内で対応できるからである。このようにして、短納期を求められる案件でも高い品質を維持しつつ、顧客の期待に応えているのだ。
先代も自ら図面を描き、スピード対応を徹底していたという。その姿勢は現在、山口社長にも受け継がれ、そして設計や営業と組織を成長させながらさらに事業を拡大している。
持続的成長を実現する経営戦略
山口社長は、今後の目標を「現在約50億円の売上を、4年間で70億円まで成長させる」と掲げている。
その実現に向けて、膜構造技術を活かした新たな市場開拓を進めていく。特に注力しているのは、防災・防衛関連、そして一次産業における畜舎や陸上養殖である。災害が多い今、役所や地域に備蓄するなど新たな需要を狙う。実際コロナ禍では病院外の発熱外来用のエアーテントを提供するなど、社会的なニーズに応える形で事業を展開してきた。一次産業においても、農業では牛舎や堆肥舎、漁業では陸上養殖施設など人手不足を憂う業界にとっても未来を担う有効な一手になるだろう。
また、事業拡大には優秀な人材の確保が不可欠である。現在、同社では、ブランディングの強化を通じて、企業の魅力を発信することにも力を入れている。
今後も社会的なニーズに応えることで事業を拡大し、地域社会に貢献していく同社の成長が楽しみである。



テント=膜構造技術で切り拓く新たな市場
テント業界の可能性を広げるためにどのようなことをしていますか?
地域特性に合わせた新たな膜構造の活用方法を提案しています。現在も、日本全国で営業活動はしていますが、積雪や台風など、地域ではその特性に対応した建築の提案が求められるため、実際にお客さんにテント素材を使用した膜構造建築を見ていただきながら理解を深めてもらい、実績を積み重ねることで信頼を獲得しています。
さらに、東南アジアなどの新興市場へ進出し、現地のニーズに応じた膜構造建築の提供を計画しています。これにより、事業の持続可能性を高めるだけでなく、新たな雇用の創出や人材育成の機会を増やすことを目指しています。
テントの強みを活かし、「テントだからこそできる」新たな価値を市場に浸透させることで、さらなる成長を目指しています。
これからの組織づくりについてどのように考えていますか?
弊社では、事業の多角化を見据えながら、未来の組織づくりに取り組んでいます。今後、新規事業の展開を加速させるためには、新たな組織の整備が不可欠です。例えば、本格的に水産業や農業などに力を入れていくためには、専門チームを編成し、事業の多角化を進める必要があります。
また、組織の成長には、従業員のモチベーションのさらなる向上が欠かせません。当社の社員は平均年齢30代後半と若手が多く、その若手たちが「先の希望がない」とならないためにも、新しいキャリアも含めて考えていく必要があります。昨年行った評価制度の改定もその一環であり、個々の成果が適正に評価される仕組みを構築しました。
今後、社員皆がもっと喜ぶ会社にしていくために組織づくりを進めていきます。
社員に期待することはなんですか?
仕事を楽しみながら取り組んでほしいと考えています。
私自身も営業活動が楽しいからこそ全力で取り組めています。同様に、設計やものづくりに携わる社員も、自分の得意分野や興味のある領域で創意工夫を発揮できる環境が大切だと考えています。そうすることで、長く充実したキャリアを築くことができると思います。
また、以前は何か問題があった際に、厳しく指導することもありましたが、現在は社員の自主性を尊重し、過度に干渉しない方針を取っています。社員がのびのびと働ける環境を整えることが、最終的に会社の成長にもつながると考えています。
これからも、社員一人ひとりがやりがいを持って働ける組織づくりを進め、全員で成長していける会社を目指します。
明るく前向きな組織を支える 橋口さんのリーダーシップ
山口産業株式会社
設計部課長 橋口裕
設計部の課長として、幅広い管理業務を担う橋口さん。部下のスケジュール調整や営業からの相談対応、各部署やお客さんとのスケジュール調整など、多岐にわたる業務を担当している。設計部の中で、申請や作図、構造計算の3つの部隊を統括し、お客さんのアイデアを図面化して、形にする業務を推進。未経験の分野でも学びながら業務を進める姿勢が、組織の円滑な運営を支えている。
管理業務を通じて社内の業務進行を支えながら、最適な働き方を模索し、組織の成長に貢献する橋口さん。部下が柔軟に働ける環境を整え、設計部全体のパフォーマンス向上に尽力する彼のリーダーシップについて話を伺った。
伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
人と環境に惹かれた、異業種からの挑戦
6年前に中途入社した橋口さんが同社を選んだ理由は、「人と環境に惹かれたこと」。 専門学校卒業後、飲食業やインストラクター、不動産営業など異業種で経験を積んだが、「歴史や地図に残るものをつくりたい」という思いからこの業界への転職を決意した。 入社の決め手となったのは、面接で出会った部長の人柄だった。同社の部長は会社をよく見せようとするのではなく、思っていることを素直に話してくれたという。その率直で誠実な態度に感銘を受け、「この人と一緒に働き、意見交換ができる環境で成長していきたい」と強く感じた。そして、異業種からの挑戦であっても積極的に吸収しようというチャレンジ精神を持って入社を決意したのだ。 実際に入社してからもそれは変わらず、部長陣とも相談をしながら連携して業務に励んでいるという。 橋口さんは未経験ながらも新たな分野に挑戦し、20代のうちに課長へと昇進。最年少課長として活躍している。
日々の課題が力になる、成長と達成感の瞬間
橋口さんにとってのやりがいは、案件ごとに異なる課題を解決しながら成長できること、そして達成感を得られることである。 設計業務では、一つとして同じ案件がなく、毎回異なる課題に直面する。その課題をどうやって対応していくか考えるプロセスが、自身の成長につながる刺激となっているという。 特に印象に残っているのは、4,000㎡もある大型建物の設計や、グランピング施設の確認申請を通した経験だ。中でも、球体構造のグランピング施設では、屋根と壁の定義が曖昧な中、持ち前のチャレンジ精神と知識、経験を駆使して設計を成功に導いた。 そして、完成した建物を見たお客さんから「建ててくれてありがとう」と言われた時に大きな達成感を感じたという。 日々の変化や新たな課題を楽しみながら、設計業務に取り組む橋口さん。その中で培った経験が、設計部全体の成長にも貢献しているのだろう。
橋口さんが目指す「設計の未来」
橋口さんの夢は、「自分たちがつくった」と胸を張って言えるランドマークやシンボルのようなものを世に残すことである。では、同社において新たな製品の開発はどのように行われているのだろうか。同社には開発部署はないものの、「MEMBRANE LAB」というプロジェクトを立ち上げ、時には異業種と協業しながら、有志を募る形で開発を行っている。その中でも設計部は重要な役割を担っているという。 さらに、「あの建物は自分たちがつくった」と誇れる建物をつくることで、家族や求職者へのアピールにもなり、「私もつくりたい」と自ら手を挙げるような優秀な人材を引き寄せることにも繋がるだろう。 橋口さんは、その第一歩として、知識を身に着けるために、様々な資格取得を目指している。外部の人と話す時にも会社の看板を背負って胸を張って行けるように、会社として必要な知識や技術を取得しようと考えているという。 「絶対できると思うんですよ、うちの会社」そう語ってくれた橋口さんの姿勢が、同社の未来にも大きな影響を与えることだろう。



社員の誇りが生まれる会社
今後、山口産業をどのような会社にしていきたいですか?
「すごい会社」と誇りを持って感じてもらえる会社にしたいと考えています。
弊社では、大規模な建物の設計を手がけていますが、その価値や達成感を全社員が十分に実感しているとは言い切れません。
例えば、弊社が手掛けるテント倉庫は、軒高5m、天井部分では7mを超え、時には10m以上のものもあります。この規模感や迫力は、現場を訪れないとわかりづらいものです。
完成写真の情報共有は行っていますが、社員が実際に現場を見てその壮大さを実感する機会を増やすことで、より誇りを持てるようになると考えています。
社員全員がその感覚を共有し、「すごいものをつくっている」と胸を張れる会社にしていきたいと考えています。
御社の良いところを教えてください。
弊社の魅力は、成長できる環境と部門間の強い連携にあると考えています。
若手でも実力次第で責任あるポジションに就くことができるため、自分の成長を実感しやすい職場です。
また、設計、製造、営業が密に連携する一貫体制を取っているため、問題が発生した際には部署を跨いで迅速に対応できる環境が整っています。
例えば、現地で調節が必要になった場合でも、「すぐに改造しよう」という前向きな姿勢で取り組むため、お客さんへのフォローが非常に早いと思います。このスピード感は、他社にはない当社独自の強みです。
私自身も弊社の部門間が連携した環境で切磋琢磨してきたからこそ成長してきました。
御社の雰囲気を教えてください。
一言で表すと「明元素(明るく、元気よく、素直に)」です。社員一人ひとりがこの姿勢を体現しているからこそ、前向きで活気のある職場環境が生まれていると感じています。
社内で最も明元素を体現している人は社長だと思います。社長は熱意のある方で、社員がアイデアを提案すると「やってみようや」という前向きな姿勢で社員を鼓舞してくれます。この実現に向けて動き出す柔軟性が弊社のスピード対応にもつながっていると思います。
また、部長は社員の声に耳を傾け、悩みも聞いてくれる頼れる存在です。それぞれが異なる考え方を持ちながらも、「明元素」を大切に一つの目標に向かって協力し合う姿勢は、当社ならではの特徴だと感じています。
創業年(設立年)
1972年
事業内容
膜構造建築物、合成繊維、金属及び合成樹脂保安用資材、一般産業資材並びに製品販売、化製品の製造並びに販売、建設業
所在地
佐賀県多久市多久町3555-120
資本金
2000万円
従業員
130名
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