武州工業株式会社
代表取締役 林 英夫(取材当時)
創業以来、自動車用の熱交換器パイプと板金部品の製造で成長してきた同社。現在ではパイプ加工というコア技術を用いて、医療機器、航空宇宙など広く事業を展開している。創業より63年間に渡り黒字経営を続けている同社の強さの秘訣は、生産性向上の3つの取組みによって実現される高いコスト競争力だ。そんな同社を社長として牽引するのが、林社長である。日本に雇用を生むために、海外生産しなくても勝てる仕組みを構築し「日本でLCC(ローコストカントリー)価格を実現する」という強い思いを語る林社長が目指す同社の魅力や未来はどこにあるのか、林社長に様々なお話を伺った。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
社員のタイプを生かして強いチームをつくる
人はそれぞれ異なる強みや弱みを持っており、色々なタイプが働いているのが企業というものだが、それによりコミュニケーションが円滑に取れなかったり、生産活動の妨げになるということはよくある話だ。しかし、同社では個人のタイプを尊重し合って協働する文化がある。その特徴的な取組みが「類人猿分析の活用」だ。類人猿分析とは、人それぞれの考え方や強み・弱みを分析し、タイプに応じてオランウータン、ゴリラ、チンパンジー、ボノボの4種類の大型類人猿に分類する分析手法である。 同社ではその分析を全社員に行った上で、社員一人ひとりに該当する類人猿のバッチを配布し、社員は会社にいる時は常に類人猿バッチを身に着けているのだ。これにより、例えば「この人はオランウータンだから”納得”を大事にしている。だから、一緒に仕事をする時は、特に無理強いしてはダメな人なんだ」など、お互いがそれぞれの強みや弱み、考え方の特徴などのタイプを常に意識しながらコミュニケーションを取り円滑な協働を図ることができている。
高いコスト競争力を実現する、3つの生産性向上の取組み
同社は、日本に雇用を生むために、海外生産しなくても勝てる仕組みを構築し「日本でLCC(ローコストカントリー)価格を実現する」という戦略を掲げ、高いコスト競争力を確保している。これを支えるのが、3つの生産性向上の取組みである。 1つ目は、必要最小限の機能を備えた生産設備を自前で開発・製造する「自社設備開発」であり、標準装備と比較すると価格は1/4、消費電力は1/2まで抑え込むことに成功している。2つ目は1人の技術者に材料調達から加工、品質管理、出荷管理まで、一貫して製造を担当する「1個流し生産方式」であり、リードタイム短縮や不良発生や納期遅延を激減させることに成功している。3つ目は全社員がタブレット端末を所持しそれを活用し作業の効率化と平準化を実現する「情報管理システムBIMMS」の導入だ。 圧倒的な生産性向上による強い企業づくりを実現している同社。 創業より63年間続く黒字経営の秘訣がここに確かにある。
300年企業の実現+日本を元気にするオープンイノベーション
「300年企業を目指して」 100年企業を掲げる企業は多いが、同社では300年企業という高いハードルをあえて掲げ、よりラディカルな挑戦を続けている。2011年にはわずか売上比率において2%しかなかった医療機器部品事業をわずか3年で42%まで伸ばし、新たな売上の柱をつくった取組みはその1つだ。今後はさらなる生産性向上の取組みを進め、経営品質賞受賞を狙いたいと林社長は意気込む。 一方で、今後は自社という枠を超え、武州工業の強みである1個流し生産やBIMMSなどのノウハウを他社へ発信していく”オープンイノベーション”の取組みを展開していきたいと林社長は考えている。「ウチが海外生産に頼ることなく成り立っているのだから、他社でも同じようにできるはず。そうすれば日本がより元気になるよね」そう熱く語る林社長。林社長が掲げる「鎖国から開国への取組み」は、日本のものづくりを救う救世主になれるか、これからの取組みに目が離せない。



林社長が語る武州工業の強さができあがった背景
―生産性向上のための徹底的な取組みの背景について教えてください
もともとは、1985年に取引先の改善チームが部品の内製化の発表を弊社にて実施したことが発端でした。 この窮地を脱するために、「限りなきコストダウン」を掲げ、5期ごとにテーマを設定し社内改善を行うアタックV活動をスタートさせました。製造面での効率化、コスト削減、品質に均一化、不良ゼロといった難題をクリアする中で、1個流し生産など現在の弊社の強みにつながる取組みが次々と生まれていきました。さらにはこのように自動車業界でしのぎを削って生産性向上やコスト管理をしてきたので、医療業界では「1ケタ違う」と言われるほどの価格設定をして事業を展開することができ、飛躍的に売上を伸ばすことができたのだと考えております。
―御社では20代の方が多く働かれていると聞きましたが、何故ですか
弊社の平均年齢は33歳で、20代が最も多い構成になっています。 これは私の先代の時代から、引退者の数だけ若手を採用するという方針を続けてきた結果ですね。 臨時工みたいな形で若い者を使い捨てるということをせずにパートを正社員にしたり、過去5年で新卒人材を50名も採用するなど特に積極的に若手人材の採用に取り組んできました。 最近、若くエネルギーのある若手人材を採用できないと悩んでいる中小企業の方が多い中で、大変ありがたいことに私達のもとには意欲のある若者が集まってきてくれています。この観点からも、当社の場合、世代交代が順調にいっていると言えるでしょう。
―これから社員により期待したいことは何ですか
300年企業を目指すと考えると、300年後、果たして本当にパイプをつくり続けているのかということを考えると、それは分からないですよね。パイプをつくるということにこだわりすぎるのではなく、色んなことにチャレンジをしていく企業でありたいと考えています。 生産性をさらに向上させていくためにも、チャレンジをし続ける企業であるためにも、絶対的なカリスマリーダーがいなくなったら何もできないという会社になることなく、一人ひとりの社員がより同じ方向を向いて自立している会社にしていきたいなと考えています。社員一人ひとりが「自分達の会社をさらに良くするためには」という発想で仕事ができるように私もサポートしていきます。
最年少チームリーダーが挑む武州工業の未来づくり
武州工業株式会社
製造部チームリーダー 谷田貝 雄太(取材当時)
弱冠26歳で製造部第4班のチームリーダーを任されている谷田貝さん。わずか小指ほどの大きさの製品を扱っていることから、同社の中でもより確かな技術力と繊細な注意力を要求される第4班で、総勢14名の部下をまとめあげ、お客様に感動を与える一方、製造部内にとどまらず、採用活動、企画にも積極的に参画するなど、社内での活躍は実に幅広い。採用活動においては、選考メンバーとして参加し、更には人材の魅力、資質を見極めるための勉強会に参加するなど、自己研鑽にもぬかりがない。製造部でリーダーシップを発揮しながら、現場の社員からの厚い信頼を集めている谷田貝さんが見つめる自らの未来、そして、武州工業の未来は一体、どんなものになるのだろう。最年少チームリーダーの語る、熱い思いに注目だ。
伝統の承継と挑戦の未来を担う社員の思い
ものづくりの楽しさを知りたくて
製造業を志した谷田貝さんが一番初めに入社したのは武州工業ではなく、とある自動車の機械部品メーカーであった。ラインの中の一作業者として仕事に従事する一方、自分の仕事が何に関わっているのか分からなかったがゆえに、仕事に熱中できず、もどかしさを感じていた谷田貝さん。その後、新たな活躍の場を探す中出会ったのが、武州工業であった。偶然、前職の会社と取引があったことから、自分の経験を生かせるのではと、入社を決意。入社後初めて出会った上司に、スピードと品質の大切さを教わった谷田貝さんは、いかに無駄をなくし、早くかつ正確なものをつくるかという、武州工業のものづくりに熱中していった。「一つひとつの作業は単純でも、1日に8000個の加工をすることもあります。その中でも質をどう担保するか、自らの創意工夫と試行錯誤が試されるところに、夢中になりました」と谷田貝さんは振り返る。そして仕事に対するこだわりと圧倒的な熱意が評価され、最年少でチームリーダーに抜擢された谷田貝さん。これからの活躍が期待される。
チームリーダーとして、後輩の成長を後押しできる存在に
谷田貝さんが現在、仕事をする中で、一番やりがいを感じるのは、年に1回の人事評価の瞬間だ。これは谷田貝さん自身の評価を指しているのではない。チームリーダーとして、自分のチームメンバー一人ひとりと向き合って、成長の助けになるような評価ができた瞬間が、何よりも喜びなのだと谷田貝さんは語る。「一人ひとりの部下と真剣に向き合って、その人が『認められている』と感じ、『頑張ろう』と思ってくれるような評価をしたいですね」谷田貝さんが評価にこだわる理由には、前職で感じた、自分の評価に対する違和感が根底にある。自分の何を見てもらって、評価されているのか、何ができて、何ができないのかを、評価から感じられず、本当に自分のことを見てくれているのかと疑問に思うことすらあったのだそう。「そんな経験をした自分だからこそ、メンバー全員が生き生きと働けるような評価をしたいと思っています」と谷田貝さんは誇らしげに締めくくった。
製造の仕組みを改革し、会社の未来を創る経営企画に携わりたい
製造現場で働く社員たちが自立して生き生きと働き、管理者がより価値を生み出すため、現在谷田貝さんは生産の自動化に力を注いでいる。現場社員が自立自走することで生産性が向上し、それによりリーダーは新たなことにチャレンジできる。まさに一石二鳥の取り組みだ。これを実現するには、現場にプロフェッショナルがいて、かつ、製造工程を均一化する仕組みが整っていることが必要だ。「なので、現在自分はプロフェッショナルの育成と、システム・ルール作りに注力しています」と谷田貝さんは現在の取り組みを語った。この延長線上に谷田貝さんが描いている自身の夢は、経営企画の仕事に関わるということ。子どもの頃テレビで見た、世間でも注目を集めた経営者への憧れが、自社商品の開発や、新商品のアイディアの考案などを通じて花開き、より深く経営企画に関わりたいと思うようになったのだそう。会社の仕組みを変革し、自らの夢を実現しようと意気込む谷田貝さんが、今後武州工業の未来をけん引するキーマンになることは間違いない。



武州工業で働く中で、谷田貝さんが大切にしていること
―谷田貝さんの班で一番大切にしていることはなんなのですか
これは自分の班だけではなく、製造全体にも言えることなんですが、とにかく、お客さんの設計図通りに物を作ることが重要ですね。特に4班が扱っている製品は、他の班が扱っているものに比べて、大きさが約4分の1と、非常に小さいものになるので、余計に品質や、規格の公差で注意を払う必要があります。なので、自分達の指定されている作業だけではなく、前工程の分まで確認するということをしています。前提として、前工程の作業の品質もチェックしているので、自然と、自分達の仕事に対する目線も厳しいものになるんです。こうした入念なチェックを行うことで、人為的なミスをなくすことができています。
―より良い武州工業を作っていく上で必要なことはなんなのですか
相手の気持ちになって考えること、相手に対して心を開くこと大切にしてほしいですね。これは自分も同様なのですが、人間、忙しくなってくるとどうしても一杯一杯になってしまいますよね。そんな時に少しでも、相手の心に耳を傾けられると、色んなことが円滑に進んでいくと思います。この少しの思いやりを社員全員が持つことができれば、人間関係で悩みを抱えたりといった問題が起こることも未然に防ぐことができますよね。頭でわかっていても難しいことなので、「まずは自分が」の気持ちを持ってやっていきたいですね。前提として、そもそも一杯になってしまわないように、時間や仕事に常に少しだけ余裕を持たせておくように心がけるのも大切なことですね。
―これから武州工業に入社する新人に向けて一言お願いします
働く上でお互いを高め合えるような、同じ志を持った人を見つけると、仕事はどんどん面白くなります。なので、会社に入ったら、まずは自分の一番大切なこと、叶えたい未来を持った上で、同じように、未来を描いている人を探すといいと思います。そうすると、自然と仕事も前向きに取り組むことができるはずです。そうやっていい仕事の仕方をしていると、自ずと自分の周りに魅力的な人が集まり、チャンスが到来します。不安なことが沢山あるとは思いますが、絶対にぶれない志を持って、切磋琢磨し合える仲間がいれば、そんな不安も吹き飛びます。少なくとも武州工業には、そんな志を持った社員が沢山いるので、きっと出会えると思いますよ。
創業年(設立年)
1952年
事業内容
・トラック、特殊車両、自動車等に使用する吸気系、 ヒーター用パイプを中心としたパイプ曲げ加工 ・トラック、建設機械、特殊車両の自動車部品の製造、板金加工 ・pipegram®などの自社製品の企画、製造
所在地
東京都青梅市末広町1-2-3
資本金
4,000万円
従業員
155名(正社員)
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